「……」
「……」

うう、ジリ貧だ……と気まずく思いながらも、打開の手立てが見あたらなかった。
ドキドキする。
そわそわしてもじもじして、体のあちこちが触れられてもいないのにくすぐったい。

……高尾くんといるだけで、こんなに嬉しい。

「おー、若いねこの頃はフカキョンも」
「おっさんじゃないんだから」

適当に借りてきた邦画を二人で見ながら、もうだいたい一時間。
映画はクライマックスに向けて加速していくのに、私と高尾くんの距離はじれったいまま。
テレビと並行の位置にあるシングルベッドに座り込む私と、その下……床、いやラグマット敷いてるけど……に寝そべる高尾くん。

……お互いやりたいことがわかってる。
いや、「やりたいこと」はいくらなんでも下品だ……うん。
「したいこと」程度に考えておこう。

「俺邦画なんてずっと見てねーや。映画館にも行ってねー」
「そうだねー。今もうレンタルしちゃうよねー」

どうでもいい言葉を交わしながらも。

「……」
「……」

……私たちは、セックスがしたい。
それこそ映画とか海外のドラマみたいに、友達みたいな軽い関係の二人がなんとなく雰囲気で、というのではなくて。


……高尾くんと付き合って、半年くらい。
そろそろ「そういうの」もいいんじゃないかなぁ、と言う刷り込み教育のような、恋人たちの通過儀礼だろ、みたいな考えと、
高尾くんとだったらしたいなぁ、してみたいなぁー、という、初体験に対する期待がある。
高尾くんは初めてじゃない、よ、なぁ、たぶん。
でも、なにもこんなに発情というか、ドギマギしているのは私だけじゃないと思いたい。
というかそうだ。高尾くんも絶対ドキドキしてる。
最近気づいたんだけど、高尾くんは照れるとこっちを見ない。表情を見せてくれない。
だからたぶん、お互いどっちが言い出すのかなぁ、と距離のはかりあいをしている。
……私にそんなことを言い出すバイタリティはない。
だいたい「私初めてだけど高尾くんならいいよ★」なんて自分から言い出せるか。絶対できない。
それは暗に「私の特別な人にしてあげてもいいわよ」と言っているのと同じ。
そんな厚かましいことできない。
だからお願い、高尾くん早く言ってよ。


でも……。
高尾くんがいつもの軽い調子で「しよ?」と言ってきたとして、「うんイイヨ」と即答しちゃったら、それはなんか、ダメな気がする。
もっとこう……なんか、こう……。

「……っ!!」

……来た!
高尾くんがしかけてきた……!

「……」
「た、高尾くん?」
「んー?」

ポンッと、何気ない調子で高尾くんの腕がベッドに乗せられた。
ただそれだけの動作なのに、
この手を握り返せよ、という要求と、そしたらオッケーってことだけど?という問いかけが詰まっていた。

半年付き合ってます!というのは、周りの子を鑑みるにそこそこ上等と言えるらしかった。
が、たぶん私たちが長続きするのは相性がいいとか、お互いが大人だとかそんな理由ではなく、単に会う回数が少ないからだ。
毎日会ってたら、好きになるのも早いけど、たぶん嫌いになるのも早い。
高尾くんは私の告白を受けたときに、こう言った。
「でも俺部活やってんし、いちおレギュラーもらってっし、自主練もしてるしあんま時間ない……」と。
当惑する私に向かって、彼はおどけてみせた。
「いやあのさー自慢じゃなくて、付き合おうって言ってくれんのに、みんなメール返さねーって怒るんだもんよー」と。

私は、それでもいいから、と言った。
恋は戦なのだ。オフェンスとディフェンスを使い分けてお互いの心を勘ぐりあうのが楽しい。
会えない時間は、高尾くんを想像して、早く会いたいなーと恋い焦がれる……。
と同時に、そんな私って恋する乙女でかわいくない?!と、自己陶酔できゃーきゃー部屋を転がってるのが楽しいのだ。

