「アツシくん、お誕生日おめでとう!」
「んー…アリガト」
いつものように男子寮に忍び込み、うまいこと二人きりになったの声に、紫原は素っ気ない。
……素っ気ないが、抱きついたを受け止める腕は、落ち着きなくワキワキしていた。
まんざらでもないのだ。
「あ、あれって……わ、すごい」
紫原の部屋の隅には、お菓子の箱や袋が大量に積み重なっていた。
「プレゼント、もらったの?」
「んー……まあいいじゃん、そんなの」
の視線を手で塞ぐ紫原に、はその「プレゼント」が誰からのものか、大体察しがついた。
ファンの女子たちからの贈り物だ。
紫原は陽泉高校バスケ部のエースである。
上背にばかり気を取られてしまうが、顔立ちだって悪くない。
(ううん、悪くないどころか…すごく格好いいし…)
というの想いはさておき、そんなアイドル的な記号を持つ男子生徒に「お菓子が大好き」というチャームポイントが加われば、
恋に恋する年頃の娘たちは、彼の誕生日を祝うことをひとつのイベントとしてとらえた。
と紫原の恋仲は周知の事実であるが、そんなんどーってことないのだ。
付き合いたいわけではない。ただはしゃぎたいのだ。
「お菓子減らせって言われてんだけどなー…」
「えっ?どうして?誰に?」
「まさこちんに……太るからって」
ああ、荒木先生のことか。とは理解する。
「アツシくん、ぜんぜん太ってないのに」
身長と体重から数値を割り出せば、むしろ痩せているほうである。
「なんかー…体脂肪率とか、筋肉の割合とかー…色々あるみたい」
「そうなんだ……」
納得しつつ、紫原がファンからの「プレゼント」にネガティブな反応を見せたことを、は密かに喜んでいた。
嫉妬からくる後ろめたい感情だ。
滲む自己嫌悪をごまかすように、は持っていた包みを紫原に押し付けた。
「はいっ!これ、プレゼント!」
パステルカラーの包装紙にくるまれた、なにかフワッとしたもの。
受け取ってみて、紫原はそれが「お菓子」ではないと悟ったようだった。
「なに、これ。開けていー?」
「うん!開けてみてっ」
ヘヘン、とは得意げに胸を張る。
アツシくんが大好きなことが分かり切っているお菓子ではない。
でも、少しは役に立つようなもの。
気に入ってもらえるかはさておき、ちょっとは機転の利いたものを選んだ自信があったのだ。
包みを解き、紫原がそれを広げるのをわくわくしながら眺める。
「ん…?毛布?」
こげ茶の分厚い、毛足の長い布。
「もう少し、バッて広げてみて」
が促すとおりに、紫原は「それ」を広げた。
「あっ…服になってる」
そう。
「最近夜にさー、ときどき寒くて起きちゃうんだよねー」
とこぼしていた紫原へのプレゼントとしてが選んだのは、手触がよく分厚い布で作られた部屋着だった。
だぶだぶと余裕を持った裾に、首や耳まで暖かいフードつき。
ローブではなく、ズボンのように両足が分かれていて、男の人でも着やすい。
つまり……。
「着るもーふ?」
「そうそう、そんな感じ!」
実際の商品名はちょっと違うのだが。
「ど…どうかな」
このプレゼントが、紫原のお眼鏡にかなうものか。
「ちょい待ちー」
ドキドキするの前で、紫原はゴソゴソと、さっそく「それ」を部屋着の上から着込み始めた。
「…………」
前面のボタンを閉め終えた紫原は、なぜかフッと目を伏せた。
「あ、アツシくん?!」
そしてそのまま、ベッドの上に倒れ込んでしまった。
「やばいよ…ちょーあったかい……モコモコできもちーし…あー、オレ、ダメんなるー……」
慌ててベッドを覗き込んだの前で、巨大なぬいぐるみのようになった紫原は満足を伝える。
「ありがと、ちん」
「えへへ…これで夜も寒くない…よね?」
「うん…ってゆーか、もー今寝ちゃいそー」
思った以上に気に入ってくれたみたい。
は笑顔で、紫原が放りっぱなしにした包装紙を畳む。
「ちんも持ってんの?このもーふ」
「えっ?ううん」
「なーんだ…きもちーから、ちんも着ればいいのに」
「ぺ、ペアルックってこと…?!」
「ぺあるっくぅ?」
