活字のハルマゲドン
……一度、二人大きな息を吐いてことを終えてから。
金さんは私の身体を撫でることも、上に多い被さって荒い息を整えることもなく。
ベッドの脇に置いておいた煙草に手を伸ばし、すぐさま火をつけてケムリを肺いっぱいに吸い込み始めた。
別に受動喫煙がどうのは気にしないが、
金さんの煙草は匂いが強い。思わず顔をしかめてしまう。
「…それ、嫌われるよ」
「ん?」
「やらしーことしたあと、すぐ煙草吸うの」
わざとらしく作った不機嫌な顔でそう言って、金さんが人差し指と中指にはさんでいる煙草を指さす。
「ふーん。おまえは嫌いか?」
「……え?」
一瞬ポカンとした私に、金さんは笑ってふーっとケムリを吹き付ける。
「やちょ、や、やめ、やめっ」
「おらどうなんだ、嫌いか?俺のタバコ」
「…………」
なんだか。
なんだか……なんだか。
こう、うまく言葉にできないんだけども。
「俺がタバコ吸えんなぁオメーの前くらいだよ」
「…………」
「イメージ悪いじゃねえか、少年漫画のヒーローが喫煙とか」
「…………あ」
そこでようやく気がついた。
そして一度理解してしまうと、今の今までこう、なんというか…どうにも。
ゆでたまごがうまく剥けなかったときの薄皮みたいな、
非常になんだかなんだか…なモノに包まれていた違和感も、すべて合致がいく。
「あざといんだよてめぇっ!」
「んがッ?!」
余裕をぶっこいて二本目に手を伸ばしていたその背中を、思い切り蹴りあげた。
「あーわかったわ、合致がいった!あんたあざといのよ!チチくさいのよ!」
「おい……?」
「完全無欠のヒーローだけど彼女の前だけでは気を抜いちゃう?人には見せられない情けない一面?」
「てめ……」
「ちちくっさ!くっさ!そんなあざといのは「りぼん」とか「ちゃお」でやればいいじゃないの!」
「お、おい」
金さん…いや。
私の大切な何かに「とってかわった」ヒーローは、最初こそタジロいだが。
「…ははん」
すぐに様子を察したのか、不敵な笑みで私を見つめる。
「お前さんアレか…洗脳の適応外にいるんだな」
……が、彼は気づかない。
彼のその台詞こそ、世界をどんどん崩壊させていく呪文だ。
もはや私は戸惑う必要もない。
悪夢から逃れるには、世界を破壊するよりも自己を消滅させたほうが早い。
この男の今のせりふで「おすみつき」となったのだ。
自制も必要ない。
「だいたいなにここ?!ジェットバスにオーロラライト、室内ウェットサウナつき浴室?!ナメてんの?!カビ生えかけの煎餅布団で十分でしょうが!」
「いや…テメェが感付こうが関係ねえや。どうだ、いっそ貧乏パーマはやめてこの俺」
「お前先に浴びてこいよ……じゃないでしょうが!先に入らせて、こっちが油断しきった隙に全裸で乱入してくるのが私の彼氏でしょーが!」
「聞けって、そんな女心のわからねぇ下衆は捨」
「いやがる私をローション風呂に沈めて、泣こうが叫ぼうが全身ぬるぬる触ってくるのが私の大好きな人でしょーが!」
「……お」
「お湯ですぐ流せるから顔にかけていい?ってへーらへら言ってくるのが!そこでイヤって言っても押さえつけてほっぺたにゴシゴシしてぶっかけてくるのが銀さんでしょーが!」
「…………お前……」
「あげくこっちがヘバるまでお風呂に浸けて、出ようとしたら捕まえてシャワーをアソコに当ててくるのよっ!」
「………………」
「それでしゃがんだカッコでおしっこ見せろとか言ってくるのよっ!いやがっても絶対許してくれないの、じゃあ出すまでいじるわ〜とかニヤニヤ笑ってるのよ!」
「……」
「それがさかたぎんときでしょうが!」
「……――!!」
「その程度の汚れ役も業も背負わずにねえ!お風呂から上がったら白いバスローブ着て「お前…汗引いてねぇな…」とかフフンって笑ったあげく!」
「いや、あの」
「なんかよくわかんないけどバラの花びらが散ってピンクのもやもや〜が出てきて!」
「その、もういいって」
「極めつけに「実は完璧じゃない俺をお前だけに見せる」アピールぅぅ!きもちわるうっ!」
「あ、あのもうやめて?やめてって、もういいから」
「あんたどうせ股間のたまの使い方も熟知してないんでしょ?!なんでキ×タマが二つついてるか知ってる?それは片方ずつ女にしゃぶらせるためよっ!」
「お前…」
「ほ〜るぁぁ、銀サンのアメ玉旨いかぁ?くらい言ってみろっての、ホラ言えっ、言うのよ今すぐ!」
「アメ玉?」
「銀サンのカルピスうまい?くらい笑って言えないで主人公を名乗らないでっ!「げぷっ、これカルピスじゃないよ青汁だよ…」って返す私の頭をぐりぐり出来ないで私の彼氏ヅラしないでっ!」
「……お前、苦労してるんだな……」