……会える回数が少ないから、デートの時はずーっと高尾くんを見てる。高尾くんも私を見てくれる。
彼のしぐさにはこんな傾向があるんだ、といっぱい感じ取る。
……その中で、それっぽい雰囲気になるときもあった。
けれどキスして抱き合って終わった。
今まで、三回くらい。
……その一線を、越えちゃう、のか。

「……あの?」

ど、どうしよう。
応じていいのかな。応じるべきなのかな。

「わひっ?!ひやっ?!」
「お、かわいいの履いてんじゃん」
「あええあ、あの、やめてよぉ!」

……返答を待たずに、高尾くんの指先が私のつま先に触れた。
おうちデート用、なんて笑われそうなことのために買っておいたふわふわの靴下をつまんでへらへら笑っている。

「やっぱ部屋の中でも裸足だと冷える?」
「ひ、冷える冷える、私血行悪くてねっ」

アハハ、と笑いながら紅潮した顔面を抑えて……逡巡の末、私は足を引っ込めてしまった。
心の準備が整ってなかったんだよまだ!もうちょっと待ってくれたらよかったと思う!
……が。

「いいじゃんいいじゃん、触らしてよ」
「やっ?!ちょ、やめてっ!」

高尾くんが瞬時に横寝スタイルをパージ。
私の方に向き直り、ベッドに上半身を乗せてくる。
……本気だ。たぶん高尾くんはこのまま私とのセックスに持ち込むつもりでいる!

「触らしてよ
「や、やだ、ちょっと、ね、あのさ、高尾くん……」
「俺もさぁ、もうちょっと待とうと思ってたんだけど……」
「え?」
「なーんかさ、予想以上にセッパ詰まってたみてー。のこと待てそうにねー。わりい」

し、しかもすごい勢いで下手に出た!拒絶される前に!

「あの、でも私…その、はっ、はじ、は、はははじめ…て……」
「んー、言うなって、そんな恥かかせたくねーって」
「は、恥じゃないよ、私がその…言っておきたいだけ…」
「そりゃ俺にならいいよーって意味?」
「う……?そうなのかな……?で、でもあのっ、押しつけがましくしたくないっていうか!」
「んなことねーって、嬉しいって……さしてよ、

……私が泣き言を漏らす前に、俺がしたいんだから、と高尾くんの方から頭を垂れたのだ。
悪いのは俺だから、は全部俺に任してくれりゃいいから、と。
……でも、それにのっかるのは高尾くんに罪をなすりつけているみたいだ。
私だってしたいって思ってたのに、なんで「高尾くんがしたいならしょうがないなぁ」なんてみっともない理論武装しないといけないんだろう?
ここは私も気持ちをさらけ出して、高尾くんに媚びるべきじゃあないのか。
いや、もう何がなんだかよくわかんない……。

「あれ?!ちょ、あれ?!なんで私ちょ、待ってー!」
「待てねーっつってんの、ホラ脱いで脱いで」

いつの間にか完全にベッドに乗っかった高尾くんが、私のセーターを脱がしにかかっていた。

「ま、待って!ちょっと待って、あの、寒いから脱ぎたくない!」
「は?寒い?」
「う、うん、寒いの!」

うそだ。恥ずかしいから脱ぎたくない、をごまかしただけ。

「……服の上からならいい?」

……高尾くんは、どのあたりまで私の強がりや羞恥心をわかってるのかなぁ。
無理強いすることもなく、締まった身体がぎゅっと私を抱き留めてきた。
顔があっつい。死ぬほど恥ずかしい。
それでもそこで弛緩したままは卑怯な女の気がして、高尾くんの背に手を回した。

