「ん……?」
親の居ぬ間。
もう何回目かのおうちデートで、これももう何回目かになった肌の重ね合いになって。
キスして、抱き合って……そこまではまかせっきりになっていたのに、
服に手を掛けられた途端に私が強く拒む動きを見せたからだろう。
和成くんは、ちょびっと紅潮した頬と尖らせた唇で、私をじっと見つめた。
「?」
「あ……の」
私だって、今日はキスまで!なんていう気持ちじゃなかった。ほんの数秒前までは。
「わ……私、その……!」
が、幸か不幸か……思い出してしまったのだ。
……肌とは違って、自分と……あとは和成くんにしか見せないところのお手入れは、毎日していないのだ。
大好きな和成くんにキスをされ、とろけそうになった瞬間。
そういえばわたしきのうしょりしてなかったよね?
と頭の中のもう一人の自分が警報を発し、私は真っ青になった。
「だ、め……!だめ……みないで……」
「……んー?」
……和成くんは、優しい。
私が涙さえこぼしかけていることに気がつくと、スカートと太ももの境目を撫でていた手を離してくれた。
ベッドの上で私に添い寝するような格好になると、距離は変えずにおでこと前髪を撫でてくる。
「今日はダメ?」
「ダメって、いうか……」
私を見つめる瞳が、不満げに困った様子から、ちょっと切ない色に変化する。
……そんな顔と甘い声で言われたら、自分がすごくひどいことをしているみたいな気分になってしまう。
ダメなことなんかない。
和成くんと、したい。
撫でられるたびに陶酔が頭の中に広がっていく。
でも……でも。
「」
「んっ……あ、ん……!」
その陶酔をさらに濃くするように、和成くんが頬に唇を寄せてきた。
「あぁ…あぁっ、や……!」
その唇は、柔らかく私の肌を味わいながら耳たぶに移動して……。
「ひ、ン、だめぇぇっ……!」
「なにが?」
「耳、だめ、や、だめっ!」
「んー……?」
耳朶が甘く挟まれ、吐息と低い囁きの媚薬で私の頭を揺する。
「オレ、したいんだけどなー…」
「う……んんっ……!」
「としたい」
「だっ、あぅン……!」
ちゅっ、と触れては離れる和成くんの唇と声で、私はすっかり溶かされてしまう。
些末な羞恥より、和成くんに翻弄されることの気持ちよさが優ってしまう。
でも……。
「わ、私、恥ずかしいのっ!!」
「え?」
……崩れそうになる理性をなんとか保とうと短く叫んだ自分の言葉は、主語がまるっきり抜けていた。
和成くんはふっと呆けた顔になり、くすぐったい愛撫の手も止めて、私をぽかんと見つめる。
「あ……あぁ……そ、その、きょう、は……」
そうされると……いったいなにが恥ずかしいんだ、ということについて暴露しないのも罪な気がする。
というか、ごまかせない。
私にこの状況を切り抜けるコミュニケーション能力は、ない……!
「……い、の……!」
「え?、なんて?」
モゴモゴモゴ、と口ごもった言葉に、和成くんがいっそう身を寄せる。
言葉を聞き取ろうと。
もう顔に血液が行き渡りすぎて、そのまま失神しそうだった。
目尻から涙がこぼれ、すみません誰か私を殺してくださいっ、とお願いしたくなる状況で、声を絞り出す。
「わ、たし、今日、アソコの毛……きれいにしてない……」
「…………はへっ?」
あぁあっ……やっぱり殺してぇー!!
「……?」
「ううっ、う、ううう……!」
うつ伏せになり、枕に顔を埋めて自分で作った暗闇に逃げ込んだ私の背中に、和成くんが声をかける。
「いやちょ、こっち向けって」
「……いやだぁ……やっぱり忘れて……全部……」
私が暴露した恥ずかしいことも、さっきまでの雰囲気も、あわよくば私の存在もすべて……。
「……オレ、のやらしくて好きだけどなー」
「へあっ?!」
拗ねた感じの声と同時に、丸出しの膝の裏が急にくすぐられた。
「やっ、あ、くすぐったっ…や、かずっ…わひゃあっ?!」
振り払おうとしたら、今度はわき腹に大きな手が伸びてきた。
思わず反射的に仰向けになると、和成くんがニンと笑った。
「やーっとこっち向いてくれた」
「う……うぅ……」
改めて見つめ合ってしまうと、もう一度顔を逸らすのも恥ずかしい。
私は半端に視線だけ、和成くんの涼しげな目元からずらす。
「やらしくてスキって言っても、それ、あれでしょ…あの…私、今まで和成くんに見せてたの、前もってメンテナンスしてたのだし……」
「メンテナンスって…いやのはゴルフ場かなんか?」
「だ、だってメンテナンスだもん!」
……他人と比べる術もない。
顔立ちや……身体の中でも胸やおなかなんかは、他の女子と比較して自分が平均かそれ以外か確かめられる。
でも……その部分ばっかりはどうしようもない。
