……努力家に課せられた、「彼氏のサイズに合う、ぴったりとは言わぬ、せめて着けていて痛くないくらいのゴムを探してくる」というクエスト。

文明の利器万歳で、モバイルエロサイトによって「この前のより大きいの」が存在しているということはわかった。
が……問題は入手経路だ。
生活用品の通販は制限されていないが、荷物を配達員から直接受け取ることは不可能だ。
代金を前払いして、寮指定の荷物ボックスに届けられたものを後でおのおのが回収に向かう、という形式に限定されるので、
「もしかしたらなにか事故が起こり得るのでは」と想像すると青くなる。
ああでも、ああ、私、アツシくんが……。
そう思うと「アツシくんと私のためにがんばらなくちゃ」の思考だったはずが、「アツシくんとあんなことしちゃったんだよなぁ……」に脱線してゆき、
はポーッとひとり、頬を赤らめる。

「っ……違う違う……!!」

どうするべきか。
思考のどうどうめぐりを繰り返し、の夜は更けてゆく。



さて、一方紫原の方はどうしていたのか……というと。

「……はー……っ」

200センチを越える体躯をうつ伏せに、ぎゅっと枕を脚に挟んでてベッドに寝る男。
その呼吸は荒く、部屋の温度は低いにも関わらず長い前髪は汗で額に張り付いた。

「んっ……は、んっ……!」

ギュッと目を瞑り、抱きしめ……というか、うつ伏せの股間に押しつけた枕を抱く腕に力を籠める。

「ふ……は、ちん……っ」

ごくごく普通に手でしごく、という方法を知らない彼にとって、それは性欲を諫める自慰というよりも定期的な排泄行為に近い認識だったが。

、ん、は……っ!」

熱を持った肉茎を押し付ける際に、彼女の名前を呼べば。

「は……また……はぁ……したい……」

彼女が恥じらいつつ自分に見せた色白な乳房や、その頂点で硬くしこる乳首。
それに肉茎を押し付けたときのなめらかな感触も、彼女の真っ赤な顔も吐息も。
最後、細い指で力強く自分を握られた感覚が思い出されて……紫原の興奮は段違いになる。

「ん……っ!!」

一層強く押し付けた腰の奥から、ズルズルと精が滑って先端から抜けていく。

「……っは、あ……」

……下着やスウェット、ひいてはシーツを汚すという苦い経験を何度も繰り返し、紫原は「あらかじめズボンの中にティッシュを仕込んでおく」という裏技を編み出し……あ、いや、笑ってはいけない。

これは二人部屋の寮生活、同室の男子と相談の末「交互に一人になれる時間を作る」という打開策を見つけ、
その時間内に事後処理まで終えるための大事なことなのだ。
「ふつうにしろよ」という突っ込みはおそらく残酷の一言で、彼はそもそもそのふつう、を知らなかった。
中学時代、紫原の傍らにはまるでお守り役のような、すべきことを決め最善を追求してくれる男がいた。
が……彼は異性に対する事柄の手ほどきは意図して遠ざけていたような節があった。
家族もああこんなモンスターに見合う同年代の女の子がいるのかしらと心配してなにも言えないありさまで。
本人が知ろうとせず、周りが教えないとなるといつまで経っても無知なままだ。
無知な状態で自然とやりやすい方法を追求していったのがこれで……というのはまあどうでもいいとして。
中学時代のキャプテンや家族とは反対に、現在紫原に親身になっている者の中に、異性交遊の匂いをいち早く嗅ぎ付けた男がいた。

