その日は最高に気分が悪かった。理由なんて思い出すだけで目から小便が出そうだ。
あいつが俺を恨んでいないわけがなく、
それ故の回りくどい悪意の籠もった「またやろう」プラス笑顔、だった……ならどれだけよかったか。笑えたのに。
心底俺を恨んでいた。あの場の全員がだ。
だというのに、その怨恨を乗り越える「清い心」があの吐き気のする笑顔とスポーツマンシップ丸出しの言葉をあいつに言わせたのだ。
俺にぶつけてきやがったのだ。

加点するなら古橋も原も何も言ってこない。気遣いではなく面倒くさいものと関わりたくないの精神で。
瀬戸はわざとらしく鼾までカイていたがそれも嘘だ。寝てない。アイマスクの向こうの眼は閉じたり開いたり。
そんな風に腫れ物に触る態度を取られるのは癪で癪で仕方がない。

「まーくん、どうして怒ってるの」

さらに加点として途中で拾ったは逆にうざったくかまってくる。
さらにさらに加点するなら今すぐ殴ってやりたいのに、こんなところで殴れば俺は「ストレスを女にぶつける情けない奴」の烙印を押されるので殴れない。
こんなパーでも周りの連中にとっては「女の子」なのだ。

「私、きょうは言いつけ破ってないよ……」

そう言ってはブレザーのポケットからぼろぼろになった四つ折りの紙を取り出した。

「まーくんに言われたこと、全部やった。うん」

紙を広げて、アホみたいに音読まで始める。

「まーくんを思ってひとりエッチする、お尻にプラグさして、拡げる。ぜんぶやったよ」

原が笑った。笑っちゃいけないのにやべーどうしよ、という雰囲気で。

「あのさあ」

その笑いをごまかすように、古橋が口を開く。
の肩を叩いて。

ちゃん、わかるだろ。今日俺たち試合だったんだ」
「うん」
「それでさ……ん、だからさ、花宮だけじゃない。みんな落ち込んでるんだよ」
「うん」

はコックリうなずいて、そして次の瞬間には俺の方に向き直って、

「でも、どうしてまーくん怒ってるの?」

なんて聞いてきた。

「いや、だからさ」
「うん、だって、なんで?どうしてまーくん、私悪いことしてないのに、怒ってるの?」

急に……ふと。
俺はコイツのことが不気味で仕方がなくなった。
かなり頭が弱いのは知っている。前提で遊んでいる。
が、そう言っても人語は喋れるし感情表現もする。
完全に閉じてるわけじゃないのだ。

だが、どうやらコイツの中では。
「試合に負けた」というのと「俺がイライラしている」というのを結びつけることができないらしい。
俺がの前で怒るときは、に何か非があったときとしか考えていないのだ。
だから今は不思議で仕方がないのだろう。
「私はまーくんの言いつけ破ってないのにどうして冷たくされるんだろう?」と。
俺には俺の都合がありとは無関係のところでイラついたりする、ということを理解していない。
そういう人間として察して当たり前のことができないのだ。
自分を中心に世界が回っており、自分の知らないところで他人やモノが変化するのを知らない。
子供ならば可愛いものだが高校生にもなって。

なんだか急激にバカバカしくなって、がらがらのバスの中で声を張り上げた。

「てめーの頭が足りてねーから怒ってんだよ」
「そうなの……?ごめんね」
「こいつはお仕置きだな、お仕置き。これから部屋行くぞ。てめーらもだ」

全員疲労困憊の顔をゆがませた。喜んだのはだけだ。



「ったくおらっ!」
「いひゃいっ?!」

ひとまず全員一発ずつ一周したが、さすがに今日はもう休ませろと怠がるので帰してやった。
その後に浜辺に打ち上げられたオットセイみてーに弛緩して床に転がるの尻を叩く。

「テメーいっつもマークンがいいのとか言うよなあ?他の野郎のでもあんあんよがるじゃねーか」
「いやあうっ、ち、ちがあ、ぁあっ!」

の股ぐらはずるずるだが拭く気にもならない。

「ま、まーくんがいいの、ほんとっ、ん、ね、まーくんまだだよ、エッチしよ?」

その汚れた股間を自分の指で割り開いて、は尻をぐねぐね動かした。

「たたねーよ、お前本当にわかれよ、馬鹿じゃねえの」
「うぅ…ん、ごめんね、お口がいい…?」

身体を立て直してしゃがむと、はおもむろに俺のジャージに手をかける。俺はいらつきを抑えるのが難しい。
そのままジャージを下ろされれば、適当に口にした言葉が嘘であることが割れる。
そこそこに勃起していたしこのままハメてやるのも悪かねーなと思ってはいるが、こいつの誘いに乗った形になるのが気に食わない。
の肩を引っ掴んで立たせると、そのまま背中を向けさせる。
壁にを押しつけて、尻たぶを思い切りつねる。

