「放課後、火神君に話したいことがあります」
今ここじゃダメなのかよ、と昼休みの屋上で問いかければ、黒子はあのよくわからない瞳でジッ、と俺を見つめ、
「ちょっと人目が気になるので」と頷いた。
人目が気になる、あとで話がしたい。
そう言われてすぐぱっと頭に浮かぶのは愛の告白か不良行為の誘いだったが、
相手が黒子であるからにしてどちらもないだろう。
かと言ってそれからずっと一体なんだ、と後ろの席の男が切り出す用件について考えていたかと言われればそうでもなく、
午後の授業は遠慮なく寝た。
気持ちよく回転する胃袋にちょうどいい日差しの射す窓。
絶対に寝ろと言っている。身体が命令しているのに逆らうことはない。
「用ってなんだよ」
「こっちです」
そう言って、黒子は用具倉庫の扉の前までたどり着いて、音もなくこっちを振り返った。
「火神君知ってました?」
「あ?何を」
「こっちの倉庫はほとんど予備の道具しかないから、人がぜんぜん来ないんです」
そんなん知らねえよ、とぼやきつつ思考を巡らせたが、昼寝を挟んで冴えた頭でもこいつのしたいことがいまいちわからなかった。
相手が短ランを着た不良だったら「タイマン」、
おしとやかな女子だったら「ずっと好きでした」、
痴女だったら「火神クン、裸になりなさい」だろうが。
しつこいようだが相手は黒子だ。
「見つけたのはボクじゃないんですけど」
そう言いながら、金属の扉を開けていく。
……この倉庫鍵かかってねーのか、なんて思ったが。
それどころか……。
「お待たせしました、ちゃん」
倉庫の暗がりの中で、小柄な女子が待ちかまえていた。
「ちゃんと連れてきました、火神くん」
「あ、え、えっとありがとう、あの…言ってある?」
「言ってないです」
「そ、そんなもお!騙したみたくなっちゃうじゃん!」
状況を飲み込めない俺そっちのけで、「」と呼ばれた女子は尻に敷いていたマットから立ち上がり、黒子の陰からちらちら俺を見た。
「ちょ、おい……」
「火神君」
疑問を口にしようとしたところ、被せるように黒子が先手を打ってくる。
「ここでセックスしましょう」
……。
…………。
「は……あ?!」
その言葉を聞くなり、少女はきゃああ、と言うふうに頬を染めて、セーターの袖を引っ張ってもじもじする。
ただの紺色の、学校指定のセーターだ。
本人も「わけあり」には見えない、ごくごくフツーの、あれこんなのいたっけ、と思ってしまうような……黒子とはまた違う方向に「薄い」女だ。
「はっ、ちょ、てめ、黒子てめ、これ、えっ、な、あ、あァ?!」
「静かに。気づかれます」
そう言って黒子が扉を閉め、内側からカンヌキになっている鍵まで閉じてしまう。
部屋が真っ暗になった…と思ったら、次の瞬間には女が懐中電灯を付けて、床に敷かれた白いマットに反射させるように置く。
……どうにもその、やりなれている様子だった。
黒子も、このという女も。
「あっ、あのね、火神くん……!」
棒立ちの俺を、すがるように見てくる。
黒子に輪をかけて……いやほとんどの女子がそうだけど、小柄なので、真正面で距離を詰められると顔がよく見えない。
「……あの、えと、私と黒子くんは……あの、わかるよね?」
「いやわかんねーよ」
「友達です」
「そそそう、友達なの」
「んなワケねーだろ!」
また大声を上げた俺を非難するように黒子が眉をひそめるのが、陰を強く落とす電灯でよく見えた。
「思ったよりも混乱してるみたいです」
「ど、どうしよっか……」
後ろは無言のプレッシャーをかけてくる黒子。
前はこのとかいう女に挟まれた。
「ちゃん、脱いでもらっていいですか?そしたら火神君も、やる気を出してくれるかもしれないです」
