じゃじゃ馬ならし
「くぅっ……!」
目の前で悔しそうに顔を歪める少女を前に、ジョゼフは思わず邪悪な形に唇の端を吊りあげてしまう。
そんな表情でも美形のかんばせが崩れないのがこの男の罪なところだが、鞣した縄で椅子に括りつけられた少女に、そこに惚れ込む余裕はないようだった。
その娘ときたら、とにかくすばしっこくて生意気だった。エウリュディケ荘園で行われるゲームの際にも、その俊敏さでジョゼフを翻弄する――だけならまだしも、ありあまる余裕で挑発めいたことを散々繰り返してくる。
小娘が……と、紳士に似合わぬ怒りを抱いた回数は、もう両手どころか足の指を使っても数え切れない。
なんとしてでもこの小娘をいいようにしてやりたいという気持ちは日に日に大きくなっていき、今日の昼間に行われたゲームで、ついにジョゼフはぜえぜえと息を切らせながら叫んだ。
「必ず捕まえてやる。その暁には君を好きにさせてもらうぞ」
少女は驚いたようだった。しかしすぐに、ニヤリと笑ってメスガキそのものの顔で返してくる。
「いいよ。でもおじいちゃん大丈夫? あんまり必死になると、血圧上がっちゃうよぉ」
もうすでに上がりきっている。ジョゼフは目の前が真っ赤になるほどの怒りに包まれていた。
――そんなジョゼフが、その後まんまと彼女を捕まえることができたのは、執念の勝利だと言えた。
「くそっ、くそっ、離せじじい!」
「離すものか。君は私のものだ」
彼女を風船に括りつけて椅子に座らせるとき、ジョゼフは枯れたと思っていた己の股間が甘疼きするのを感じた。強い興奮が、性的な欲望まで呼び起こしていた。
「くそじじい!」
「ああ……」
ジョゼフは少女の悲鳴を心地よい気分で聞いていた。華美な椅子の肘掛けに、左右に脚を開かれて縛られた状態での悪罵など滑稽でしかない。
普段はハンターとサバイバーの住まいは建物ごと分けられている。彼女が今ジョゼフの部屋にいること自体が禁忌だが、それもまた彼を高揚させる。
「おじいちゃんのくせに無理しちゃだめだよ。私とエッチしてる最中に、心臓がイッちゃって死ぬなんて嫌でしょ!」
「ふふ、君の悪口も今は許してあげよう」
こんな娘、いや孫と呼べるくらいに若い女を抱くことなど、少し前までは想像もしなかった。ジョゼフ自身、若いを通り越して幼い娘に劣情を催すなどとは思いもよらなかった。
しかし、今日彼女をロケットチェアに拘束するときに感じた、もう何十年ぶりかもわからない情動は無駄にはしたくなかった。
「さて……」
「ちょっと、なにするの!」
自分を裸で緊縛したまま写真機の用意をしだす男に、少女は狂ったようにもがいた。
「こんなの撮るの、バカじゃないの!」
「君の素晴らしい姿は、永遠に記憶しておかないといけないからね」
「や、やめろ! 変態!」
抵抗もむなしく、パシャリという音と閃光が部屋を支配した。すぐさま撮ったばかりの写真が飛び出してくる。
「ああ、よく撮れているよ。女芯の芽まではっきりと……」
少女は唇を噛んだ。しかし、ジョゼフの真の狙いは彼女の痴態をおさめることだけではなかった。
「さて、君の言うとおり……万が一があっては困るからね」
「え、え……あっ!」
言うなりジョゼフの手元で写真が不可思議な世界を創りだす。彼は写真機から投影された不思議な世界に、ずいぶん苦労して少女を椅子ごと抱えて入り込んだ。
「こ……この、卑怯者!」
途端に辺りの景色が古びた写真のようになり、反対にジョゼフの姿は若々しく生気を帯びた。
「写真の中なら、君を最高の身体で感じることができる」
「やめ……て、ああっ……!」
老体に鞭を打って椅子ごと少女を運んだのは、自分だけ写真の世界に入ったのではつまらないからだ。この娘がうんと悔しがって、うんと感じて、うんと気をやるところを見てやらないと、ジョゼフの欲望は昇華されそうにない。