の驚きの声にも、やる気のない返事しかしない。
もはや今の紫原に、起き上がるなどという選択肢はない。
このまま身に着けた魔装束が送り込む眠気に流されるだけだ。
「ねむーい…」
「寝ちゃう?電気、消す?」
「んーーー…」
……あ、ちんがいるんだった。
それを思うとただ寝てしまうのも勿体ない。
だがもはや指一本動かしたくない。
まとわりつく眠気に沈んでしまいたい。
「…あ、そーだ。ちん、きて」
「ん…?」
「電気はいーから、きて」
目をしょぼしょぼさせながら、を呼ぶ。
「一緒にお昼寝しよ」
「……私も寝ていいの?」
「んー。このもーふきもちいから、ちんも着たほうがいーし…だから…でも…ねみーし…」
「わかったっ」
言葉の後半はモゴモゴと呂律の回らない唸り声だったが、は理解した。
ピョン、と跳ねるように、紫原の隣で横たわる。
「暖かくても、お布団はかけないとだめだよ」
「んーー……」
そう言って隅に追いやられていた掛け布団を引っ張り上げたが、紫原の意識は、もはや眠気に囚われているようだった。
「ふあっ?!」
紫原の意識が覚醒したのは、わずか三十分後のことだった。
「あれー…オレ……あ、ちん……」
紫原の隣で、丸まったが小さな寝息を立てていた。
「……あ、だからか……」
ゆるゆると眠りに揉まれている中で、紫原は変な夢を見た。
甘ったるいシャンプーと汗の匂いがして、下腹らへんがムズムズと温かくなってくる。
なんかやらしー夢見ちゃってる、とぼんやりと理解するのだが、おかしなことに、それを受け入れるものがあったのだ。
布越しのじれったい感触だが、むちむちと詰まった心地よい「なにか」に、紫原は股間を押し付けていた。
これは只事ではない、と急激に覚醒するに至ったのだが……。
「……ちんがいたから」
まだ少しぼんやりする頭で整理した事実に相違がなければ。
二人で添い寝をするうち、は紫原と腕と足の間で胎児のように丸まってゆき、
紫原はその肌や髪の匂いにつられて股間に熱を集め、突き出した腰が、ちょうどの膝やふくらはぎに当たっていたのだ。
「あー……うー……」
眠ったに、勝手に淫らな悪戯をしたような罪悪感を覚える。
「ちん」
「んううっ……?」
の肩を揺すって声を掛ける。
前に寝ているの身体を弄ったらよくない反応をされてしまった。
それを踏まえて、ごまかすよりは正直になった方がいい、と紫原は開き直る。
「あ…アツシくん、起きたんだ……」
ふわあ、とあくびを噛み殺しながらも身を起こす。
「おはよー…いま何時…わっ?!」
無意識のうちに携帯電話の所在を手で探ったを、紫原が後ろから抱きしめた。
「あ、アツシくん……?」
「…なんか、エロい夢見ちゃった」
「えろいゆめって、それって……」
慌てて振り返ろうとするのつむじに鼻をうずめ、紫原は夢の中でも味わった香りを鼻腔で感じ取る。
「……たぶん、ちんとしてる夢」
「えっ…え…あ…わあっ……!」
熱を持った紫原の股間に、スカート越しのの尻が触れる。
「あ、アツシくん…もう、こんな……」
ふくらみを確かめるように、の臀部が蠢く。
寝起きのふわふわした表情から、期待と欲情に染まった顔に変化していく。
そこに紫原への拒絶はない。
「いい……?」
「だ、だめなんて言えないよ…あぁ……!」
の頬やうなじを紫原の鼻筋が撫でると、の顔は一層とろけた。
「…ふ、服。脱がないと…しわになっちゃうし……」
そう言いながら服の胸元に指をひっかけるは、裸になって仕切り直しをしたいようだった。
「だめー。寝てる時点でシワになってんの〜」
「アツシくんも、服、汚れたらいやだよね…?」
「ん〜ん。全然」
紫原にとっては、わずかでもと離れることのほうが嫌だった。
「その毛布も、きょうあげたばっかりだし……」
のほうは、このまま事に及ぶのがどうしても嫌らしい。
……そうなると、情事の際にわずかながら余裕を覚えた紫原には、意地悪な頑固さが生まれてくる。
「……わかった。ちょい待ち」
そう言って、の腰に回していた腕を緩める。
がホッとしている隙に、部屋着の前ボタンをいくつか開ける。
