「おはようございまあす」

日曜日の朝方、のんびりとした雰囲気を醸す住宅街の一角に、チャイムと朗らかな声が響く。

さん!おはようございますっ」

扉を開けた少女は、玄関前に立っている娘を見て元気良く挨拶する。
少女…水戸部千草にとって、この自分の兄と同い年の娘は警戒に値しないのだ。
むしろ大歓迎したくなる明るい笑顔。

「凛兄!さんだよ!」

兄からも彼女からも、はっきり言われたわけではないが。
千草は、兄とこの人が恋仲であるとしっかり悟っていた。
千草の声を聴いてか、家の中からせわしない音が響く。

「もう、洗い物はしなくていいって言ったのに……」

千草の感覚が正しければ、今のは兄が慌てて流しの水を止め、エプロンを脱いで椅子にかけ、それでもって上着を羽織って……ああほら。
足音と同時に、上着の前を閉めながら兄……凛之助が玄関まで駆け寄ってくる。

「りんちゃん!」

その顔が見えるなり、は子供のように頬を綻ばせた。

「おはようりんちゃん!」

千草は女の子のようなあだ名で呼ばれる兄の、困った顔を見る。

「凛兄。デートがあるなら優先していいの、家事は私がやっておくから」
「…………」

無口な兄は視線をから千草に移し、優しげな眉の根をくい、としかめる。
……すまないけどお願いする、と言いたいのだ。

「いいって。ほら行っといで!さん、こんな兄貴ですけど……よろしくお願いします」
「ええっ!ううん、私のほうこそ……!」

千草がペコリとお辞儀すると、は大袈裟に手を振った。

……実のところ、千草はブラコン的な盲目を除いても、兄が人としてに無礼な振る舞いをするとは思っていなかった。
けれど……男として、恋人として見たときにはどうだろう。
誰にでも心遣いを忘れない姿は、時としてわだかまりとなるのではないだろうか。
今日だってぎりぎりまで家事をしてから待ち合わせに向かうつもりだったようだし。
……そう思ってから、ふと千草は壁掛けの時計に目をやる。

「……9時40分……」

待ち合わせにしては、半端な時間だった。



「りんちゃん、もしかして怒ってる?」

二人でホテホテと住宅街から駅まで歩きつつ、は水戸部の顔をのぞき込む。
すると水戸部はとんでもない、と言うようにかぶりを振って、繋いだ手に籠めた力を強くする。

「ううん、私、また早く家を出てきちゃって……」

わざわざ迎えに来させてしまってごめん、という水戸部の心情を仕草から読み、は恥ずかしげに頬を染める。

進路のことで忙しなくなってくる身の上にプラスして、水戸部はバスケ部の活動や自主練で休みがほとんどない。
運動系の部活を始めると、自分の時間が全然持てないというのは、知っていたつもりのだったが。

「せっかくのデートなんだもん……」
「…………」

特に二年生になってから、水戸部は自主練習の頻度が増えた。
それに不満を抱いてわがままに泣くほど幼稚ではない。
むしろ恋人が熱心に打ち込んでいるものがあるならば諸手を振って応援したい。
……が。
平日も朝練、休み時間も早めに切り上げて軽く居眠りに充て、放課後は部活。
休みの日は自主練で忙しいか、日々の疲労からかたっぷり寝坊を堪能している。
そんな水戸部を応援と同時に心配する反面で、の心には疎外感というか……なんというか。