そんな状況で、もしかしたら私って人より「濃い」んじゃ、なんて思うといてもたってもいられない。
都市伝説やヨタ話におびえながらも、和成くんとデートの前日か当日の朝には、欠かさずお風呂場でちょびちょびと……その。
「そんな気になる?」
「気になる……」
今度は私を抱きしめた和成くんの胸板に顔を押しつけ、羞恥心を暴露する。
「イヤなの、嫌われたくない……変だって思われたくないの……」
そうやっていじけたってどうにもならないとわかっているのに、一度吐き出すと弱音は止まってくれない。
和成くんのシャツをぎゅっとつかむ。
普段の自分はそんなに、言うほどネガティブでもないはずなのに。
……こと和成くんとの向き合いになると、私はダメだ、魅力がないんだ……と、不安ばかり襲う。
恋は駆け引きが楽しいなんて言ってた自分は甘ちゃんだ。
気づけば沼にはまったように、自分は和成くんへの甘い心と劣等感で身動きが取れなくなっている。
「なーんかオレ、ちょっとショック」
「あえっ?」
……思考の海に沈んだ私を引き上げたのは、和成くんの上げた声だった。
「オレ、そんなに心の狭い男だと思われてんの?」
そう言って、和成くんはずいっと私の顔をのぞき込んだ。
見つめ合った和成くんがなんだか怒っているような表情をしていたものだから、私はぎゅうっとのどを詰まらせて……。
「んー…っ」
「んむっ?!」
……直後にちゅっ、とキスを受けてしまったものだから、ついていけなくなって目を白黒させた。
「っ……は、オレ、の中で、そんなにみみっちいヤツ?」
「……い、いや、そんなことは……ないけど……」
でも。
でも……。
「見せてよ、」
「う……」
そんな風に、蜜の粘りを持つ声で迫られたら。
「これが、変って?」
「や、あ……うぅ……!」
……いつもと、全然違う体勢。
私は和成くんに後ろから抱え込まれて、ゆるい体育座りみたいな格好で足を開いている。
閉じようとすると、和成くんが器用に足を絡ませてくるのだ。
まごまごして真っ赤になるしかない。
「いつも通りじゃん、やらけーの…」
「ばっ、や、あぁ……ん……!」
へらっと笑いながら、和成くんの指が私の下腹に潜る。
指先が陰部をするする撫でて、その茂みの感覚をもてあそぶ。
「ぜーんぜん変じゃねーよ?」
「へ、変だよ……」
「どのへんが?」
……そう言われてしまうと、答えようがないのだけど。
「よく見なって、ホラ」
「やだ、見ない……!」
……和成くんは、私が目をつぶりっぱなしなのに気がついたらしい。
片手で私の頬を撫で、瞳を開けろと訴えてくる。
「大体変って言っても、ちゃんと見た?」
「…………」
そう言われても。
身を屈ませてのぞき込んでも、きちんと見えるのはそれこそ表面の茂みくらいで……。
処理の時に鏡に映る粘膜は、できるだけ見ない振りをしている。
「ほらほら、のかわいートコ」
「あうっ?!あやっ?!ちょ、なに……?!」
かたくなに瞼を閉じたままの私の陰部に、急に奇妙な刺激が走った。
慌てて目を見開けば、和成くんの指が、むにぃ……と、私の割れ目の、一番柔らかいところを引っ張って粘膜を伸ばしていた。
「やあっ?!それだめっ、ダメ……!」
そうされると、暗い色の茂みと肌色の割れ目だけじゃない。
その内側の、内臓色の粘膜が自分からでも見えそうになる。
「かわいーじゃん、のココ」
「か、わいく、ない……の……!!」
引っ張るのをやめたかと思うと、今度は全体的に手のひらでムニムニしてくる。
むず痒い快感が下腹に走って、だんだんと和成くんに抵抗する勢いが弱くなってしまう。
「かわいーって。これ……」
「はんっ……?!」
和成くんの指がうごめき、私の芯をまさぐった。
一番感じるところを、触れるか触れないかの力で愛撫する。
「頑張って隠してるのに、ちょっとオレがさわるとすぐ出て来ちゃうじゃん」
「んぅぅっ?!や、あぁあぅッ…か、和成くん……!」
恥ずかしすぎることを言われるのと同時に、指先が強くなる。
薄く滲んでいた愛液をすくい取った指が、私のクリトリスをくにゅくにゅとなぞってくる。
「あかぁっ…か、かじゅくんっ……!」
「うっわ……超えっろ……今のやべえ」
くちゅ、くちゅ、くちゅ……と、断続的に与えられる刺激に音を上げ、震える舌で口走った私の言葉に和成くんが反応した。
「、すっげーエロい顔してる……」
「してないっ、よぉっ、んぅくぅっ……か、かじゅくっ、やめ、やめぇえぇっ!あそこぐちゅぐちゅやめぇっ……!」
「っつあ……やっば、かじゅクンって、なんか……すっげー……ハハ、オレ……」
和成くんがなんだかいやらしい笑い声を上げた…と思ったら、一気に強い愛撫が与えられた。
「だ、だめえぇっ!それいやっ……ん、あぁああッッ!!!」