「うくぅ…っ、う、は、あぁあ…」
「……治ってんな」

硬質のゴムの突起でえぐった肛門は血を滲ませて裂傷になったのだが、今はもう亀裂は薄ピンクの新しい皮膚だ。

「ちゃんとお薬塗ったよ、も、う、だから、いつでもできるう……っ」
「ったくバカ、また裂いてやるよ、死ぬまでオモチャにしてやっからな」
「うっ、あ、うれしいぃぃ……ん、んあぁああっ?!」

膣穴にぐりっと亀頭を押し当てて一気に貫くと、の背筋がカーブを描く。
それを支えてやることはせず、両手で尻の肉を揉みながら腰を進める。

「はかあっ、は、あぁあうぅうっ、まーくんぅっ……!」
「ったくよ、ハメ潰してやっから、てめーがぶっ壊れて死ぬまでいじめ倒してやっから、は、あ……!」
「ああっ、う、うれしいぃよぉお……!」
「なに喜んでやがんだよ?!」
「はぎっ?!」

わき腹から手を回して、ぬるぬるの肉をかき分ける。
指先にぶつかったクリトリスをひっぱり上げてやると、は歯をがちがち言わせながら叫んだ。

「うやああっ、うやあっ、うやあぁあぁっ!」
「気持ちよくなるんじゃねーよ!ざっけんな、舐めんな、殺すぞ?!」
「ういいあっ、あいっ、あ、くりひぃいっ!そこ、そこぎもぢいいっ……!」

ギュプギュプギュプ……と指で押しつぶす度に、スイッチを押された玩具のようにが跳ねて、膣穴をぎゅうぎゅうくねらせる。

「ううあぁああっ、まーく、あッ、も、っとおぉお……!」
「てめぇ俺の気も知らないでよ、自分のことばっか考えてんじゃねーよ!」
「あぁっ、か、んがえてるっ、まーくんのこと考えてるぅうぅ……!」
「おあっ……!」

情けない声が漏れた。
がくいっと、俺の肉茎を抜かないままに器用に腰をひねり回すのだ。
上下、左右、という縛りもなく、淀みなくグリグリ回る。
その度にの愛液も、他の野郎が出した精液もぐちゃくそに混じりあって糸を引く肉壁が俺を撫で回し、腰ごと快楽で引っ張り抜いて行こうとする。
俺が犯しているはずなのに、あろうことか蹂躙されかかっている。

「まーくん、あ、あうぁあ……っあ゛?!」
「生意気こくんじゃねえよ、お前、こうしてやりゃすぐイクんだろうが、ほら」

のクリトリスを掴み、引っこ抜く勢いでつねる。

「あ゛あ゛あ゛っ、ああぁあぁあっ!!」

途端にはガタガタ震えて、唾液をこぼしながら絶頂を味わう。

「俺の彼女目指してんだろ?!なんで俺の思い通りにならねえんだよ?!おらっ!」
「ああっか、が、がぁっ、ひいあぁあっ……!」

ひきつりっぱなしのクリトリスをそれでも引っ張り、の丸い瞳から涙がぼろぼろこぼれだすまで指を離さない。

「俺がイカせてやってんだよ、マークンイキますだろ?!そう言って土下座すんのが筋じゃねーのかよっ、おらっ」
「あがっ、あッ……かッ、ま、まーくん、いきまひゅっ、まーくんいきまひゅううっ!た、立ってらんなぁあいぃっ……!」

言葉通りにはその瞬間、足を滑らせて壁伝いに倒れ込んだ。

「あ、お、あァ……!」

俺の肉はその勢いで引き抜けて、間抜けなことに同時に鈴口から汚濁が迸っていく。
それこそ土下座みたいな形で床にへたったの背中と尻に、ぱたぱたと引っかかっていく。
……なんでか俺は、犬が電柱に小便を引っかけるのを思い出した。

「ふひっ、ひひ……っ、ま、くん、うれし……かったぁ……」
「……ッ」

歓喜と絶頂に震える身体。
それに無性に腹が立って、むき出しの尻を踏みつけてやる。

「ううくぅうっ……?」

なんだかもう、すべてがどうでもいい。
どうでもいい。

「まーくん、もう怒ってないね……」

、いい子だった?

そう言ってくる間抜けヅラに沸き上がったのがいらだちではなく愛しさだったのは、きっと気の迷いだ。