「アツシくん、本当にそれでよかったの……?」
「うん」
の不安な声にまったく構う様子なく、紫原が答える。
積もった雪と、踏みならされて所々凍った地面。
今日は幸い風のない日で、冷気は身体を包むだけだ。
二人で並び早足で歩けば、ある程度はねのけられる。
「…………」
近場のバス停から、寮までの距離。
思うところあって、は無言のまま。
「ん?どしたのちん」
「えと……ううん……」
悩みの種である紫原が、無邪気にに呼びかける。
はかぶりを振ったが、何でもないですよ、という笑顔は作れなかった。
「むー……あ、ちん入って」
「う、うん……」
男子寮の入り口が見えて来ると、紫原が羽織ったコートのボタンを開ける。
そのまま大きな鳥が翼を広げるように前をくつろげて、の身体をすっぽり包み込む。
「……んっ」
がしっかり自分にくっついたことを確認すると、紫原はコートを閉める。
「んむむっ……」
暖かさと、紫原の心臓の鼓動と、ちょっとした息苦しさ。
「歩くよ?」
「う、うん……」
このカモフラージュ、意味あるのかな……なんては思うが、大好きな彼氏のコートに包んでもらえるのは心地よいので、やめたいとは思わない。
……ようは、男子寮に入り込むのを、大柄な紫原で隠しているつもり、なのだが……。
もちろんコートの裾から出る足は四本だし、うち二本は女のもの。
上半身だけ見ても、いくら大柄だからと言ってコートの前が不自然に膨れるのはごまかせない。
けれど紫原はごくごく真剣にを抱えてゆっくり歩き、人が来たらを壁側に寄せてやりすごそうとする。
それがなんとも、とてつもなく嬉しいは……隠蔽効果はさておき、コートの中で紫原の上着をぎゅっと握る。
「つーいたっ」
「ぷはっ……はぁ、おじゃまします、アツシくんっ」
「うん、いらっしゃいちん〜」
コートの前を開けられて、は勢いよく飛び出す。
それからすぐに振り返って、紫原に抱きついた。
「アツシくんあったかい……」
「ちんもあったかい。離したくないや」
紫原はを抱きしめながら、さっき買ったばかりのビニールを持ちあげる。
がさがさ、という音を聞いて、の心は再び沈む。
「ねぇ……本当にそれでよかったの?」
「そう言ってるのに」
「でも……」
……バレンタインは、どんなチョコがほしい?
がそう尋ねると、紫原はんん……?と首を傾げた。
「チョコじゃなくても、ケーキとか……」
そう言い足すと、さらにんんん……?と。
プレゼントなんて、迷惑さえかけなければ自分が贈りたいものを贈ればいい。
そう考えていただが、紫原へ贈るバレンタインチョコについては行き詰まってしまった。
高価なものや限定品は、まず入手の都合がある。
限られた設備では手作りも難しい。
それにアツシくんも、お菓子のブランドには何かこだわりがあるんじゃないかな……?