さかたきんときは、がくんとうなだれた。
そして……。
世界がぱっくり割れた。
元々にじそーさくの産物である上に、
世界観を著しく損なう発言ばかり行った私に対するペナルティだ。
「上澄みだけの「きれいなヒーロー」は、世界が求めても私は求めてませんからねっ!」
底なしの闇に落ちていく中で、それでも叫ぶ。
「あーはやく帰ってきて銀さーん!」
しばしお預けだ。
きっと世界が再構築されるまで、私は除外された存在だろう。
また拍子が整って、みんなが目を覚ませば。
あの男が私を呼んでくれるはずだから、別に怖くない。
母性愛と言うよりも
かぶき町には、占い師を装った悪質な物売りなんかも多い。無視するに限る。
…と決めていたのだが。
昼食を食った帰りに二人で歩いている最中に、自分を手招きした老婆には心引かれてしまった。
正確には、老婆が手にしていた札の文字に。
「彼女の頭の中を覗いてみませんか」
ちょっとやめてよ、やだよなに、と混乱するあいつを押さえ込み、婆さんの店らしい、紫の布で包まれた幕家のような暗がりに入り込んだ。
同時にフワッと、花と酒を混ぜたような甘い匂いが鼻を突いて……。
「…ん……?!」
目の前に、襖があった。
考えるまでもなく襖を開ければ布団が敷いてあるのだろう。
「こりゃあ…」
夢の中だ。
どうやら自分は寝ているらしい。
それを象徴するようにポンッと、夢特有の脈絡のなさで、襖の隙間をのぞき込む人影が突然二つ湧いて出た。
「って、おいい?!」
見覚えのある背中。
赤い縁のメガネをかけたくのいちと、肌に傷を走らせ、キセル片手にカタカタ震える百華の頭。
「ちょっとツッキー押さないでってば、興奮するのはわかるけど」
「興奮などしとらんわ!た、ただ…あ、ああの、あの、その」
俺の存在は認識されていないらしいので、そいつらに混ざって無遠慮に部屋の奥を覗き込んだ。
「んもー銀たんらめぇだよお、ママのおっぱいはおあずけー」
「えー」
「だって銀たんはエッチに吸うんだもん、エッチなのはだめなのぉ」
「ん〜……」
確かに布団は敷いてあった。
その上に寝ているのは俺とあいつで間違いないが。
「ちょッちょなにアレ?!聞いてないわよ、銀さんって筋金入りのドSでしょう?!」
「わ、わっちに振るなっ、あ、のような…その……」
見ている二人がオタオタするのも当たり前だ。
というか俺もオタオタしそうだった。なにこれ。
「ん……やだ、銀たん、あそこ湿ってるぅ」
「……」
そう言って、おもむろに甚平の股間を白い手がまさぐった。
対する俺はゴロンゴロンしながらされるがままだ。
「へへ…いやらしいんだ、これ、おもらしじゃないでしょ」
「……」
「あ、困ったときだけだんまりだ。ほんとの赤ちゃんのフリするんだ?」
「…うるせえ」
「見せられないよね、銀さんはおっぱいちゅぱちゅぱする赤ちゃんプレイが大好きなヒトだなんて、周りには言えないよねー」
「黙れっての……」
「んやんっ、ちょ、だから、いやらしく吸っちゃだめぇ……!」
ゾワッとした。鳥肌もんだ。
「ええええそうだったの?!そうだったのォォ?!」
「銀時があんな趣味だったとは…なるほどいくら勇ましい姿を見せてもナビかぬわけだ……」
この観客二匹はつまり、願望だろう。
たびたびそれっぽいことを言っていた。
「私と銀さんがいちゃいちゃしてるところを見せつけたい」と。
……が、いくらなんでもこれはあんまりだろう。
「オイ…いい加減にしろよ」
初めてあいつの想像する「俺」と、俺本体の気が合った。
そーだそーだいい加減にしろ。さすがにこれは度が過ぎる。
「そ、そうだよね、ごめんね…」
しおらしくなって、俺を魔の膝枕から解放したと思ったら。
「銀さん、本当は自分がママ役やりたいんだもんね?」
「えええええええええええええ?!」
今度は俺とデバ亀二人が重なる。
「わかってんじゃねーか、ホラ横んなりな」
「えへへ……銀さんのおっぱいもどんどん育ってきたね…」
「オメーがやらしく吸うからだ」
「ふふ、でも最初のときより感じやすくなってるよね、銀さんの乳首……」
「てめ…んッ……!」
「あはは、んー……」
「っ、は……おお……」
「っふ…う、銀さんがおっぱい吸われて感じちゃうなんて、誰も想像しないよね?」
「っ、う」
「ね…服越しにツンッてするだけで、腰が震えちゃうなんて、誰も知らないよね…?」
「は…知らねえよ、メガネくのいちもキセルありんすも」
「ふふ!そうだよねー!銀さんといやらしいことできるのは私だけだもんねー!ねーえぇえ!」
いい加減にしろよ、と叫んだところで一気に目が覚めた。
「……銀さん」
いつの間にか目を覚ましたらしいあいつとバーさんが、そろって俺を見下ろしていた。
見下ろす?
