「ハロウィンだね、アツシくんっ」

いつも通り紫原の部屋を訪れただったが、今日はいつもよりご機嫌だった。

「ね、あれ。言わない?」
「あれ?」
「だから、お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!っていう、あれ!」

あ、そっか。ちんハロウィンごっこしたいんだ。
そう察して、紫原は彼女の上機嫌の理由を悟る。
誕生日、バレンタイン、クリスマス。
はそういったイベントになかなか敏感で、そのたび紫原にプレゼントを用意したりしている。
その行事に乗っかってはしゃぎたがる様子が、対象者が自分と紫原ふたりなのも手伝って、なんだかごっこ遊びじみて見える。
今日はハロウィンごっこ。
なんてひっそり思いつつ、紫原はまんざらでもない気持ちだった。
はしゃいでるちん、かわいいし。

「あーと、トリックオアトリート?」
「ふふっ!」

紫原の言葉を聞いて、はくすくす笑う。
ベッドに腰掛ける紫原の身体に、いきなり抱きついた。

「私がお菓子用意してなかったら、どんなイタズラする?」
「え…ないの、お菓子」
「たとえば、たとえばだよ」
「え〜……そんなの…いたずら…」

いたずら。イタズラ?
悪戯。悪い戯れ。

「ふ…踏む」

一瞬自分に芽生えた邪な気持ちをかき消して、紫原は口にする。

「踏む?」
ちんの足とかー…踏む」
「それって…イタズラなの?」
「え〜〜…じゃあ逆さ吊りにする」
「私を?」
「うん。お菓子持ってくるって言うまで、逆さにする」
「拷問じゃない?!」

は笑いながら、なにやら持ち込んでいた小さな手提げをごそごそやりだす。

「ちゃんと用意してるよ。調理実習で作ったんだー」
「わ」

が取り出したのは、カラフルなセロファンに包まれたクッキーだった。
星やハートの型抜き。ココアを練りこんであるのか焦げ茶色だ。
紫原の視線はクッキーから動かなくなる。ちょっと小腹が空いていたのもある。

「くれんの、ちん」
「うん!アツシくんにあげようって思ってた」
「ありがとー。食べていい?」

うん、と、は再び頷いた。
……もしかしたら、このクッキーがあるからハロウィンごっこを考えたのかもしれない。
紫原はそう考えつつ包みを開けて、の、恋人の手作り菓子を口に含む。

「ん……」

が作ったものとはいえ、味の審判に手心をくわえるつもりはない。
お菓子は美味しさこそすべてだ。不味ならばそれはお菓子を名乗る資格がない。
たとえ大好きなであっても、紫原にお菓子を差し出した以上はジャッジメントされる運命にある。

「あ、うまー」

が、一口かじってみて、紫原の格式ばった思考は流れた。
ハンドメイドならでは、既製品にはない固く詰まった歯ごたえ。バターの風味にふんわり香るココア。
一枚すぐに食べ終わり、すぐもう一枚に手が伸びる。
と。
「アツシくん、私にも一枚ちょうだい」
「えっ」

の、恋人からの可愛らしいおねだり。
けれどお菓子を食べる幸福に包まれた今の紫原にとって、それはあまりに酷なことだった。
この甘くて風味のいい至高の菓子を、誰かに分ける?
自分が食べられる量が、ほんのわずかでも減る……?