「今日は、本当に夕方まで遊べるの?一緒にいていいの?」

期待と罪悪の混じった問いを投げると、水戸部は真摯な顔でうなずく。

「休まなくて……よかったの?」

こんな風に。
やったありんちゃん大好き、とはしゃげない。
の寂しさはややねじれた形で顔を出す。

「………」
「ああっ…じょ、冗談だよりんちゃん」

水戸部の方にも、に構えない寂しさと申し訳なさがあるのだろう。
自分が悲しい顔をすると、水戸部はさらに悲しそうにする。
は慌てて取り繕う。

「りんちゃんと一緒にいられて、うれしいよ」

ちょっとしたモヤモヤは引っ込めて、笑顔を作る。
拗ねる気持ちもあるが、嬉しいのも事実なのだ。
そしては、ヘラッと……握られていない方の手を振る。

「楽しみすぎて6時に起きちゃったの」

……本当は、今日は10時半に駅前で待ち合わせの予定だった。
けれど……これはいつものことなのだが、浮き足立つばかりに一時間も早く駅に着いてしまったは、
時間をつぶす術も見あたらないので、たかぶりに任せて水戸部の家まで歩いてしまった。

「ごめんね、おうちの手伝いもあったんでしょ……?」

言われて、水戸部が慌ててかぶりを振る。


……水戸部からすると、が自分との約束を楽しみにしてくれるのは嬉しい。
実のところデートの前に浮つくのは水戸部も同じだ。
皿洗いや洗濯物に集中していると少しは気を落ち着けられるので、自ら進んでやっている。

だからが罪悪を覚える必要はない、と告げるつもりで、ゆっくり微笑んでみせた。



これは二年に進学する前、水戸部の中の出来事で言えば、部活動でごたごたが起こり、落ち着かなかった時期のこと。
怪我をしたチームメイトの代わりを担うため、そして二年目こそは、という決意のもと。
水戸部は、部活動に割く時間をもっと増やしたいと家族に告げた。
休日の手伝いがあまり出来なくなる、と。
とも電話で会う約束を取り付け、次の休日にこれからのことを話すつもりでいた。

……が、当日久しぶりの逢瀬に心からはしゃぐを見ているとどうしても言い出しづらく、ずるずるとデートスポットを回ってしまい、夕刻も差し迫ってきたあたりの頃。

突然、は水戸部の前で倒れてしまった。

ふらふらのを支えて、ちょうど近かったの自宅に駆け込むと、彼女の母親が迎え入れてくれて……。
そして、頭を抱えてこう言った。
「この子昨日から一睡もしてないのよ。水戸部くんとのデートが楽しみすぎて……」
それを聞いて水戸部は、誇張ではなく涙が出た。
そのまま夕勤に出かけてしまった母を見送り、ベッドで浅い寝息を立てるの手を握って、ごめん、ごめん、と心から懺悔した。
こんなに想ってくれる恋人がいるのに、自分は彼女を一番に選べない。
こんなことにならなければ、今日は出会い頭から「これからはもっと会えなくなると思う」なんて伝えるつもりだった。
……そう言ったときのの顔を想像すると、申し訳なさで心が裂けそうだった。

別れよう。
ほど優しい娘を、自分のような身の上の人間が縛り付けるべきでない。
彼女が目を醒ましたら、きちんと順序を踏んで話をして、別れを告げよう……。
水戸部はそう決意した。



「…………」
「りんちゃん?」

ふと思いを馳せた記憶に、予想以上の時間を奪われていたようだ。
水戸部はに呼びかけられて、やっと自分がボウッとしていることに気がついた。

「……――」

そして自分を見上げる顔を見つめていると……どうしようもない愛しさがこみ上げてくる。
……繋いでいる手を少し緩め、指を絡ませて結ぶ形に変える。

「り、りんちゃん?」
「……」

胸を突き上げる気持ちを、うまく言葉に出来ない己が口惜しい。

「……うん、私も、りんちゃんのこと大好き……」

それでもは絡められた手指から、水戸部の心の声を聞き取ったようだが……。

の家の近くに、新しいケーキ屋が建ったらしい。
ちょっとした飲食スペースもあり、喫茶店のような雰囲気だという。
今日はひとまず、そこへ行くのを目的にしている。
二人で乗った電車の中で、再び水戸部は過去のことを思い出す。