「胸の先が可愛い形になっている。少しは期待をしてくれたかな」
「してないっ」
「ではどうして?」
「あ、いや……あっ……」
言葉通り、少女の乳首は乳房の先で硬く尖っていた。それを摘まんで、やや強いくらいの力で胸ごと揺すると、彼女の口からは切なそうな吐息がこぼれた。
「若い肌というのはいい。これが朽ちるなど私は許せないよ」
「ふぁっ……あっ、あっ、や、は、なして……くふ……!」
乳首への愛撫を続けていると、彼女の顔はどんどんとろけていく。しかしまだ眉は生意気な形に歪められていて、真珠のように白い歯をぎりぎりと噛み締めたりもしている。
「あまり力まないでいいよ。私に身を任せて」
「変態じじい……! そんなこと、できるわけ……んくぅうぅっ!」
少女の隙を突いて、もう片方の手を秘唇に寄せた。なんの前触れもなくその上のほうにある肉芽を撫でると、ジョゼフの脳髄を痺れさせるような、たまらない嬌声がこぼれだす。
「そこ、んぅ、だめっ……あっ……あっ……♡」
乳首への刺激とは趣向を変えて、あくまで優しい手つきでクリトリスを愛撫していく。
膣口から溢れた愛液をすくい取り、それを塗りつけて肉芽をくるくると可愛がる。
「いや、あっ、い、イく、あっ、あ、く、は……!」
「おや残念、時間切れだ」
「ああっ……?!」
また不思議な閃光と共に、ジョゼフの作り出した白黒の世界が崩壊した。同時に少女の身体を襲っていた絶頂の波も、あと一押しというところでさっと取り上げられてしまったようだった。
「ど、どういう……こと……?」
「ゲームのとき、君は散々悪用してくれたじゃないか。私の写真の世界は、今のところ制限時間があるからね。これもいつかは克服するが……」
「え……え……」
「どれ、また写真を撮ってあげよう」
ジョゼフは澄ました顔で再び写真機の前に立った。音を立ててまた写真が飛び出す。そしてさっきと同じように彼女ごと自分を写真世界に連れ込んだのを見て、少女はジョゼフのしようとしていることを理解したらしい。
「こ……この、このっ……このっ!」
いくら気性の激しい彼女でも、この狡猾な男を的確に罵倒する言葉が見つからないようだった。
「おやおや、おあずけされたのがそんなに悲しいのかな」
「このじじいっ! 見ててよ、あとで……あとで、ひどいんだから!」
「ふふふ……」
再び若返ったジョゼフは、含み笑いしながら少女の脚の間に屈み込んだ。
「今度は唇で可愛がってあげよう。この素敵な場所に口づけをする権利が、今の私にはあるのだから」
「くちびるって……あっ、あっ、だめぇえぇっ♡」
存在する世界を切り替えられたせいで、半端に欲情した状態になった粘膜を吸い上げられ、またもジョゼフをたまらなく高揚させるような悲鳴が上がった。
「んん、可愛らしいな。指よりも反応がいい」
「あふ、あっ、く、くぅ、く、うぅううぅぅ……!」
少女はまだ強気に歯を噛んでいたが、ジョゼフの舐めている秘唇は物欲しげにひくつきだしていた。すぐに愛液をこぼす膣口が、切なそうに震えている。
「奥にも欲しいのかな。いいな、感じやすい女性は私の好みだ」
「ほし……くなんか……あっ、あぁあうぅんっ♡」
精一杯の強がりは、細い指が深々と挿入されたことで散ってしまった。わずかに粘液の気泡が潰れる音と、濡れた肉穴がうねる感触がジョゼフをさらに陶酔させていく。
「あくっ、あっひ、あっ、だめ、一緒にするのだめぇっ……!」
膣穴の中でざらつく場所を指でくすぐりながら、肉芽を舌先でいたぶるのもやめない。さっきよりも早いペースで少女は追い詰められていった。
「んは……ああ、すまないね」
「あっ?! あっ、いやっ、また……!」
しかし、再び写真の世界が崩壊してしまう。現実に呼び戻された少女は、またも喪失感に虚を突かれた顔になった。
「くふぅっ……ふぅぅ……じ、じじい……!」
