片手間でも愛されたい
「んんっ!ん…んんんー!んんっ!」
かなり苦しい。
普通にこの状態でいるだけでも苦しいと思うけれども、
それでいてあえぎ声なんて上げようとしているものだから、もう窒息しそうなくらい苦しい。
でも、これがなんとかスパナさんが譲歩してくれた最大限の自由なので、私に文句など浮かびはしなかった。
ただ、思い切り声を出したい、呼吸をしたいという身体の欲求が大きくなっているだけ。
現在の私の状況を説明すると、スパナさんのツナギに身を包み(おそろいの上にスパナさんのものを身にまとっている。かなり嬉しい)
しかしその袖は身体の前で固結びされて、腕は出せなくなっていた。
さらにはそのツナギは、スパナさんが直々にハサミを入れて下半身、男の人ならアレがくる部分に穴が開けられている。
その上口には五重でガムテープが貼られている。これが苦しい理由。
で、そんな状態で私は床に転がっていた。
スパナさんは作業台の上でなにやら私にはさっぱりわからないものをかちゃかちゃといじっていて、
その視線は私になど関心はなく、ひたすらモニターとその道具を見ている。
スパナさんが唯一、私を相手にしてくれているのは、右足だけである。
寝転がった私の脚の間に、スパナさんの右足が割入っている。
スパナさんは器用に、手と目は作業台の上に集中させて、
右足の親指で、私のツナギの穴が開けられた部分から露出する秘部を刺激していた。
「作業の邪魔しないならかまってやってもいい」
と言われて、イチもニもなく私はうなずいた。
そして「うるさいから」とガムテープで口をふさがれ、「身動き取れると邪魔するから」と拘束着のようになったツナギ、という、
前記したカッコウにさせられたかと思うと、
立ち尽くした私の前にハサミを持ったスパナさんがしゃがみ込み、股間の部分をジョキン。
ちなみにツナギを着せられるときに下着も脱ぐように言われて全裸にされていたので、そこに穴を開けられるともう陰部が丸見えだった。
「そこ寝て」と指で指示されたところに移動して、身体を倒すと、
スパナさんは作業台の前に座ってしまい。
放置プレイなんて聞いてないですよ!と文句を言おうとしたら、いきなり秘部に甘い刺激が走って、
私は鼻声のなかでもとびきり大きな声を上げてしまった。
「んん…んッ!」
スパナさんの足指が、私のクリトリスをぐりぐり押しつぶす。
その乱暴で適当な愛撫に、限りなく私は感じてしまう。
さらには、スパナさんの私の方をちっとも見やしない態度に、二律背反な状況を感じて余計に快楽に溺れてしまう。
気持ちいい。
「んんんんっ!んーッッ!」
限界が近付いていた。
愛撫はかなり乱雑なものだけども、この背徳感がそれをなにより甘美なものへと変えてしまう。
私は思い切り高められて、絶頂が近付いていた。
「んッ…んッんッ…んー!」
ガタン。
あ、やばい、となにより私が一番最初に察知した。
そして身体の熱も一気に引いていき、逆にどんどん冷水を注がれているように冷たくなっていく。
思わずうるっと、涙が瞳に浮かんだ。
昂ぶるあまりに、唯一身動きがとれる部位だった、私の足の先は、スパナさんの作業台を思い切り蹴り上げてしまったのである。
やばい、怒られる殺される、イッてしまうどころか逝ってしまうことになるなんて。
「……」
スパナさんは無言で、しばしバラバラに散らばった作業台の上のパーツを眺めたあと、くいっと私の方を見た。
「…」
口をふさがれていなくても、恐怖で言葉が出なかったであろう。
その冷たい視線は、私のことをジッと見ていた。
「弁解」
「…んんーんん……」
泣きながら、言われた言葉に応えようと「ごめんなさい」と鼻声で伝える。
「……」
スパナさんは私の方へ歩み寄ってきて、それからしゃがみこんだかと思うと、
私の顔をがっと掴んだ。
ああ殺されますごめんなさい。
そう覚悟したのに、スパナさんが私の口許のガムテープをはがし始めたものだから、「ん?」なんて声が出てしまった。
べり、べり、べり、と、五回そんな音がして、私の口は自由になった。
「げほっ…」
「空気ってオイシイよね」
「え、あ…あの」
感情の篭もらない声で、そんな無難なことを言われたのが逆に怖くて、たじろいだ。
「ミス。がずり下がって来れないように身体を床に固定しとくべきだった」
「え…?」
スパナさんが、私の片脚をぐいっと上げた。
それから手袋に包まれた指で、露出したびしょびしょの秘部に触れた。
「あ…!」
「…どうせもうあっちはダメだし」
あっち、とは、おそらく作業台の上のこまこまとした道具のことだろう。
私は改めて、「ごめんなさい」とつぶやいた。
スパナさんに殺意がないことがなんとなくわかって、ちょっとほっとしている自分がいた。