「ん……なにこれ」

……ふと枕に鼻を近づけて、フンフンくさくない、と確かめていた紫原の視線に留まるものがあった。
ベッドの端の端に追いやられたそれを、つまんでみる。

「……うるとらきんぐさいず……?」





「ねーちん、こっちきて」
「う……うん……あの、ごめん、アツシくん、あのね……」

部屋の掃除に訪れて紫原に手招きされたは、いつもなら喜んで飛び込む彼の腕に躊躇する。
理由は簡単で、ごめんまだ準備ができてないの、という後ろめたさだ。

「それは平気、これこれ」
「んっ?!」

長い腕に問答無用で抱き寄せられ、二人でベッドの上に乗り上げた途端に、紫原はをぎゅっと抱きしめ、そしてベッドの脇から先日発見した黒い包みを取り出した。

「これなら入るから、もうへーき。ちんとできる」
「えっ?!ちょ、ちょっと待って……これ、どうしたの?アツシくん買ったの?」
「違うー。なんかベッドにはさまってた」
「はさまってた……?」

言われて、その三連になった真っ黒なパックをまじまじ見る。
「ウルトラキングサイズ44mm」と書かれ、裏面には装着法が記された……見まがうこともないコンドーム。
は必死に理解しようとする。
この44mmというのはたぶん筒というか、ゴムの部分の「直径」だろう。それが44ミリ、4センチ……と考えると。
「試してみた?入った……?」
「んー、まだ……だってうまく大きくなんないんだもん」

大きくってなにが……と尋ねかけて、一拍子置いてそれが「ちんと一緒にいないとちゃんと勃起しない」の意だと理解して真っ赤になる。
が……根本的な謎に突き当たる。

「それ……いつの間にかあったの?」
「そー。オレのベッドの枕んとこにはさまってたの」
「…………」

なんかこれ、つながってるとグミのお徳用パックみたいー、とぷらぷらゴムをぶら下げて笑う紫原から目を逸らし。

「……氷室先輩だ……」

はふとつぶやいて、軽い恐怖と感謝を抱くのだった。

その憶測は大当たりだ。
紫原とその彼女の苦難を見越した氷室が、ひっそりと忍ばせたのだ。

「お母ちゃんなの?あの人たまによくわかんない……」
「誰が?」
「あえっ、ううん……あの、今度、氷室先輩に、ありがとうって言わないと……」
「室ちん?」

……その声に、微妙な感情に揺れていたは身を正した。

「なんでそこで室ちんが出てくんの」
「え、いや、だって……」
「ムカつく。なんでちん、室ちんのことなんか気にしてんの」
「ご、ごめん……」

こんなあからさまな嫉妬をされたのは、初めてだった。
が、嫉妬というのは、の中ではもっともっと陰湿なイメージだったのだが。

「ねーなんで?なんで室ちん?オレやだ、今のすっごいイヤだった」

眉根をぐっと寄せ、隠しもしない不機嫌な顔でを見つめてくる紫原は……。

「〜……っ……あ、アツシくん、かわいっ!」
「はぁ?!」

ついの方から頬に唇を寄せてしまうほど、可愛かった。

「かわいくねーし。オレ怒ってんだし」
「うん、それはごめん……私、アツシくんのことしか考えてないよ」
「……ホントに?」
「うん!ほんと……ってあの、これ、恥ずかしいね……」

思わずハイテンションになってはしゃいだが、改めて考えると恋愛バカそのものだ。

「じゃあほら、ちん脱いで」
「う、うん……ってわぁっ?!そっち?!」

この間とは違って、紫原の手はいきなりのスカートに伸びてきた。
そのまま大きな手が内側に潜り込んで太股をモニョモニョ揉み始めるものだから、は後ずさる。

「やぁ、あ、い、いきなりは……あの、えっと……」
「んー……オレそれ考えたんだけど、絶対ズルいって思ったの」
「えっ?え?なにが……?」

そう問いかけながらも、決してゆるまない紫原の手に軽く冷や汗をかく。
彼の大きな手と強い力にかかればの抵抗など意味をなさないし、ぎりぎり自分を守っている下着だってその気になれば無理矢理引きちぎれるに違いない。