「ちょっ、ちょ、テッ、テメェら何なんだ?!おいっ、てめっ、脱ぐな!」
俺の叫びはどうやらこの女には届かない。
セーターの裾を持ち、一気にまくりあげてしまった。
「な、あっ……」
「あのね、えっと…黒子くんと…ええーと、友達?なんだけど…火神くんとね、ちょっとその」
物騒なことを呟きながら、はもそもそと恥ずかしそうに視線を逸らす。
セーターの下もただの制服で、やっぱりこの平凡を絵に描いたような女の有様と、今自分が巻き込まれていることの釣り合いがとれない。
「火神くんとも、友達になりたいなーって……どーかなって言ったら、いいと思うって、黒子くんが言ってくれたから……」
「よ……あ、え、よ、く、ねーよ!黒子てめっ、何勝手なことぬかしてんだ!」
「え」
「なんでですか」とでも言いたげな「え」だった。黒子の口から出た声は。
「火神君は、こういうの」
「お、おい……!」
一歩踏み出しての傍に移動した黒子が、セーラー服の裾にためらいもなく手を突っ込んだ。
紺色の布地が手のひらによってもぞもぞ動かし回されるのが、妙に生々しい。
その手が色白な黒子のものだからなおさらだ。
これは夢じゃないのだと教えてくる。
「黒子くん、恥ずかしいよ……」
「こういうの、ぜんぜん興味ないんですか」
ムニュリとした。服の中の黒子の手が、布を押し上げている肉を強く掴んだのだ。
・どうやらこいつら自称友達はセフレ
・黒子は非童貞
・この女は俺ともヤリたがっている
・黒子が女のオッパイ揉んでる
というのが一気に入ってきて頭の中は情報の交通渋滞になった。
「なっ、よ……く、ねーよ、そういうの……」
あまりに現実味がなさすぎて、マジメに怒るのもマトモに拒否することも出来なかった。
「ふぅ、う、うう……ん」
「ちゃん、下も。たぶんあと一押しです」
勝手に俺の気持ちをはかるな!と言いたくなるやりとりの直後に、そんなまさか、という思いを裏切って黒子の手はなつるの太股に伸びた。
指先が、まるで俺を挑発するようにつん、つんといちいち小刻みに跳ねながらも、なめらかな肌を引っかかることなく滑っていく。
「火神君、心配しなくて平気ですよ。ちゃんも今は緊張してますけど……気さくな子です」
「えへ…もう、恥ずかしいよ…」
そう言いつつも、の顔にはためらいも恥じらいももう見られない。
ランランと輝く瞳は、あの……カントクの「期待に満ちた目」を彷彿とさせた。
「うん、私、そういうのオッケーだから、ね?黒子くんともばっちしそういう関係だしっ、ね?」
そう言って、キャピッ、と、たぶんわざとだろう、古くさいポーズ。
自分の両手でピースサインを作って、目の脇に持っていく。
「あ……ああと、く、黒子、てめーは、その……なんつうの、あぁ……」
もういちいち葛藤していてもラチが明かないので、常識とは手を振ってお別れした。
ある程度割り切って目の前の女と黒子に向き直る。
「その……ホラ、その……なんつったっけ」
「ちゃんです」
「あんと、……さん?」
「ちゃんでいいよ」
「うるせえ!ああもうとにかくな、なんつうの…そういう、アレなんだろ?」
「友達です」
「もうそれいいわ!わーってるわ!ただその……あー、あー……んと、友達、なんだろ?」
「はい」
「友達が、違う野郎とアレ……あの、アレ……っつうのは、いいのかよ」
黒子とは顔を合わせた。
はこっ恥ずかしいピースサインをやめて手をおろし、黒子の手を握る。
黒子もその手を握り返して、そして握手状態で俺に突き出してくる。
「ちゃんは友達ですけど、ボクのものじゃないです」
「あ……?」
「だからイラッとはしません」
「いや、その……」
普通イヤじゃないだろうか。
「ひどいことをする人ならイヤですけど、火神君はしないでしょ」