そう手詰まりになった末に、本人に何がよいのか聞くのがいい、と。
「オレ、これ好きだもん」
そう言って紫原がビニールから取り出したのは、寮から徒歩で行ける距離にあるスーパーマーケットの特価品。
準チョコレート菓子のファミリーパックだ。
これがいいな、とスーパーでバス代より安いお菓子を手にした紫原に、はいまいち納得できないでいた。
……本人の欲しいものをあげれば、という気持ちで尋ねたはずなのに。
の想定よりずっと敷居の低いものを選ばれてしまったので、贈り物をしたいという欲求が満たされない、奇妙な居心地の悪さがある。
「開けていい?」
「あ、うん……めしあがれ」
袋の端に手をかけながら言う紫原に胡乱にうなずきながら、はぼんやり思考を巡らせ……。
「アツシくん、お菓子食べてるときってどんな気分?」
チョコレートがコーティングされたビスケットを口に運ぶ最中だった紫原は、の問いかけに手を止める。
「んー……」
首を傾げて、そこそこ真面目に悩む。
お菓子を口に運んで咀嚼するのは、もう紫原にとっては息を吸って吐くのと同じくらい、当たり前の行為だ。
それを改めて形容しろと言われると難しい。
が、目の前のの不安げな顔も気になる。
……なんでオレがいいって言ってんのに、ちん気にしてんだろ。
ビスチョコダメだったのかな。美味しいのに。
「とにかく、食べてたい。食べられると幸せじゃん」
「ご飯とは違う?」
「違う。ご飯はイベント。一日三回。おかしはいつ食べてもいいの」
紫原がそう答えるのを聞いてなお、は思い悩んでいる様子だった。
紫原は口許に持っていきかけたチョコレートを、の前に差し出す。
「一個あげる」
「いいの……?」
「うん、美味しいよ」
やっぱり納得してない様子ではチョコを受け取って、かといって口に運ぶでもなく……無言になる。
「バレンタインチョコ、これでいいの?」
「ん……?どーゆーこと?」
「だから…いつも食べてるようなのじゃなくて、もっと、なんか…贈り物っぽいのが……」
「ああ」
モジモジと視線を逸らしながら言ったに、紫原はようやく納得する。
ちんは特別なものを贈りたかったんだ、と。
けれど……紫原にとって、それはあまり意味のない悩みだ。
「オレ、美味しければなんでもいーよ。だって食べたらなくなるもん」
そりゃあ高価なものは相応の味を持っている。
それはわかっているのだが……。
「高くても安くても、食べたら全部一緒じゃん。だったらいっぱい入ってる方がいーよ」
「でも……」
やっぱり納得行かない様子のの手を握り、その腕をグッと持ち上げさせる。
「あっ……」
「んむっ」
が手にしていたチョコを、紫原自らぱくっと口にする。
それをモグモグ咀嚼して、いっときの幸せな気分に浸りながら紫原は語る。
「口さみしーって思うのヤダから、ずーっと食べてたい」
「アツシくん……」
紫原からしたら、強引な話題の打ち切りだったのだが。
にしてみると、もしかしてアツシくんはそんな不安になるほど、お菓子を食べていないと落ち着かないほど、満足に食べられない時期があったのだろうか……なんて考えてしまい、
無邪気に見える彼の行動の奥に、根ざした過去なんてものを勝手に想像してみたりもする。
そうなると、なにも言えなくなって……。
「だから、これでいーの。わかった?」
「わ、わかった」
ならいいよ、とうんうん頷いて、紫原はの頭を撫でる。
絹糸みたいな髪の流れに指を入れてつるつるなぞると、の顔から不安が消えていく。
ゆっくりと頬が紅潮して、幸せそうにまぶたを閉じる。
「…………」
その顔を見ているとなにかこみ上げるものがあり、紫原はすっかりリラックスしているの膝の裏に腕を入れた。
「うわひっ?!わ、ああぁっ?!」
「暴れないのー」
至上の安寧から一転、急に地面から離れてしまった我が身には慌てる。
紫原に横抱きされ、自分はベッドに運ばれようとしている……と理解するも、宙に浮く恐怖は払拭されない。
「アツシくん、わ、私重いからっ!」
そう言いつつも、紫原の胸板にしがみついてしまう。
降ろして!と暴れて、もし落とされてしまったら……という嫌な想像がつきまとうのだ。