言葉を用いて、一から十まですべてを説明するのは難しいと思った。
なので水戸部は、持ってきたノートに丁寧な字でことのあらましと、これからの交際についてを書いてきた。
そしてが寝ている間に、「会える時間が減ってしまう」と結んだ文の後に、だから別れよう、と書き足した。
目を醒まし、デート中に倒れたことを悟って慌てたが落ち着くまで待って……水戸部は、それを差し出した。

訝しげな顔で水戸部の文を読み始めたの顔は、みるみる曇っていった。
曇るだけならまだしも、視線が下に行くにつれ目尻に涙がたっぷり浮かび、眼球がうるうると悲しい輝きに満ちた。

「……いやだ……」
「…………っ」

付き合ってしばらく経つが、の泣き顔を見るのは初めてだった。
水戸部の心がずきずき痛み、色々な言葉が浮かんでは、声になる前に消えていく。

「いやだよ……りんちゃん……」

でも、これからはもっと悲しい思いをさせてしまう。

水戸部は自分まで泣きそうになりながら必死でそう伝えたが、はそれをいやだ、いやだ、と蹴るばかりだ。

「……私我慢する……会えなくても、電話できなくても、メールの返事こなくても……」

そういう意味じゃない、と焦った。
君が耐えられないのじゃなくて、僕が……と、伝えようとして。
それならなぜ自分は「のためを思って」別れようとしたのか、水戸部はふと利己的な考えに行き着いてしまった。

「…………っ」
「りんちゃんが困ること絶対しないから…一生懸命やってること邪魔したりしないから……」

ぶんぶんぶん。
嗚咽まで漏らし始めたに向け、何度も首を振る。

「もう冗談でも、私より小金井くんといる時間の方が多いとか、千草ちゃんが羨ましいとか言わないからぁ……」

ぶんぶんぶんぶんぶんっ。

自分の髪の毛の端が頬を打ち、目が回るくらいの勢いで首を振ったが、は泣きやむことがない。

「りんちゃん…私りんちゃんが好きなの……デートできなくても、忙しくっても…りんちゃんが好き……」

だから別れたくないよ、と頬を涙で濡らすに向かって、自分だってそうだ、と水戸部は声にならぬ声で叫んだ。

「じゃあ……なんで別れるなんて言うの……」
「…………っ」
「りんちゃんは別れたいの……?」

それは断じて、だ。
別れたくない。
でも……。

「……りんちゃん……」

は身を起こし、水戸部に抱きついた。

「じゃあ、じゃありんちゃん、別れるっていうなら……」

鼻にかかってかすれた声で、は確かにささやいた。
このままセックスして、と、似合わない色香を漂わせる言葉を。



「……りんちゃん?どうしたの?」
「……っ!!」

……また思い出にひたるあまり、駅を乗り過ごしてしまうところだった。

「大丈夫?今日は疲れてる?」

駅の階段を下りながら、が心配そうな声を上げる。
水戸部は慌ててかぶりを振って、大丈夫だと教える。
ちょっと色々思い出していただけだから、と。

……新しいケーキ屋とやらは、駅からさほど離れていないようだった。
改札を出たところでが指さす方を見ると、もう看板が見えた。

……水戸部は、幸せそうにほころぶの顔を、じっと見つめる。
そして、の腕をクイッと引いた。

「ん……?」

水戸部にしては、大胆な誘いな気がする。
ケーキを買ったら、の部屋に行きたい。

……は真っ赤になって……それでも、頷いた。



水戸部はどうやら、たまにしか会えない上にその度に身体を求めることに罪悪感があるらしい。
けれどの方は嫌じゃない。

「りんちゃん、ドキドキしてるね……」

寡黙な恋人の肌に触れると、いつもよりも多く感情を読みとれるからだ。
服越しの胸板に触れると、いつもより早い鼓動が手のひらに伝わる。

「…………っ」
「あはっ!恥ずかしがらなくてもいいのに……」

はそのリズムに心地よく目を瞑るが、水戸部の方は咎めるように手を添えてくる。

「りんちゃん、抱っこ」

ベッドに座り込んだまま、向かい合った水戸部の背中に手を回す。
このままでも、抱き合っている……と言うなら「抱っこ」だと思うが。
水戸部は赤くなった顔でこっくり頷いて、の腰に手を回す。
そのまま膝の上にの尻を乗せ、横抱きの形で身体をすっぽり包む。