慌てて身を揺すったが、いつの間にか縄で縛り上げられていた。
「占い師さんがね、男女ビョードーだって、今から銀さんの頭の中も見せてくれるって」
「え、えちょ、ちょおま」
抵抗むなしく、また甘くもピリピリする匂いが鼻を突いた……。
男子禁制お悩み小町
名前:薄幸小町 net.cafeから
からくり初心者なのでうまく書き込めているか不安ですが初投稿です。
実は、私は今交際している男性がいるのですが、
どうやら最近大きい事件に巻き込まれている様子なのです。
警察に相談に行こうかと思っていたのですが、
どうやら警察も絡んでの騒動らしいんです。
私は彼のことが大好きで、
イヤなところも含めて大好き、なので、
昔のいざこざや彼が私に隠していることなどは暴きたくもありません。
ですが、けがをして帰ってくるのは本当に悲しいんです。
心配なんです。
私はどうすればいいんでしょうか……。
名前:太陽の番人小町 yoshiwarawebから
そもそもぬしは本当にその男のことが好きなのか?
理解ある女のふりをして自分が役に立てぬ血生臭い事件を見ないふりしているだけではないのか?
身体を鍛えろ。
わっちならその男の背中を護り、絶対に怪我などさせぬ。
名前:銀色の侍小町 ninja.jpから
ちょっと、横レス悪いけど。
太陽の番人小町さん、あなた便乗して自分の恋愛観語りたいだけじゃないの?
名前:太陽の番人小町 yoshiwarawebから
違う!もののたとえじゃ。言葉のあやじゃ。
わっちは好いておる男などおらぬ
名前:銀色の侍小町 ninja.jpから
はいはい照れまくり顔真っ赤レス乙〜。
アンタみたいなのってあれでしょ?
好きな男には恥ずかしくて、酔ったフリしないと絡めないんでしょ?
名前:太陽の番人小町 yoshiwarawebから
おのれ表へ出ろ!
あとその名前はやめろ、不愉快じゃ
名前:銀色の侍小町 ninja.jpから
なにあなた?
私あなたみたいな人リアルで知ってるけど、
もう見てて痛々しくてしょうがないわよ。
ちなみにこの一連の書き込みを見た人は
「坂田銀時はさっちゃんと主従関係にある」と拡散書き込みしてください!
この事実を広めることがねっとの安全につながります!
名前:薄幸小町 net.cafeから
えっ?!あなたいったい……?
名前:宇宙海賊嫁小町 harusame.comから
お二人が喧嘩してますが、あの。
確かに心配かとは思いますが、彼が何も言ってこないのなら放置したほうがいいのでは。
きっと彼はそんな薄幸小町さんに癒されていますよ。
ちなみに私の主人はとても強いので安心しています。
名前:キャバレー小町 smile.webから
既婚女性は板違いじゃないんですか?
それにどうして突然「私の主人」なんて出てくるんです?
あなたの文章からは自己顕示欲が丸見え。
どうせその「主人」を自慢する女友達もいないんでしょ?
名前:宇宙海賊嫁小町 harusame.comから
違います。夫という意味ではなくご主人様です。
見栄を張り合うだけの女友達なんていらないです別に。
名前:キャバレー小町 smile.webから
えっ、何それ気持ちの悪い……。
女のプライドのかけらもないのかしら。
ちなみに私は、毎日女の園で凌ぎを削っています。
男にかまけるだけに生きてるなんて前時代的もいいところ。
名前:薄幸小町 net.cafeから
宇宙海賊嫁小町さん、ありがとう。
ちょっと元気が出ました。
キャバレー小町さん、責めないであげてください。
名前:ミニスカ小町 kiheitai.webから
アンタらなにやってんスか。
女も男も関係ないッスよ、敵は討つべし!
名前:宇宙海賊嫁小町 harusame.comから
>>ミニスカ小町
シミつきぱんつ
名前:ミニスカ小町 kiheitai.webから
?!
あんた何者スか?!
名前:宇宙海賊嫁小町 harusame.comから
>>ミニスカ小町
特定しました
名前:ミニスカ小町 kiheitai.webから
ふざけんなァ!