「いい匂いする、
「た、高尾くんも……するよ?」
「ん?いい匂い?」
「う、うん……いい匂い……」
「はは、あんがと」

ぜんぜん舌が回らない。変なことしか言えない私を、高尾くんは優しく笑った。
嬉しいような、悔しいような。

「後ろからだっこさして。いい?」
「後ろから……?」

彼は疑問に行動で答えてくれた。
私の後ろに回って、背中からぎゅっと抱きしめてくる。

「これで服の上から触んなら、文句ねえ?」
「う……うん……あ!あのねっ?!」

ここで黙りこくっていたらやっぱりそれはダメ人間だ、と負けず嫌いが働いた。

「あの、触られるの…が、いやじゃなくって…えと、触ってくれるの、嬉しいよ…ドキドキするもん…」
「……ってさー、それ計算してんの?男を誘惑するセリフ!とか雑誌に載ってんの?」
「違うんだってばぁ…!恥ずかしいけど…私もしたい、うん……」

かーわい、と言って高尾くんは含み笑いをする。

「ふ、うぅ……ん……」

トップスと下着の上から、高尾くんの大きな手が私の胸をぐりぐり押してくる。
揉んでるとか撫でてるとか言うよりも、押してる。
手のひらでしっかり、服の上からでも逃すまい、というように乳房の形を確かめている。

「はっ、はぁ……ん……」
「すっげ……可愛い……つかさ、俺さっきから口数多いよな」
「う……ん、そうなの……?」
「多い多い、もっと黙ってやれとか思わない?」
「お、思わないよ……話してくれた方がいい……かも」
「そ?キスとどっちがいい?」
「んっ……!」

後ろから高尾くんのあごが肩に乗ってきた…と思ったら、そのまま唇を奪われた。
……キスは何度かしていたけれど。
少ない経験でもわかるくらい、今日のは熱の籠もり方が違う。
高尾くんの、どこか蜜のように尾を引く吐息が惜しみなくこぼれてくる。
私に意識させようとして漏らしているのか、無意識なのか。

「んんっ……ふ、う……!」
「っは……」
「あ、ごめ……ついちゃった」
「ん?」

高尾くんを部屋に呼ぶ直前に塗って、コップや自分の舌に奪われていったリップグロスも、しっかり唇を重ねれば残っているのがわかった。
ゼロ距離で真正面にいる高尾くんの薄い唇にうつってしまっている。

「と、取るから……ね」
「おっ……?」

これは私からアタックするチャンス、と判断して、高尾くんの唇をペロリと舐めた。
グロスの味がした。あの変な人工甘味料みたいな……。

「……へへ、なんかすっげーうれしい、のそういうの」

……微笑んだ高尾くんの胸板が肩胛骨とくっついて、鼓動が背中に響いた。
想像よりもずっと早鐘ぎみで、私が思っているよりは高尾くんも余裕がないのかなぁ、と考えると……。
いやな女だとわかっているけど、私の方にも余裕が生まれてくる。

「……た、高尾くん、下は?」
「え?」
「し、下は触らない……?」

ああああ!死んじゃえもう!もっと言いようあるでしょうが私!
すべった口と行動に目をつぶって、それでも反応が気になってすぐに開く。
と……今度はものすごくわかりやすかった。
高尾くんの顔が真っ赤だった。

「いいの?」
「え、だ、だめなの?ダメ……?」
「いや俺はダメじゃねーって、触りてーけど……いいの?」
「え?え、うん…いいよ、うん…さ、触ればいいんじゃない…かなぁ?」

私も顔が熱を出したときのようにかっかしている。
やっぱりうまく発せない言葉をなんとか紡ぐと、高尾くんはにへらっと微笑んだ。

緊張してんの」
「た、高尾くんもでしょ?」
「……バレてるよなぁ、やっぱ」

そう言って、高尾くんの手が腰に回ってきた。
どうしていいかわからず硬直した私の背筋に高尾くんの額が埋まる。ああ、髪の毛さらさらしてる……。

「触りたいけど……後ろから触らして?お願い」
「うしろから……?」

疑問を訴えると、そのまま背中に体重がかけられた。
自然と四つん這いになった私の服の裾に手がかかって、言われたことをなんとなく理解した。
……それは、私からしてもありがたいかもしれない。
顔を見られながらだと恥ずかしい。

