「いらっしゃ…い、ませ…」
「あーどーもどーもちわ、また来ちゃった」
「あ、あは、お、お席はこちらです…」
「え、奥?カウンター空いてない?俺、おねーさんが仕事してるとこ見てたいんだよね」
「…も、申し訳ありません…現在カウンター席はいっぱいで…」
「あー、そんな顔しないで、平気平気、オーダーとか全部おねーさんが取りに来てくれるなら」
「は、ははは…」

…店内の他の従業員が、密かに笑っているのがわかる。

私の仕事は喫茶店のウエイトレスだ。
喫茶店と言っても、情緒あふれるものではなく、
私はさほど詳しくないが、天人襲来によって江戸に限らず全国に広がった「ちぇーん店」で、
同じような店が全国どこに行ってもあるらしい。
コーヒーの煎れ方は全部マニュアル化してあって、接客態度もまた然り。
ケーキはできあいの冷凍されたものを解凍しているだけ。
だから私の仕事も、「カフェーの女給さん」なんていうものではなく、「飲食店の従業員」という感じで、
他人からも自分でも特別視はされない。

のだったけれど。

あるときから、明らかに、思い上がりではなく…。
「私に会うことを目当てに」店に通いつめる男が現れた。
それが仕事帰りに道で待ち伏せしているとか、
そういう恐ろしいものだったらはねのけるのは当たり前だし簡単だ。
…そういうことは、しない。
ただ店にやってきては私に話しかけ、恥ずかしがりもせず私への好意を口にする。

「おーい、ちゃーん」

服部、と名乗ったその男は、コーヒーを注文するときもなにをするときも、わざわざ私の名前を呼ぶ。
一度なんとなく教えてしまった、下の名前を親しげに。

「は、はい…」
「あのさあ、これどういうやつ?」
「あ、えっとこれは…名前のまま、抹茶にお砂糖を加えたラテにマシュマロを浮かべた…」
「ふーんふーんじゃあそれにするわ。一個よろしく」
「かしこまりました…」

…見た目、まじめそうではないがちょっとかっこいい、なんて思えるお兄さんだ。
ふつうだったら、お店の人にからかわれるのもおいておいても、やだぁ、なんて舞い上がっていただろう。
…素直にこの、服部さんの好意を受け入れられないのは。

「あはははは、服部さんまた来たね、モテモテだねちゃん」
「よかったじゃーんあれ絶対惚れられてるって、いいじゃんいいじゃん」
「………」
お店の従業員がこんなに笑っているのは。
お向かいにあるお花屋さんのちょっとけばけばしいお姉さん…確か脇さん、とかいうお姉さんがコーヒーを買いに来たときに。

「あいつひどいブス専よん」

と、あまりに衝撃的すぎる服部さんの性癖を暴露したからだ。

「………」

ひどいブス専、に、惚れられる私。
深く考えると生きることに絶望したくなるのであまり考えないが…考えなくても、服部さんを前に顔が歪むくらいにはなる。

「ほら抹茶ラテおまちどうさま、持ってってあげなあはは」
「…はい」

甘い香りを振りまくマグをトレーに乗せて、私は店の一番奥のボックス席へ。

「…お待たせしました」
「おーう、あんがとよ・・・あ、そうだ」

なんというか、実に用意していたような「あ、そうだ」だった。

「これ…後で読んでくれ」
「え…?」

懐から白い封筒を出して、服部さんが私に差し出す。

「あー安心しな、気が向いたらでいいから。別に読まなかったからってどうって言わねーから」
「は、はあ…ちょうだいします」

とりあえず私は…それを受け取って、頭を下げた。




そして一日の仕事を終えて。
ロッカールームで、その手紙を読んで。

私はそこに書いてあった通り…店の通りから少し離れた、雑居ビルが並ぶ町並みを歩いた。
日が暮れた時間にこの辺りを歩くのは初めてだ。
ほんの少し心細さがのしかかる。

「えっと…月の芽…」

手紙をまた鞄から出して、書かれていたお店の名前を確認する。
うん、月の芽。合っている。
たどり着いてみればその「月の芽」は、営業しているのかも怪しい居酒屋だった。