「……だって、オレのは見たくせにちんはパンツ脱いでないじゃん。見してくれてないじゃん」
「あ……で、でも、私上脱いだ……」
「めんどいこと言わないの、オレも見る」
「あわ、ああぁあ……!!」

そのまま力押しでゴロンと仰向けにされ、ぐいい、と膝の裏を自分の身体に押し付けられてしまうと、はまるで……というか、そのまんままんぐり返しの格好になって、
一瞬あまりの羞恥心に気が遠のきかけたが……よくよく考えると、紫原の言うことも一理ある気がしてくる。
確かに自分は紫原の股間を見た上、大義名分があるとはいえべたべた触ったわけで。
それに対して紫原のほうはの唯一見せた乳房をその手でしっかり味わってもいないし、
欲望を押し付けたのは自分の不備で性行為に至れなかったからだ。
……いやそれはさすがに自分を責めすぎだと思いますさん、と言う突っ込みは、きっと無意味だ。

「はっ……あ、アツシくん……お願い、ぬ、ぬが、せて……」

さすがにショーツはブラよりもずっと羞恥心が高くて、自分から脱いで「どうぞ」とは言えなかった。

「……」
「あ……の、アツシくん……?」

……が、紫原はその声にうんともすんとも応えず、のむき出しになった臀部と下着を見つめ続けるまま。
その視線は、まるで蟻の行列を眺める幼稚園児のようにキラキラと輝いていた。

「その、な、なんか変?っってあわぁああぁああ!!」
「んっ……!!」

思わず脚を閉じて身を起こそうとした瞬間に、太股をむんずと掴まれた。
それだけでも驚きなのに、突然紫原は大きな身体をうつ伏せに滑らせて、の陰部にぴったり顔をくっつけてくる。

「やっ、ちょ、や、やっ、あ、アツシくんなにやってるのぉお?!」
「んーっ……ふ、んー……っ」
「ふぅあ?!ちょ、嗅がないで、嗅ーがーなーいーでーえぇ!!」
ちんうっさい」
「ふやぁう?!」

下着に包まれた陰部に、大好きな人が顔を埋めて鼻先をくんくん言わせたり、もごもご喋ったり。
自分の身に降り懸かっている事態にパニックを起こしたが、脚を押さえつける紫原の手も、うずめた顔も離れてくれない。

「なぁんかすっぱい匂いがする……なんだろ」
「ひっ?!におい?!やだやだっ、やだ、やだ……!」
「だからうっさい」
「だってアツシくんが!」
「なんかー……んっ」
「っ……ぅ、は……!!」

その直後に、は黙らざるを得なくなった。
下着のクロッチに押しつけられた紫原の唇が大きく動いて、舌が蠢いたのだ。

「お菓子とぜんぜん違うのに、なんか、すっごい……んー」
「はぁっ、あ、アツシくん、汚いよ?!ぱ、パンツは脱がないと汚いよ?!」
「なんでー?脱いだ方が汚いんじゃないの?」
「え、いやそうなのかな……あれ?そうかも……あれ?いや、あの、じゃなくって!汗、かいてるし……」
「あー……このすっぱいの、汗なんだ」
「わかってるならやめてっ……ん、はっ、はぁんっ……!」