私の知り合いにスーパーハッカーいるからアンタも特定させてやるッス!
アンタの股ぐらに鉛玉ブチ込んでやるからな!!
名前:宇宙海賊嫁小町 harusame.comから
私のご主人様はガトリングガンの一斉射撃の弾を全部平手で受け止める人だから大丈夫です。
名前:ミニスカ小町 kiheitai.webから
なんスかそれ?!シュワちゃん?!
私の上司も知り合いも超強いから平気ッスよ!
アンタ地球大江戸知ってるッスか?
あそこの指名手配犯の桂とか、知り合いの坂田銀時とかより強いんスよ?!
名前:宇宙海賊嫁小町 harusame.comから
奇遇ですね
私のご主人様、最近地球の侍に執心らしいです。
お江戸の銀髪侍は俺が手ずから、って。
名前:薄幸小町 net.cafeから
どういうことですか?!
ミニスカ小町さんの知り合いと、宇宙海賊嫁小町さんのご主人様は銀さんをねらっているんですか?!
名前:ミニスカ小町 kiheitai.webから
アンタの彼氏って坂田銀時なんスか
名前:薄幸小町 net.cafeから
やめてください!
名前:宇宙海賊嫁小町 harusame.comから
薄幸小町さん落ち着いてください。
これからいいこと教えます。
名前の欄に「jastawai」と入力すると情報攪乱できます
名前:あんぱん小町 mobile.webから
↑だまされんなよ。
入力すると現在地が子細に割れちゃうから。
名前:宇宙海賊嫁小町 harusame.comから
せっかくチャンスだったのに……。
名前:ミニスカ小町 kiheitai.web
……ま、うちの組織の情報網を持ってすればあいつの居場所なんてすぐ特定できるからいいッスけど。
名前:薄幸小町 net.cafeから
みなさんありがとうございました。
どうやら彼の苦労は尽きず、
心配してもきりがないということだけはわかったので、
私はおうちに帰ってお酒のおつまみでも作ってようと思います……。
あさひるばん
……腕の中の娘が変わるわけではないのに、時間と感覚で第一に感じ取るものが異なる。
……朝の幸せ。
がりがりと、乾いた寝汗でべとつく肌を掻きながら板の間を踏む。
その音を聞きつけて、キッチンの前で鍋をかき回していたそいつが火を止めてこちらを振り向く。
今日はほうれん草のお味噌汁だよなんて笑う顔に無言で抱きつくと、まず最初に感じ取るのは体温だ。
身長差で、俺の首と鎖骨のあたりに髪の毛がくっついてきて、ふわりと温もりが舞い上がってくる。
ああ、幸せだなぁ俺ァ、なんてぼんやりした頭で考える。
……昼の幸せ。
ぶらぶら歩きつつ真横に目をやったときに、ちらりと下からこっちを伺う瞳と視線が絡み合う。
朝飯のときと違って、こっちもあっちもしっかりと服を着ている上に人の目もある。
それでもたまに堪えきれなくなって、抱きしめる。
小さい体の背中に手を回したときに、なんとなく、着物越しの下着のラインをまさぐってしまう。
笑うような、咎めるような向こうにこっちもなんだかふと、照れくささを掘り起こされて、青臭い幸せを噛みしめる。
「…んう……」
布団の中で抱きしめて、一番最初に俺の感覚にたどり着くのは匂いだ。
同じシャンプーを使っているのに、自分からは感じ取れない…どうとも形容できないあの、芳香よりも芳香な至上の匂いが、俺の鼻孔をつく。
「コラ」
「あ…ん、むっ…ん……」
そのいい匂いのかたまりが、俺の腕の中で落ち着きなくもぞもぞするものだから、押さえこんで唇を奪う。
自分に言い訳をしないでもそんなベタベタと暑苦しい行為が出来てしまう自分も、
その行為に異を唱えないこいつも、もう相当出来上がってるなぁ、とか、笑いを自分の胸の内だけに留めながら思う。
「はぁ…うふふ、私、これ好きだなぁ……」
「これ?」
「うん、今の…銀さんの、うりゃーっていう、えっと…キス」
「……」
無言で、抱きしめたままわしゃわしゃと髪の毛を撫でまわした。
くすぐったいのか、ただの照れ隠しなのかクスクス笑って、それでも続ける。
「たまーにやってくれる、ちゅってあの、なんか、あめりかのとれんでぃドラマみたいなのも好きだし」
「……」
「口のまわりべっとべとになっても、気にしないでしまくるキスも好きだけど……」
「…………」
「一番はね、今みたいなの…ギューって、うりうりって、銀さんがくちびる押し付けてくるみたいなの…ん?ちがう?
