いきなり降り出した雨のことを、少し前はとても憎んでいた。
せっかくカズくんとデートだったのに、と。

…………なのに、カズくんの家のお風呂を借りることになってしまうと、むしろ雨に感謝すべきなんじゃ……という気持ちになってくる。

だって、彼氏のおうちのお風呂だ。
しかも社会人とかで一人暮らし、じゃなくて、家族と住んでるカズくんの…その家族の留守にこっそり借りてる。
ちょっと有り得ない、なかなかレアな状況じゃないかなあ……という、不謹慎な気持ちが大きくなって来た……。

もちろん最初は申し訳なさが勝っていて、タオルだけ貸してくれれば……と踏ん張っていたのだけれど。
肌に張り付く濡れた服は、予想以上に私の体温を奪っていった。
身体が震えるのを抑えられなくなってくると強がってもいられず、
に風邪なんか引かれたらオレ、死んでも死にきれねーよ!」
というカズくんの、オーバーながらも優しい心遣いに甘えることにしたのだ。



「カズくん、あの……ありがとう」
「おっ」

カズくんのものだというTシャツとハーフパンツを借りて、高尾家のリビングに顔を出す。

「ちゃんとあったまれた?」
「うん…あ、ありがとう……」

カズくんは、私がお風呂でシャワーを借りている間に着替えをすませたらしい。
私の服をイスの背もたれにかけて、乾かしてくれている最中だった。

「ありがとう、それ、服…シャワーも……あと、シャツもズボンも…いろいろ借りちゃったね」
「や、気にすんなって。それサイズ平気?」
「うん、ちょうどいい……」

言いながらわずかに、ずれかけた襟ぐりを手で押さえる。
……当たり前だけれど、カズくんの服は私には大きかった。
もちっと背ぇのびねーかな、とカズくんはいつも笑うが、平均よりもずっと、身体はがっしりしている。

「それに、なんだか…カズくんの服だって思うと……ちょっと恥ずかしっ…あ、で、でも嬉しくて…!」

……カズくんがあちこちブカブカなシャツを押さえる私の手を目ざとく見つけそうだと焦って、誤魔化すように笑う。

「…………」
「あっ、え、へ、変な意味じゃあ!」
「……照れんね、そう言われっと……」

……赤くなってうつむくカズくんの顔を見て、私もワンテンポ遅れて真っ赤になった。

「ううっ…なんかすごく恥ずかしいこと言っちゃってる、私……」
「恥ずかしくねーよっ……、つ、っ……」

タオルを肩にかけて私に近付いたカズくんが、フッと後ずさって…そして、ついっと顔を横に向けて……。

「っっ……えっきしっ!」
「わっ」
「…ゴメ、くしゃみ……」
「う、ううん…カズくんもシャワー浴びなよ、冷えてるでしょ?」
「や、平気、着替えれば……っ、えきしっ!!」
「ああっ、ほら……!」

自分は着替えがいくつもあるし髪も短いから、と私にシャワーを勧めてくれたけど。
やっぱりカズくんだって冷えているのだ。

「……そーみてー。ゴメン、ちょっと入ってくるわ…」

頷くと、カズくんは鼻を小さくすすった。

「あ、部屋寒かったらコレで暖房つけていーから。あと、ノド乾いたらそこ……あ、コップこれ使って」
「ありがとう、カズくん」

エアコンのリモコン、麦茶のポット、陶器製のコップ……と順々に指さして、もう一度ゴメンと言ってからカズくんは脱衣所に向かった。

「………………」

少ししてくぐもったシャワーの音が聞こえてくると、ふう、と一息ついてみる。
……カズくんの家にお邪魔するのは初めてじゃないけど、いわゆる家族の間であるリビングに、こんなに長時間いたのは初めてだ。

「……妹さんがいるんだっけ」

見回した部屋の中に、ふと少女っぽい趣味のものを見つけてつぶやいてみる。

「どんな子なのかな……」

高尾家の女の子。
お母さんとは一度、ちょっとだけ挨拶したことがある。
明るくて優しい、理想のお母さんっていう人だ。
カズくんを鑑みて、それからお母さんを思い浮かべると、なかなかハイスペックな女の子……いや。

