お疲れさまでした、と口の中でだけもごもごとつぶやいて、エプロンを脱いでバックヤードに入る。

私の名前はと言う。
犬も猫も幼い頃から名を付けて呼び続ければそれが自分のことを指しているのだと覚えるそうで、つまりはそういうことだ。
歳は、覚えている範囲ではたぶん、十代の半ば…以降、だったと思う。
まだ二十歳には達していなかったような。いやいたような。
職業は大江戸コンビニエンスにてレジ打ちをメインに品出しや発注までとりあえず一通り。
住居はダンボールの神様に守られた陰りだ。

……つまりは、そういうことだ。

時たまうちの店先に貼ってあるバイト求人の広告を眺め、
こういうとこって賄いにお弁当とか出るんだよね、賞味期限切れのさ、と、
本当に働く気なんてないんだろうなあ、という女学生が笑うのを見ているが、彼女らは結構勘違いしている。
たぶん、女学生の言い分としては、
「賄いと言ってもコンビニ弁当ばっかり食べるなんて…」
というところなんだろうが、
まずこの時代にそういう従業員サービスがあること自体が大変ありがたいので、
出されたのが合成着色保存料漬けの飯だったとしても、感謝こそすれ蔑むことなど決してない。
そして、これは彼女ら以外の人も認識を違えていると思うんだけども、賞味期限切れ弁当だからといってロハでは貰えない。

昼、夜に総菜弁当入れ替えの時間となると、破棄されかけの弁当は半額で従業員に売られる。

……どんな場所であってもヒエラルキーは存在して、
より熱量と栄養が高いものを手にできるのは古参というか、そういう従業員であって。
家なき子ちゃんはないがしろにされるので、とりあえず60円になったおにぎりがひとつ手に入れば幸いといえた。

ちゃんそれしか食べないの、これわけたげよっか」

と言って、プラスチックの蓋を皿代わりにして幕の内弁当の具材を差し出してくる従業員はいるのだが、
……それは決して、「受け取ってはいけない」ものだと、私は知っていた。

理由はいろいろあるのだが、大ざっぱに挙げるとすればこうなる。
・人間一度覚えた贅沢は忘れられない
……その日に裾分けをしてくれた人が次の日もそうかと言えばそうでもないわけで、
固くなりかけた米に八つ角の出汁や鮭の塩辛さはさぞ合うのだろうなぁ、とか思うと、
余計にそれは受け取れない。
気持ちの問題だけではなく、肉体もそうだ。
胃袋は日々の食事量によって収縮するらしく、
一日おにぎり二個で過ごせるのはそのお陰だ。
そこに余計なオカズなど介入させれば、もう次の日からは空腹に耐えられなくなるだろうよ。
そして。
・彼らは間違いなく見返りを求めている
のだ。
私にそうして飯を差し出すのは、まぁ従業員にほかに女がいないというのもあるが、全員男だ。
以前、マツダイラさんなるどこかで見たような…見なかったような…女の子が短期バイトで入ったことがあり、
その時の彼らは必死にマツダイラさんの気を引こうとしていた。
…が、マツダイラさんを休日デートに誘うのと、
ちゃんに弁当の具をわけてよこす、のには大きな差がある。
まずマツダイラさんは見るからにかわいく品もよく、
きっとアルバイトなんてしなくてもその気になれば親のスネをかじり続けていけるに違いないお家柄が見て取れた。
だから彼らは「デートしてくださいませんか」
と下から申し出るのである。
ちゃんは違う。
ちゃんは住所不定で家柄もないので、
「ご飯わけてあげようか」
と上から言ってのけるのだ。
そしてそれに飛びついたが最後、私は彼らに見返りとして肉体を差し出さなければならないのが見え透いている。
多分もうそれは私の空腹と原理は同じで、
ひとまず乳房がついていて股ぐらに穴があれば誰でもいいのだなあと思った。
あまりに女性との出会いがないとそういう考えになるんだろう。
しかも半額で買った弁当のオカズひとつで釣れそうときたもんだ。

ゆえに私はいいですいらないです本当に、と何度も断らねばならなかった。

今更プライドがどうこう言うわけではない。
ただ単に、彼らの下敷きになっている自分を想像するとざーっと気色悪いものが背筋を抜けていくので、
つまりそれは「イヤ」なんだろうな、と理解して受け入れないだけだ。

