「ほら、見てごらん」
「うわあ」

ベランダのガラス戸を開けると、彼女はため息まじりの声をあけた。

「奇麗・・・」
「でしょ。毎年、この時期になるとベランダからお花見ができるんだよ」

マンションの3階にある実家のベランダの前には大きな桜の木があり、眺めているとまるで桜の花の中にいるような錯覚を覚える高さだった。彼女が上京するタイミングに、ちょうど両親が旅行で不在だったので、この桜を見せてやろうとこっそり家に呼んだのだ。

「この高さから桜を見るのってはじめて。今年は最高のお花見だわ」
「昼間だともっと真っ白ですごいんだ」
「きっとそうでしょうね。でも、夜桜も奇麗。街灯に花びらが透けて、夢の中みたいだわ」

俺たちはしばらく黙って桜を見ていたが、何気なく後ろから抱きしめると彼女はすぐに振り向いて自分から軽くキスしてきた。ところが、彼女が唇をはなそうとするのを押しとどめてキスを続け、胸に手をまわすと、彼女は強引に俺の手をふりはらい、言った。

「だめよ、外から見えちゃう。それに、ご両親が留守中にこんなことするの嫌だわ。私が泊まってるホテルに戻りましょう」
「いいじゃん、すこしぐらい。たまには変わったシチュエーションでさ」
「嫌、ごあいさつもしないでおうちに上がり込むのも罪悪感あったのに」
「だって、桜を見ながらなんてそうはできないよ。少しさわるだけだから、ね?今年はじぶんとこではもうお花見したの?おまえんちのあたりだと、どこが有名なの?」

ふたたび彼女の胸に手を置きながら、俺はしらじらしい世間話で抵抗の言葉を封じていた。彼女ははじめのうちは何事もないかのように短い言葉で返事をしていたが、そのうち手の動きにあわせて、かすかなため息を漏らしはじめた。ブラウスのボタンをひとつはずし、すきまからブラジャーの下にすべりこませた指で乳首をつまむと、それはすでに固く尖り、ふざけて指先で素肌に押し込んでみると、彼女は反射的に腰を引いた。後ろから彼女の股間に太ももを差し入れると、彼女は素直にその部分をおしつけてきた。

しばらく乳首を弄んで彼女の腰を操縦していたが、俺ももうたまらない状態になっていたので、空いたほうの手をスカートの中に入れて中心をさぐろうとすると、彼女はハッと我に返ったように言った。

「だめよ、これ以上はだめ。ホテルに行きましょう」
「いいじゃん、もう少し、おねがい」
「嫌よ。本気で怒るわよ。あっ、ああっ!」

俺は無理やり彼女を抱き寄せると、急いでジーンズのジッパーを開け、彼女のショーツを横にずらしていきなり挿入した。彼女を黙らせるにはそうするしかないと思ったし、さっき少し指先が触れた時点で、彼女は楽に俺を迎え入れることができると確信していたからだ。思った通 り、しとどに濡れていた彼女は言葉とうらはらに何の抵抗も無く俺のペニスを飲み込んでしまった。さすがに彼女が大声をあげるとまずいと思い、挿入してからしばらく、後ろから強く抱きしめたまま様子を見ていると、彼女は必死に声が出るのをおさえて喉の奥でうめいていた。

「・・・お願い、抜いて」
「だめ。もうとまらないよ。おまえだって気持ちいいんだろ?」
「よくないわ、こんなの」
「だって中がほら、すごく動いてるよ。吸い込まれそうだ」

いつもならたっぷり前戯をしているところだが、いきなりの挿入は刺激が強すぎたのか、彼女の内部は襞の1枚1枚がざわめきだち、ヒステリックなまでに不随意な押し戻しを続けていた。その運動で、大きく腰を動かさないまでも密着した壁を伝わって蜜がとめどなく流れ出し、端によせたショーツの生地は見る見るうちに湿ってきた。そのうちに彼女は強い意志で胎内からペニスを引き抜こうと腰を前に逃がしたが、その摩擦の心地よさについ小さな声をあげてふたたび深い圧迫をもとめて腰を後ろに戻してしまう。そんな繰り返しがやがていつもの伽のリズミカルな運動に変わっていった。俺は、彼女が冷静になろうとするほどに逆の効果 を生みだしてしまう様子に、うっかりくすっと笑ってしまった。すると彼女はあえぎながらも声を抑えて言った。