「大丈夫、全然軽いから」
「あっ……」
の恐怖は、そう長く続かなかった。
部屋の机からベッドまでの距離は、紫原にかかれば身体を旋回させて一歩踏み出すだけなのだ。
ポスンとベッドに落とし込まれて、ちょっと拍子抜け……なんていう名残惜しさを抱いたりもする。
……が、そんな感情を断ち切るように紫原が全力でのし掛かって来たので、は慌てて恋人の顔をのぞき込む。
「あ……アツシくん、したくなった……の?」
「うん」
素直に頷く様子は、幼い子供のようだった。
それを見ていると、の心にも、紫原と同じように何とも言えない気持ちが沸き上がる。
「しょ…しょうがないな、もう……」
むずがる子供をなだめる親の口調のくせに、の口の端はだらしなくゆるむ。
に対する紫原のストレートな物言いは、身勝手さではなく信頼の証だと知っているのはだけだ。
そう思うとは、身体より先にまず心がゆるむ。
うなじがソワソワし始めたかと思うと、背骨を伝ってみぞおちまでくすぐったい気持ちが垂れ落ちる。
「アツシくん……お菓子の次は、私が食べたい?」
……そんな酩酊状態なものだから、恥ずかしいことをのたまうのも許してやってほしい。
「ううん、おかしとは別」
「ちょ、真顔でつっこまないでっ!!」
甘い陶酔がぶった切られてしまうと、羞恥心しか残らない。
は自分の顔を覆う。
「おかしは食べたらなくなるから……」
そう言いながら、紫原はに添うように身体を横たえる。
「ちんはなくなんないもん。食べても次はないし」
「次……?どういう意味……?」
「んー……」
返事もそぞろに、紫原はの胸元に顔を押しつける。
「あっ、あ、ちょっと待って……」
紫原のしたいことを理解して、はちょっと身を起こす。
「ちょーだい。おっぱい」
「う……うん……」
幼児が言うみたいに、ごくごく自然に。求めて当たり前だという口調で。
けれども顔は、まぎれもなく色欲に浸りきった男の子。
紫原の行動のギャップに、はたびたび心を揺すられる。
「んっ……」
最近は羞恥よりも、紫原に身体を見せると背筋を襲うゾクゾクの方が大きい。
は躊躇いなく上着を脱いでしまうと、ブラを外そうと背中に手をやる。
「そーじゃなくって、こう、こうだって」
「え?えっ?あ、アツシくん……?!」
緩んだブラを持ち上げながら、再び身体を横たえようとしたに突然のダメ出し。
紫原は上だけ裸になったが横になるのを許さない。
「そのままね」
「え……えわっ、わあぁっ?!」
それどころか、正座したの膝に頭を乗せてしまう。
慌てるをさしおいて、あれあれ届かない、と寝返りを打ったりもする。
「あ……」
の理解が及ぶ。
……そもそもおっぱいちょーだいって、アツシくん言ってたし……。
「こ、こう……?」
膝の上で仰向けになった紫原に向け、ぐっと上体を曲げて乳房を近付ける。
授乳みたいな体勢だが、紫原は成熟した肉体と性欲を持つ恋人だ。
幼子のようにむずがるだけでは済まない。
「あれー……届かない……」
「……ごめん、私、胸小さくて……」
膝枕の紫原の唇と、のやや薄い乳房の先には……いかんともしがたい距離がある。
くそう届け届けェとが羞恥を押し込めて上半身をばたつかせても、どうにもならない。
「アツシくん、わ、私…」
「あ、そだ。こーすればいいんだ」
「わあぅっ?!あっ、や、あぁ……ん……!」
ふいに紫原が膝から離れ、ベッドの上に立て肘を突く。
そのまま幸せそうに、の乳首に唇を寄せる。
「んー…んっ、ん……」
「や、あ……やぁ、ん…あっ、つし、くん……!」
唇で挟み、舌を絡ませて巧みに吸い上げる。
の乳首はみるみる充血していくが、もちろん先から母乳がにじむことはない。
「ん……んっ、んんっ……!」
「ふあぁっ…あ、あぁあ……!」
だというのに紫原は、そこだけ見れば幼児も驚くくらいの貪欲さと、幸せそうな吐息で尖りを吸い続けている。
「あ、アツシくんってばぁ……!」
今日は紫原にペースを奪われっぱなしだ。
そう思ってが非難の声を上げてもびくともしない。
「あっ……」
「ん……?!」
悔しさと、乳房の先から与えられるジンジンする感覚。