「ダメ」
「えっ」
「ダメ。あげない」

腕を伸ばして、が届かないところまでクッキーを持ち上げる。

「なんでぇ」
「だっておいしーんだもん。あげない」
「うぅ…嬉しいけど……なんかぁ…」

複雑な顔をするの前で、さらにクッキーをかじる。

「……それじゃ、いたずらする」

それを見たは、悔し紛れかそんなことを言う。

「ちょっと」

そして紫原の体にしがみつくように抱きついて、なにやら手指をわきわき動かし始めた。

「ちょ、なにやってんの」
「いたずらっ」
「ちょ、やめ、やだって…やだ、やめろし!」

の手が、脇腹をくすぐる動きをする。
慌てて防ごうとするが、の動きは執拗だった。
細い指がこちょこちょ動いて、普段あまり触れない敏感な場所をいじめてくる。

「ちょまっ、あっ、やめ、ふふっ、はっ、ふふふ、ふは、ちん!」
「えへへ、くすぐったい?」
「もちょこいから!やめてって、ひっ、はっ、ひひっ…!」

脇を固く締め、腕先での手を掴む。
そこでようやくくすぐる動きは止んで、は得意げな顔で紫原を見やる。

「いたずら完了〜」
「悪質……」

くすぐられるというのは意外に、なんというか、面白おかしい拷問になり得るのだな、と紫原は思う。
けれどもそれをいたずらだと言い張ってしかけてくるに対する愛しさもある。

「仕返し」
「あ、んっ…!」

気付けばの唇を奪っていた。
自分の半分くらいしかない肩を抱き寄せて、困惑しながらも上を向く頭を撫でて。
唇を合わせ、柔らかさとぬくもりを味わう。
少し離れてはまた触れて、また離れては触れる。
それを繰り返すうち、キスの最中はどうにか呼吸を止めようとしているらしいの身体が苦しげに揺れる。

「息していーのに」
「だって…」

唇を離してそう告げると、は恥ずかしそうに視線を逸らした。
……そーゆーとこいちいち可愛いんだよ。ふざけんなよ。
なんて思いつつ、紫原は再びに口づける。
今度は半開きの唇を押し当てて、の上唇を舌で舐める。
それがもっと深いキスを求める合図だと悟ったは、おずおずと口を開いてくる。
そうなればもう、紫原からしたらしめたもの。
力強く舌をねじ込んで、温かな口腔の中でためらっているの舌をすくい取る。

「んひゅっ…あ、あつひくん……!」

も舌を寄せてくるようになったら、今度は舌を歯で挟んでやる。
そのまま強く吸っての舌から滲み出てくる唾液を味わうのが、紫原は大好きだった。
まるでの口の中を、自分の舌で犯している気分になる。
乱暴なことはしたくない。痛い思いはさせたくない。
でもちんのことはオレが支配したい。オレでいっぱいにしたい。
オレのことしか考えられないようにしたい。
それが紫原の欲求だった。

「ふあ…ぁ、アツシくん……」
「……えっろい顔」
「えろくないもん…」
「んーん、ちょーエロい顔」

ようやくの唇を解放すると、潤んだ瞳が紫原を見つめてくる。
そうそうこの顔。
ちんのやらしいスイッチが入って、オレのことばっかり考えてる。
こうなったらもう、身体に触れても嫌とは言われない。
紫原はのシャツの下にある素肌をまさぐる。
一瞬ピクリと反応があったが、それは抵抗ではなく、嬉しさで肌が粟立つ前兆だとすでに理解している。

「ん……」

シャツとセーターを一気に捲り上げて、のまるいおへそを見た瞬間、紫原の中でいたずら心が沸き立った。
さっきされたことの仕返し。
……いや、もともとはクッキーをくれない紫原に対しての逆襲だったわけだから、帳尻が合わない気もするがそれはさておき。

「ん…っ」
「ひゃあっ?!やっ、あっ、アツシくん…?!」

のおへそに、黙って頭を近づける。
お腹に垂れた髪の毛が降りかかってくすぐったいのか、の手足が驚いたように震えたが、紫原は構わない。
そのまま舌を伸ばして、おへそのくぼみを舐め上げた。

「ひゃひいっ?!あ、アツシくんなにしてるのぉっ!」

予想通りの反応に満足する。おへそを舐められるのは、くすぐったいらしい。

「ん…ちょっとしょっぱい……」
「ひあっ、やっ、やめてぇっ…!」

急に全身を飛び跳ねさせるが愛おしい。
紫原は舌を尖らせると、その先でおへその中をぴちゃぴちゃほじくり返す。

「やだ、あっ、やっ、ひっ、ひいああっ!」
「じっとしててよ。舐めらんないじゃん」
「舐めちゃやだぁっ!」

未知の感覚にじたばたするを押さえつけ、何度も何度も舌で撫でる。
の肌が粟立ち、下腹がぴくぴく震え、やがて内股をすり寄せるようにして身をよじる。

「やだ、やだ、くすぐったいからぁ……」
「くすぐったいだけ?」

もじもじと両脚を寄せるのは、本当にくすぐったいから?