「いじわる、しないで」
「いじわる、してないよ。俺入れただけじゃん。おまえがひとりで動いてるんでしょ?」
「いじわる」
「いじわる、してほしいの?ほらほら」

俺は彼女が腰を逃がした瞬間にぎりぎりの縁までペニスを抜きかけた。すると彼女の膣はあわててそれを追いかけ、まえ以上に深くくわえ込み子宮の入り口を尖端にこすりつけようとするのだ。まるで、もう去らないと指切りをさせるように、幾多の襞で誘導しながら。

 

「ああ・・・」

ようやく彼女が本音の声をあげた。

「気持ちいい?」

俺の質問に彼女は黙っている。

「ほら、あの人、立ち止まってこっちを見てる」

一瞬、彼女は凍りついたように動きを止めた。ベランダの下の道を歩いていたOL風の女がこちらを見上げている。どうやら、満開の桜を眺めているようだが、たたみかけるように俺は続けた。

「俺たちを見てるのかな、桜を見てるのかな?俺たちを見ててほしい?」
「嫌、部屋に入りましょう」
「あの人も、こんないやらしいことするのかな。きっとしないよね。おまえだけだ」
「やめて」
「あ、いま、すごく濡れた」
「うそよ」
「まだ見てるよ。もっと見せつけてやろうか」
「ねえ、部屋に戻ろう」
「私を見てって言ってごらん、もっと気持ち良くしてあげるから」
「ふざけないで」

俺は、スカートの後ろから前に手を回すと、かわいそうなくらい勃起した彼女のクリトリスをつまんだ。

「ああっ」

小さく叫び声をあげると、彼女は耐えられないように腰を落としかけたが、俺はそのまま悪戯を続けた。つまんだクリトリスを軽くひねり、ペニスを思いきり深く挿入しながら手の中で転がす。彼女はもう立ち止まった女のことなど忘れたように快感に没頭しはじめたので、いったん愛撫をやめ、ペニスの位 置を浅くしてからもういちど俺は言った。

「私を見てって、あの人に言ってごらん」
「・・・私を・・・見て・・・」

今度は、彼女は聞き取れないくらいのかすれた声だが、素直に俺にしたがったので、ふたたび子宮の入り口を亀頭で叩きながら、クリトリスをこねまわした。

「ああ、・・・ああ、見て、私を見て」

女は立ち去ったが、彼女は人が変わったように同じことを繰り返した。

「おまえはいやらしいな、もっといやらしくして、みんなに見てもらおうね」
「見て・・・見て・・・ああっ」
「・・・このつながってるとこ、みんなに見てもらえるといいね」
「つながってるところ・・・見せたい、あっいきそう」
「ほら、いけよ」
「ああ、いく、見て、見てっ、いくっ・・・」

胎内は大きく収縮して、痙攣に耐えるために彼女はベランダの手すりにしがみついた。何度も何度も押し寄せる波の中で、俺は夢中で腰を振って、彼女の奥深くに果 てた。

「やーらーしー」

照れ隠しにふざけて彼女の頭を小突くと、彼女も軽いひじ鉄で応戦した。

「あーあー。すごいよ、これ」

ベランダの床には、彼女のショーツに吸収しきれなかった分の愛液が飛び散り、それを見ているうちにも、今度は膣内を逆流してきた俺の精液がしたたった。彼女は恥ずかしさに顔を赤らめ、何も言わずに俺の袖をつかんだ。甘い白粉のような桜の香りの風が吹いたかと思うと、床に残った淫乱の痕跡に、白い花びらが散った。

明日から、ここに立つたびに俺は今夜のことを思い出して勃起するだろう。いまは彼女の肩を抱いて、ふたりで黙って床にはりついた桜の花びらを眺めていた。

 



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