「おっ、待ってたぞー」
「え?!」

月の芽、の前でうろうろしかけた私に声がかかって、思わず飛び上がる。

「は、服部さん…」
「や、ども。来てくれたんだなぁ」
「あ…えっと、その…」
「んーここじゃあナンなんで。ちょっと歩くけど行こう」
「え?!い、行くって…」

服部さんは、なんの違和感もためらいもなく私の腰に手を回して歩き出す。
つられて私も歩くわけだけど、ちょっとついていけない。

「あ、あの、お話が、って」
「ん?んー、だいたい予想つくでしょ」
「それは…あの、えっと…」
「んでわかってんのに来てくれたわけでしょ」
「は、あ、あの・・・」






そして気がつくと、なんでか私はでかいベッドが部屋に陣取るラブホテルの一室にいた。

「ああああ、い、いけませ、あの、私こういうつもりじゃあ」
「じゃあどういうつもりだったん?」
「…それは…えっと、でも…」

手紙には、改めて二人で話がしたい、とあった。
そして仕事が終わったら例の店の前に来てくれ、と。

予想はできた。きっと恋愛にまつわることで、私の仕事が終わる時間というのは夜の八時だ。
そんな時間に男の人と、こっちに好意をいだいていることがはっきりわかる人とふたりっきりになるのだ。

…想定は、できていたのだけど。

「あ、あのですね、服部さん…私、いろいろ…確認したいことが」
「確認?」
「そ、そーです、あの、私のこと、好きなのか…とか…」

私が部屋の玄関の前で石になりながらそう言うと、
服部さんは上着を脱いで掛けていた体をこっちに向けて、そしてつかつかと私の方へ寄ってくる。

「…あ…」

壁際に追いやられる。
顎に生えた髭を撫でながら、服部さんが笑う。

「そう、俺好きなの。ちゃんのこと」
「…っ、そ、それは私が…ぶ、ぶさいくだから…?」
「あん?」
「あ、あの、服部さんは…ブスせ、違う、あんまり綺麗じゃない子が好みだって、は、花屋のお姉さんが」
「脇か」
「……」

なんとなく、うつむく。
そうだ。
私は自分の顔に自信がない。
二目と見られぬ醜女とまでは思わないけれど、
昔から没個性的、印象に残らない、「薄い」顔つきをしているとなんとなく周りから教えられてきた。
だからそこで…ブス専と評される人に言い寄られてしまうと、自分の中にある安っぽいけれど一応自己主張するプライドというものが、いやな感じにうごめく。

「ブス専ってなあちょっと間違ってる」
「え…わ、あっ?!」

服部さんは、私の腰に手を回したと思ったら…手品か、という動きで私をお姫様だっこの形に抱える。

「えわ、ちょっと、ちょっと…!」
「よっせ」
「わぷっ…や、や…ちょっと…本当に…!」

冷たいシーツが敷かれたベッドの上に落とされて、ああ逃れることはできない、と悟りながらも抵抗し、私はもがく。

「ブスってぇか、アンタみたいな顔した女を見てるとな」
「っ、わ…あ…」

服部さんが、近づく。
ベッドに乗って、私の頬に手を当てて。

「俺の手でイイ表情にしてやりてえって思うんだよ」
「いい…?っ、あ、ん…!」
「…んー…」

キスだ。
…経験が。
経験がないわけじゃない。
ただそれもまるで私の顔のように薄っぺらなものだった。
その頭の中で日に日に薄れていく記憶と、今私が味わわされている熱い唇の違いに戸惑う。

「や、あ…あ…」
「は…やっぱり、あんま経験ねえんだ」
「そ、ん…」
「もっと舌使いな。俺の口ン中に舌さしこんでみ?」
「で、できない…!」
「やれっての」
「は、あ、ん、ん…っ!」

へへっ、と軽く笑った服部さんが、また口づけてくる。
そして今度は、にゅるりと。
私の唇の隙間から舌を入り込ませて、私の凍る舌を絡め取る。
巧みな舌が、ちろちろと動く。