「女の子は、男親の方に似るんだっけ……?」

メンデルの法則がどうとか。

「じゃあカズくんがお母さん似で……お父さん、どんな人なんだろ……」

そこまで考えて、どうして私はこんなフワフワしたことばかり思い浮かべているのだろう、と我に返る。

「…………だって」

身につけたブカブカの服をつまんでみる。
……緊張してるし、恐縮もしてる。
でもそれ以上にうれしいし、ドキドキしてる。
ようは浮き足立ってるのだ。

「はぁ……カズくん……」
ーー!!」
「うわあっ?!わっ、わ……」

私のそんな思考は、お風呂の方から聞こえてきたカズくんの声で打ち切られた。
……気づくとシャワーの音は途切れていた。

「は…はぁーい!」
「ゴメン、ちょっといいー?!」
「う、うん……!」

妙に跳ねる心臓をどうにか押さえながら、脱衣所の前に立つ。

「どっ……どうしたのー?」
「おー!ゴメン、オレ自分の着替え出しとくの忘れちまって」
「あっ……」
「ちょっと、一枚オレの部屋から取ってきてくんない?Tシャツならどれでもいーから!」
「わ、わかった!待ってて……!」

ドギマギしながら早足で、何度か入れてもらったことのあるカズくんの部屋に入る。
一瞬視線が泳いだが、目当てのものはすぐに見つかった。
ベッドの上に、畳まれた部屋着がいくつか置いてあったのだ。
それを抱えて、今度は脱衣所の前まで早足。

「カズくん……入るよー?」
「おー!」

……脱衣所の扉を開けると……覚悟はしていたはずなのに。
「あっ…あ、あああの、み、緑のやつ、取って来ちゃったんだけど……!」
「おお、さんきゅー!そこ置いといてー」
「わ、わかった……!!」

折り畳まれたバスタオルのそばにシャツを置いて、そそくさと扉を閉める。

……覚悟はしてた、はず、なのに。

「…っ…はぁあ〜……!」

くもりガラスごしに、なにも身につけてないカズくんが見えたので……もう、とてつもなく恥ずかしい気分になった。

「だって…だってなんか……もう…!」

シャワーとか着替えとか、そういう…プライベートな部分をのぞき見てしまった罪悪感も重なる。
照れくささと、大好きな男の子の裸を見る気分の高揚が、私を落ち着かせてくれない。

……そわそわしたままリビングを右往左往しているうちに、再びシャワーの音が止む。
いくつかの物音を経て、それから。

「ふー…ゴメン、うっかりしてたわ」
「あっ……ううん、全然」

……さっき私が持っていったシャツに着替えたカズくんが、髪の毛をごしごし拭きながら現れる。

そのままカズくんは二人分のコップにお茶を注いで、私の服が早く乾くように暖房の風向きを変えてくれた。
その気遣いのすべてがとてもありがたいものなのに、さっきの光景を頭から振り払うことができずに、私はなぜかジッと下を向いたままだった。

「どしたの、
「ああっ…あ、えっと……なんか……」
「ん?」
「なんだか…こういうの、ちょっとスゴイよねって、考えちゃって……」

背徳的もいいとこなのだ。

「カズくんのお風呂とか、着替えとか…そういうの、お泊まりとかしないと見られないと思ってたし……」
「…………」
「ち、違うの!お泊まりって…そういう意味じゃなくて……こういう家庭的……あれ違う…あっ、生活感漂うことを見るのって……」
「……………………」
「な、なんだかスゴイことだなー!って思っちゃって!あはっ…ご、ごめん私またなんか変なこと言ってる!!」
「……や」