…ちょっとどころじゃないか。
「あれどこいったっけ、あれ」
スパナさんは軽くかぶりを振って、なにか諦めたようにふぅと息をついてから、
立ち上がって、部屋中に散乱したものを物色し始める。
何を探しているのか。
私はとりあえず一命をとりとめた安堵感でそこまで思考が回らなかった。
「ああ、あった」
カチャ、と音をさせながら、スパナさんが立ち上がる。
くるっとこちらを向いたスパナさんの手には、重たげな金属と、白いチューブが握られていた。
…それを目にして、私はドキッと胸が高鳴った。
その道具が、どう使われるか知っている。
というか実際使われたことがある。
自分がお世話になるのは当分先、子供でも生む時期になったらだろうと思っていたのを、
ついこのあいだスパナさんによって開拓されたばかりである。
「あ、の…」
「ホラ、足広げる」
言われて、ドクンドクンと脈打つ自分の鼓動に固唾をのみながら、脚を開く。
一度その道具…クスコと、滑走剤を床に置いて、スパナさんが私の脚を掴む。
膝の裏をぐっと押して、私にいわゆる「まんぐりがえし」の格好を取らせると、
片手の手袋を外して、私の性器に触れた。
「あッ…!」
「まぁもうヒーメンは伸びきってるか…」
「ひ、ひーめん…?」
「…ん?処女膜って言った方がわかりやすい?」
何語だろう。
スパナさんは、たびたびどこの国の言葉だか外来語なんだか医学用語だかわからない言葉で、
下世話なことを恥ずかしがりもせず淡々と口にしたりする。
「でもこれに限っては日本語が好きじゃないな。正確には膜じゃないし」
言いながら、スパナさんは白いチューブのふたをひねって開ける。
それからぶにゅ、と出した透明なゼリーを、クスコの表面に塗りたくっていく。
「…あ…ああ…」
その器具が自分に挿入されることを考えて、身体が疼いた。
滑走剤を塗り終えたスパナさんは、クスコを慣れた手つきで構えて、その先端を私の膣の入り口にあてがった。
「入れるよ」
あ、とすら言う暇を与えてくれず、ひんやりとした金属が、私の身体の中に勢いよく入り込んできた。
「つ、つめた…あっ!」
私は大声を上げてしまった。
クスコが開いて、私の秘部を奥まで丸見えの状態にしてしまったからだ。
当然膣壁が圧迫されて、男性器を挿入されたときのような圧迫感がある。
スパナさんはそんな私にかまわず、クスコを開いた状態で固定して、それから銀の細長いスパチュラを、
無表情なまま私のなかにゆっくり入れていった。
「あ…あ…」
「ここ、どうだ?」
「ひぁっ?!」
スパチュラの先で、膣の奥の一部をつつかれて、電気が走ったような快感が私を襲った。
「あ、や、な、なん…は、ひぃっ!」
ビク、と、私の身体がのけぞる。
スパナさんはその様子を見て、無表情なことが多いその顔にしてはとてもめずらしい、微笑みととれる顔色を作った。
「ポルチオ。わかる?」
「わ、わかん…ひゃぁッ!」
「子宮腟部。入り口。刺激し続ければ立派な性感帯になる」
「あッ、そ、それはわかっ…あぁッ!」
つんつんつん、と、まるで医者が患部を調べているような手つきで、その「ポルチオ」をつつかれて、
私はあられもない声をあげるよりなかった。
刺激し続ければ、なんていわれても、もうすでに敏感になっていてどうしようもなく、何度も身体をびくびくと大袈裟に跳ねさせた。
「感度良好…と」
私のそんな様子を見て、マイペースにスパナさんがつぶやく。
それからスパチュラを引き抜いて、同時にクスコを留めている金属を外し、それを私の膣からずるっと抜き取った。
スパナさんはまたふうとためいきをついて、それから自分のツナギの襟元のボタンに手をかけた。
その動作を見て、私はまた、自分の身体のなかを流れている血がどくんどくんと脈打つのを感じた。
ゆっくりツナギを脱いでいくその様子が、とても色っぽく見える。
この人のこんな、なんともいえない陰湿な色気にやられてしまったのだよな、とぼんやり思う。
スパナさんはツナギのボタンをすべて外し終えると、その間から、少し血液の集まった肉茎を取り出した。
私は無言でむくりと上体を起こすと、膝立ちのスパナさんに這って近付き、
その自身に顔を寄せた。
すごく、どきどきしてる。
自分でそれを自覚して、なんとなく早い自分の鼓動の気持ちよさに酔って動かずにいると、
スパナさんが私の頭をくいっと押した。
鼻の先がスパナさんにぺちりとくっつく。
ちらりと上目遣いになってスパナさんの顔を見ると、私の方をじっと見ていて、
それで私は了解して、スパナさんのものにちゅっと口付けた。
それからつるんとした先っぽを口腔にくわえ込み、飴を舐めるように舌でそれをねぶる。
「…っ」