「くすぐったいよ…やだ、やだから……」
「ホントに?」

問いかけながら、スカートを捲る。
その瞬間にがしまった、という表情になったのを、紫原は見逃さなかった。

「濡れてるし…」
「う、ううっ……!」

の下着は、見ただけでわかるほどに湿っていた。
これを脱がせれば、中の割れ目はちょっと開いているに違いない。

「くすぐったいんじゃなかったのー?」
「く、くすぐったい、ん、だけどぉ……!」

はそっぽを向きながら言い訳する。

「変なんだもん…くすぐったいのに、いやなのに、アツシくんに舐められてるって思ったら……なんか、なんかぁ…」
「おへそなのに?」
「ほ、ホントに、変なの!気持ちいいところじゃないはずなのに…」
「……っ」

興奮で震える。
下半身に一気に熱が集まって、腰の奥が疼くのがわかった。

「じゃ、きもちいとこも舐める」
「えっ?やっ、やああっ…!あ、アツシくん……!」

下着の上から、の秘処にかじりつく。
何度か舌で割れ目を往復すると、下着の布地はの粘膜にぺたりと張り付いた。
おかげで性器の形がありありとわかる。

「ん……んっ……」
「あ、ああぁっ…や、やめ、あっ、あ……!」

パンツ越しなら、ココはちょっと噛んじゃってもだいじょーぶ。
何度も肌を重ねるうちに得た体感で、紫原はの肉芽に歯を立てる。
するとの身体はビクリと震えて、膣口からどろりとした粘液が溢れ出す。
下着をさらに濡らしていく。
最初は唾液のように透明な、さらさらした液体が出る。
でも、の興奮が深まっていくうちに、だんだん白く濁ってねばねばした液体に変わっていく。
それも紫原が、と何度も行為に及ぶうちに覚えたことだ。

「……いい匂い。すっぱい匂い」
「そ、そんなこと言わなくていーの!」

最初は奇妙な、少なくとも美味しくはない味と匂いだと思っていた。
それが今では少し味わうだけで紫原の雄を刺激してやまない媚薬だ。
本当は今すぐ下着をむしり取って、の粘膜を生で感じたい。
そう思うのに、紫原は少しためらっていた。

「なんていうか…なんかさぁ…っ!」
「んんっ…!あっ、あ、やあっ…!」

唇を秘唇に押し付けたまま喋ったものだから、が反応して震える。
……こんなに可愛くて感じやすい恋人を、めちゃくちゃにしてやりたい気持ちが大きくなっている。
きっと下着を脱がせてしまったら、自分は歯止めが効かなくなってしまう。
頭の中にぼんやりと靄がかかった状態になって、気がつけばに自分の欲を押し込んで獰猛に動いている。
そんな状況が何度もあった。
そうなってはいけない。できればのことを余裕を持ってリードしながら、優しく繋がって気持ちよくなりたいというのが紫原の心なのだ。

「ね……このまま、いー?」
「このまま……?」

下着をつけたままの割れ目をなぞると、が疑問を訴えてくる。

「だから、こうやって」
「あっ……!」

紫原がズボンを脱ぐと、の瞳は一点に集中する。
十分すぎる熱を持って疼く肉茎が自分に近づくのを、固唾を飲みながら見守っている。

「このまま擦っていい…?」

布地に覆われたの割れ目に、剥き身になった紫原をぴたりと添わせる。

「う、うん……」

するとも紫原の意図することを理解したのか、コクンと頷いた。

「でも、パンツが…布が擦れたら、アツシくん、痛くない?」
「だいじょーぶだって」

ゆっくり腰を揺すりながら答える。
実際に少し擦るだけで快感が込み上げてきていて、が懸念するような感覚はない。

ちんすっごい濡れてるから、気持ちいい」
「ううっ…あっ、あっ、あっ……!」

は恥ずかしさで俯くのに、紫原の動きにつられてすぐに声を漏らしてしまう。
濡れたクリトリスを恋人の肉茎で擦られるのは、それだけ気持ちいいことらしい。

「あ…う、やばいかも、これ…」

紫原はの背中とベッドの隙間に手を入れて、の身体の位置を少しずつ移動させる。
……図らずもこの体勢は、紫原の普段の自己処理、平たく言えば自慰に酷似していた。
いつもはベッドと自分の間に枕を挟んで熱を押し付けることで溜まった欲を消化しているが、今はの身体でそれをしている。
その状況を自覚すると、紫原は奇妙な興奮に追い立てられた。