「そりゃ…オメー…」
「その上で、ちゃんがしたいって言ってます」
それに、と黒子はのスカートの裾をつまみ上げた。
ばっと、白い下着が丸出しになって、その人工的なツルツルした光が、太股の皮膚との対比になって頭を揺らす。
「ボクも火神君としたいと思ってました」
「は……はァ?」
これで相手がクマのような大男だったら、別種の恐怖を抱いたと思うんだが。
くどいようだが相手は黒子だ。俺よりずっとチビのひょろひょろ。
思わずけつを押さえてしまうような寒気は襲ってこず、むしろ疑問符がどんどん頭の中で膨れていく。
「火神君がどんなセックスするのか、知りたいです」
「はぁ?!なんで?!」
「ただの好奇心です」
「あはは、黒子くんへんたいだもんねー」
「いや好奇心って……つかなんで俺?!」
「他の人のを見たいと思ったら、ボクのも見せなくちゃいけません」
そうなのか?
思わず答えを求めての方に視線を泳がせると、はコクコクうなずいた。もっともだというツラで。
「それはイヤです。ボクは見られたくないです」
「性格悪いなテメェ?!」
「でも、火神君にならいいかなと思います……見られても」
「はっ、や、黒子くん……!」
どういう意味だよオイ、と叫びそうになったが、それは二人の行為で邪魔された。
黒子よりもさらに小さい体、太いけど短い脚。
その間に黒子の脚が割って入り、ぐいぐい股を開かせる。
「うっ、ん……うぅ……!」
がびくびく震えながらも黒子を見つめ、そして俺の方に瞳を移動させる。
「それで、火神君はしたいんですか。したくないんですか」
……。
…………。
「うわっ……うわ、これ、うわ……!」
「あれ……初めて見るんですか」
「いやその…でも、おわ、うわ……」
マットに仰向けになったの下着を、黒子が簡単に脱がせた。それはもうぺろんと。
「あっちだと写真もこうなんでしょ」
「あっ、そっか…火神くんアメリカいたんだもんね…」
「いや、そうじゃなくて、うわ……」
いや、確かにこっちに来てビニ本とか呼ばれるものを見たら、大事なところに短冊みてーな黒い四角がかかってて驚いた記憶はあるんだが。
目の前でてらてら濡れて、ほんの小さく蠢く女のものは、全く違う種類の興奮を与えてくる。
「しっかり見てあげてください。入れるときに間違えたりしそうです、火神君は」
「さすがにそれはねえよ!」
「あっ、ああぅ…!」
「うおっ、悪い……!」
ソッと添えるだけだった手に思わず力が籠もってしまった。
「ちゃんはもう大丈夫そうです。指、入れても平気ですよ」
「うん……」
ね、と顔を見合わせる二人になんだか疎外感を覚えなくもなかったが。
「うわっ、うわ……!」
「火神君、さっきからウワしか言ってないです」
「いやっ……だって、うわ、うわ……ッ!」
添えた指は、押し進めると簡単に呑まれていく。
ぬるぬるした穴が、まるで舐めるように指を食べている。
「はんっ……は、あぁ……!」
「優しくしてあげてください……ビデオの人みたいに出し入れしちゃダメですよ」
「さっきからいちいちうるせーなテメェは!」
……びびった。
このまま肘ごと指を引き抜いて、入れたり出したりするべきなのかと考えている最中だった。
「指は中で回すだけでいいです」
「回す……?こうか?」
「んくっ、う、ゆぅう……!」
指差すみたいに、爪を上にして入れていた手首をぐりっと回転させると、の喉からいきむような声が漏れた。
「そ、れで、うんっ、平気……!」
「こ……こうか……?」
ぐりぐりぐり、と続けて右に。左に。
ひねるみたいに指を回していると、ぎゅう、と一段と中の穴が狭くなった。
「ふっ、くぅ、声、漏れちゃう……!」
「……ちょっといいですか」
