おっさんはゆきずりの情事には強いよ





「おっさん、一泊いくらだ?」

凛々の明星、のメンバーは全員クタクタになって、もつれこむように宿屋に入った。
受付でユーリが料金を支払い、
全員がぶつぶつ言ったり、慰めあったりしながら渡された鍵の部屋へ入っていく。
…ふと、そこでレイヴンは奇妙な視線を感じて振り返る。
肉体的な疲労は相当のものなはずなのに、それでも感じ取れる、意志の強い視線。
丁度自分たちが宿泊する隣の部屋から身体を半分出した、少女と女、どっちともつかぬ曖昧な外見の女性が、
レイヴンのことをじっ、と見つめていたものだから、レイヴンは疲労困憊の身体でムリヤリ笑顔を作って見せた。
するとそのラフな格好の女性は、口許に指を当てて、媚びるような視線でレイヴンに視線を返してくる。
それから、ひとさし指でつ、とレイヴンのことを一直線に差してから、ニコッと笑って自分の部屋へ入っていった。

「…?どうしたのよ、にやついて気持ち悪い…」
「ん?あー、なんでもナイナイ。ああ、老体に鞭打つような仕打ちだったわー。早くぐっすり眠りたい…」

リタが怪訝そうな顔を一瞬だけしたが、いつもの調子で大袈裟にリアクションしてみせると、
すぐに関心は失せたようで、もともと疲れている連中なものだから、部屋に入るなりベッドにどさりと倒れこむ。

レイヴンの疲労も他のメンバーと同じくらいだ。身体が睡眠、休息を求めている。

…だが、きっと部屋の外では自分を待っている者がいる。

そう考えると眠気はちびりっとも訪れず、代わりにあの自分をつうと差してきた指先に舌を絡めてみたい欲望が膨れ上がり、
全員がそれぞれまばらな寝息を立て始めた頃、静かにベッドから起き上がった。

「…おっさん?」
「おゥ、青年」

気配は完全に消していたつもりなのに、真横のベッドで横になっていた優美な長髪の青年はレイヴンの動きを敏感に悟る。

「どうした?」
「あ?んー、ちょっとオシッコ…」
「…ふーん…」

一拍子置いての「ふーん」には、「他の連中に知られないようにしろよ」という含みがあった。



「抜け目ないんだから、怖いわ…」

部屋を静かに出てそうつぶやく。
そして部屋を出て抜き足で隣の部屋のドアに近付くと、レイヴンの予想はどんぴしゃりだ。
わずかに開いたドアの隙間から、白くてしなやかで柔らかそうな指がにゅっと伸びていた。
なんとも言えない気持ちで頬のにやつきを抑えながら、その中指をキュッと握ると、
たちまちドアが大きく開いて、指はその主に引き寄せられた。
指につられる形でその部屋に入り込むと、ドアを後ろ手に静かに閉めた。

「…言葉はイラナイって、こんな感じなのかしらね」

女、であった。見た目は少女らしいのに、声には躑躅の蜜のような甘ったるいねばりがある。
部屋の灯りはちょうどその成熟一歩手前の身体を妖しく映すように仄かに明るい。

「あなたの顔、見て、もうこれしか思い浮かばなかった」

誰かがしかけたかのようにレイヴンの身体は流暢に動く。
彼女の手を引いてベッドに腰掛け、その膝にとすんとその身を乗せる。

「イヤ?」

女が首をくっと思いっきり後ろにやって、レイヴンの顔を覗き込む形で問う。
控えめな質問のわりには手つきは大胆にレイヴンの不精ひげのある顎を我が物のように撫でていて、
この質問に「いいや」と答えさせることも余興なのだとレイヴンは理解する。