「えへ……」

ねだった通りの形にされて、水戸部の腕の中でが照れくさく笑う。
要求される水準が高いので麻痺してしまいがちだが、水戸部くらい大きな体躯であれば、恋人の身体など小さなものだ。

「ん……?りんちゃん……?」

自分から誘ったというのに、水戸部はまだ戸惑っているらしい。
の顔を間近でのぞき込んで、恥ずかしそうに眉をしかめた。

「もー。そんなこと気にしなくていいよ」

……に触れたい想いと、あまりがっつくと最初から「それ」目当てだったみたいで恥ずかしい、という変な羞恥心というか、遠慮というか。
そういうものが水戸部を躊躇わせるのだ。
今日は予定を端折ってしまったものだからなおさらだろう。

「私、りんちゃんのこと大好きだもん」

でも、と反論されかけて、は水戸部の唇に指を当てる。

「あのね……最初に、りんちゃんが……」

水戸部はあのとき……結局別れを選べなかった。
抱きつかれた瞬間に、嘘でも悪者になってを袖にするなんて考えは吹き飛んでしまった。
と一緒にいたいと強く願った。

「私、あのとき色々考えてたんだよ……」

照れ混じりにクスクス笑いながら、が水戸部の手を自分の胸元に導く。

「どうしても、りんちゃんと一緒にいたかったの」

あの場で、たとえ水戸部に「それはできない別れよう」と言われても、ゴネて粘るつもりでいた。
水戸部が折れてしまえばしめたもの。
性根は非常に優しく善良な彼のこと、一度を抱いてしまえば、以降すっぱり忘れる……なんてあり得ない。
どんな形でも、たとえこじれても、は水戸部と一緒にいたかった。

「ん……っ」
「りんちゃん……」

寡黙な水戸部の唇から、わずかに吐息がこぼれるようになった。
乳房をまさぐる水戸部の足の間に、尻を強く押し当てる。

「ふふっ…でも、りんちゃんさ、そもそも…そんな無責任なこと、最初からしないよね……」
「………う……っ」

かと言って、の尻を押し返す張りつめた感覚も嘘ではない。
これもまた水戸部の身体の一部で、切って離すことはできない。

「だからね…私ね、こーやって大好きなりんちゃんと一緒にいられれば……んむっ?!」

それだけでいい、と言いかけた唇を水戸部が塞ぐ。

「ん……うぅ……ん……!」
「……ッ、ん……」

唇の間から覗かせた熱い舌を絡めあう。
キスで得られる陶酔もいいが、水戸部の呼吸が荒くなっているのがわかるのも、は気に入っている。

「はあっ……りんちゃん……」

唇が離れた頃に、はのそりと腰を上げる。

それを合図にして、水戸部はてきぱきと…それでも恥ずかしそうに服を脱ぐ。
自分から裸になるのは彼なりの優しさだと、は知っている。


「あ、んんんっ…!り、りんちゃあん……は、あぁ、も、もう、平気…もう、いいよう……!!」

お互いが裸になり、時計の針が半分ほど回転して。
はふにゃふにゃに弛緩しきって、足の間の恋人の頭に手をやる。
それでも水戸部は、の肉の合わせ目を愛撫し続ける。

「んんっ……!!」

唾液と愛液で濡れながらひくひくする粘膜から口を離したかと思うと、その上を覆う陰毛を、唇で軽く挟んでクイクイ引っ張る。

「もう、いいから……いれてもだいじょぶ……ンッ……!」

そういうつもりでなくて、と言いたいらしい。
水戸部はの陰毛を甘弄りするのをやめて、太股の付け根をチュッと吸い上げてみせた。

「ふぁ…りんちゃん、ホント…?それ、好きなのぉ……?」
「……っ」

彼は挿入するための準備というわけでなく、陰部を愛撫するのが好きなのだとは悟る。

「でも、でも…りんちゃん、私、奥のほう…うずうずしてきてるぅ……」

の方も、飽きたとか、早く終わってくれとか、そんないい加減な気持ちではなく……身体の内側に水戸部を欲しがっている。
表面の粘膜を充血で気持ちよくされるだけでは、だんだん満足出来なくなってくる。