「ほら、ここに入って」
「ええええっ?!えーッ?!」
ゆっくりとトップスを脱ぎかけていたを再び抱きしめて、部屋着の中にすぽんと落とし込んでしまった。
「中に入っちゃえば、汚れるとか気になんない」
言いながら、毛布と部屋着のはざまにを閉じ込めるように前ボタンを閉めてしまう。
「やっ…ちょ、これ…っ!!あ、アツシくんっ!」
「へへへ。カンガルーみたい」
こげ茶の毛布の中に二人で収まって、は頭だけ前ボタンの隙間から突き出している。
それは確かに、有袋類が子供を育児嚢に入れている姿に似ていなくもなかった。
「出してぇ!」
「ヤダ。このままするの」
にしたって特別な事情はなく、ただなんとなく拒んでいるだけだった。
だから意地を張り続ける理由はないのだが、こんな着ぐるみに閉じ込められているような状況になってしまうと、どうしていいかわからない。
「出しっ…あ…!!」
が中で膝を折ったタイミングを見計らい、紫原が身体を前に倒す。
「あわわっ…はわっ…なにこれ……!」
は毛布の中で、紫原の立て膝と腕、そしてベッドの間にできた「すきま」にいる。
「や、やだこわいっ…毛布破けちゃう…!アツシくん…!」
「んー…する?」
「するっ。するからぁ…このままじゃ毛布が……」
「破けちゃうねー。ほらほら、オレにつかまって」
焦りと羞恥で目を回すを、紫原はゆるくにやつきながらリードする。
「んっ…!!」
は半端に出した頭を引っ込めて、毛布の中でゴソゴソと方向転換する。
「あっ…あわ…アツシくんの…当たる…!」
は紫原の身体に抱き着いた。
その拍子に、足の間に勃ち上がった熱が当たったのだ。
尻肉で感じるよりもずっと生々しい猛りは、の思考を奪っていく。
「今度はコアラみたい」
抱き着かれて満悦な紫原の言葉にも「そういえばカンガルーとコアラって同じ有袋類なんだよね」というアホな雑学を想起するだけ。
「だ…出したほうがいい?脱がしたほうがいい…?」
「ん……おねがい、ちん」
紫原の手は袖の外。
今、この熱を遮っているズボンと下着を脱がすことが出来るのは、毛布と服の間にへばりついているだけなのだ。
「ちょっとまって…アツシくん、腰、少し上げて……?」
「んー」
言われるまま、紫原がくっ、と腰を浮かせる。を乗せたまま軽々と。
はドキドキしながら、ズボンのはき口とトランクスを一緒にずり下ろす。
「…わぁぁ……」
途端に押さえを失った肉茎が、の内股をたたいた。
「すごい、ぺちんって音した……」
「……ちんとくっついてるから」
それまで余裕ありげだった紫原の顔に、さっと羞恥の色が差す。
「あ…もう、ぬるぬるするのも出てる……」
「あっ……!!」
が両手で紫原の肉茎に触れると、先端と指の間から、にちゅっ…と湿った音がする。
「アツシくんの、先っぽ……」
「だめ、ちん…く、それ、もちょこいからダメ!」
「モチョコ…?」
熱に浮かされた顔で、が肉茎の先っぽをいじる。
くすぐるような優しさで、くちゅくちゅと亀頭と鈴口を撫で回す。
そうしていくうちに、肉茎にはさらに熱が集まってゆく。
「うぅ…うっ、出すだけ、でしょ…あ゛、ち…っ、先っちょいじんな〜…!!」
「だ、だって…ズボンから出したら、もうこうなってたんだもん……」
そう言いながら、決して手を緩めない。
片手でぎゅっと根元を握りながら、もう片方の手では先端をゆるゆると撫でる。
を愛撫に夢中にさせているのは、紫原の反応だけではなかった。
ブカブカの毛布の中は、と紫原の肉体だけが閉じ込められた緩慢な密室だ。
その中で肉茎から滲みだす液体の匂いは、いつもの何倍も濃厚に感じられた。
自分以外は絶対に知らない、恋人のいやらしい匂い。
その感覚がを陶酔させるのだ。
「アツシくんっ…もっと…いっぱいこすってあげるから、もっと大きくして…」
「だめー!あっ…コラ、ダメっつってんじゃん…!こら、こらっ!ちんっ!!」
「わっ?!」
紫原が、に思い切り身体を押し付ける。
もてあそんでいた手をはねのけて、の下腹あたりに肉茎がベタンとくっついた。