「いいや、可愛いお嬢さん…いや、妖艶なサッキュヴァスかな?」
って、呼んで」

おどけてみせてもするりとかわす。そして自分の名前を囁いた唇で、レイヴンの首筋にキスをする。
レイヴンはその柔らかな唇にぞくりと背徳の情欲を掻き立てられて、
膝の上のの身体をくるりと自分のほうに向かせた。
は突っかかりもなく、全て受け入れているように柔軟に受ける。
対面するかたちになるとレイヴンの腰に腕を回して、濡れた瞳でレイヴンの顔を覗き込む。
その瞳が求めるまま、レイヴンは薄く色づく唇にキスをする。
くちゅ、と、彼女の声のように蜜の粘りの音を立てて、唇の隙間から覗いた舌が絡まりあう。

「ん…おじさまのキス、うっとりする…」

そう囁くその声に、レイヴンも耳朶を甘く痺れさせる。

「おじさま、ね…」
「いやだった?」
「名前を聞いてくれないの?」
「やぁだ、乙女みたいなこと言うのね…おじさまの名前は、知らなくても大丈夫…」
ちゃんは名乗ってくれたじゃない」
「おじさまは…名前に意味ないでしょう…私には」

少しだけ哀愁を漂わせて見せたのもまた余興か。
そしてレイヴンの出で立ちを見抜いたかのように言う言葉も本心か。

考えれば余計にわからなくなる。
ただとろける躑躅の蜜はひたすら甘美で、花弁を捲って吸い付きたくなる。

キスと同時にの身体を抱き上げて、ベッドにゆっくり横たわらせる。
薄い灯りに照らされた睫毛は艶っぽく長くて、潤んだ瞳ともども、レイヴンを魅了してやまない。
そして彼女の身体もレイヴンを求めて火照っている、と、胸に軽く手を置いたときにレイヴンは感じ取る。
鼓動が揃わない。そわそわと期待に、疼きに揺れている。
もう一度、ピンク色のつやを持つ唇にキスを落とす。
そのままの両手を握って、負担にならないように身体を跨ぐ。

「…あ、おじさまの瞳、すごく綺麗…」

唇を離して彼女と視線を交し合っていると、だんだん熱に浮かされてきたように顔が火照っていくがつぶやく。

「色んな感情が混じってて…でもすごく綺麗に澄んでる」
「…人を見た目で判断しちゃダメよ」
「でも…今は私で一杯…これは間違ってないよ」
「あらら」

ふふ、と色っぽい笑みを浮かべる彼女はやはり、情熱に揺られていた。
触れ合った手からその温度が伝わってきて、レイヴンの身体にも熱を振り撒いてく。

「確かに今はちゃんで一杯かもねぇ、こんなやらしい子前にして他の感情もあったもんじゃないわ」

照れ隠しなのかもしれない。自分でもわからない台詞をつぶやきながら、
彼女の服のシャツのボタンをぷつ、と一個外す。
随分襟ぐりの開いた白いシャツで、かすかに胸の間が覗いている。
その肌ももちろん真っ白だ。
もう一個ボタンを外すと、つん、と胸が弾かれたように揺れた。
先端がごく薄く色づいた形のよいそれは、すぐにでも口に含んで吸い付きたい衝動をくすぐるが、
それを抑えて、レイヴンは最後のボタンをぷつりと外した。
同時にが上半身だけ起こして、後ろ手にシャツを脱いでベッドの脇に放る。
そうすると後は黒いスパッツだけになってしまったは、寝転がってレイヴンの着物の裾を掴んだ。

「おじさまも脱いで」

言われて、レイヴンは一瞬ぴたりと止まる。
頭の中でどう対処すべきかという事柄についての考えがぴきりと固まってしまい、ヘンな間が空く。
一瞬でかいた嫌な汗を誤魔化すように、レイヴンはばっと羽織を脱いで、部屋の床に放る。

「…ん…それでいい」

この娘は目敏い。
なんとなくわかっていたから、服を脱ぐことで露呈する自分の秘密、なんてことも悟られているような気分になる。
ただ服を脱いでと言われて、そこで生まれた奇妙な沈黙を彼女が敏感に嗅ぎつけただけだとわかっていても、
一瞬嫌に跳ねた、心臓と呼んでいいのかいややはり呼ぶべきであろう機関が背中にどっと冷たい汗を流させる。