「……いーんだ?」
「う、うん……」

弱くうなずくと、そのまま下に身につけていたものが全部、一気に剥かれる。
よく考えたらブラより先にお尻見せてることになるなぁ。変なの。

「ふっ?!ふあぁ?!」
「……わ」

高尾くんの指先が私の陰部の茂みをスッ、と撫でて来た。

「へへ、やらけー」
「や、やだ、あっ……!」

……一応手入れしてるから人並みだと思うけど、きちんと生えている陰毛を、人差し指が何度もなぞる。

「んっ、や、めて、やだぁ、遊ばないで……!」
「遊んでねーって、の毛やらけー、きもちい」
「きもちーってバカでしょ、高尾くんバカでしょ!」

ああ……こんな風にがなり立てても可愛くないのになぁ。
必死な自分を俯瞰するもう一人の自分が、「しおらしくしときなさいよ」といさめるのに、恥ずかしくて騒がずにいられない。

「はっ……ふ、ゥ、んっ?!」

下腹を撫でていた指先が、突っかかりなくさらに降りていく。

「なんか照れんなー……恥ずかしい」
「わ、私の方が恥ずかしいよ……!」

そーだよなぁ、と笑う高尾くんの顔は見えないが、きっとあのつりあがった目尻をさらに上げている。
涼しい目つきが、笑うとすっごく人なつっこくなる。
改めてそれを思い浮かべると、羞恥心とはまた別に照れというか、のろけというか、くすぐったい気持ちが溢れた。

「んっ?!」

その私のゆるみに乗じて…と言うべきだろう、乗じて!高尾くんの両手がお尻の肉をぎゅいっと掴んだ。

「……いんだよな?」
「えっ、な、なにが?」
「だから……ホラ」
「うっ、ううんッ?!んっ、ちょ、高尾くん……!」

期待と不安で揺れながらも、確かに興奮を持って開いていく私の陰部に、熱い吐息がかかる。
慌ててお尻を下げて振り返ろうとするが遅かった。
……高尾くんがガッチリと私の下腹部を押さえ、お尻に顔を埋めていた。

「やだちょっ、ちょ、えっ、え、んっ……!」
「……ふーっ」
「わひい?!ちょ、はっ、息、だめっ!」
「へへ、くすぐったい?」

秘処にわざとらしく吹き付けられた吐息に身震いすると、高尾くんの笑い声。
もういい加減頭が茹だりそうだ……恥ずかしい。
私はセイジュンな、お下品なことなんてちっとも知りません、なんていう人間ではないから、
高尾くんがしようとしていること……つまり自分がされそうになっていることもちゃんとわかる。
でも、それは……なんというか、人に見せつける、写真とかビデオに撮るときに積極的にするもので、
高尾くんという個人が、私という女に自主的にしたいことなんだろうか?とか、変な方にばかり考えが逃げていく。