じゅくっ、と一気に愛液が滲んでくる感覚と一緒に、急に腰が痺れて浮き上がる。
「あっ……や、あぁ……わ、わたし……!」
「……イッちゃった?」
「か、かずくんが……んぅっ!」
そう言うと、和成くんがまたへへ、と笑った。
同時に、自分のお尻にやたらと硬いものが当たっているのに気がつく。
「あ……か、ず、くんの……」
「へへ……」
そう言って、和成くんは片手で器用にズボンを下ろす。
何度見ても驚いてしまう、痛そうなくらい充血したものが露わになって……。
「わあ……あぁ……」
「あのさ…ホラ」
「んっ……?!」
……和成くんが、突然自分の肉茎をぐっ、と手で持って押さえた。
上を向いていた先端を、無理矢理私の方に向かせる。
「コレ、オレは毎日見るけどさ……」
「あ……」
そう言われて、和成くんの照れくさい微笑みに気がついたから…私もそれに手を添える。
「……ッ!」
「あ……ぁん……!」
すると和成くんがぶるんっ、と震える。
その様子は、なんともいえずいやらしい。
「い、いやらしい……よ、これ……」
「……じゃん?」
「え?」
思わず口走った私に、和成くんが答える。
「は、やらしーって言ってくれんじゃん」
「……あ……」
私が、自分で自分のものを変だと思っているのと同じように。
「オレだってさー、結構……ああんと、カッコ悪りーな……」
「え……え……?」
「もっと余裕持ちてーのに、勝手に反応したりすっから……たまにすっげえイヤになるけど」
……和成くんは、身を持って私のコンプレックスをほぐしてくれようとしている。
それが分かったので……自分から彼に口付ける。
「んっ……?!」
「ん…む、かずくんっ……!」
……と思ったら、勢いをつけすぎたせいで和成くんが身体のバランスを崩してしまった。
今度は私が和成くんを押し倒しているような体勢になり、ベッドの上で二人もつれる。
「……して、続き……」
「……やべ……、可愛すぎ……!」
初めての時みたいに、和成くんはちょっと身を離したすきに肉茎にゴムを付け終える。
どうやってつけてるか、ちょっと見てみたいんだけどな……なんて気持ちは、今はセーブ。
「んっ……う、かずくん……!」
「今更だけどさ……その、カズくんっての……」
その言葉の続きは、お互い途切れてしまった。
しっかり柔らかくなった私の中を、反対に硬く張りつめた和成くんが塞いでいく。
「んうぅっ……うあぁ、あぁ…ん…!」
「あ……は、へへ、入った……つ、あ……」
もう痛みはないけれど、重みを伴う圧迫感は消えてくれない。
「か、ずくん…私、もっと、感じ、たいの……!」
もっと、もっと和成くんを感じることのできる身体になりたい。
この重たい感覚も好きだけど……挿入の圧迫もなにもかも、全部を快楽として受け止められる身体になれるとしたら……。
「……っ、、それ……」
「だって、かずくんのこともっと、ンッ…あぁあぁあっ!!」
腰が持ち上げられ、ぐっ、ぐっ……と和成くんが私の奥を押してくる。
「あんまし、カワイーこと言うなって……っ」
「かわいくない、のっ…あぁ、わたしぃっ……!」
ずろろっ……と、和成くんが内側をえぐる感覚が、だんだん背筋を走る痺れとなって突き抜ける。
「もっとかずくん感じたいっ、あっ、ん……感じる子に、なりたい、のぉっ……!」
「だからっ……つ、はは……ダメだっつ、の…ダメ、イク……ッ!」
「はぁうっ……?!」
私の中で、和成くんが勢いよく跳ねる。
どくん、どくん、と間隔を開けて震えたかと思うと、和成くんが弛緩して……。
「んっ……か、ず、くん……!」
「ゴメ……オレ、先に……出ちゃった」
「ふあぁッ……?!」
自分の孔から和成くんが引き抜かれて、充血した私の粘膜は口惜しげにひくひく震えた。
「……も一回、いい?」
「わ、わたしは……」
いいけど……と、ついいじけるような口調になってしまう。
一度吐精しても硬いままの肉茎に新しいゴムを付けなおして、和成くんがキスしてくる。
「ん……ふぁ、かじゅくん…っ!」
「ダメだって……オレがもう、のこと感じすぎなんだもん…これ以上がやらしくなったら……」
「……それは……」
「っつおっ?!」
……羞恥をごまかすのと、こみ上げる嬉しさの二つから、和成くんのアソコをぎゅっと握る。
ゴム越しでも熱さが十分にわかる。
「でも……どんなやらしい私でも、かずくんは……」
「……っつあぁ!やべーって、可愛すぎんだよーッ!」
……今までとは反対に、獰猛に唇に噛みつかれた。
和成くんは……私の小さいコンプレックスなんかどうでもよくしちゃうのだ。
それ以上の欲を与えて、とろけるほど甘い恋心をくれる。
「……大好き」
*******
ひっさしぶりの高尾ちゃんでした。
ぐひひあまあま!