「…ん、はぁ…い、やぁ…」
「ん…汗かいてんな…ほら、脱げよ」
「そ、あ…でも…」

口ごもる。
が…服部さんは私の目の前でにやりと笑う。
それは…私が服を脱ぐ、ということをもう決めつけている顔だった。

「じゃ、じゃじゃ、じゃあ、は、服部さんも脱いでください…!」
「…へえ」

恥ずかしまぎれに言った私の言葉も、平気で受け流す。

「んじゃ、ちゃん脱がしてくれよ。できんだろ?」
「わ、私が…?」
「そそ。やってよ」
「……」

ごくんと。
口の中にたまった唾液を飲み込む。
ああ…ドキドキしてるんじゃないか。
なんだかんだって…私は服部さんにときめいてるんじゃないか…。

服部さんは伊賀袴を履いていた。
袴を解いて、上着も手で探って解してく。

「んー…やっぱ慣れてねーな…初々しさがたまんねえ」
「…っ」

そう言われて笑われて、私は焦る。
はやく脱がせなくちゃ、と急いて、余計に手つきがたどたどしくなる。
…が、半分くらい脱がせたところで、服部さんがさくっと自分の手で着物を脱いでしまう。

「あ、あ…と、え…あ…」

しっかりとついた筋肉が、しなやかなラインを描く裸体が露わになる。
思わず息をのんで、その身体に見とれる。
そしてそんな私の視線を受けて、服部さんは満足げに口元をほころばせる。

「次はちゃんの番だな」
「あ、えっ、あ、あ…!」

服部さんの手がぬっと私の帯に伸びたかと思うと、簡単に解いていく。
帯留めも帯も手品のロープみたいにするする解けて、着物がハラリと前に肌蹴る。

「あい、いや…裸、は…」
「ん…キレーな裸じゃん」
「や、やだ……」

震えた私の頬を、服部さんの手がぴしゃっとはたいた。軽く。

「イイ顔になってきたじゃん」
「え…?」

戸惑った隙に、着物も襦袢も剥かれる。
上も下も丸だし、裸になった私がベッドの上でばたばたと暴れると…これまた裸の服部さんが、上からのしかかってくる。
わざと体重をかけるように、私の動きを封じる。

「ア…!服部さん…!」

私の胸におなかに。
服部さんの硬い身体が当たる。
その筋肉や鼓動に、どくんと私の心臓がはねる。
…動けなくなる。

「ん…お、ちょっと濡れてる」
「あ、いやっ!」
「いやじゃねーだろ…ほら」
「んぁあっ!そ、いやっ…あ、ああ…!」

その指は、巧みに這い回る。
手指自体はとても大きくて逞しいのに、私の肌を伝う手つきはくすぐったいほどに優しい。
その指にスルスルと内腿を撫でられていると、足が勝手にひきつって、自然と脚が開いてく。

「あ…わ、私…」

私、の次の言葉を探せずにいると、服部さんの手が私の陰部へ伸びた。

「やっ、やめ、や、あ…ああ…!」
「っはは…」

にゅるん、と、気づけばもう充血して、くぱっと口を開き掛けていた割れ目を、節くれ立ったひとさしゆびが下から上へ一気になぞる。
つ、と指が離れる瞬間、ねっとりと濃い液体が糸を引いたことがわかって、彼の笑いも私の羞恥心も大きくなる。