下着に包まれた陰部も、太股の内側もはみ出る尻肉にも。
紫原は全部に舌先を這わせて、自分の唾液で濡らしていく。

「や、あぁ……あ、ん……!」
「んっ……これいいなー……ん、飽きない、ちんのここ……すっごくいい」

最初は羞恥ばかりだったのも、それが愛撫の意図を持っていると解って、執拗に舐め続けられると変わってくる。

「はんっ……うぅ、アツシくぅ、ん……!」
「ふー……んむっ、ん、んー……なに……?」
「そ……そこは、おいしい、の……?」

尋ねた直後に何を言ってるんだろう私は、と恥ずかしくなっただが。

「む……んっ、は……にがい。しょっぱい。おいしくない」
「ちょ、そんな……」

いやさすがに蜜のように甘いものが滴っているとは自身も思ってはいないけれど。
それでも歯に衣着せぬ恋人の酷評に、さーっと泣きたくなってくる。

「でもやめらんない。おいしくないのに吸ってたい」

……で、直後に飴と鞭の使い分けが如くそんなことを言われるものだから。

「……っ、や、やだぁあ、もう、アツシくんってばぁ……!!」

はただひたすら、真っ赤になってとろける。

「んっ……は、くっついちゃった」
「ひゃ、いぁっ……だめ……!」

言われて、彼の唾液と自分の愛液でびしょびしょになった下着が、粘膜に張り付いていることを自覚する。
の秘処もゆるゆる舐め続けられて充血してきている。
そうすると、下着の上からでもそれとなく大事な部分の形が浮き出て、なんともいえず恥ずかしい。

「……あれー?」
「ふっく?!うあぁあっ!あ、アツシくんっ!!そ、こ、そこっ!!」

……襞の充血と一緒に、むくむくと大きくなったクリトリスを目敏く見つけた紫原の唇が。

「そこは、だっ……!」
「なんかまるいのぷっくりしてる……」
「いっや、やっ、そ、そんなこと言わないでー!!」

……きっとアツシくんはこれ、私を恥ずかしがらせようとは思ってないんだろう。
ただ、最初はなだらかな割れ目だった場所に、充血した突起があるのが不思議なだけに違いない。
そう思うと騒ぐのも変な気がするし……と、はソワソワした。
んだが。

「噛んでもいいの、これ」
「ちょっ、ひっ、や、いにゃあっ?!だめええっ!!」

下着の上から、軽く歯の角が触れただけだ。
それが……水気のある布の感触と、紫原の舌のぬくさを伴うと、発狂しそうな気持ちよさを伴った愛撫としてを襲う。

「ん……?!ちんなにこれ、じゅわって出た、もっかい、んっ!」
「あひっ、それ、あ゛っ、やぁあぁああーーっ!!」

の背筋をびりびりと気持ちのいい電流が抜けてゆき、身体は自然と反り返る。
そこで弛緩できれば楽なのに、下腹部と脚を押さえつけた紫原がそうさせてくれない。

「すご、またすっぱいのじゅわーって出た……これ、ココ噛むと出るの?なにこれ」
「はひっ?!ちょ、ちょっと待ってっ、待ってえぇっ!」
「また出る?もいっかいじゅわって、出して、出してちんっ」
「ちょ、ちょっ、そこ、それ、あのッ……ひゃっ、んぁあぁぁあっっ!!」

クリトリスを甘噛みされるたび、は自分の割れ目から愛液が滲む……というより、もう吹き出すような勢いで出ていくのを自覚する。

「ひっ、くぅ、あ、あ、アツシくん、それ、おもちゃじゃない、の……あそんじゃ、だめぇぇ……!!」
「……っは……ちん、かわいい……今すごい、トローって顔してる」
「ふいぃっ?!顔?!」
「うん、とろーって、真っ赤」
「や、やぁだ……う、ぅ……!」
「ここ舐めたらそんな顔になるんだー……オレ知らなかった、これ楽しい、ぜんぜん飽きない」
「飽きないって……って、えわっ?!またっ……!!」
「んーーっっ……!!」

じゅるぅ、と大きな音を立てて再び紫原の唇と舌がの秘処を下着ごと吸い上げる。

何度目かもわからない震えがを支配しそうになって、もう怖いくらいだ。

……それに。

「はっ、はぁ、はぁ……あ……の、アツシ、くん……」

とりあえずひとしきり紫原が満足して唇を離してから。
は浅い呼吸を繰り返しながら、言ったら雰囲気がぶちこわし間違いなしだとわかっているのに……それでも言わずにいられないことを。