「おやおや。君を快楽にいざなっている男を、いつまでもそんな呼び方はよして欲しいね」
「くっ……う……!」
「ジョゼフと呼んでくれないか。君の声で名を紡がれてみたいよ」
「いや!」
「……そうか、まあいい。ほうら、また君のいい顔を撮ってあげないと」
「やめて! す、す、す……なら」
少女は真っ赤になってうつむくと、消え入りそうな声で言う。
「するなら、普通にして……写真の世界には、もう連れていかないで……!」
そのときジョゼフは、己のこの現実の、朽ちかけた肉体が激しく脈動するのを感じた。今すぐこの雌を、股間の熱で打ち据えたいという情動に打ち据えられた。
だが同時にそれをかき消すほど強い嗜虐の心が、彼の内側で炸裂してもいた。
「そんなことを言われたら、やめるわけにはいかないな」
「……?! くそじじい……あぁっ!」
また音と閃光。写真が撮られ、不可思議な世界が形作られていく。
「う、ふ、く、イくっ……これで……絶対イくぅっ……あっ、あっ、あっ、やめ、ないで……イくからっ……♡」
「私の指で気をやりたがっている君がいるなんて、他の者は絶対に信じないだろうねぇ……」
「うくぅ、あっ、く、あっ、あ、あひっ、あっ……」
もう何度写真を撮ったか、ジョゼフも覚えていなかった。それだけ少女を焦らし、何度も絶頂をお預けしてきた。
「イくっ、あっ、あ、じょ……ぜ、ふ、私、い、イきたいのぉっ♡」
「ん……?」
「ジョゼフ、ジョゼフ、お願い、おまんこイかせてぇっ……もうやだ、もうおあずけされるのやだぁっ」
「ふふ、やっと名前を呼んでくれたね」
「呼ぶ、呼ぶから、だから……」
「でもすまない、もう時間切れだ」
「あ……!」
再び世界の景色に色が戻ってくる。少女は全身の肌を粟立てながら、ついに忍耐を切らせてしまったようだった。
「この悪魔じじい、しねーーーっ!」
「おや」
「こぉ、こ、こんな、私、あとちょっとだったのに! あとちょっと擦ってくれればイけたのにぃっ……ひ、ひど、う、ううぅうぅうぅぅうーーーーっ……!」
「泣くほど悔しいのかい。そんなに私に気持ちよくして欲しいのかな」
「うぅぅ、うぅくぅうぅぅ……!」
写真の中で与えた肉体への刺激は、現実には半分ほどしか反映されない。しかしそれでも何度も絶頂を迎えそうなところで取り上げたとなっては、精神的なもどかしさは想像を絶するほどだろう。
「安心していい。私もそろそろ、君の中に入りたくてうずうずしているところだから」
「あ……ふあっ……それじゃあ……」
「ああ。もちろん、性感を得るのに最適な身体で重なろう」
「え……?! ま、待って! もう写真はいや!」
彼女の悲鳴などお構いなしにジョゼフは再び写真機を構えた。そして再びみずみずしさを取り戻した己の肉体で、縛り付けられた少女の、開かれた肉穴に猛々しく入り込んだ。
「あふぅっ、あっ、あぁああぁぁーーーーっ……!」
ぬぢゅぶ……と、指で探ったときよりずっと粘っこい音を立てて、ジョゼフの肉茎が少女の秘唇にめり込んでいく。
「ああ……! これは若い身体の特権だね……反り返るほど屹立したものが、君の中で締めつけられる」
「くぅっ、あっ、おちんぽっ……うくぅ、あっ、ああぁあぁ……!」
少女はようやく得られた強い性感にすがりつくような顔をしたが、それでもその感触に浸りきることはできないようだった。
当然ながら、写真世界が崩壊してしまうときのことを考えているのだ。
「こ、今度は……おちんぽ入れながら、おあずけするのぉっ……!」
「どうだろうね……!」
ジョゼフは急き立てられるように律動を始めた。さっき指で擦った敏感な部分をより太いものでなぞって、さらにはこれまで届かなかった奥の奥もぐりぐりと責め立てていく。
「ひあっ、あっ、イくぅっ……イく、イけそぉっ……あっ、あっ、イく、うぅっ、あっ、あぁあぁっ♡」