そして肌にかかる紫原の幸せそうな吐息。
それらを感じて身じろぎしながら視線をさまよわせた先に、は無言で指を伸ばした。
「ぷはっ…ちん……ちょっと……!」
「い、いいよ、おっぱい吸ってても……」
「ちょっ…ダメだってそこ……!」
がグッと腕を伸ばすと、ズボンの上からでもわかる程に勃起した肉茎に手が届く。
制止も聞かずにそこを握り、ギュッ、ギュッ、と絞るように強弱をつける。
「あ……ヤダ、って……ば」
「……アツシくんはおっぱい欲しいんだよねー?私は…アツシくんの…おちんちん、欲しいなぁ……」
「んっ、あ…、それっ、ちょ…っと……!」
仕返しの心に燃えるに誂えたように、今日の紫原はベルトを通しておらず、ゆるめのズボンだ。
力を籠めてボタンを外せば、あとは引っ張るだけで脱げていく。
「あ……や、アツシくん…熱いよ……」
「待ってってば……!」
「だめ……んっ……!」
下着を押し上げ、窮屈そうに自己主張する熱の形をしっかり確かめる。
……紫原が起きあがれば、こんな体勢はすぐに中断だ。
それをせず、やめろと言いつつ委ねたままということは……紫原だって期待しているに違いない。
そう思うと、の中に好奇心が生まれてくる。
「ん……う、アツシくんの……!」
「わ…あ、くっ?!」
わずかな遠慮も捨て、下着越しの肉茎を掴む。
に握られ、ぎゅむぅ…と軋む熱は、遠慮などいらないと伝えてくる。
「ちん……?!それ、ダメだって……!」
そのままはローラーでも転がすように、紫原の肉茎を左右にゴリゴリ動かしていく。
……それだけ乱暴にしても、壊れるだの潰れるだのといった感覚とはほど遠い。
紫原はさらに硬さを増して、の手を押し返す勢いだ。
「んあ…あ、ダメっ、つってんじゃん……!」
「ダメじゃないよ、これ…すごいよ、アツシくん……!」
さっきまであれほど夢中だった乳房に目もくれず、紫原は
に蹂躙されるまま。
手の中で大きくなる肉と恋人の切なそうな声で、の下腹部に熱が灯っていく。
恥骨が開き、粘膜が充血していくのが自身でもわかる。
息が荒くなり、握った肉茎に集中して、もっと大きくして欲しい、もっと声を聞かせて欲しい……なんて想いが膨れていく。
「アツシくん、直接触ってあげるから……」
「ヤダ、ちょっとちん、ヤダ!やだーっ!」
そう言って紫原は足をばたつかせたが、から離れようとはしない。
その様子に気をよくしながら、はもう拘束具のようになりつつある紫原の下着に手をかける。
「やだ……やだってば、見んなし……!」
「あは…はぁ……すごい……ね、これ……」
「言わなくていーし!」
もはやその大きさに怯えたりしない。
は何度もこれを自分の胎の中に招き入れたし、なにより愛しい人の欲情を分かりやすく顕す部位なのだ。
「大好き…アツシくん……苦しそうだから……ほら」
「んっ……!」
が指で作った輪を、亀頭から幹までずるん、と滑らせる。
先端から滲み始めた液体のぬめりで、それはの想像以上に強い快感を紫原に与えた。
「ダメ、ちん…オレ、ダメ、それされると……!」
「ん……どうなっちゃうの……?」
「ちん、のこと、食べちゃうから……!」
……え、とが目を点にした瞬間に、紫原はされるがままの体勢をパージした。
勢いよく起き上がり、よろめいてうつ伏せになったを脚で挟んで捕まえてしまうと、その長い腕をベッドのサイドボードに伸ばす。
「あ、アツシくん、これぇ……っ」
からすると、突然視界が回ったかと思うと自分のわき腹に紫原の脚という巨大なアームが食い込み、身動きを許してもらえない状態。
ついでにそのアームは、器用に足指の先で自分の下に履いているものをモゾモゾとずらしていく。スカートも下着もいっしょくたに。
ちょっとパニックになりながら紫原の足を叩いてみるがビクともしない。
「もっとおしり上げて、入んない」
「えあっ?!もっ…もしかしてアツシくんあのっ、あの、う、後ろからするの……?!」
「うん、だからホラ」
「わうっ……?!」
やたらと急く紫原の方を必死で振り向けば、いつの間にか肉茎にはきちんとゴムが被さっている。
……毎回、ちょっとずつ、つける早さが、上がってるような……?