「あ、あの……わ、私……の、のど、かわいて、きて……」

もう喋るたび口がもごもごする程に喉がカラカラで、なんだか意識も薄れてきてるような。
が騒ぎすぎたのもあるだろうけど、間違いなく割れ目から身体の水分が出て行った。紫原に吸われすぎた。

「オレはぜんぜん渇いてないけどー」

そりゃそうだ。

「うっ……うう、あの……」

水が飲みたい気持ちもあるが、動く気力もないし、紫原とも離れたくない。

「ジュースでいい?ほらほら掴まって」
「あわっ、あ、わあぁあ……?!」

紫原はまごつくの腰に手を入れ、その身体を抱きしめたまま持ち上げた。

「わわぁあ?!あ、アツシくんっ……?!」
「暴れないのー。まー落とさねーけど」

おたおたするを軽々抱いたまま、紫原は部屋の小型冷蔵庫まで歩く。

「オレンジジュース……って、アララ?ちんこんなの入れた?」
「なに……どれ?」

紫原はオレンジジュースのボトルと同時に、透明な筒を取り出してに見せる。

「……え、なにこれ」
「うん、なにこれ」

透明なボトルに、オレンジ色のキャップ。
間違っても飲み物ではなさそうな、こってり密度の高い液体で満たされた……。

「あの、これ……ローション?」
「ローション?」

……氷室先輩だ……。
はまたもや恐怖を抱いた。
さっきまでの快感の余韻が吹き飛びそうになるほどだ。

「そ、それ貸して」
「それ飲むの?」
「違うよ、ジュースもほしい……」

は手渡されたオレンジジュースを飲み干すと……びしょ濡れになった下着を脱いだ。
ベッドに座り込んで、ふん、と気持ちを整える。

「……アツシくん、その……わっ?!」

改めて宣言いたしますが……などと畏まる間もなく、紫原がに飛びついてきた。

「いんだよねちん、しよ、さして?しよっ」
「う、うん、しよっ、アツシくん、しよっ!」

お互いに抱き合ってぎゅーっ。
は脳内に麻薬が撒き散らされるのを感じながら恋人の背中を抱きしめ、大きな肩胛骨を撫でる。

「ん……」
「あの、あれ……つけよ?」
「うん……ちょい待ち」

抱き合っていた身を名残惜しげに離して、紫原が股間をごそごそやる。
さすがに二度目となるとわりあいスムーズで……その上。

「ほら、入った」
「ほんとだ……今度は痛くない?」
「ぜんぜん痛くねーしっ」

そう言って、紫原は自慢げにゴムを纏った肉茎を見せびらかした。

「よかった!よかった……アツシくんよかった……!」
「オレもなんか、すっげー安心した……はぁ〜」

変なところで感動するなよ二人とも。

「よかった、氷室先輩に……」
「……あ?」

疑うまでもない。
は努力家だが……バカだ。

「なんでまた室ちん?」
「え、あの、だって……」

みるみる目つきと機嫌が悪くなる紫原に萎縮して、ごめん……と言いかけるが、時既に遅し。

「もー!なんでさぁ、ちんさぁ!」
「ま、待ってアツシくんっ、お願いっ、待っっ……あ、いあっ、あ、あぐ…………ッ!!」

は自分の身体がまっぷたつに裂けたのだと思った。
その衝撃のあまりに声も出ず、おえおっ、おえおえ、という変な息ばかり漏れる。

「あ、あづ……し……ぐ……ん……!」
「うっ、う、なにこれ、きつっ……きっつ、入んないじゃん……!!」
「うおっ、お、えっ、入ってるっ……はいっで、る、うぅうぅ……!!」
「入ってねー、し、これ、半分も入ってないんだけどっ!」
「っそ、それぇ、あ、あつしくっ、は、もう、入らない、だけぇ……!!」