「指入れられンの好き?」
「す、好きじゃありません…!」
「あれ、好きじゃないの」

こくこくと、縦にかぶりを振る。
…いや、どうだったっけ。
指、入れられるの、好きだったっけ。
そもそも好きって言うほど指を入れた、入れられたことあったっけ。

「もういっぺん聞くけど。好きじゃねえんだ」
「…っ、す、好きじゃないです…!」

なぜか一瞬、ぴりりと身に迫る危機のようなものを感じながら、私は自分の中の「わからない」を「好きじゃない」と決定づける。

「へェー…」
「あ、え…あ、んぁっ!!」

身体を、がっしりと固定された。
私を後ろから、座りつつ抱きしめるような体勢になった服部さんの腕は、私の腰からおなかに回って離れてくれそうにもない。

「じゃあ予告ホームランしとく。これから好きになるぜ」

なんですかそれ、と言うより早く。
私の膣口をこじ開けて、服部さんの太い指がぐにゅりと入ってくる。

「はっ、あ、あああ…ッ!」

圧迫感。
痛みこそないが、ちょっと息をしづらくなるような感覚を伴って、その熱い指は私の中を探る。

「んは、あ、い、あ…あ、ああ…!」

無遠慮な指は、中でぐるりと回転する。

「どこが好きだ…?こっちか?」
「あはひっ!ひゃ、あ、ああい、いあ、そっ、そこい、あああッ!!」
「おお…好きだなここ」
「す、好きじゃな、あ、あっ、あああ…?!」

指の腹がずりずりと、突起が密生したような感覚の部分を擦りながら動く。
…その感覚も、自分一人ではわからない。
服部さんの指に触られて初めて、そこがそんなグロテスクな感触だったことも、触れられると身体が飛び跳ねてしまうことも知った。

「んー…処女ってわけじゃないんだろうになぁ」
「しょ、処女って、あ、い、いやっ!」
「当たった男が悪いのばっかだったとか?」
「や、わ、わかりませんッ、さ、囁かないでっ!」
「あ?耳ダメ?ふぅっ!」
「はぁあぁあああっ!!」

耳に柔らかい息を吹きかけられたと思ったら、そのまま耳の軟骨が食べられた。
服部さんの顎髭が頬に当たる…なんて考えが逸れたのも一瞬で、
私にキスしたときと同じように、巧みに動き回る舌に耳をなぶられる感触と、
陰部に入ったままの指が私のなかを拡張するようにぐっちゃぐっちゃと動くのに、もうなんだか訳がわからなくなっていく。

「濡れやすいな…イジってるつーか、愛液掻きだしてるみてーだわ」
「い、や、ああ…あいえきなんて…だ、だしてません…」
「いや出てんだろ。なに言っちゃってんのこの子」
「で、出てません…!」
「出てるって、このぐちょぐちょ言ってんの何?」
「知りませんっ…!」
「…あー」

そこで、一瞬言葉さえ出なかった。
服部さんの指がより深く、まるで奥を抉ろうとするように突き進んできたからだ。

「はっが、あ、かっ…そ、そこ、だめ、あ、だ、あああああああっ!」
「奥もトロトロになってんじゃん、なんでそんな意地張んの」
「わ、わかりませっ…!」


服部さんが私を好きな理由がまだ不明瞭だからだ。
ぜんぜん信用できなくて、そんな人に心を開ききってはいけないと、私の心の奥が拒絶信号を出している。


「あーー…いいや…よっ、と」
「んはあっ?!ちょっ、苦しっ…」

服部さんが私に指を挿入したまま。
そのまんま、私を抱き抱えて立ち上がる。
私の足はほんのわずかだけれども床から離れていて、そのことに恐怖を感じてすくむ。

「ほら、見てみな」
「あっ…?!」

部屋に置いてあった全身鏡の前で、服部さんが私の顔をむぎゅっと掴んだ。
そしてそのまま、また膣の中の指をくいくいと蠢かせる。

「んぁっ、あ、あああ…!」
「ほォらイイ顔…お前のこの顔が見たくてさぁ」
「か、かお…?」

言われて、目を開いて鏡を見ると。
とろけきって、目元も口元もほころばせて。
ああこれは「悦び」だ、と一目でわかる感覚に浸りきる私の顔があった。

…なんだかそれを目にして、よくわからない気持ちがむずむずした。

「あ、わ、私こんなかおっ…」
「イイ顔してんじゃねーか…俺の予想通り、いい女」
「っそ、そんな、こと…」

…自分でも頭悪い、流されている、とわかるのに。
その言葉を聞いた瞬間に心の中のわだかまりがほぐれて、急激に身体の感度が上がったのが自覚できた。
熱したゼリーみたいな陰部が、服部さんの指をくわえてきゅうきゅう締まる。