その「いいですか」は、俺に対してらしかった。
には許可を得るも得ないもないらしい。
そこまでユルしあっている二人になんだか複雑な気持ちになりつつも、指を引き抜く。
「うお……すげえ、濡れてる」
バカみたいなこと口走っちまった、と言う後悔は先に立ってはくれず、
空気に触れた指先が粘液でヌルいのに気づくと、変に感動している自分がいる。
「……ん」
「ふ、ぅ……!」
その感動は、黒子とが舌を絡めあう様子に軽く吹き飛ばされてしまったが。
「ん……ぅ」
「ふっ、く、ぅ、ん……」
舌と舌が二人の色の薄い唇からこぼれ、互いを求めて絡み合う軟体動物のようにヌルヌルと交わる。
「……お、あ、お、おう……」
ある程度舌先を味わうと、黒子は舌ごとの唇を塞いでしまった。
さっきの「いいですか」は、「声が漏れちゃう」からのこの一連の動作のことだったのか、なんてようやく気がついた。
「火神君、また指でしても平気です」
「お、おお……あーと……」
手持ち無沙汰になっていたのを指摘されたようで、へんな焦りにせき立てられた。
さっきと同じ要領で…けれどさっきよりもずっと潤んでいるの穴に、また人差し指を突き入れる。
「んうっ、う、ん……んうぅ……!」
「は、ん……は……あ」
から漏れるのは鼻息ばかりで、快楽の声は黒子が先に食ってしまう。
「……っ、それ……」
「う、ぐぅっ!」
「えあっ、お、あ、わ、悪ぃ……!」
ギュッ、と、中に滑らせた指の先を折り曲げてしまった。
慌てて身を引こうとしたが、視線の先の黒子がぶんぶんと首を振った。横に。
絞られた電灯の明かりの中で、色素の薄い髪がやたらふぁさふぁさ揺れる。
続けていいですよそれ、と言っているらしい。
「い、痛くないのかよ……」
「んっ、うぅ、んくぅ……」
黒子の舌を味わうのをやめないままに、の瞳がこちらを向いて揺れる。縦に。
「っは、火神君、続けてください…そのままです」
「わ、わかった……」
ちゅううっ、と、黒子の唇がの舌を挟んでひっぱりあげ、そしてポン、と音を立てて離れる。
……何だか、股ぐらに指を挿入するなんていう俺の行為よりもずっと気持ちがよさそうだった。
「それ……その」
「大丈夫ですよ」
焦らなくてもいいですよ、と諭されているようで、これまたなんだか悔しくて黙るしかなった。
「そのまま」
中の肉を、ぐっ、ぐっ、とほじったままの指先の上に、すっと黒子の人差し指が近づいてくる。
「ちゃんはこれが好きです」
「ふっ、う、黒子くん、そんなん、言わなくてもぉ……!」
「火神君にされたいんでしょ」
「う、うぅ……意地悪だぁ……ぁうッ!」
なんの話をしてるんだよお前ら、と思った次の瞬間に、の腰がビクンと跳ね上がった。
同時にくわえられた指がギューッ、と、もっと深く入ってこいとせがむように軋む。
「おわ、なんだこれ……!」
「ここです、ここ」
「あ……?!」
黒子の指が、俺の指が入ってる穴の上、の、小便が出る穴よりもさらに上……の、水棲生物じみた肉を撫でた。
「そっ、こ、一緒に、だめ、あぁ、だめだ、って、ばぁ……!」
「このだめは……もっとしてってことです」
「え?オイ、それ何、え?」
さっきとは段違いにの声が高くなる。
それこそ塞いでおかねば誰かに気づかれるのではというほどに。
「知ってるでしょ、ここ」
「あ、ああと……」
黒子の白い指とてかてかの爪の下で震えているのは、ほんの小さい突起だ。
たぶん乳首よりちっさい。あ、そういや乳首見てねえ……。
「ふくぅ、ん、や、め、ゆび、いれたまま…そこ、しないでえぇ……!」
「ちゃんは、クリトリスが弱いです」
あ、そーだそーだそんな名前だったわそこ。
何度か辞書で引いたりもした単語だったが、実際目の当たりにすると意外とすぐに出てこない。