激感に少女が震えだす。ジョゼフも粘膜の締めつけにやられてしまいそうだった。しかしぐっとこらえて、彼女を追い詰めるために肉茎を出し入れする。
「くるっ、くる、あっ、あっ、ああぁあぁああぁああぁあっ♡」
「う……! く、はぁっ……!」
若い肉穴がぎゅうっと痙攣し、膣内に咥え込んだ熱を喰い締める。何度も寸前で取り上げられた絶頂をようやく迎えられたという満足は、少女の身体をどこまでも昇らせていく。
「ひっ、は、はぁっ……あっ、あぁあぁっ……あっ……あ……ふ……じょぜ……ふ、ふぅううぅっ……♡」
「気持ちよさそうだね。私を散々辱めてくれた、憎たらしい子とは思えない顔をしている」
「あう、あうぅぅ……う……だって……」
「だって?」
「ジョゼフの……お、おちんぽ、が、よすぎるからぁっ……♡」
ジョゼフは思わずくくっと喉を鳴らした。この気の強い娘にここまで言わせても、サディスティックな欲求はまだ満足しなかった。
「そろそろかな」
「あっ、あうぅっ……」
再度写真の世界が壊れていく。そしてその瞬間、少女は驚いた様に目を見開いた。
「な、なんで……えっ……どうして……」
「ああ、焦れったいねえ」
「う……う、ううぅぅうぅ……!」
少女の肉体は、絶頂を迎える前の激しい疼きを持て余す状態に戻っていた。そこで彼女はようやく、満足を得るには――現実でこの老いた写真家に絶頂させてもらうしかないと理解する。
「じょ、ジョゼフ……なんでこんな意地悪するのぉっ!」
「今までの雪辱を晴らすためだよ。君に煮え湯を飲まされたのは一度や二度ではないからね」
「ううぅっ……あっ、あっ!」
熱杭が少女の膣穴をこじっていく。今のジョゼフは彼女への嗜虐と興奮で、若返った己にも劣らぬ滾りを持っていた。
「まあ、このまま写真を撮るような器用なことはできないからね。安心していい……ん……!」
「ひっ、ひぃっ、ひあっ、あっ、あぁあぁあっ♡」
さっきと同じように、膣奥に肉茎の先端を押しつけてグリグリと圧し潰す。すぐに女体は追い詰められていき、少女はジョゼフへの憎しみを忘れ、今度こそ本物の絶頂を迎えられそうだということにほっとしたようだった。
そして彼女の願い通り、ジョゼフもどんどん絶頂に駆け上がっていく。
「んっ……このまま一緒に往けそうかな?」
「あ、い、いっしょ……に……」
「君が激しく震えた瞬間に、私の精が中に放たれるんだ……きっと最高の気分だろうね」
「あっ、あっ、あ……ふ……!」
言った瞬間、少女がぞわりとしたのをジョゼフは見逃さなかった。彼の言ったことを想像したのだ。
「い、イきたい……じょぜふと、いっしょに、イきたいっ……♡」
「ふふ……素直な君は、思ったよりずっと可愛いね」
「あっ、あっ、あぁ、ああぁっ!」
彼女の夢見る絶頂が近づいてきていた。あとふた突き、ひと突きでえもいわれぬ法悦の瞬間がやってくる。そう信じて娘は、拘束された身体を必死に揺すった。
「ああ、もう出そうだ……ほら、往くよ、ほら、ほら」
「イくっ……イくっ、一緒に、あっ、あはぁ、ああぁああぁっ……」
「おっと、すまないね」
「う、く、ううぅうぅううぅううぅうぅーーーーっ?!」
少女が絶頂に震えた寸時に、ジョゼフは懐から写真を取り出した。ぱらぱらと音を立てて、彼の肉体の時間だけが僅かに巻き戻る。
「こ、このっ、このくそじじいーーーっ!」
「ああ……ああ! 往くよ、今度こそ……」
タイミングをずらされ、まんまと己だけ達して口惜しい顔をする彼女の膣奥めがけてジョゼフが射精する。
「ああ、ふふふっ……最高の気分だ……」
「うく……ううぅううぅぅ…………!!」
少女の悔しさが溢れる歯ぎしりを、心地よく受け止める。
「さて……また写真の世界に行こうか。あちらなら私もまだ元気でいられる……」
「や、やめ、いや……あ、ああぁあぁ……!」
嗜虐心はどんどん大きくなっていく。彼が満たされるのは、まだまだ先のようだった。