「もぉ〜!スキ見せるとすぐオレで遊ぶんじゃん、ちんさあ!」
「やっ…あ、やっ…んんっ?!」
外側の毛布ごとの身体が持ち上げられ、肉茎の上に落とし込まれる。
「あっ…アツシくんの……!」
異を唱えるより先に、紫原がの腰を強く掴んで前後に揺する。
は下着を履いたままだから、布越しに秘処の割れ目を肉茎で擦られているような状態になった。
「んくぅ…!ダメぇ…あっ、あっ…アツシくん、だめぇ…!」
「オレがダメって言っても、ちん…やめなかったじゃん」
「だ、だって……!」
「でももだってもないのー」
「だめっ…ほ、ほんとにだめ…い、入れてないのにぃ…ごしごしされるので…よくなっちゃうよぉ……!!」
が困惑している理由はそれである。
下着の奥でぐしょぐしょに濡れた粘膜や肉芽を、硬くなった紫原が擦るのが…変になりそうなほど気持ちいいのだ。
「いーじゃん、よくなってよっ…オレのごしごしでよくなればいーじゃん」
「ふあぁっ…だって…んっ、ア…へ、変なことしてるみたいなんだもん……!!」
こうして互いに身を寄せ、粘膜だって密着しているのに。
しているのが交接ではなく擦り合いだと思うと、なんだか倒錯的な気分になる。
その上は下着をつけたままなものだから。
「ん…きもちーよ、ちんの…パンツ履いてても、ぬるぬるになってるのわかるし」
「言っちゃだめっ!!そんなこと…ふぁっ、あ、あぁあぁ……!!」
紫原の先端が、充血したクリトリスを狙うように擦りつけられる。
下着が互いの粘液で用をなしていないというのは、自身もわかっている。
「へ、変なのぉ〜っ…!アツシくん、入ってないのに…入ってないのに、すごく…してるみたい…!」
「はあっ…オレもそー思う、そんな感じ…入れてないのに、ちんと一個になってる感じ…あ、くあ゛…!」
が毛布の中で感じる匂いもそうだ。
男女の粘膜と、分泌液が醸す性の匂いそのものを、いつもより濃く感じ取っている。
……それどころか、毛布と紫原の身体で二重に包まれていると……なんだか肉体そのものが、二人で一つになったような錯覚を抱く。
「いっ…ん、ひとつになっちゃうよぉ〜…!アツシくんとくっついちゃう、溶けちゃう、変になっちゃうぅ……!!」
「あ゛ーっ…あ、オレもなる…ちんとくっつく……!もー、出るっ…出る、ちん……!」
「んぐうぅうぅうっ…あっ、ふうぅうっ……うううぅううっ……!!」
が絶頂と共に紫原にしがみついた瞬間、紫原の腰が強くひくついた。
「あっ?!あっ、あ…で、出て…る…おまたのとこで、ぴゅーって…んっ……!!」
「っはあぁ…!う゛っ…う、ん…ちん……!!」
どくっ、どくっ、と、何回かに分けて射精の痙攣が続く。
ドロリとした重さを持つ精液が、毛布の中…の太腿や尻に打ち付けられる。
「ふあっ…ん…っ…け、っきょく、よごし…ちゃった……あぁ……!」
「…ゴメ…プレゼント……でも……」
大きな息を吐きながら、紫原が仰向けに倒れる。
つられても、紫原の胸板に倒れ込む形となる。
「ちゃんと洗って、毎日使うから……ちんのプレゼント」
「んんっ……!」
照れくさそうに顔を背けて呟く紫原に、も赤くなってコクンと頷く。
「わ…私も、買おうかな…アツシくんと同じサイズの……」
「……オレのと?ぶかぶかじゃん」
「……だから、アツシくんといっしょに入る用の……」
「…………」
「…………」
「…………恥ずいじゃん」
「私だって恥ずかしいの!!」
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2015年10月09日、むっくんハピバ〜!
学園キャラだと誕生日ネタというのは(に限らずバレンタインとかクリスマスとか)同じヒロインで書くと、
こう、マンネリぃな?!とか思ってしまってハードルが高くなるのですが
むっくんはまだ誕生日ネタ書いたことなかったナーと!えへへ
最近むささびとかモモンガとかの「飛膜」がある動物にハマってて、
むっくんが着る毛布を着用したらモモンガっぽいのでは?とか勝手にたぎっていた。デヒャア