銀さんが、私のくちびるを、くちびるでプニプニしてるようなの……ん?かな?なんか、わかんないけど……それが一番好き」
「……ハァ」
夜の幸せ。
「あったけーし、肌やわっこいし、イイ匂いするし」
「わ……あ、ふむっ…ん……!」
「俺もこれが一番だ」
「…これ、って?」
「あん?」
「……今、銀さん私になにしたの?」
「…………」
「…あっはは、言ってみてよねえ、「キス」って、今ここで、キスーって!」
「……………」
格付けなんて無粋か。
すぐそう思い直してしまうのだから、まったく本当に自分もバカなんだなぁ。
夏祭りの夢
ふと買い物先でチラシを見て、頭の中にふわふわと想像が膨らんだ。
花火か。いいなあ。
少しは張り込んで可愛らしい、銀さんが見たらいきすぎだと笑うかもしれないくらい「オトメチック」な浴衣を着て、
帯も金魚のようにふるふると派手な色を結ぶのだ。
……髪飾りはわざとしない。
浴衣に不釣り合いに地味な私の頭を見て、きっと銀さんは呆れるだろう。
「てめえおしゃれすんなら上から下まで揃えろっつうの!」
そう言いつつもどうしようもないまま二人でヒトゴミの中に。
決してわざとではないが、人の波に負けてあちこちふらついてしまう私を銀さんは放っておかない。
しゃーねえなあ、と言って手を握ってくれるのだ。
打ち上げまで時間があるね、と言いながらひとまず露店の綿菓子で銀さんの機嫌を取り、
それからわざとらしく的屋さんの前で立ち止まって、そして「えっあ、なんでもないよ」とあっちを向く。
つられて銀さんは射的の景品の中にある、あまりにオモチャっぽい、けれども派手で可愛いかんざしを見つける。
「え、なに、お前あんなガキっぽいの欲しいの」
「違うよ、別に欲しくない」
「やっぱその地味な頭で歩くの恥ずかしいんだろ?アレつけてーんだろ?」
「違うってば!」
「おいおい意地張るなって」
「ほ、欲しくてもどうせあんなの取れないもん」
あえてサラッと言い去ることで、銀さんの闘争心に火が点く。
そこで私はむくれたまま、ちょっとお手洗い、なんてその場を離れる。
そして帰ってきたときには、まあどんな手を使ったかは置いておいて…。
銀さんは素っ気なく、私の頭にかんざしを挿してくれるという運び。
「わざわざとってくれたの?」
と聞けば、あれくらいちょれえちょれえ、と言うだろう。
「いらないって言ったのに」
と拗ねれば、逆に躍起になるだろう。お前銀サンがどれほど苦労したと思ってんの?!と。
最近気が付いたのだ!銀さんはああいうイベント事に弱い!
ベタすぎる、少女漫画にもないよ今時、というシチュエーションであればあるほど、
あのにくったらしい天パは私の思うまま!!
「えへへ……」
緩んでしまう頬をなんとかこらえて「万事屋銀ちゃん」に向かうと、
銀さんが電話を取りながらあくせくしていた。
「…ふう」
「お疲れ。お仕事?」
「おー。今度やる花火大会でな」
「……え?」
「迷子落し物本部の受付が今年はウチだっつうからさ」
途端に想像した夢はパチンとはじけて四散した。
「お前も来る?ラムネと焼きそばつくぞ」
「え…あの、ウン……」
「本部の浴衣が支給されっから汚れの心配もねーし」
「う、うん…て、手伝うよ……」
こんなものか、嗚呼。
銀さんマジクズかっけー
……突然やってきた銀さんの目的は、どうやら冷房の効いた空間、だけではないようだ。
室温はそこそこ、除湿モードで快適に保たれた部屋の布団の上で、銀さんが私の浴衣の帯をいじりまわしている。
「ちょっと…やだよ……」
「んー…風呂上がりの匂いだ」
「や、やめてってばぁ……!」
あからさまに脱がせようとはしてこない。
ただ、布越しに腰をぎゅっと抱きしめて、時たませわしなく、そして本当に「わざとらしく」、指が帯にかかりそうになっては離れる。
「あー…やっぱ俺、お前の匂い好きだわ……なんつうの?カンキツ系?」
「せ、せっけんはお花の匂いだよ?」
「あ?んじゃカンキツってなんだ」
「ミカンとか…レモンとか……」
「ふーん。じゃこれ石鹸じゃなくて、お前本体の匂いなんだな」
「ほ、本体って…ちょ、ちょっと……!」
銀さんの腰が、しっかりと…いや、布越しだけれども、それでもどうしたいのかがはっきりとわかる体勢でくっついてくる。
「や、だ、だめだって、ば……」
「なんで?」
「だって……その」
イヤじゃないのだぜんぜん、こうされること自体は。