考えは一瞬だったけれども、レイヴンの思考が目先の自分から遠ざかったことを、は理解したらしい。
レイヴンの頬に手をやって、自分の唇まで顔を寄せる。
余計なことなど彼女は言わない。
レイヴンはふぅと息をついてから、の手をきゅっと握った。
それから、真っ白い首筋にちゅっと口付けた。

「あ…」

唇の間から伸ばした舌先でちろちろとなめらかな肌を滑っていくと、の身体がびくっとこわばって、両腕が胸の方へ降りてくる。
レイヴンはその両腕を握って、頭の方で組ませて鎖骨の窪みをゆっくり舐めた。

「あ…あ」

肩に、ちゅ、と愛情表現のような音をさせてキスを落としてから、脇の下につんと舌先をつける。

「あ、ひあぁっ!だ、だめ…!」

腕が下りて敏感な箇所を隠そうとするが、それをやはり制して、無垢で柔らかな脇の肌をちゅくちゅくついばむ。

「だめっ…だめ、いやぁあ…!お、おじさま…っ!」
「なーんか…妙な気分だわ…むりやりやっちゃってるみたい」

脇を舐められるたび抵抗して、かぶりをぶんぶん振るを見ていると、そんな言葉が出ていた。
そんな嗜好があるわけではない。
ただ、いや、だめ、と、その気もないのに言われて可愛らしく抵抗されていると、
それはそれでむらむらと欲求を煽られるものがある。
脇の下から、胸の先を通り越して、胸の裏側をそろりと舐めあげると、また可愛らしい悲鳴が上がった。

「や、む、胸の裏は…だめ…!」
「どーいう、「だめ」?」

ぞくぞくっと背筋を欲望が突き抜けていくのを感じながら、レイヴンは彼女に問う。

「やらないで、の、だめ?それとも…弱いから「だめ」なの?」
「あぅっ…」

態度は女なのに、こうして恥ずかしそうにうつむく表情は少女と表現するしかない、熟しきらない魅力の顔で、
はたっぷり逡巡して、小さく、弱いから、と口にした。

「可愛い」

舌の先でつるん、とその敏感な柔肌を弾いてから、の唇についばむようなキスを落とす。
あ、とびくりと震えた拍子に豊かな胸が揺れて、肌の張りのよさを強調する。

「やっぱり若い子は違うわ」
「ん…機会、ない?」
「んー、まあ色々とねぇ」
「そんなに好き者でもなさそうだもんね、おじさま」
「いや、結構好きよ?ちゃんみたいなコ」
「…おじさまならいくらでもめぐり合いはありそうなんだけどなぁ…ま、そっか」
「ん?」
「実は心の中で、誰かに操立ててるとか」

言われて、レイヴンは今度こそびしりと固まった。
顔に出すな、と表情筋に命令した時には既に遅く、レイヴンの顔は思い切り曇った。
おまけにの胸の先を弄くっていた手も止めてしまい、その様子は自分の下のにも影響を及ぼす。

「おじさ…あっ?!」

ぶるん、と頭を思い切り振って、それから言葉を発そうとしたの膝の裏に手を入れた。
両脚をぐいっと上げさせて、を頭のほうに押しやる。
の身体は意外と柔軟で、ぐいっと広げてもつらそうではなかった。

「脚、持ってて」
「は、恥ずかしい、このかっこ…あ?!」

脚を下ろそうとするの身体を手で押しやって、露わになった黒いスパッツ越しの秘部に触れた。

「んやっ…」

口ではいやと言うが、そんなは自分の脚をしっかり自分の腕で固定して、レイヴンに下腹部を晒している。
そして少し触れただけで、その脚の一番先端の親指がぴぃんと攣るのが見えた。