「それ、その……そんなとこ……」
「ん?」
「それ……楽しいかなぁ……?」
「楽しーって、楽しいからしたいんじゃん」
「……そっか……」

……真正面から楽しい、と言われてしまうと断る理由もない。
私は、黙ってうなずいた。
それを見て高尾くんはへへ、と笑って。

「んー……」
「うンッ?!」

チュッ、と、お尻にキスをする。

「ふぅ、あぁ、うっ……うぅ……!」
「ん……」

そのまま唾液を纏った舌がぬるりと滑って、お尻の頂点から肉の割れ目に流れていく。

「あ、あぁう……んっ、ん、くぅ……!」
「……ん?くすぐったい?」
「ひあっ、え、あ、しゃ、喋らないでえぇ!」

舌が伸びてきて割れ目をなぞるだけでも震えるのに、そこで唇と息まで漏らされてしまうとどうしていいのかわからない。

「は、え、あ、や、やっぱ、これ、楽しくない…よね?」
「あ……?なんで……んっ」
「ひいあ?!ちょ、だめ、それっ!」

はむっ、と、高尾くんの舌が手前まで伸びてきて、さっき指でなぞられた茂みを唇が挟む。

はどーなの?楽しくない?」
「うえ……う?私が……?」
「そ、さっきから俺が楽しいとか楽しくねーとかそればっか」
「……あ」

言われれば。

「で、でもさ、その、こういう場合はその、女がされる側なわけじゃん、いろいろしてもらわないといけないわけじゃん……」
「いろいろ?」

私のしどろもどろな弁解を、高尾くんは簡単に笑った。この。

「う、うん……いろいろ!それ、で、その…つまり!私は黙って寝ててもいいけど、高尾くんはがんばらなくちゃいけないわけじゃん!」
「そうかぁ?」
「そうでしょ!ああもー、そ、それなのにね、楽しくないこととか、めんどくさいこととか、率先してやんなくても……」
「んーなもうさぁ、なんでもーってさぁ……」
「はぁうっ?!わ、はっ、はぁ、やぁぁ……!」

高尾くんの手のひらがお尻をぐにぐに揉んで、埋められていた口許と鼻先は私を責めるようにくんっと突き上げられた。

「そんなんもっとひでー話すっとさ……」
「そ、そこで喋らないでっ、ちょ、ん、んんっ……!」

……恥ずかしさでごまかしていたが。
震える粘膜を、高尾くんの息と声の振動で愛撫されるのは……気持ちいい。
どくんどくんと、下腹部に血が巡っていくのがわかる。

「女の子が濡れてても、男が立ってなきゃ入れらんねーわけじゃん?」
「そ、そう……かな……なの?んっ……!」
「そ。俺が立たせてーからやってんの。してーの、さして?」
「うぅ……んっ、はぁ、あぁ、だめぇ……!」

……ここでもまた、高尾くんは自分から泥をかぶってみせた。
私の頭でっかちな考えなんて簡単に乗り越えていくのだ。

は集中しろって、さっきみてーな声いっぱい出して」
「そ、れで、いいの……んっ、は、やぁ、あぁ……!」
「いーの……って、俺やっぱウルセーよな」
「ううん……ふ、うぅうっ……!」

ふ、と、こぼれる吐息さえも愛撫の道具にして、高尾くんの舌が大胆に、ぺったりと私の秘処にくっついてくる。
そのままずるんっ、と大きく舌が動いて思わず腰を引きそうになるが、押さえつけられている……。

「ん……すげ、ん、興奮するわ……」
「こ、こうふん、するの……?あぁ、あ、あぁっ?!」
「する、すんげー味する」
「あ、味?!ちょ、変なこと言わないでっ…ん、ふぅうぅっ……!」

このタイミングは絶対わざと。
ぢゅるう、と下品な音を立てて、高尾くんの唇が私を啜る。

「はあ、あぁっ……や、あ、ん……!」
「……ここ、してもいい?」
「ふっ、く、うッ?!あいいあっ?!そ、そこっ……!」

びりっ、と、体が震える。
膣の穴やそれを包むひだを舐め回していた舌がずれて、一番敏感なところをつつきだす。

「おわ、ちっちぇー……いじんない?一人でいじんねーの?」
「ち、ちっちぇ、って、え?!ええっ……!」

つまりその、クリトリスが小さいってこと……?

「い、じんないよ、わかんないっ、は、あ、あぁう?!」

実際にいじってるかいじってないかは置いておく。

「は……強くしねーから、舐めていい……?」
「う、うぅうっ…ん、あぁ、やっ、あ、あぁっ?!」

いいよ、だめだよ、と返事をする前にもう高尾くんは決めていたようで、
舌先がぷっくりした肉芽をぷるぷるつつきだす。
へたするとさっきよりも、唾液や私から垂れる愛液を啜る音も、舌の動きもえげつない。

「あっ、う、だめ、びり、びり、するぅ、ううっ……ん、ん……!」
「……いひゃい?」
「ふぅぅっ?!しゃ、しゃべ、んないでぇ……!」
「んっ……いたくねー?」
「いたくないっ!からぁ、しゃ、べんない、で……!」