言いながら顔がポカポカ熱くなるのがわかって自分の手で目元を覆おうとしたのに。

「なんだ。もドキドキしてた?」

……カズくんが私の手を握って、硬直させてしまう。

「ドキドキするよ……!こんなの、初めてだし……」
「アハハ、オレも。や、なんか、しょーもないじゃん?雨降ってお互い風邪引きそーで…不可抗力で……」

私の動きを封じたのとは反対の手で、カズくんが反濡れの髪をわざとらしく掻く。

「そーゆータイミングなのに…ラッキーとか思ってっと、あさましいヤツだなーとか軽蔑されそーで」
「し、しないよ軽蔑なんか!」

……そうやって互いの心中を打ち明けていくと。
私たちは揃いも揃ってこの状況を嬉しいと思い、ついでに言うと互いに欲情しているのだとわかっていく。

「だってさー!なんか、がオレの服着てるのとか見たら、ミョーに……」
「わ、私だって…なんか、カズくんがお風呂入ってるとこなんて見ちゃったし……!」

そう言ってばっと手を突き出すと、カズくんが私を抱き留めた。

「……あんがと。すげー、嬉しい……オレ、のそーゆーとこ含めて、全部好き……」
「わ…私も好きだよ…カズくんのこと…………恥ずかしい……」

カズくんの胸板に顔を埋めながらつぶやくと、笑い声の振動が伝わった。



そのままカズくんの部屋に入って、二人でベッドになだれ込んで……ふと。

「……あ…カズくん……もう、こんなに……?」
「あ……バレた?」

今日は薄手の部屋着だから、というのもあるだろうけど。

「まださわってないのに……」
「触ってなくても大きくなんの」

……ハーフパンツの布地を押し上げて、私の太股に触れるカズくんの下腹部を、そっとなぞる。

「お……っ、へへ、くすぐってー」

私に覆い被さったカズくんが、照れくさそうに微笑む。
なんだかその仕草がもっと見たくなって、もう一度ズボン越しに、カズくんの熱をさらさら撫でてみる。

「……っ……う」
「ね、ねぇ…カズくん……」
「っん……?」
「こ、これ……ちょっと、私…その…えっと…えっと……ちょっと、して……みたい…かも……」

……そんな私の申し出に、カズくんは一瞬虚を突かれた様子を見せたけれど。

「ヘヘ……じゃ、お願いしてもいい?」
「うん…うん、上手にできるか…わかんないけど……」

頬を真っ赤にして、うなずいてくれた。



「こ、こうやって…じっくり見ると、不思議……」
「そー……?」

ベッドの縁に腰掛けたカズくんの足の間に、床に座った私が入り込む。
下だけ脱いで、くいっと上を向いたカズくんの「それ」を、まじまじ見つめる。

「コレ、結構恥ずかしーな…なんか品定めされてるってか……」
「品定めなんて……ううん…これを……」
「あ……!」

おそるおそる、指先で幹の部分をつかむ。
いつの間にか私の指は冷たくなっていて、カズくんの熱さにちょっと驚くくらいだった。

「つ…つめたい……?」
「や…つめてーけど……ヤじゃないって…言うか」
「そ、そお……?」

その言葉を受けて、ぎゅ、と指に力を込める。
かちかちに堅いのに、しっかり触れるとそれでも皮膚で、粘膜だと言うことがわかる。
すべすべした肌の感触が、じんわり馴染んでいくのだ。

「あの…口で…あの……ちょっと、いい……?」
「え……むしろ…いーの?」
「う…うん、ちょっと、してみたい……」

言っている最中は恥ずかしさで死にそうだったのに、言葉を終えた瞬間、カズくんがびくっと震えたので驚く。

「あ……これ、嬉しいんだ……?」
「あー…そりゃ……期待するって……」

手で触れているだけなのに……今の言葉で、もうカズくんは、私の口で愛撫されることを想像して、気持ちよくなっている。

「い、いく…よ?んっ……!」
「あ……っ…あ、ちょ……ああ…!!」

カズくんの頬にキスするのと同じように、先端の方に唇を寄せる。
口唇で感じる粘膜の熱に驚きながらも、好奇心混じりに舌を出してみると、チュプ……という音が立ってしまった。

「やだ…なんか、今変な音しちゃった……」
「ヘ…ンじゃ…ねーと思うけど……」
「うう……あの、これ…恥ずかしいね……んっ……!」

唾液で湿った舌と、熱くなっているけれど、なめらかに乾いたカズくんの肉茎が触れると…私の舌が張り付く音がしてしまう。

「んっ…ふ、ぅ…んんっ……!!」
「あ……!ちょ、…それ……っ」

一瞬咎められているのかと思ったけれど、カズくんの表情を見やると、切ない疼きを持て余しているふうだったので…よかったイヤじゃないんだ、と安心する。
唇でキスを繰り返し、ちょっとずつ位置を変えながら舌で表面を撫でていく。
ちゅぷちゅぷ、と、さっきも立った恥ずかしい音が続く。
けれどそれに対する羞恥よりも、どんどん快楽に酔っていくカズくんの顔をもっと見たい気持ちの方が強い。