「…ああ…わたし…」

レイヴンがスパッツをぐいっと脱がせていく間に、そんなことも恍惚とした表情でつぶやく。
下から現れた白い下着は、濡れて薄い茂みを透かしていた。
レイヴンはその湿った下着も上へ押しやって、の膝あたりにやったところで、ふと思いついて手を止める。
太腿を押さえていたの手をつんと叩いて、脚を開放していいぞ、という合図を送る。

「…ちゃん、交代」
「え…?」

身体をのそりと起こしたが疑問を訴えるより早く、今度はレイヴンがベッドに横になる。
はこくんと頷いて、そんなレイヴンのベルトに手をかけたが、レイヴンはそれを制止する。

「そーじゃなくて。おっさんの顔の上に来てちょうだい?」
「え…え?!」

自分の顔の横で、人さし指をちょいちょいっと動かすと、はたちまち真っ赤になった。
初めはのペースだったのに、気が付くとレイヴンが主導権を握っている。
そしてはそんな行為には慣れていないのか、面白いくらいに戸惑う。

「え…ま、またぐの…?おじさまの顔を…?」
「そそ。ちゃんのカワイイとこがド・アップで見える距離に来て頂戴♪」
「で、でも…」

淫蕩な様子だった彼女も、こうして狼狽する様子は少女そのものだ。
それをからかってやるのは、嗜虐的な趣味があるわけでもないレイヴンでも愉しかった。

「じゃ、じゃあ…ま、またぐまで、おじさま目をつぶってて…」
「了解〜」

そう言って、にグッと親指を立ててみせる。
それから気楽にレイヴンは目蓋を閉じたが、それでももぞりと動く肌の音や温度は面白いくらいに伝わってくる。
視界を遮られているから、尚更なのかもしれない。
が自分の頭の両脇に膝を立てて、静かに止まったのがわかる。

「も、もう、開いて…いいよ…」

待ってました、といわんばかりにパッと両目を見開くと、がびくっと震えた。
レイヴンの目の前には密かに濡れたの陰部があり、かなり上の方から少しだけの顔が見える。
その顔は、行為の最初の頃の余裕などまるで感じられないほど赤くなっていた。
ひゅう、と口笛交じりにそこに息を吹きかけてやれば、の身体はおかしなくらいびくんと震えた。
そしてが脚を上げてレイヴンから秘部を遠ざけようとするのを腰を掴んで押さえて、
いきなりそこに吸い付いた。

「んぁっ!あ、ああっ!」

溢れる蜜はレイヴンのイメージに違わぬ、躑躅の蜜を思わせる濃密な香りを振り撒いている。
そんなとろりとした液体が口腔に流れ込んでくるので、くんと飲み込むとまたそれはレイヴンの情欲を掻き立てる媚薬として作用する。
綺麗な色の包皮をめくって、小さく震える陰核にちゅぷりと吸い付けば、
は自分の胸のあたりを押さえて甲高い、叫び声のような喘ぎ声を上げる。

「お、おじさま…あ、あ、ああ…いや…す、吸わないで…!」

嫌と言われるとさらにしてやりたくなる。
のクリトリスを思いっきり、ちゅううっと音を立てて吸い上げると、
は高い声で絶叫したかと思えば、レイヴンの身体の上に、膝を折った体勢で仰向けに倒れこんでしまった。
その身体の下腹が、ひく、ひく、と何度か痙攣のように動いて、
それからゆっくり引いていって落ち着きを取り戻す。

ちゃん、平気?」
「…う…うん…」

口先だけは心配そうにレイヴンが声をかけると、はこくりと頷いてレイヴンの身体の上から退く。
そしてベッドの脇ぎりぎりにうつ伏せに横たわったので、レイヴンはその身体が落ちないように背中に手を回して、
自分も起き上がりながら華奢な身体を引き寄せる。

「あ…あぅん!」

レイヴンがうつ伏せでぐったりするの身体を指先でそわそわ撫でたものだから、はびくびくと震えた。
そしてその震えを治めるように枕を抱きしめたので、レイヴンはその背中をくいっと押して、臀部を下から押し上げた。