軽く笑い声をあげた高尾くんが私の懇願を聞き入れてくれて。
断続的に短い吐息と、私の粘膜をすする湿った音しかしなくなる。

「ううっ、ん、あ…あ、はっ、は、あぁ……!」

……高尾くんが私を味わい尽くしているのだと思うと、変な声ばっかり漏れる。
自分の声なのに耳朶にじんじん響いて、妙にドキドキしてしまう。

「は、ふ……ん、んっ……」

じゅるじゅるじゅる……なんて、私から滴る愛液と高尾くんがこぼす唾液を全部、一気に吸われる。
おなかの奥ごと持っていかれてしまうんじゃないかなんてバカなことを考えるくらいの気持ちよさが、背筋を通って頭にチクチク伝わってくる。

「た、かおくんっ……ん…………んっ?!」

ベッドシーツに伏せた頭をぐりっと動かして、高尾くんの方をなんとか振り返ろうとして……思わず身体が大きく跳ねてからフリーズした。

「えあっ、たったた高尾くんなにしてんの?!」
「あれ、バレた……」

私の尻たぶをつかむ左手と、埋まるくらい臀部に近い顔。
その反対の……高尾くんの右手は、自分自身の肉茎に触れていた。

「っ、そ、れ……?!」

というか、いつの間に出してたの……?!

「ちょっと我慢できそーになくてさ……」
「それ、そんなっ、ん、変っ、や、ぁ、あ、恥ずかしッ!やめてぇ!」
「おうごっ?!」

これは絶対、もうびっくりするくらい恥ずかしいことだ。
むずむず下半身を動かしたら押さえ込もうとする高尾くんの手に阻まれて、腰をぐっと突き出す形になってしまう。
私は思いっきり高尾くんの顔にお尻でタックルする形になってしまったわけで……もうなんなのこれ。
初体験どうの、男女の駆け引きどうの、そんなことを冷静に考えようとしていた自分がどこかに行ってしまう。

「やだっ、やだ、高尾くんばか、いやぁ、やめ、ぇ、んっ、ふ、おしり、はなしてっ……!」
「っ、離さね、つか押しつけてきたんじゃん、これ、んッ……!」
「ひぃあッ、あ、あぁッ、だめ、だめぇえっ!それえぇっ!」

するどい痛みが走り、その後から滲むような快感が溢れて痛覚を塗りつぶす。
敏感なしこりが上下の唇で挟まれて、舌を使って強く吸われる。
ぢゅっ、ぢゅっ、と、冗談みたいな音を立てながら間隔を開けずに強い刺激が襲ってきて、下半身が突っ張ってどうにかなりそうだ。

「ん、ぐ、ん…はぁ」
「ひぃやッ、やだぁ、それ、それ、され、たらっ、ん、はぁ、おか、し、い、よッ!」
「んーーッッ……!」
「ふいぃあぁあっ?!どーしてぇっ、だめっ!だめっ!!」

こんなにだめって言ってるのに、全身振るって嫌がってるのに、高尾くんはやめてくれない。

「だめ、だめだめほんと、だめっ、いっ、あ、た、かお、くん、だめっ、だめえぇっ!!」
「ふ……ん、んッ、んーーっ……!!」

暴れ回っても、挙げ句の果てに瞳に涙を滲ませても。

……っほら、んッ……!」
「いあぁっ?!うっ、う、あっ、ひ、くうぅうぅう……!!」

名前を呼ばれて、ほんの少し気がゆるんだ次の瞬間。

「はあッ、あ……あっ、あ……!!」

クリトリスばっかりだった高尾くんの唇が、いきなり柔らかい肉ごと割れ目をぐにっと甘噛みしてきて……。

「すっげ、奥までギューってした、えっろ……やべ」
「高尾く、ん、わたし、これっ……」
「イッちゃったん……?ん、すげ、どろって出た……」
「いっ……ちゃ、った……?っていうかぁっ、や、やだ、いやだって、は、はっ、恥ずかしっ、やだやだ、いやっ、あぁ……!」
「もーちょっと…ん、もーちょい…はぁ……!」
「いっ?!も、もう吸わないでえっ!」
「待ってよ、俺もイキそうなんだって……」
「えあっ?!ちょ、な、えっ、えええっ……?!」
「あ……や、べ、イク……!」
「え……う?!」