「ほら、火神君は中から押して」
「は?中から?どうやって?」
「さっきみたいに。指を回して、上です」
……どうにも、俺よりもずっと小さい男にこうやって一から手ほどきされるのは変な気分だ。
とりあえず言われたとおりに、指の腹を上にして穴の「上のほう」をぐりぐりとなぶる。
「ふぅくっ、くぅっ、んぁあぁあっ!!」
「すっげ……これどーなってんだ」
「そこを押しながら、外からこうやって」
思わず口をついて出た疑問に、黒子は律儀に答えながら指先をくいくい動かした。
ぷるぷる震える、目を凝らせば何かの種のようにも見える肉の芽を、優しく撫でていく。
「ひぐっ、ううっ、く、うぅぁああぁッッ!!」
「ね、すごくいいでしょう」
……その言葉はに対してなのか、指が食いちぎられそうなくらいにうねる肉壁に顔をゆがめた俺に対してだったのか。
「気持ちいいでしょう、ちゃん」
「う、うんっ……!いい、よ、指、奥まで、届いてる……!」
「そりゃ、火神君の指はボクの指より長いですから」
「はッ?!てめ何言ってんだ?!」
「もう、あはっ……ん、ふ……」
どうにもさっきから黒子は俺で遊んでいる。
……が、その行動を怒鳴りつけて一蹴できない理由があった。
常識とか理性とか、そういうモノ以外にも。
「火神君……いれ、て、くれる……?」
そう言って、俺と黒子の指から離れたが自分の下腹部を見せびらかすように腰を上げた。
……驚き過ぎて忘れていた、とか、そんな都合のよいことはなくズボンの中の熱が苦しかった。
黒子に従わなければこの肉穴を味わうことはできない、と身体が十分に理解していた。
「あっ……」
そこで気づいた。ゴム。ゴム。コンドーム。
急速に頭、額から眉間あたりまでが冷たくなっていくのに反して股間はぜんぜん治まらない。むしろ血管が脈打ってうるせえ。
「あっ、お、俺、ゴ……」
「うん?ゴム……?」
なんでわかんだこの女。
そう思いつつコクコクうなずくと、は顔をふにゃりとさせて笑った。
「だいじょーぶ、おくすりのんでる」
「は?薬?DRUG?」
「のんのん、どらっぐのー、ぴるぴる」
焦った俺とは反対に、はさらに微笑む。
「で、でもあのホラ…つけねーといけねーんじゃねーの」
「平気です、ボクもちゃんも病気持ってないです」
「ちげえよ!ああもーおめーらはぁ!」
戸惑う俺の腰に、の脚が回ってきた。クワガタのアゴみたいに。
「いれたくないの……?」
こいつのちっさい体、短い脚だと、俺の腰は挟みきれないようだ。かかとが背中をつついてくる。
「火神君、漢でしょ」
「うええん、火神くんが私としたくないって、黒子くん……」
「火神君、女の子にこんなこと言わせていいんですか」
「火神くぅん……」
「火神君、ここはバシッと決めるところです」
「だあッ!んだっつーんだよテメェら!!」
交互に二人から浴びせられる「かがみくん」を振り払うように、勢い任せで張りつめた下半身を押しつけた。
「はぁうっ……く、ん……!」
「お……お、く……さっきの……!」
さっき指でいじっていた穴に、比較にならないほどでかいモノを入れるのだ。
「く、お……?」
「はぁう、熱い……!」
血液でパンパンに張りつめた肉の先に、柔らかい粘膜が突っかかったのがわかる。
このまま腰を進めれば、指と同じ要領で呑み込まれていくはず。
「んっ…う、ういっ、うぐっ、うぐぅっ、火神くん……!」
「ちょ、えっ……あ?!これ入ってんの……?!」
「はっ、く、待って、ちょ、待って……!」
「っ、おい、ちょ、これ……!」
ぐぐぐ、なんて音がするかと思った。
先端と俺の腰の間でネジ曲がった肉が苦悶する。
おい何でだ穴じゃねーのかここ、入っていかねーぞ!