そんな方向に泳がせた意識は、脇から手を入れられて身体を持ち上げられてしまうと散逸した。
「やあっ?!わ、私浮いてる?!ちょ、アツシくっ、これは……つあっ?!あ、あ゛ーーーーッッッ!!!」
が膝を立てるまで我慢しきれなかったのだろう。
紫原は逞しい足でしっかり立ち上がり、持ち上げたの身体を落とし込んだ。
……痛いほど勃起した肉茎に、びっくりする程正確に。
「あうッあ、は、入って…るうぅ……?!」
「入っちゃった、ゴメ……きょう、まだ、指で…してないのに……」
「ゆ、ゆび、って、いうか……ああぁあっ……!」
突然串刺しにされたは、裏側から胃を圧される感覚に噎せる。
痛みよりなにより驚愕だ。
自分が手も足も宙に浮いた状態で紫原と繋がっていることも、あれだけ苦戦していた紫原の肉茎があっさり入ってしまったことも。
「ら、らめぇえっ…これへっ…へあぁっ……あ、こわ、い、あつし、くん…こわいのぉっ……!」
「オレ……?オレのことこわい……?」
「ちっが、う……!浮いててこわいっ、もっと支えてっ!」
降ろしてちょうだい、と言わないあたりが、が紫原と恋人関係でいられる所以なのかもしれない。
「いーの……?このまましていいの……?」
「い、いーから、だからっ……!」
の許可を得てうなずいた紫原は、ぎちぎちに拡げられた膣穴を擦りあげる動きを始める。
両手での腿をしっかり支え、ついでに立ったまま。
「これ…いつもと違うとこに当たってる…ちんの中、こんなだったんだ……」
「ああぁあ……う、あ、あぁああ゛あ゛……ッ!」
感嘆の息を吐く紫原とは反対に、は苦悶の声を上げる。
痛いと言うよりは苦しい。
しゃっくりが出るときのような感覚で何度も腹の底が小突かれる。
けれどついさっきのの望みを、紫原は従順に叶えてくれている。
これだけ不安定な状態で揺すられているというのに、不思議と「落ちる」とは思わなかった。
「お菓子は、ずっと食べてていーのっ、そんで……」
「お、お菓子……?」
「食べたら次があるしっ、なくなったら悲しいけど、なくなったら、はっ…次の、新しいの、食べられるし……!」
「ンッ、あ、アツシくん……?」
「でもちんはお菓子じゃないから、次のはないから……は、あ゛っ……!」
……その言葉でようやく、紫原が何を言っているのか理解する。
「あっ、つし、くん……ねっ、ねえッ!」
「だから……ああ、大事に、しなくちゃって、思ってんのに……!!」
なのにぜんぜん大事にできない。
欲に駆られては無遠慮に、突き壊してしまう勢いで求めてばかりいる。
……紫原は無言だったが、はその続きをきちんと聞き取った。
「だ、あぁ…大事に、してる、よね……落とさないよね……?!」
「ったりまえじゃん、落とさないよ、ちん軽いもん……っ」
紫原にとっては、お世辞でも何でもなく本音だ。
くらいの重さなら、抱き上げていてもちっとも苦痛じゃない。
「だ、だったら大事にできてるよ……ぉ、あ、あぁ…わ、私、これ、気持ちいいからぁ……!」
「っ…ホント…?ホントに気持ちいい……?」
「き、もち、いい、よ……ンッ、からだ、びっくりしてるだけぇ……アツシくん教えて、これがきもちーことだって、私に教えてぇっ……!」
紫原の身体が、ぶるんっ、と、大きく震え上がる。
それからウン、ともう一度頷いて、小刻みに急いていた腰の動きを……ゆっくり、味わわせるようなものに変えていく。