「あ…こ、このかっこうでするの…?」
「イヤ?」
「ん…ううん…いやじゃないよ…おじさま、早くきて…」

首をぎりぎりレイヴンの方に向けながら、犬のような格好にされたが濡れた瞳でつぶやく。
レイヴンは後ろ頭を少し掻きながら、頬のにやつきを抑えもせず、ズボンから滾る自身をゆっくり露出させる。
枕にぎゅっと顔を押し付けたを可愛いと思いながら、
その可愛い少女の中に自分のグロテスクな粘膜を挿入するということに軽い眩暈を覚えるほど興奮して、
その勢いに任せて膣口に自身をあてがった。

「ん…!」

びく、との身体がすこし身構えるのを感じたから、緊張が全身に渡る前にと、
レイヴンは自身を一気にの中に埋め込んだ。

「あ、あああああ…!」

いくらきちんとした宿屋の形を取っている建物だと言っても、街の小さな店だ。
壁が防音だとかそんな気の利いたことは期待できない。
となるとの声は隣の部屋、自分が身を預ける者たちに筒抜けかもしれぬと思ったレイヴンは、
片手でしっかりの臀部を押さえながら、もう片方の手でその口をぱっと塞いだ。

「ん、んんんっ…んんっ!」

漏れる鼻声も相当な音量で、がこれ以上ないくらい興奮していることを伝える。
まあさっきの声よりはましだろう…なんて考えて、レイヴンはその、しっかり女、の体つきをした臀部に自身を叩きつける。

「んーっ!んんん…!」
ちゃん、気持ちいい?」

猫撫で声で聞いてやると、は首を何度も縦に振った。
だだ漏れの愛液がぶちゅぶちゅと音を立てて抽送のたび弾けるのをたまらないスパイスだと思いながら、
レイヴンはその膣の締まりに歯を噛んだ。
複雑な花びらのように絡み合ったそれはレイヴンをきつく締め上げて、
中に欲しい欲しいと口よりも身体で懇願してくるのだ。

「んぅぁい…!ん、んぐううう…!」

必死で射精をこらえるレイヴンに駄目押しするように、 が絶頂を迎えた。
きゅんきゅんと震える膣はそのままレイヴンを食いちぎってしまいそうなほどで、
レイヴンは咄嗟に自身を引き抜いて、
思い切り強引にをこちらに振り向かせて開きっぱなしになったその唇に猛りを押し付ける。
すぐさま口は開いて、レイヴンの尖端から迸る白濁した欲望の果てを嫌がることなくくんくんと口の中に溜めていく。

は恍惚の笑みを浮かべてそれを嚥下して、
気絶するようにベッドに倒れこんだ。






「ふぁ〜あぁ…」

出発の朝になって、宿屋の前で大きなあくびをしたレイヴンを、カロルが不思議そうに見る。

「レイヴン、まだ寝足りないの?」
「ん?ん、いや、そんなことないけどね」
「でも、目、しょぼしょぼしてる」
「老化は目元に出やすいのよね〜」
「…老化、ねえ」

やりとりを見ていたユーリが、じとっとした目でレイヴンを見た。
レイヴンはそこでわざとらしく屈伸して、ふーっと息を吐いた。

「いやなんせ青年と同じベッドだからさぁ…疲れるのよね」
「妙な言いがかりつけんなよ…」
「どーせなら嬢ちゃんかジュディスちゃんと同じベッドが…あだっ」
「バカなこと言わないでよ」

リタが思い切り重たい本の角でレイヴンの頭を叩く。

そんなこんなで宿屋の前で固まっていた凛々の明星のメンバーの前を、
白いシャツにスパッツの少女が横切る。

少女は一瞬だけレイヴンを見て、一ミリほど微笑んだ。


レイヴンは頭を掻きつつ、その笑みに応える。
すぐさま、「気色悪いわよいきなり笑って」なんていう悪態をつかれたが。
自分の居場所はここだ、なんて柄にもない事を考えて、少女の残り香を薄く感じていた。


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