……が、銀さんの真の目的は、私を籠絡することではない。
その先にある利益を見据えてのことなのだ。
ならばそれに従うのはシャクだし。
「なー、なんでダメなの?銀サンに教えてみ?」
「それは…ぎ、銀さん……が」
「俺が?」
「っ、あ、お、押しつけないでよ……!」
「なー、銀サンな、いつも思ってんだけどさ、お前はなんで楽しいこと嫌がんの?」
「楽しいって……だって……」
「ちっとばかし禁欲的すぎね?アレだろ、私はスキなことしちゃだめぇ、とかくだらねー悩み持ってんだろ」
「ち、違うよ…そんなこと思ってない……」
「んじゃなんで今ダメなの?」
「そ……それは、だって……んっ!」
銀さんの手が、すっと頬を撫でてくる。
そのまま指先がくるくると耳の穴を撫で、その感覚がぞわぞわと背中を粟立たせた。
「ひゃ、や、め……だめ……ぇ……」
「耳とかほんと柔らけーもんな、食いモンみてぇ」
「た、食べないでっ……はんっ?!」
はむ、と、銀さんの唇が私の耳朶を挟み、そのまま生ぬるい舌がぺろぺろと蠢いて……。
「い、いい、よ、いいよ、いいからぁ…してよ、して……」
「いいの?」
「してよぉ……っふ、くぅ……」
「やったらお前、銀サンの言いなりになっちゃうよ?いいの?」
そこで肯くしかできない私に、もとよりあらがう術などなかったのだ。
「いや、明日駅前新台入荷なんだわ。長谷川さんが最近駅前のメロン段ボールに住んでっからよ、並んどいてくれるっつうし〜」
へらへら笑いながら、銀さんが私のお財布からお札を抜いていくのも、くたくたの身体では止める気にもなれなかった……。
説教くさいアレ
秋雨と一緒に過ごしやすい気温も去り、本格的に冷え込む夜明けを迎えること数日。
朝起きるたびにそろそろ炬燵を出そうとか考えるのだが、昼間の日差しに暖まるとやっぱまだいいか、となる。
「……お?」
が、仕事から帰って和室に行くとデデンと。
畳には布が敷かれ、その上にはちょっと味が染みてきたなじみ深い四角形。
「おーおー気が利くじゃねーか!神楽か?」
部屋には自分以外いないことを知りつつでかい独り言をつぶやいて、さっそくコタツ布団に足を突っ込んだ。
「ウワアッ?!ッッァアアァ?!」
……瞬間に、足の裏にザリリ、と、異質な感触が走って飛び上がってしまった。
「なんっ……?!お、オイ?!」
布団をめくってからは違う意味で驚いた。
「おいっ……しっかりしろっておい!」
「う……うう、ぐ……」
コタツはしっかりスイッチが入っていて。
その中には胎児みたいに身体を丸め、グッタリうずくまるあんちきしょー。
「てめ身体あっつ!何時間入ってた?!」
「う……あ、銀さん……?」
……コップ一杯の水を飲み干すと、恥ずかしげにぶつぶつと。
「こ、コタツがあったらとりあえず入るでしょ」
「おう」
「そ、それで、中にね、私がいたらびっくりするかなって」
「いやビックリしたけども」
自分でコタツトラップをセットし、その中で俺を待ちかまえること数時間。
予想以上に冷える、と思ってスイッチを入れ、そのまま酸欠になるまで中で暖められ続けていたらしい。
……なにこれ。小学生でもしねーよ。
「苦しくなったら出てこいっての」
「……でも……もし、あーやっぱやーめたっ、て時に銀さんがちょうど帰ってきたら?くやしくない?」
汗でへばりついていた前髪を払って、今度は腰だけきちんとコタツに潜らせながら。
当然だよね、というふうにそんなことを言う。
「俺を驚かすことにメリットはあるのか?」
「え……ある」
「どんな」
「銀さんが驚いて、ばっかてめーくだらねーことすんな!って言う」
バシッ。
「いたっ!」
俺の声真似までしながらむくれた頭に、平手を一撃。
「怒られるってわかってんのにやるんじゃねーよ!」
「……うう」
そう言って、俺もぬくまりきったコタツの中に入る。
そのまま畳に肘をついて……そこで。
「あ?なにこれ」
「あっ、わかった?!」
コタツ布団は一緒なのに、床に敷かれた布が、前にしまったときと違う色合いだった。
「買った雑誌にね、パッチワークキルトの記事があったの」
「ぱっちわーくぅ?あ、これ?ツギハギハギレ布」
「ツギハギじゃな…いや、そうだけど…とにかくね、気に入った布を組み合わせて、大きな布にするの」
「ほー……」
言われて自分の身体の下まで見渡せば、こいつが好きそうな小ぶりな花柄の木綿が色違い、市松模様に組み合わせられていた。
それも一枚ヒラリ、ではない。中に薄く綿が入っている。