「オレ…っ、ちんで、やばいことしちゃってるかも……っ!」
「ああうっ…や、あ、がくがくするの、やだあっ…!」

最初はあくまで紫原がゆっくり動いて、の秘唇めがけて腰を振っていた。
にもわずかながらに下半身をうごめかせる自由があったのだ。
けれど今はベッドにの身体を押し付けて、身動きが取れないにひたすら肉茎を当てている。
熱い割れ目、すべすべの下腹、むっちりとした太もも、それら全部で肉茎を擦り上げて、自分ばかりが快楽を追求している。
それをどうにかしたいと思うのに、どうにもならない。

「はあっ、やば、オレ、ちんの身体で、してる…」
「し、してるって…」
「一人でするときみたく、してるかも……っ!」

……しまった、と紫原が思ったのは、その言葉を聞いたの身体がびくーんとこわばってからだった。

「あっ、アツシくん、普段、こんな風に……?」
「……!」

もうやけくそだ、と頭を振って、紫原は抑圧をかなぐり捨てた。
自慰というのは紫原の中でも恥ずべきことで、普段そうするときの細かい所作なんて知られたくもない。
だというのに口を滑らせてしまった。もう取り返しがつかない。突き通すしかない。

「あーっ……もお…!」
「ふぁっ、やっ、あっ、強いっ…おちんちん、当たるぅ…っ!」

その上はこんなことを言って煽ってくる。
紫原は肉茎をしっかり割れ目に添わせて、ひねるように腰を使う。
そうするとの敏感な場所が強く刺激されるとわかっている。

「あっ、あっ、やだっ、それやだ、きもちいいのやだっ」
「なんで…っ、気持ちいいならいいじゃん……」
「だ、だって絶対、私の方が先にいっちゃうからぁ…!」

紫原に挟まれながら、がいやいやをする。
その言葉に嘘はなく、の身体がせわしなく疼きだしているのが証拠だ。

「いーよ、よくなって…ちん、よくなってっ!」
「ふあああぁっ……!!」

肉茎の先がクリトリスを押し潰した瞬間に、の身体が思い切り跳ねた。
紫原に圧迫されながらも下腹を震えさせ、唇をだらしなく開いて恍惚の表情を作る。

「あっ、はあっ、あああっ…あっ、あ、アツシくんも……!」

それでもぐったり脱力してしまうことはなく、紫原のことを気にかけている。

「して、アツシくん、私のからだで…気持ちよくなってぇっ…!」
「あ…っ、く、かわいーこと言うなしっ、あ、ダメ、出る、あっ……!」

押し寄せた熱が吹きこぼれてしまうのは、あっという間だった。
いつもは詰めたティッシュに向かう精液が、のスカートの中で破裂する。
やっちゃった……なんて罪悪感を覚える頃には、の下着も肌もスカートもどろどろだった。

「ごめ……汚しちゃった」
「ん…だいじょうぶ、嬉しかったから、別にいいよ……」

だというのには呑気というか、言葉通り嬉しそうに呟く。

「アツシくんが私で気持ちよくなってくれるの、すごく嬉しいから…」
「……」

そう言われたら言われたで、なんとも申し訳なさがムラムラしてくる気もする。

「この間は私がするとこ見せたから、おあいこ…」
「……そー言えば、そっか」

自分が望めばはなんだってしてくれるし、喜んでくれるのだ。

(幸せにしたい……)

自分が。
この可愛い存在を、自分の手で。
そんな漠然とした想いを抱く紫原だった。