「ふあっ…ん、か…カズくん…私の口だけ、湿ってるから…変な音、いっぱい出ちゃう……んっ、んっ……!」
「あ…く、つっ…あ……変な音じゃねーから……」
「うん…ンンンッ……そ、それは、わかるんだけど…あの……」

もっと、もっと気持ちよくなってほしい。
そんな欲が後から後からわき起こって、恥知らずな言葉をこぼさせる。

「ね…カズくんも……湿ってるの出して…この…んっ…あの…先っぽから……!」
「……つ、反則っしょ…んーなおねだり……」

カズくんは何かを堪えるように小さく笑って、ふと私の手を握る。

「ここ……」
「んっ……?」
「このへん、ちょっと持って…」

言われたとおり、熱くなっている肉茎の付け根をきゅっと持つ。
手で支えなくてもしっかり上を向いているけれど……押さえてみると、口許に寄せやすくなった。

「それで……ちょっと、吸って…」
「吸う……あ、先っぽのところ…?」
「……あー、やっべなんだコレ、恥ずかしっ…!」

問い返すと、カズくんは笑いながら自分の目元を覆ってしまった。
……それは暗に、私の問いかけが間違ってないことの証明でもあるようで……。

「……うまくできるか、わかんないけど……んっ…む……!」
「あ゛っ…や、あ……う……!!」

肉茎を押さえ、ちょっとだけ下を向くように引っ張って、その先っぽ…さっきはキスしていたところを、チュッと吸い上げる。

「んむうっ……ん、んんぅ……!」

上下の唇をペタリとくっつけて吸いながら、ほんのちょっと舌を動かして……口の中でくすぐるみたいに。

「あ……や、あ……いい、……いい、すげぇ……」
「んっ……はむっ……!」

カズくんの声が上擦った瞬間、口腔にしょっぱい味が広がる。

舌で撫でつけていた先っぽの穴から、ねっとりした液体が滲み始めた。

「あっ……出てきた……ん…カズくんの……!」
「うあ…!ちょ、、やばっ……!」

夢中になって、そのまま舌先を尖らせて粘液をすくう。

「んっ…んっ……んっ……!!!」

ちゅく、ちゅく、ちゅく……と、私が舌を動かすたび、カズくんの粘液が口の中に入ってくる音が立つ。

「ふあぁ……これ…んっ、吸っても…吸っても、出てきて……んんっ……!」

何度吸い上げても、先端のくぼみからは粘液が溢れてくる。

「いい……、すげえ…ちょっと…よすぎ……」
「そう…?いい、これ…気持ちいい……?」

カズくんが声を抑えるようにして、コクコクとうなずく。
それを見ると、我慢できないくらい声を上げてほしい、という気持ちが疼く。

「もっと…もっとしてあげるから……んっ、ん……!」
「あっ……ん…っ……ダメ、だって……!」

カズくんの、不思議に耳を揺さぶる響きのある声。
蜜の粘りみたいだ、といつもは思うその声が、今日は切なく掠れながら私の名前を呼ぶ。

それが嬉しくて、もっとしてあげたくなって……もっとその掠れ声で、私の耳を気持ちよくしてほしくなる。

「んっ、んっ……あぁ……むっ!!」
「くっ……あ、ちょ…ソレ…、あぁ……!!」

一度離した唇を、今度は大きく開けて先端に寄せる。
そのまま、先っぽの反り返った部分より、ちょっと前…くらいは、一気に口の中におさめてしまう。

「はあ゛っ…く……う゛ぅ……口…平気……?」
「……んっ!!」

全身を震わせて、潤んだ瞳で私を見つめるカズくんに頷いてみせる。
絶対歯を当てないように気をつけながら、舌を使って、口腔の中で先っぽを撫で回す。

「んっ、む、んっ…んぐぅ…むっ…んぅぅ……っ!!」
「うっ…く、……ちょ、気持ちよすぎて……あぁ……!」

ぐぢゅぐぢゅれろれろ、と、下品に動き回る舌と一緒に恥ずかしい音が漏れる。
さっきとは違う、湿った粘膜が絡み合う音。

「ハァ…ハァ…んむぅっ…く、はぐっ、かじゅ、く…んぅっ……!!」

何かに突き動かされるみたいに、懸命にカズくんを愛撫する。

「はあ……あ゛っ…………っ、う……ぅ……!」