「いつの間に作ったんだよ」
「えっと……今年に入ってから。だった。ウン。去年じゃないよ始めたの」
「は?手縫いで?」
「う、うん。一角ずつ暇なときにだけやって」
「……」
ハギレと言ってもちょうど一角が広げた俺の手のひらくらい。
これを和室の半分以上の大きさに縫いつけ続けていたらしい。誰にも言わずシコシコ。
「か、かっこよくない?!こういうのサッと用意できるっていいよね?!」
「あーんと……」
「こうね、ササッ!って編み物したり、刺繍したりが出来る女の人っていいなーって……」
馬ッ鹿だな本当に。
「まあホラ、寝ろ」
「…………」
無言でうなずいて俺の隣に寝転がったが、
作文を親に見せる子供みたいな顔でこっちを見てくる。
「おまえこれ何枚も作れんの?」
「……」
「ササーッと。日がなこれだけやって過ごせっか?」
「……作れない。もうやだ疲れた」
うつむく。
「がんばったな」
「……本当にそう思う?」
「おー。ふかふかでいいんじゃねーの?さすがに敷物はすぐダメになるし」
そう言ってやるとようやく、こいつは安堵のため息を吐いた。
「もーちょい地に足つけろって」
「わ?!」
俺を前かがみにのぞき込んでくる身体に手を伸ばす。
「周期的にいいことやっとこー、ダメなことやっとこーって、変な計算すんなよ」
「でも……」
「どーせ背伸びしても続かねーって」
「うん……」
完全に見えない縛りに囚われているわけではないようなんだが。
「毎日の積み重ねが大事なんだよ、ホラホラ」
「えわあっ?!」
納得いかない、という様子の頬をつついてやる。
「こーやってホッペタスベスベなのも毎日の積み重ねだろ」
「……うん」
「朝起きて顔洗ってあれこれ塗ったくるわけだろ」
「うん……」
「寝る前もあれこれ塗ったくるわけだろ」
「そうだけど……」
「そういう毎日できてる事ってのがてめーを構成するモンなの。認められたいって気持ちでデカいことやっても満足なんてできねーの」
「……なんで?」
「てめーは敷き布褒めて欲しいのか?」
「……ちがう」
「ここまで頑張った自分を褒めてもらいてーんだろ」
「…………うん」
「でももうやりたくねーだろ」
「……銀さんが作れっていったら作る」
「おい」
変化球を返してきた頬を、ぐりぐり押し込んだ。
「もっと自分を信じろって」
「……」
説教臭すぎたか。
うつむく顔はどんどん曇っていく。
「よっ…こらせ」
「わあぁっ?!」
うつ伏せの尻の上に、コタツの中で自分の腰を重ねる。
「ちょ、重いっ……銀さんっ!」
「いーじゃんホラ、しらね?こたつ隠れっつってな、立派な四八手の」
「知らない、知らないっ!」
「でもこれダメな、このままけつ出したらこたつで焼けちまう、高さ足りねー」
「やめてよー!!人がシリアスに沈んでるときに!!」
「じゃあやめるわ」
「……えっ?」
まったく。
もう少し自分の魅力に気が付くべきだ。
考えてる事だいたい同じ
ふと訪れた部屋の片隅に、見慣れた…というか、一時は行動を共にすることを強要された四角形を見つけた。
「アイツも持ってたのかこれ……」
弁天道DSだ。
あいつが好みそうな白いカラーに、丁寧に裏にはきらきらしたシールで名前のアルファベットが貼ってあった。
「ゲーム機にシール貼るとか小学生かよ…んでブックオフに売り飛ばすときにうまく剥がれなくて泣くのにな」
そう思いつつ、中身が気になった。
手帳のようにぱかっと開いて、電源ボタンを押して左右の液晶に映ったものと。
『もぉー、ぎんときくんっ、どこに行ってたの?』
同時に聞こえてきた声に、驚きを隠せなかった。
『ひどいよ。私ずっと待ってたんだよ?電話にも出ないし、浮気とかしてないよね?』
「え……さ、鞘花ちゃんんん?!」
『ふんだ。そんなふうに名前呼んでもゆるしてあげないっ。浮気ものっ!』
画面に表示された、メガネの似合う清楚な顔立ち。
しっかりまとめられたポニーテールの黒髪は……。
ゴリラが育て、サド王子によって弄ばれたあの「御高井鞘花」だった。
「えっ?えっ、ナニ?アイツも愛チョリスやってんの?なんで鞘花ちゃん?」
『ぎんときくんってば、私の話聞いてる?もぉ〜!!』
「しかも何で彼氏の名前ぎんとき君なのォ?!」
なんとなくこう、いわく言い難い背徳心に駆られて周囲を見渡した。
が、あいつが帰ってくるそぶりはない。
「……あのォ、ごめ、ちょっと……その、自己紹介とか、してくんない?」