壁じゃねーか行き止まりじゃねーか!
「ぐっ、ちょっと、かがみ、くっ、待っ、て……!」
「火神君、こうです、ここです」
「おああ?!」
突然ぎゅっ、と脈打つ根本が握られて思わず叫んでしまった……のだが。
「うお、は、入る……?!」
「んぐっ、う、ううっ、ん…………!!」
……黒子の手が添えられていた。
あいつの手が俺の幹を握り、くい、と先端を方向転換させていた。
その感触に一瞬妙な気分になったが、それよりもどんどん奥に進んでいく熱が、思わず喉から変な声が漏れそうな刺激を与えてくる。
「はあ゛あ゛っ……はいって、きたぁ、きた……!」
「う、お、やっべ……」
ずるずるずる、と、まるで肉が舐めつくされているような。
固形の湯、なんていう存在しないものに包まれていくような……妙な心地よさ。
そして、ギュウギュウと軋むの下半身が、それを摩擦の快楽に昇華させていく。
「ちゃん、もう少し…まだ半分しか入ってないです」
「う、そ、うそ、すっごく、もう奥まで来てる、のにぃ……!」
「……ボクのより大きいですから、火神くんの」
「てっめ、なに言って、んだぁ……あ、おっ、やめ……!」
思わず黒子の方を見ようとしたら、いきなり腰が重たくなった。
「はかっ…あっ、か、あがぁあ……うぐっ……苦し……いぃいっ!」
「がんばって」
「てんっ、め、黒子、な、ん、してんっ……?!」
あろうことか、背後に回ってきた黒子が俺の背中にのしかかってきている。
軽いとはいえ男だ。乗られて重たくないわけがない。
というか、問題は重さの方ではなくて……みぢみぢ音を立てて、圧力でなつるの中に俺がめり込んでいくのだ。
「ほら、キスもできますよ今なら」
「ぐ……てめ、おい、こいつが……!」
「ちゃんは平気です」
「ん、うぅっ、は、うぐっ、うん、だ、だいじょー、ぶ、苦しい、けど……!」
俺の下になったは、さっきは黒子に吸われていた舌をテロンと口の端から垂らして震える。
「んっ……!」
ふと、黒子が背中から離れたらしい。
重さが消えた解放感と、自分の中のタガがはじけ飛ぶイメージが同時にやってくる。
「はっ、あ、えろぉっ…ん、んっ……!」
荒々しくその口を吸って、だだ漏れになる呼吸を振りまいても……はガクガク痙攣するままだ。
「はふっ、ん…ふ、うぅ……!」
「は、はァ、は……!」
「……火神くんばっかりズルいですよ」
「ふあうっ?ひゅ、ひゅろほふっ……!」
の顔の真横に、黒子がひざを立ててかがむ。
その様子にが何か喋ろうとしているのがわかったのだが、俺が奪う。全部吸う。
「っ、ぶはっ……!黒子てめっ……!」
……が、俺の顔の真横でもあるその場で黒子がズボンを脱ぎ始めたので、さすがに唇を離して上半身を起こす。
「ちゃん、ボクのもお願いします」
「んっ、ふ、ひいお、れも……きをふへへ……!」
黒子の熱をぢゅぶぢゅぶくわえながら喋った言葉は、俺には聞き取れなかったが。
「大丈夫です……うっかり噛まれたら火神君のも噛んでもらいます」
「オイ?!」
「んっ、ふぅ、ううぐ、んぅ……ぶッ、う、うぶふっ……!」