スパナさんがびくりとしたのがわかってうれしくなる。
まだ両腕は自由にならないから、口先だけでびくびく動くそれを捕えなければならなくて、
それが難しいのだけれども、そのもどかしさがたまらなく気持ちいい。
先っぽの窪みが開いて、しょっぱい滲液が滲み出てくる。
それをちゅううう、と吸うと、スパナさんはいきなり私の顔を肉茎から遠ざけた。
それでもなお、夢中になった私がスパナさんに舌をぐぐっと伸ばすと、
頭を掴まれて、そのまま床に倒された。
「あぅん…」
私が物足りず、欲しがりな視線でスパナさんを見ると、
スパナさんは1、2秒じっと私を見たかと思うと、私の脚を掴んで思い切り広げた。
「スパナさん…!」
待ちきれなくなった私が、かすれた声でそう懇願すると、膣の入り口に熱があてがわれた。
「あぁ…!」
そしてそれがゆっくり、ほんとにゆっくり、まるでじっくり堪能するかのように私の膣壁を押し広げて入ってくる。
「あ…ああ…!」
うわごとのような声が出てしまう。
待ち焦がれた感覚が私を支配している。
スパナさんは私の脚をかかえこむと、それをしっかり持って、また私をひっくり返らせると、
上向きになった私の臀部に思い切り、ずんと腰を落とした。
「んぁああ…!」
ずん、ずん、ずん、と、奥を何度も突いてくる。
「…さっき教えたところ、当たってる?」
「あッ、は、はい…ぁあ…私の、あそこの奥、こつんこつんって…ッ!」
「気持ちいい?」
言葉のかわりに、こくんこくんと何度も頷いた。
どろどろに、もう濁った愛液で濡れそぼった私のそこは、スパナさんの肉茎をなんの苦もなく受け入れて、
そのリズミカルな刺激に心酔していた。
「膣での快感には訓練がいるのが普通だけど…もう平気ってことかな」
スパナさんがゆっくり笑いながらそう言ったので、
私はその笑顔を目にしてうれしくなったのと、初めてスパナさんに処女を奪われたときのことを思いだして、
ゾクゾクと身体が震えてしまった。
連動して秘部もきゅうっと締まる。
「っ…ちょっと…」
スパナさんが動きを止める。
「ん…やぁ…ぁん…んん…ッ!」
刺激が止んだことに耐えられず、私が物欲しげに腰を揺らすと、その腰もぐっと押さえつけられた。
「ちょっと、待ってって…」
「い、やです…待てない…!」
なんだか焦った様子のスパナさんは、私のその言葉に、ふ、と息をついた。
「久しぶりのせいかな…ちょっと早く出るかも」
「ぁぁふぅ…ッ!だ、出していいです、よッ!…わ、私のおなかの中にぃ」
快楽がせき止められていることに理性が吹っ飛んで、私は恥ずかしげもなくそんなことを口にしていた。
スパナさんはそんな台詞を聞いて、チラと私を見てから、またゆっくり動き出した。
「んぁっ…!あ、あぁぃ…ぃ、ぅンッ!」
抑制されていた分、与えられたときの嬉しさも生半可なものではなくて。
私はひたすら喘いでいた。
「あ…ッ…あッ、いや、裏返っちゃう…中がッ…!」
スパナさんの先端が私の膣の中の上の壁をずりずり擦るので、
ありえないとはわかっていても、そんな言葉まで出てきてしまう。
「大丈夫…スキーン腺のとこ、擦ってるだけだから」
「す、すき…?」
またそんなわけのわからないことを言われて、私は疑問を訴える声を出すが、
それよりかその刺激によって得る快楽のほうが大きい。
「ンン…ッ…あ、あ、あ…!」
スパナさんが、んん、と咳払いのようなものをする。
それを見て、ああもうすぐだ…と本能が察知する。
いつもの。
出す前の、スパナさんの照れ隠しのようなもの。
ずぽ、ずぽ、と、湿った音がする中で、私はどんどん自分が昂ぶっていくのを感じている。
「っは…出すよ…」
「あ…ぁああ…出して…出してください…いっぱ、あ、あ、あああぁあッ!」
グ、と一際強く内壁をえぐられて、私は言葉の途中で達した。
直後に暖かい液体が身体の中に流れ込んでくるのを感じて、
私は心から満足しながら、全身の力を抜いた。
「こ、こうれすか」
「そうそう」
行為の後、身体を自由にしてもらった私は、なぜかスパナさんの前で棒つきキャンディーを一生懸命舐めていた。
「さっきウチの舐めたときみたいな舌使いで」という指定つきである。
いちご味の飴は甘くておいしいのであるが、形が独特すぎてうまく舐められない。
「その…なんていうか…スパナさんのを舐めてるときは夢中だから…改めてしろって言われてもわからないっていうか…」
「いや、でもなんとなくは再現できるだろ?」
「はぁ…」
「ちゃんと見とかないと対策が立てられない」
対策…?
それが私がスパナさんの作業を邪魔したことを根に持たれての嫌がらせだと気付いたのは、
次々渡されるキャンディーの舐めすぎで舌が割れた頃だった。