「は…あ、いや…あ、熱い…」
「熱いのはお前の中だろ・・・なあ、
「っ…、あ…!」

耳元で名前を囁かれる。
呪文でも唱えられたみたいに身体が震えて、私はどんどんおかしくなっていく。高揚していく。

「お前のこの穴に、俺のが入るわけ」
「っ、は、服部さんの…!」
「そうそう。ずぶーって入って…ココだな」
「んっあ、あ、あッ…ああああっ!」
「こーこ…の女の底をずんずん突きまくるわけ」
「そ、底…っ、あ、おく、だ、だめえええっ!」

突起が密生しているみたい、と思った部分よりさらに奥。
まるで自分の奥底だという場所を指でつつかれると。
「あはひっ、ひ、は、あああ…いやっ、いや、あ、ああ、な、なんか…!」

フワフワしてくる。
身体が、腰が浮き上がるような奇妙な感覚がある。

「あれ…お前イクのも初めてなわけ」
「い、いくって、そ、そんなん、ふぃ、フィク、フィクションでしょ…、あ、あはああ゛あ゛ッッ!!」
「・・・ほんっと、人生損してんな…これがフィクションか?」
「っっっああああッ!あ、や、いやっ、あ、あああ、だ、だめっ、だめだめもうだめっ、あ、なんかっ、なんか…あ、あっは、あ゛ーーーッ!」

力強い指が、つぶすように粘膜の中を押してきたときに。
私は一瞬、目の前がチカチカしたような気分になって…そして、ぽわっとした陶酔感と一緒に現実に引き戻る。

「あ…あ、わ、わたし…」
「おーおー…潮まで吹いちゃってまー…」
「え…し、しお…?!」

それこそフィクションだろ。
そういう思いで気だるく自分の下腹部に意識を回せば、まるで炭酸の瓶を勢いよく弾いたような迸りの跡がカーペットに散っている。

「い、いや、ああ…わ、私…こ、こんなっ…」
「あー恥ずかしくない、恥ずかしくないから。今のお前の顔見てみ」
「えっ…?!」

また、グイと鏡の方に顔を向かされる。
私は涙と涎まで垂らして。

「…わ、私…幸せそう……」
「だろ?」
「こんな顔…はじめて見た」

印象が薄いというのは、顔のパーツだけでない。
どんな表情になってもいまいち変化に乏しい。
心からそんなこと思ってないんでしょ、なんていう横やりが入りそうな気持ちの伴わない顔になってしまう。
…それも、私の顔に陰を落とす原因となっていた。
私はどんな顔をしても「うそ寒い」のだと。
…それが、今は、どうしようもなく恍惚に溺れ、受ける快楽は至福だと、これ以上望むものなどないと、
「いやらしい」としか表現できない、とびきり淫らな顔をしている。
自分の快楽本意なのに、その顔は男性に媚びているようにも見えなくもなく、
そしてこんな顔で媚びたならば、きっとどんな男性も私のことを「薄い」だの「不細工」だのとは言わないだろうと。
それだけの思考が瞬時に巡ってきて、身体をさらに火照らせていく。