気泡混じりの唾液を散らす顔は、まったく平凡だという最初の印象をひっくり返すいやらしさだ。
「うーっ、んーっ、ふ、あぁ、あっ、か、かがみ、くんもぉ……?!」
「おっ、あ……!」
情けない声が漏れてしまう。
この女を改めて存在として意識すると、変に興奮が強くなった。
狭い肉穴をはねのけるように自分が震えたのがわかる。
「ちゃんと……出すときは言ってくださいね。そのまま出しちゃうと、ちゃん凄く跳ねるんで」
「そんなん、言える、か……っ!」
「ふゥ、ふゥ……ん、だいじょ、ぶ、うんっ、わたしっ、わかるっ、ん…火神くん、わかりやす、い、からぁ……!」
「……そりゃ、これだけ大きければ感じやすいですよね」
「だぁーから、てめ、それ、根に持って……お、あぁッ!」
「はぁかっ、く、る、わかる……うぅっ……!」
ふと気を抜いた瞬間に瞼の裏側がチカチカして、一気に腰が持っていかれた。
こんな感覚初めてだと思っていたのに、それが先から抜けていく時はずいぶんと呆気なかった。
呆気ないが……ズルズルと体の芯を走っていく濁りが放たれるのは、手の中でも紙でもない。
「やっべ、って、これ、中に出て、る、って……!」
「いいんです、ちゃん好きでしょ……は……っ」
「ううっ、う、ん、好きぃ、これ好き、はっ、んうぅーーっっ!」
排泄を終えた後のように、腰骨がぶるっと震えた。
細かく痙攣を続ける肉をなんとか引き抜いた感覚にも、は悦びを隠さない。
「うぐぶぅっ、黒子くんも、ね、はぁ、ぐ、うぐぅっ……!」
「うん……いいです、今日はすっごく、熱いです」
だから、どうしてなんだか……。
一番隠されるべき場所に精まで放り込んだ俺より、口で吸われる黒子のほうがだいぶ気持ちがよさそうだ。
「あえっ……ん、くぅ、ふ、ううぅ、ん……!」
「……待って、ちゃん」
ぎゅぎゅっと、黒子が射精しそうな肉を無理矢理押さえつけたのがわかった。
それくらい苦しそうに震えているのに、まだこらえるという。
「ボクが下になるから、今度は火神君のを……口でしてあげて」
「う、ん……ッ!」
……そしてどうやら、自分はそんな二人を呆けたツラで眺めていたらしかった。
「火神君、ほら」
黒子がの身体を抱えて、ああそーいやコイツも同じ運動してんだった、と思わせる軽い動作で自分の上に乗せる。
お互い抱き合うような形で、肉穴だけでなく下腹部ごとしっかり重なってから俺を見る。
「ほら、こっちも上手ですよ、ちゃんは……」
……遊ばれている。
の方には自覚があるか知らないが、コイツの方は確実に俺で遊んでいる。
「火神君、ここで遠慮なんてもったいないです」
遊ばれっぱなしはシャクだが……とりあえず、今は愉しいことがしたい。
ね、ちゃん、とささやく顔には、後ろめたい陰りはない。
うなずくも、捨て鉢でも自虐でもないようだった。
こいつらは異常なくらいに割り切って楽しみ尽くしている。
「こんなことできる機会……そうないですよ」
……だったらば、俺も乗たってかまわないだろう。
ぶるんとかぶりを振って汗を払うと、間抜けにいやらしくぽっかり開かれたの口腔に……押し入った。