「ウあ゛ッ、あぁあ……お、おなか…中、でちゃううぅ……!!」
ずろろろおぉ……と、膣内から紫原が抜けていく感覚に、突かれていた内臓までつられる想像をする。
そこだけ切り取ればグロテスクだが、は不可思議な快楽の坩堝にいた。
「んッあッ、あ、ああぁ……お、奥ぅう……っ!」
「すっごい、ちん……今じゅるーって言った……!」
紫原がから抜けていくときには、釣られて動くクリトリスの根本辺りがムズムズと疼く。
逆にこじ開けながら入ってくるときには内側から潰され、孔のあちこちを擦られて充血が増す。
「へ、変だよぉっ……こっちがわ、前、おへそのほうっ……!」
「ん……?!ここ……?!」
「そッ、そぉ、しょこ、しょこぉおっ……!あ、アツシくんにみぢゅってしゃれると、く、うぁあっ、あ、あ……!」
「は……ちん、もっとちゃんと喋って…気持ちいいとこ、教えて……」
「へ、変にゃのぉ……お、おなかの中から、クリ、押されてるぅっ…さわってないのに、クリちゃんきもちーのぉおっ……!」
いつもと違う体勢だし、の自重で圧されるのもある。
クリトリスの深静脈が何度も潰されては放され、潰されては放されて、ポンプのように血の巡りを激しくする。
「くりちゃん……?どれ?どこ……?」
「しょ、こ、しょこぉっ!とがってるとこ、私の一番感じるところぉ……!!」
紫原よりずっと簡単に理性を手放したは、半狂乱で自分の性感帯を訴える。
「……ここ?」
「んやあぁいひっ?!」
の肉芽を摘みあげた紫原は、うっとりした陶酔の中にいる。
が全く痛がっておらず、自分にすべてを委ねてこんな大声を上げているのだと思うといい気分だ。
……このまま潰しちゃお。
の肉芽を指でぎゅぷぎゅぷといじめながら、紫原はそんなことまで考える。
「ちん……オレ、もー…出る、かも……」
「いーよっ、そのまま、たくさんっ…気持ちよくなってえぇええぇっっっ!!」
気絶したの身体を、紫原はベッドに横たえる。
今までの疲労による眠りとは違い、今日のは叫ぶように絶頂を迎えて、そのままガクンと意識を失った。
それなのに……紫原は、不安も不満も抱かなかった。
「ちん……」
はじめのうちは挿入さえも辛かった恋人が、今は自分に身を任せてあそこまで壊れてくれるのだ。
紫原が潰すのではなく、自身の意志で耽溺する。
「可愛かった……ちん……」
自分より遙かに小さく非力な少女が、腕の中で狂おしいほどに乱れる姿のなんと甘美なことか。
の悲鳴みたいな喘ぎも、呂律の回らぬ赤子のような言葉遣いも、熱い粘膜も。
知っているのも、引き出してやれるのも紫原だけだ。
「オレ、ちんのかわいーとこ、全部知りたいなー……」
そう呟いてからハッとする。
そういえばは、バレンタインデーに特別な贈り物をしたいと愚図っていたではないか。
さっきはビスチョコでいいと言うことにしたけれど、予定調和させるのはダメだろうか。
そもそもバレンタインデーの贈り物とは当日のみ有効だろうか。
毎日ちょっとずつ、分割払いのようにちびちび貰うことはできないだろうか……?
「……ちん、起きて、ねえちょっと」
「……う……え……あ?」
……の本当の苦労は、これからかもしれない。
*****
2014年バレンタインでした!
いや途中からバレンタイン関係なくなってますね だめですねこれ。しかも遅刻した(うpできたの15日)