膣孔への挿入の経験がまったくと言っていいほどないでもわかった。
これ、限界。
もう奥まで、というかたぶん入っちゃいけないところまで入ってる。

「えお゛っ……おえっ、あ、あつし、くん、お願いっ、い、いっぺん、やめ、てぇ……!」
「やめねーしっ、なんでちん室ちんのことばっか言うの?!」
「そ、それ、はっ……あぐっ?!」

ずん、と自分を壊すように押し込まれた腰に、思わず臀部に大きな力を籠めると。

「いづづっ……いって……っ、いってぇ……!」
「あぐうあっ……あ、あづしくっ、い、いだい……?いたいの?!」

顔をしかめた恋人に、は思わず一瞬自分の痛みを忘れて心配を寄せる。
紫原は紫原で、不意打ちで痛めつけられた肉茎を庇うように腰を引いた。
ずろろっ……と音を立て、膣孔から肉茎が抜ける。
そのまま内臓まで一緒に出てくるのではとが錯覚するくらいの圧迫感が、突然なくなる。

「はっ、あ、あ、アツシくん、だいじょぶ……?!」
「っんでさ……オレのことそーやって心配して、好きっつってつきまとってきたくせに……」
「……あ、あの……氷室先輩のことは……あの……!」
「またそーやって室ちんのこと言うし!なんなのちんさはさぁ!」

下半身裸でモメる二人。絵にならない。

「痛いし!もう……」
「……い、痛かった?ごめん、その、私……ごめん……」

のほうは憤る紫原とはまた違う理由で打ちひしがれていた。
……私の努力が足りないせいだ、と。
アツシくんの大きさがわかった時点でもっと努力しておくべきだったんだ、あの、なんかビール瓶とか突っ込んで慣らしておくとか。
自分の鍛錬不足のせいで恋人に痛い思いをさせて、こんな大事なときにまごまごして。
うっかり発した一言で雰囲気まで悪くして……。
そう思うと悲しくて悲しくて仕方がなく、今まで必死に努力してきたすべてが無に帰したような気分にまでなってくる。

「う……ご、ごめ、ん……ごめん、アツシくん……」
「はぁ?なんで泣くの?!泣きてーのオレだし……って、あ……」

勢いよく返した紫原も、本気で涙をこぼし始めたを前に狼狽する。

「ま……待って、え、ちんも痛かった?」
「い、痛いけど、たぶん、アツシくんよりは痛くない……」
「じゃあなんで泣くの、ちょっと、わけわかんねーんだけど」
「ご、ごめん……わ、私、努力がね、足りなくて……」
「はぁ?」

才能がないからこそ頑張ってきた。
そんな自分が誇りだったし、それでもできないものは「しょうがない」ものだ。
今までの人生、はそう割り切ってきた。
……でも。
でもまさか、自分がこんな、大好きな人を満足に受け入れられない欠陥品だなんて考えてもみなかった……。

「うっ……ううう……」
「だから、なんで泣いてんの……」

……紫原も憤りよりためらいが勝って、もう怒鳴りつける気概はない。

「アツシくん、ごめん……あの……私……」

どうしようどうすればいい、というパラノイアに陥りそうになったを救ったのは、氷室辰也という神だった。

「あ……これ……」

さっき冷蔵庫から取り出したローションボトルが、の後ろ手に触れた。

「こっ、こここ、これ!」

……諦めたらそこで試合終了だ!
持ち前のガッツで瞬時に持ち直し、はローションのキャップを勢いよく開ける。
手に垂らした粘液は冷蔵庫のせいだろう、やたら硬くて冷たかった。ゾワッとした。
それをぐりぐりぐりぐりっ……と自分の両手で練りまくり、温めて柔らかくしていく。