……で、そうすると、優しくされる道理もなくなるわけで。
ちゃんは冷たい部屋の中、一人で60円のおにぎりを黙々と食べなければいけなかった。
まあそれはいつも通りなのだが、最初のうちは用意されていた休憩室の茶葉も急須も消えていて、
ついでに言うと電気ケトルもない。
ガスコンロがないのでお茶も飲めない。
水しかない。
指折り数えて、ああ今日は水曜日…と思うとさらに落胆する。
明日あたり朝イチで、一応なのだが行政が公園の見回りにくるのでやり過ごさないといけない。
今日の夜から明日の朝にかけてだけでいいので、マイダンボールハウス以外の住居を探さなければ。
お江戸の警官、地域の岡っ引きは大変仕事熱心で、
犯罪検挙率が下がっているぞ!と言われると違法駐車や放置自転車を一斉にチェックし数字を整える。
二週間に一度の住所不定な者たちに対する立ち退き勧告もそれだ。

おにぎりを食べ終えて、明日店先に立てるノボリをチェックする。
「やまざき春のパン祭り」だ。
早朝からあんパンとジャムパンが大量に入荷されるんだろうな。そして逐一並べて補充するんだろうな。
はあ。

……この時間帯、ちょうど夕飯どきに街中を歩くのは大変危険だ。
治安ではなく、私の心の問題だ。
屋台から香ばしい煙が昇るし、
食べ物屋だってドアを開けっ放しにして千客万来している。
うう、と胃袋を押さえる。
あんまりに底辺の生活が続くと脳味噌のいろんな部分がモロくなってくるというのは身を持って経験した。
万引きも食い逃げも追い剥ぎも、ぜんぜんありじゃね、とか思えてくる。
きらびやかな着物で歩くお姉さん方の鞄にちらちら目がいく。後ろからあれをひっつかみ、そのままどこまで走れるか。
万引きにしたってきっとどうせ店も多少盗まれることくらい計上してるだろ。
ああおなかすいた。
手っとり早く売春しろと陰口が聞こえた気がする。すみませんね。
また最近滋養不足がきているようだ。
さすがに米と海苔だけで取れる栄養というのはたかがしれていて、びたみんとかみねらるとかが圧倒的に不足している。
頭が犯罪方面に傾いたり、幻聴が聞こえたりするのはそのせいもあるらしい。
くそうばかばばーめ。あれならいっそ絞め殺してやった方が幸せじゃねーのか。
病床に横たわる廃人みたいになった母…親?のことを思いつつ、舌で歯茎をなぞって思わずぴくんとした。
奥歯に米粒はさまってた。ラッキー。
さっそく舌先でそれをたぐり寄せ、僅かな甘みをじっくり味わう。

「あー…おなかすいたなぁ…」

どこで寝よう。そう思って、ふと目に付いた路地裏に入った瞬間に。

スパンッ、と気持ちのいい音を立てて、私の顔に何かが飛んできた。


「あ…あの、怒ってない?」
「いえ…」

斯くして顔面に飛んできたのは「あんパン」だった。
顔中あんこまみれになった瞬間に怒るでも驚くでもなく、あっ甘い、うまい!とか思って口に垂れてきたあんこをもぐもぐしていたら、
私にあんパンを投げたと思われる男がぬうっと姿を現した。

やまざきぱんとは別に関係ないそうだが「山崎」と名乗ったあんパン青年は、路地裏のビールケースに腰掛けた私をちらっと見た。
顔に吹っ飛んできたあんこをムシャムシャ食べる私の必死さと、イヨイヨほつれ気味だった着物と髪にただならぬものを感じた…というか、
「こいつは腹が減っている」ということを理解したらしい。
山崎青年は、まだ封を切っていないあんパンを取り出し、私にハイ、と差し出した。

「ごめんね、その…ちょっと気が立ってたっていうか」
「いえ…」

気が立ってたからと言ってあんパンを他人に投げるという行為はかなりおかしいが、まあいい。
そのお陰で私はもう何日ぶりかもわからない甘みにありつけている。
…見返りを期待されての善意には乗らないことにしているが、この場合はまず彼に負い目がある。あんパン投げた。
ので、私はあんパンを受け取って食べる。これで立場が平等だ。
なんというか胃が泣いている。咽び泣いている。
あんパンと胃袋のすてきな出会い。
その上。

「えっと、ちゃん?よければこれもどうかな」
「あ…ど、どうも」

無心に半分くらい食べたところで、紙パックの牛乳まで差し出された。
一口すすっただけで、その滋養の詰まった味に全身が歓喜してぞわぞわした。

「これからどこいくの?」
「どこって……」

てっきり「夜遊びはよくないよ」みたいな窘めが来るのかと思いきや。
この「平凡」を絵に描いたような地味な青年は、私がうらぶれた不良少女でないことを見抜いているようだった。