カズくんの上げる吐息が耳朶に触れる度、座り込んだ私の下着の中が濡れていく。
いつのまにか自分でもわかるくらいドロドロで、下着を伝って内腿までぬるぬるしている。

「はむぅっ…ん、かじゅくん…あぁふ……よくなってぇ……!」

そうやって自分が追いつめられていることを自覚するほど、もっと、カズくんを自分以上に追いつめたいと必死になる。

…ダメ……ダメだって、あ……!」
「ん……ふ……っ!!」

ここまでせっぱ詰まったカズくんの声なんて初めて聞く。

もっと私の愛撫で気持ちよくしてあげたい気持ちも、だんだんと陶酔に飲まれていきそうだ。
どうにか心を引き締めながら、カズくんにしがみつく。

「んっ……カズくん、もっとよくなれそう……?このまま…あの…い、いけ、そう……?」
「う……そー言われると…答えるのが難しんだけど……」
「よ……よくない?い、いけなさそ……?」
「そうじゃなくて……」

カズくんは居心地悪そうに視線をさまよわせ……そして数秒の逡巡の後に、私を見た。

「少しは……がよくなるとこも、見たい」
「あ……!も、もう……!!」

優しいのにどこかちょっと意地悪な光のある目を向けられる。
私がカズくんを攻め立てていたはずなのに、最初から最後まで、まるでカズくんの思い通りにいじめられていたような気分にもなってくる。

「……わ、わかった……その…あぁう……あの……!!」

溶けそうになる頭で必死に考えを巡らせ、床に落とした足の間を、わずかに開く。
それから……カズくんの膝らへんに置きっぱなしにしていた片手を、ゆっくり自分の下腹に寄せる。

「私…その……このまま…する、から……」
「……マジ?」
「ま、まじ。するっ……しながら、するから…あの、だから……ねぇ……」

……断片的なことしか言えないのに、カズくんはしっかり意味を悟ってくれたみたいだった。

「じゃ…見せて、のするとこ」
「……うぅっ…カズくん…意地悪……んっ」

結局、私がやりこめられた形になってしまった。
変ないじけをぶつけるように、もう一度カズくんに唇を押しつけた。

「あ……うっ……!」
「んぅ…ん、んっ、んっ……!!」

さっきと同じように、片手で口許に引き寄せて、唇と舌で舐め回す。
そして、そればかりに気を取られないように……もう片方の手で、自分の秘処をハーフパンツ越しに撫でつける。

「ああ…!あ、ふ……うぅ……ん…!」
「は…………今、粘っこい音した……も、よくなってんじゃん……」
「ふえっ?!そ、そんな音…してないよっ……!」

嘘だ。濡れた下着と指先が触れたとき、恥ずかしい音がしたのは自分でもわかっていた。

「こっちの……ん…こっちの、音だもん……!」
「ホントに……?っつ、あ……あ、それダメッ…!!」

負け惜しみを口にしながら舌先を動かして、大げさな音を立てる。
……そうやってごまかしみたいなことを繰り返しているうちに、ふとカズくんが大きく震える場所を見つけた。

「んっ…ふ、かじゅくん…むっ…ここ、いい……?」
「っあ、やべ…モゴモゴすんの反則……ッ」
「い…痛い……?」

問いかけながらも、痛いんじゃなくて気持ちいいんだ、と理解している。

先端に唇をつけながら、口腔の中の舌で肉茎の裏のほう……ぷくっと筋張ったところをなぞると、カズくんは全身を震わせる。

「んうぅっ…ここ、気持ち……いい?」
「……気持ちいい。そこ、続けてほしい」
「……もお……!!」

……カズくんが反抗の心を捨て、懇願するようになってしまったのを悟って……私はもっと悔しい気持ちに包まれる。
最後の最後で、私がちょっと無理矢理気味にカズくんを気持ちよくするのは、おあずけされてしまった。

「ずるい…かじゅくん、んっ…ふ、じゅるい……っ!」
「だって…がすっげー、かわいいから…もー我慢とか無理だわ……」
「ほんなことばっかり言って…んっ、ん……んっ……!」