「うん……中に、りんちゃんほしい……中の、奥のとこ、りんちゃんで……んぅっ…!」

欲望のままに懇願する声に、水戸部の心も揺すられたらしい。

「…………っ」

猛った肉茎をあてがって、誠実な瞳がに訴える。
の中に入りたいと、それだけを切実に。

「い、いよ……りんちゃん、はいって……入れてぇ……んっ……!!」

がそう頷くなり、熱い肉が粘膜をかきわける。

「ふああぁッ…!あ、あぁあああぁ……っ!!」

念入りな愛撫にとろかされた膣穴は、やすやす水戸部を受け入れていく。
はお腹を内側から圧され、満たされる感覚に打ち震える。

「んいぃいっ…りんちゃん……あぁ…いいっ……!!」

互いの粘膜が馴染むと、水戸部はの腰を強く抱き寄せる。
けれど、そこで逸る欲に任せて身を揺すったりはしない。
じっくり味わうように、少しずつ……少しずつ、の熱い孔に肉茎を出し入れする。

「あぁ、あ…あぁあ……っ、ああぁああっ……!!」

の、鼻に抜けてゆく大きな声。
可愛いと思いながら、水戸部は粘膜と粘膜が擦れ合う快感に打ち震える。

「り、りんちゃ……あぁっ、あああぁーー……ッ!!」

自分と同じ快楽をも味わっていると思うと、さらに高揚していく。
で、自分の膣孔が擦られて締まり上がるたび、水戸部もそれを感じていると思うと……頭の中に、気持ちよさが振りまかれていく。

「いいっ、いい、りんちゃ…もっと、もっと……!」

恥知らずなおねだりも、そうなってしまうと平気で口にできる。

「りんちゃん、い、一緒ねっ、一緒がいい…っ、いっしょに、なかで、びくびくって……」
「……っ、ん……!」

が脳裏をちらつき始めた絶頂の予感を伝えると、水戸部も何度も頷いた。
そこまで上り詰めてしまうと、互いが互いを感じ合っている確信のもと、水戸部も遠慮をしなくなる。
元々乱暴な衝動を抱く人間ではないので、が痛がるようなことにはならないのだが。

「はあっ、はあっ、はあっ…はあ、ああ……!!」

粘膜同士をなじませるような動きが、性急に快楽を求めて摩擦するものに変わる。

「うぅうぅっ……ンッ…んくっ、あ、は、ふぁ、あぁ、き、ちゃ…うぅ……!!」

歯噛みして波状の刺激に悶えるの額に、ふと口付けが落ちる。
我慢しなくていい、と伝えてくる。

「り、りんちゃっ、わ、わた、し…あ、あうッあ、あぁ、あ…んあっ、あ、ああぁああっ……!!」

震え上がるに、水戸部は何度も頷いてみせる。

自分だって限界だ、と、切なく寄せられた眉と目尻で訴える。

「うんっ……一緒、に…っ、あ、は、あ……あぁああぁああーーーっ!!」

が頷き返すなり、水戸部が一気に身を押し込めた。

「はあっ、あっ…はあ、はぁっ…はぁ……あぁっ……!」

不意打ちのような絶頂に弛緩する身体を、しっかり抱き留めてくれる大きな腕の感覚。

「……りんちゃん……大好き……」

安心しきって、は身を委ねる。

「……ん……?」

僕も。
大好きだよ。

見上げた水戸部の唇がそんな風に動くので、嬉しさで笑いがこぼれてしまった。