「え、なにそれ、水あめ?ちんなにやってんの」
「あ、アツシくん、お……おち、えっと、その、ちょっと……これっ!」
「うわっ?!なにこれ気持ち悪?!」

中腰になり、怒ったり戸惑ったり忙しいにも関わらず熱を持ったままの紫原の肉茎に……そのぬめりを塗りたくる。
ゴムと合わさって不思議な手触りだった。

「そっ、それ、いれやすくするやつ……!」

そう言って、もはや自棄っぱちな気持ちでは脚を開く。

「あ、アツシくん、もう一回……もう一回入れて……!たぶん、それなら平気だから……!」
「え……いいの?」
「う、うんっ、お願い……ここで終わったら、私もう死ぬしかない……!」
「よくわかんないけど……ちんも痛いんじゃないの?」
「わ、私は平気だって!ホント、平気っ!」
「……む……」

そう言って、は紫原の腰に脚を回して痴女みたいな格好までしてみせたのだが。

「……ヤダ。入れない」
「はんっ?!んあっ、ああっ……?!」

にゅるう、と、の割れ目から下腹までを、粘液まみれの紫原の肉茎が滑る。
その感触にが違和感を持つより早く、紫原はのことを力強く抱きしめた。
背中に回してもまだ余る長い腕で、の肋骨がきしむくらいにしっかり身体を固定する。

「はっあ、あ、アツシくんっ……やんっ、それ、やっ、あっあ……!」
「オレのために痛いの我慢とか、そーいうの、うざいからやめて……は、ん……!」
「うざいって……そ、んやあぁっ?!ひゃあ、だめ、こすっちゃ、だめぇ……!!」

にゅる、にゅる、と、紫原の腹部との陰部に挟まれた肉茎が、ぬめりを利用して何度も勢いよく滑る。

「ヤダ、なんでオレだけよくなんなきゃいけないの……」
「やぁ、それ、だめっ、だめだって、ぬるぬるがすべって、きちゃう、の……!」
「オレとすんでしょ?ちんはオレとしたいんでしょ、そんなのにっ……は、あ、熱い……」

血管の浮き出る肉茎の表面が、のクリトリスを何度も擦る。
気持ちいいとか痛いとか、そんな気持ちを抱くより先にまた次の刺激が来て、そして大好きな人の重みがを逃してくれない。

「あ、アツシくんだぁ、めっ、わ、私っ、これ、いっ……き、もち、いいの……いいのが、きちゃうっ……!」
「いいじゃんっ、気持ちいいならいーじゃんっ、は、オレも好き、これ好きっ、擦れんの好きっ……」

ぐりぐり、といっそう強く肉茎を押し当てながら、紫原はの表情がとろけていくのを見ていた。
もそうだ。
自然と潤んでしまう瞳に、紫原が自分を求めて切なげに目を細める顔が映る。

「好き、ちん好きっ、変な子だけどさっ……好き、は、好き……!」
「ひぃいあぁう?!やだっ、はずかしっ……!やめっ、だぁめ、あぁあ、だめぇええっ!!」

ふとそんな発言に気を取られた一瞬に、ぐりゅんっ、と強く肉芽を押しつぶされて。
は呆気なく絶頂を迎えて、体がぐいっと仰け反る。

「っあ、またトローって顔してるっ、ちんのすっげーかわいい顔……は、オレも、出ちゃう、出ちゃう……」

ぶるんっ、と紫原の体がおこりのように震えて、それからびく、びく、との腹を叩く感触。

「っ、あ……アツシくんも……は……ぁ」

ゴムの中に、白い濁りが広がっていく。
なんだか改めてみるとすごく不思議だ……と思いながら、はぐったりと弛緩する。
そのまま自分の上にのしかかってくる紫原の重みも、とっても心地よかった。




「……あのね、私、頑張るから!」
「えー……なにを?」
「あ、アツシくんの、ちゃんと入れられるようにその……え、えっと……どうすれば、いんだろ……」

「…………」
「わ、わぁあっ?!や、ん……!」

紫原は、そんなの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
その気持ちよさにとろんとしてしまい、ついつい考えを放棄するだった。






次は氷室先輩による潮吹かせ講座じゃないかな(うそです)