そう声をかけると、ムッツリ怒っていた鞘花の顔が変化した。
ふっとゆったり立つと、こっちを見てほほえむ。
『2年A組、御高井鞘花。由緒正しい家系の生まれで、剣道部所属』
「おぉ、ちゃんとやってくれんのか」
思わず猫背になり、DSを囲いながら前かがみになる。
『周りからは近寄り難いと思われているし、お家柄のひいきでしょ?と陰口を言われることもあるけど……。努力家なんですっ、こう見えても★』
「ほー」
自分で言うんじゃねえよ、という突っ込みはキリがないだろうからやめておく。
ウインクしてみせる様子はまぁ、かわいかった。
「ぶりっ子」は、板に付いていれば嫌いじゃない。
『今じゃばっちり、剣道部のエースなんでーすっ』
「へぇ、スゴいねーお前、細っこく見えんのに。飯食ってるか?」
『食べてますよーだ。ふんだ、心配されなくたってちゃんとしてます。体調管理も選手の仕事なんだから!』
「そりゃ悪かったな」
『わかればよろしい。うふふっ、ぎんとき君とお話できて、なんだかとってもうれしいよ』
「へえへえ、あんがとさん」
……声も違うし、相手はモニターから出てこないのだが。
なんだか、不思議な気分だった。
こう……どうしてか、アイツを相手にしてるような気分になる。
「アイツはアレか?ぎんとき君になってお前のこと調教して楽しんでるわけ?」
問いかけても返事が来るわけのないことだったが、
そう考えるとしっくりくるかもしれない。
「アレなの?女体は女にとってもエロスの源泉どうのって話?」
「マンガ美少年」に口説かれたいんじゃなくて、
「マンガ美少年に口説かれている美少女」になりたいっつうか。
『……うん』
「あ?なんだよ」
突然画面上の鞘花が頬を赤らめ、自分の肩をぎゅっと抱いた。
『普段は高嶺の花だけど……彼氏……ううん、ご主人様のぎんとき君の前でだけは、従順な……ドレイなのぉ』
「は?何言ってるのお前?」
『ぎんとき様……もう鞘花を一人にしないで。放置プレイはいちばんイヤ……どんなこともするから……』
「いやいやおい、おいちょっ、てめ何やってんの?!」
ポリゴン鞘花が自分の帯に手をかけ、着物をゆるゆると乱していく。
『クラスメイトの前では清純ぶってるけど、ぎんとき君に調教されきっちゃったカラダ……責任を取ってぇ』
そう言って襦袢まで脱ぎかけながら、鞘花はこちらをうるうるした瞳で見つめてくる。
……普段は文武両道で、家柄もよくて部活のエース、ねたまれることもしばしば。
けれど大好きなカレシの前では恥ずかしい姿を晒す超美少女。
……それは一見男の理想のようでいて……ほかならぬアイツのなりたい姿なのだろう。
「はぁ……」
なんだか突然わびしい気分になってしまい、パタンとゲーム機を閉じた。
「馬っ鹿だねェアイツはホンットに……っと!」
そうつぶやいたところで、いきなり電源を切ると次の起動で怒られる、ということを思い出した。
俺が勝手にいじくったのがバレてしまう。
「あーと……再起動っと」
『んもう!いきなり電源切るなんてひどいっ!お話の途中だったのに』
「あ、あーと、悪い、ゴメンネー」
ゲーム機の機嫌を伺う自分がどうにも滑稽だが、まぁ仕方ない。
『怒ったんだから。許してほしい……?』
「あーはいスンマセン、許して鞘花ちゃん」
『なら……』
画面にキスしてだの、大声で好きって言えだの。
ハマる姿は傍から見ると泣きたくなるが、やってみると変な気恥ずかしさはあれど、不思議と抵抗はない。
『なら……私をいっぱい気持ちよくしてください……!』
「はアァ?!」
『ほらぁ……タッチペンで私の感じるところをつついてぇ……ぎんとき君が開発したんだから、わかるでしょ?』
「えっちょ、てめエェ!!」
『あんっ、そうそこぉ〜、弱いのぉ〜!』
「お?ここか?こーか?!おらおらおら」
『いやんっ、ぎんときくんの手つきエッチ〜!』
「エッチじゃねーよテメーがわいせつなんだよ!寺子屋行ってるガキもやるんだろコレ?!」
『ひゃあん、そんな言葉責めもいいよぉっ』
「んだテメーなんでもいいんじゃねーか!このメスブタが!」
『やんやん、ぎんとき君だけぇ、ぎんとき君にされるならなんでもいいのぉ〜!』
「そーいうとこなんでソックリなんだよ?!どーいう育成したのアイツ?!」
「……銀さん、なにやってるの」
必死になってタッチペンで画面をつついていたものだから。
背後に「本物」がいることに気がつかなかった…………。