口では怒ったようにしているけれど、内心のがっかりは失せつつあった。
私を可愛いと言って、髪を撫でてくれるカズくんの声と手にとろけている。

「んっ…んっ、んうぅっ…かじゅく…んぅっ…わ、たし……んむぅっ……!」

口唇ではさみこんだ先っぽを、ぐじゅぐじゅ言わせながら舌で叩く。
無意識のうちに、自分の秘処をまさぐる手つきも強くなっていく。
服の上からでもわかるくらいに尖った肉芽を、引っ掻くように刺激する。

「んうぅっ…あ、んぶぅっ…あぁ…かじゅ、きゅ…ん……!」
「あ゛っ……やべえ…可愛い…、ソレ……超やらしー……」
「言わないれへぇ……んっ、んっ、んっ……んぅうっ……!」

カズくんの声と、秘処をまさぐる自分の手と、舌先に触れる粘膜。
全部が私の意識を高いところに持っていこうとして、切ない震えを起こさせる。

「ひゃひいっ…カズくっ…んっ、はぁ、わたし…んっく、気持ち…い…んっ、いいっ、のぉ……!」
「ああっ…わかる、、すっげーいい顔してる…ん…いいよ……」

カズくんも、私の愛撫で高揚してくれている。
一際気持ちのいいところを舐めたときだけだった身の震えが、ずっと続いている。

「かじゅきゅ…いっしょ、いっしょに…いぃっ…んっ、ぐ…んううぅっ……!!」
「ああ、一緒……オレも一緒がいい、…イクとき、イクって言って……」

普段なら恥ずかしくて倒れそうな要求に、今は素直に頷く。
この昂りに任せてしまえば何だって出来そうだった。


「んっ…んっ…ふ、くふぅっ…あ、ああっ…カズくん…わ、わたし…い、く……いく……!」
「……っ、つ…はは、マジ、可愛い……あ…っ!」

カズくんが頷いたのを見て……もう一度、最後の一押しのつもりでカズくんを吸い上げる。

「んぐっ……く、む……!」
「あ……イク、や、イク……っ……!!」

カズくんが、吠えるみたいに切ない声を上げる。
同時に私も、身体の奥からこみ上げる熱に震え上がった。

「ああっ…あああっ…い、く…いくぅっ……!!」
「あ……っ、あ……!」

直後にたまらず、カズくんから口を離してしまった。
その瞬間に先っぽから迸った熱が、私の首筋に降りかかって……声を上げる寸前に、今度はTシャツの胸元を湿らせる。

「はあぁっ…か、ずくん…カズくん……」
「っ……う、ゴメ……でも……」

くすぶる熱気から解放されて床にヘたり込む私に、カズくんが潤んだ瞳を向ける。

「すげー……やらしかった」
「ほぁ…ああっ……は、恥ずかしっ……!」

そう言われて、冷静になりかけていた心が一気にたたき起こされる。

「あ…あんな…ああっ、あ、これ……ど、どうしよ…?!」

なんだかムキになっちゃって、と言い訳しようとして……カズくんから借りた服が、べったり湿っていることを思い出す。
……Tシャツだけじゃない、ハーフパンツもぐしょぐしょで……。

「ああっ…もう……わ、私…ごめんなさいっ……」

「ううっ…恥ずかしい…ううっ、どうしてこんな…!!」
、いーからっ」
「あっ……!!」

ワタワタしていると、カズくんが私をぎゅっと抱きしめてくる。

「そんなん洗えばいーだけだから」
「で、でも……」
「ダイジョーブ、あとでちゃんとオレがやっとくから」

だから、と、さっきまでと違って、どこか勝ち気な様子なささやき。

「もーちょっと、ゆっくりくっついてたい」
「…………うぅ……」

その甘い声は、私が逆らえないと知っている。
私は結局、カズくんにこうして包まれるのが一番好き。
カズくんだって、それをわかっている。









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40000(+200000)ヒットで、
紋子さんにキリ番リクエストいただいた高尾でした。
高尾は久々&ヒロインが攻めっぽいのは初めてだったので手間取ってしまったのですが、すごく楽しかったえへえへ。
紋子さん、ありがとうございました!