もう心の領域全部がパニックを起こしてわけのわからない私でも、
高尾くんがいきなりうずくまって……それからぶるんっ、と大きく震えてうなだれるのを見て、あ……と、思った。

「……はは、ごめ……」
「い、う、い……えっと、ううん……」

私を押さえる手もゆるんで、お尻を突き出す体勢から解放されたので、高尾くんの方に向き直る。

「あの……えと、しゃ、シャセイ?」
「……うん、まあ……」

ついつい股間を指さしてとんちきなことを言ってしまった私に、高尾くんは目を合わせず返事をする。
そのまま左手で鼻の下を押さえつつ高尾くんの視線が部屋をさまよったので、あ、とつぶやいて私は枕元のティッシュを差し出した。

「こ、これだよね?」
「……あんがと……っつーのも、変か」

そう言ってティッシュ箱を受け取って、高尾くんは私に背を向けてなにやらごそごそやりだした。

「あ……のう、えっと……な、なんだろっ」

そのまま沈黙しているのはいけないことな気がして、口を開いた……はいいが、言葉がちゃんと浮かんでこなかった。

「た、高尾くんも、あ、あがって、るんだ、ねぇ……」
「……あがるに決まってんじゃん」

苦し紛れの台詞に素直な返事が来てしまって、私としてはウン、とうなずくしかなかった。

「ど、どうしよ……これから……」
「んーなの、は気にしなくていーのっ」
「うわあうっ?!」

がばっ、と、今度はお互い正面を向き合った体勢でのしかかられる。
私と同じで、高尾くんもズボンだけ脱いでる。
間抜けなはずなのに、なかなかどうして色っぽい。
私と違ってキュッと引き締まった太股なんかがちらちら見えると、どうも目のやり場に困ってしまう。

「勝手に復活すっから」
「ふ、復活……んっ、ん……!」

奇妙なニュアンスの言葉にぼんやりした拍子に、高尾くんの指が……もう唾液と愛液でどろどろの陰部に潜ってきた。

「ふくっ、う、あえ……?!」
「アレ……入っちゃった」
「や、やっぱり入ってる、これぇ……!」

ぬるん、と間抜けなくらいあっさり、私の秘処は彼の指を受け入れる。

「……え、って中派なの?」
「うっ、え……?な、中、派……?んあぁ、ああ?!」

なにそれ、と口を開こうとしたら、入り込んだ指先がにゅくにゅくとうごめき始めて悶えてしまう。

「すっげーあっさり入るし……クリより中なんかなーって……」
「うあいいぃ?!ちょ、恥ずかしすぎない?!そんなこと、聞くのっ……ん、はっ、あぁ?!やっ、あ、あぁあ……!!」
「どーなん?指痛くねー?平気そう……?」

……この指による愛撫は、彼にとっては小手調べらしい。
ここで猛烈に痛がって痛がってどうにもならないようなら、また対策を考えるつもりでいる。と。

「…………え、と……ぉ」

私は、頭を振る。縦に。

「た、かおくんの指、平気っぽい……た、たぶん…高尾くんのも、平気……」

言った直後に熱を纏った恥ずかしさが顔を真っ赤にさせたが、まぁ、その……気にしない。

「……まじ、いいの」
「う、うん……ていうかさ、あの、ここで怖じ気付かないでね?!」
「怖じ気付くってかさ……ん、いいや、このカッコでいい?」
「う、ん……?」

そう言って高尾くんがぐっと私の脚を上げて、そのまま膝の裏を持つ。
その恥ずかしさよりも、一度は果てた……はず、の高尾くんの熱が、気づくと再びぱつんぱつんに大きくなっているのに驚いてしまった。