「は、服部さんは、私をこの顔に…」
「そう…そら、いくぞ」
「え…っ、あ、あっっはああああああっ?!」

ぶちゅっ、と、陰部にまとわりつく愛液の気泡がつぶれる音を伴って。
私を後ろから抱えた服部さんの、硬くなった性器が。

「あいいぃいっ、い、いきなりっ…!」
「っ…いきなりでも痛くねえだろ…ほら、押すぞ」
「おすっ…?っん、んぅうぅ?!あはっ、あ゛っ、ああぁはぁああっ!!」

さっき、指で少しつつかれたところを。
遠慮なくグリグリと、指よりもずっと大きなもので圧迫される。

「あ゛っ、ああああっ、は、はっとりさっ、わ、あ、あぁあんっ!」

知らない。
こんなの知らない。
膣の中に陰茎を挿入されることが、こんなにはちきれそうなほど気持ちいいなんて、知らない。

「…っ…イイだろ?」
「い、いい、いいですぅっ!気持ちいいですっ…!」

こくんこくんと首を縦に振りながら。
また鏡の中に目をやれば、私を突き上げる服部さんの顔がある。

その顔は、私が鏡を見つめてることに気づくとすぐさまにグイっと私の顔を引っ張る。

「美人は三日で飽きんだ…っ、ん…」
「んっふ…んふぅ、ふむっ…ちゅ・・・ふぅう…?!」
「ふぅ…ん…」

鼻息が押さえられない。
キスされながら、舌を吸われて唾液を流し込まれて、
口腔まで犯されている気分になりながら、服部さんの感覚に酔うしかなくなる。

「はっ…でもな、お前みてーなのは…っ」
「んぁああっ?!あ、あぐっ、お、押さないでっ、も、もうアソコ押さないでぇっ!」
「こーやって俺が入り込んだ時だけ死ぬほど色っぽいから、たまんねーんだよ…!」
「あいっ、あ、い、いろっぽい…わ、私っ、わたしぃっ…!」

私のお尻に、何度も何度も服部さんの硬い身体がぶつかる。
私はもうまともに考えられなくなりながらも、奥をつつかれる快楽と、服部さんへの噴き出した想いで言葉を紡ぐ。

「これからっ、これから何度も…!は、服部さんが…私を女にしてくれるんですかっ…あ、あああ…!」
「あー…っ…そうだよッ…なれよ俺の女に…俺だけの別嬪サンにっ…!」
「な、なり…ます、なりますっ、な、あ、あぁあッ、あ、あはぁあああッ!」

興奮が全身に回る。
身体の部位を単体で掌握することが難しい。
私という存在は、服部さんにトロかされてしまう。

「あ、い、いく、またいく、みたいっ、は、服部さぁんっ…!」
「いいぜ…そらッ、また小便漏らしなっ…!」
「あ、や、ああ、あッ…んっはああああぁぁああああぁあっ!!」

より奥にねじこまれた服部さんの熱と。
またもう一度、一瞬垣間見た白い世界へ意識が飛んで。
そしてすうっと戻る頃には、私の中で彼の熱が拭きこぼれていた。









「オーイ、ー」
「あっ、はいただいま…!」

ほかの従業員たちは、私と服部さんの変化にとてつもなく驚いていた。
まあ、いいのだ。
理由も本当のところも、私だけが知っていればいい。


「店長、キャラメルラテ二つ〜…ってあらん」
「いらっしゃいませ・・・あ」

お店のドアを開けたのは、いつぞやかの花屋のお姉さんだった。
カウンター席に座る服部さんと、その横で給仕する私を交互に見て、頬に手を当てた。

「あなたが噂のちゃんなのねぇ」
「う、噂って…」
「でもそんな、予想してたほど…いや、なんでもないわ」
「あはは、言いたいことはわかります」

そう切り返すと、脇さんは目を丸くした。

「あれですよ、恋の魔法ってやつですよっ」

そう言って私は、服部さんの頭を抱きしめる。
服部さんは居心地悪そうに首を振ったけれど、それが照れ隠しであることさえもう私は知っている。


でも、私の頬がもっともっと色づくのは、ふたりっきりの時だけなのだ。









******
ずっと書きたいと思っていたり、口にしたりしていながらなかなか手をつけなかった全蔵夢2です。
けつのあなは前回やったので今回はブス専ネタでいこうと決めてました。
結果的にこれを好きと言ってくれる方はすごく少ないだろうな、という描写になってしまいましたが・・・。

あと、前回全蔵を書いたときは自分の中で口調が銀さんとの書き分けが難しい、とか思ってたんですが、
(ていうか前の全蔵夢のあとがきでも書いてますね)
あれから何度も銀魂本編で全蔵の出番があって、そのイメージで結構差別化できました。
というか、前回書いたときはまだブス専という設定は脇さんがちょっと言ってるだけだったんだよなぁ。
まさかあんなにエロいなんて。ハァハァ(うわあ)

あと、ゲスい話をすると全蔵のほうが銀さんよりもテクニシャンだと思います。
銀さんはわりと力押しだよ。

実は次は神威夢が書きたかったりするんですが。うはは。

読んでくださってありがとうございました〜。