「ふ、復活してる……」
「だろ?言ったじゃん」

そう言って私にその体勢を保たせながら、なにやらごそごそやりだして……ぱっと、もう一度手が私の脚に回ってきた時に目をやると。

「……あ、そっか……」

ちゃんとあの、なんというか、いやなんというかというか、ゴム……が被さっていて、彼の肉は薄ピンクにてらてらしていたので、ぼんやりホッとする。

「……んじゃ、お邪魔しまーす」
「お邪魔って……あははっ」

改めて緊張しかかったのに、高尾くんの言葉で一気に弛緩してしまった。

「っ……ん」
「はっ、う、ううぅっ、うううぅうう……?!」

ぐぐぐっ、と……押し広げられる感覚が先で……その後に、ジンジンと痛みがやってくる。

「う、あ、やば……っ、息、吐いて、、息吐いて……」
「は、く……ふっ、ふ、く……ぅ……!!」

言われて自分の呼吸が止まりっぱなしだったことに気がついて、口から息を吐く。

「せま、これ…ちょ、……!」
「んっ……ふ、ふ、はぁ、はぁ……た、かお、くんっ……!」

浅く呼吸を続けると、痛みも、切なく顔をゆがめる高尾くんもしっかり把握できて…でもどうしようもない。

「ぎゅ、ぎゅってして、いい?」
「……っあ、あー、いいから、ほらつかまれって、ほらっ」
「んっ……!」

高尾くんの身体がいっそう強くのしかかってきて、奥に入り込んでくる熱もぐりぐりっ、なんてしゃれにならない感覚を持っている。
それでも、高尾くんが私の手を自分の背にやってくれたので……彼のシャツを、ぎゅいっとつかむ。

「あっ、あ、ふ、ぐっ、う、うぅ……!」
「痛いか……て、痛いよな…はは、ごめ、俺、わりと……」
「ういっ、痛い、って、いうか……だ、大好きっ!」
「……はへ?」

何でか。
お互いゼロ距離で密着して、熱い部分をくっつけあって……浮かんだ言葉がそれだった。

「だい、すき、高尾くんっ、大好きっ!」
「……まじさ、って……!」
「あっ……ふ?!」

口からえほっ、なんて変な咳が出かかった。
高尾くんが背に手を回して、私の身体をいきなりがくがく揺するものだから。

「はっ、く、うっ、う゛っ、た、かお、くんっ、あ、いっ……!」
「もっと言って、さっきみてーに、ほら……っ!」
「あ゛ッ、だ、だい、すき、大好き、大好き、高尾くん、だいす、きいいっ!」
「……へへ、やっべ、それ、もう、そん声だけで出そ……!」
「い、いいよ、もうなんで、も、いいよっ、大好き、だから、高尾くんっ……!!」

ああもう、自分がなにを言ってるのかもわかんない。

「俺も好き、は、っ、、好き」
「はっ、ずかし……よ、うっ、ぐっ、ううぅっ、う……!」
「好きだからさ、は、出る、やっべ、イク……」
「う、うんっ、い、いいんじゃ、ない、かなっ?!好きだ、もん、私も好きだもんっ……!!」
「っ、あ゛ー……マジもう、っ……っ、あ……!」

ぴいんっ、と、高尾くんの背筋も、私の中の熱も。
一気に張りつめて、硬直したようになって……。





「な……なん、か、変、まだ開いてる、なんか……」

服を着なおしてもまだ、どうにもモゾモゾする下腹部を押さえてそう言うと、高尾くんが頭に手を置いてきた。
そのまま私をぽんぽんと撫でて、ぎゅっと抱きしめる。

「あー……謝るのも変だもんなぁ」
「う、うん、謝らなくてもいいと思う……」
「ありがと、でいーのかな」
「うん……私も……ん?も、じゃないか。ありがと、高尾くん……」

言い終えると同時に、人懐っこい笑顔を浮かべた高尾くんが、ちゅっ、なんて音のするキスをしてきた。
なんだか、駆け引きがどうとか考えていた自分がちょっとお馬鹿にも思えて。
でも……これからはきっとこんな行為も楽しい、お互いのさぐりあいの中に組み込まれていくんだなぁと思うと、わくわくしたりも、する……。