「……とりあえず雨風凌げりゃいいっす」
「凌げないでしょ、ここは」

山崎さんがそう言った直後、その言葉に頷くようにビル風が入り込んだ。
ひゅおっと、狭い路地で渦巻く冷気が足首を冷やす。

「ほらそれに…いや俺のせいなんだけどさ、これ…」
「あ?」

そう言った彼の手が私の頭に伸びてきたので、やべっと思って反射的に身を竦めたが、予想していた衝撃はいつまでもやってこなかった。

「ほら、これさ、あんこついちゃったし…」
「あ…」

指先は、私の髪の毛をすくってその先のべたつく固まりをつまんだ。

「ねえ、ちゃん」

かなり怯んでしまった。
山崎さんは前屈みに私の顔をズイッとのぞき込む。
そして声を出さず、表情だけにこっとさせた。
…その様子になんだかもう、私はすっかりこの男に「見透かされている」のだとわかってしまった。

「雨風凌げて、髪の毛洗えて、好きなだけあんパンが食べられるところがあるけど…来ない?」



「う、わあ、うわぁあ、あううあ」
「変な声出さない」
「い…いや、変、と、いうか……これは、その」

フロントのオバさんが私と山崎青年をどういう間柄だと見たのかは、わからない。

「あ、つっ……」
「あ、痛かった?でもほらこれ、もうここくっついちゃってる」
「ちょ、じ、自分でとります、とりますから…」

あろうことかタオル一枚巻き付けただけの私は、これまたタオル一枚の山崎さんに髪の毛を洗われていた。

「自分でやれば力…あ、ああ?!」
「あはは」
「ちょっ、ちょ…!」

彼が必死に、元々蜘蛛の巣気味の髪を櫛で解きつつ濡らしてくれるのがものすごく恥ずかしい。
が、自分でやる…とその手をはねのけた瞬間、体に巻いたタオルがペロンとはがれた。

「やちょ、あの、み、みないで!」

……別になにを気取るわけでもなかったのだが、もうこの態度でバレバレだろう。
そう思って鏡に映った彼の顔を見れば、やっぱり笑っていた。
風呂場の温度のせいか知らないが、さっきよりもほんのり頬が紅潮している。

「あ、そ、あの、もう、ザキさんからかってるんでしょ?!」
「ザキさん?」
「や、やまざ、きさん」
「からかってないよ」
「からかってんでしょ?!ほら笑ってる、わかってんでしょっ」
「なにを」
「……う、うう…っ」

彼は笑いを崩さない。
自棄になって怒った私なんてちっとも怖くないらしかった。

「だから、その、し、わ、わかってんでしょ、私がその…あ、の」
「……ん、初めてだって?」
「……っ」

ひい、死ぬ。やめてやめて。
そう言ってから山崎さんがまた笑ったので、もう本当に死ぬかと思った。
顔があっつい。汗と水滴がどんどん額から垂れ落ちていく。

「ははは、かわいいねちゃん。思った通りだ」

それ以降、もう私はなにも言えずにうつむくしかなかった。
そんな私の髪の毛を丁寧に解し、濡らし、ゆっくり泡立ていく。
それを流す頃には、浴槽に湯が溜まりきっていた。

「んっ…ふ、く……ぅ」
「きれいになった。ほらほら」
「んやぁっ?!や、やめて……っ!」
「はは、やめなーい」
「ちょ、ちょっとザキさ、そ、そこ……!」
私を背中から抱え込んで湯に浸かる山崎さんの鼻先が、あろうことか私のわきの下に潜り込んできた。

「や、やだってば……!」
「いい匂いしかしないよ」
「そ、そうじゃなくて、脇かぐなっていうの!」
「かーわい」
「っ……!」

ぺとん、と、今度は額に唇が落ちてきた。

何度も見たことがある行為なのだが、私自身がするのは本当に初めてだ。
ちゃんはスレているくせに、今まで男の人と手を繋いだこともなかったのだ。

「うう…やだ、いやだ」
「やっぱり怖い?」
「こ、怖い、うんそう、こ、こわ、い…?」
「なんで?」
「それは…そのえっとあの」

ひとたびこの身体に女としての機能と価値がちゃんとあると理解すると、私はその。

「…お母さんと一緒になるから?」
「え?!」

思わず、じゃばんと音を立てて彼の方を振り返った。

「な、なん……っ」
ちゃん、捜索願いが出てるよ」
「……そ、え、あ……」

今まで感じていた羞恥が、突然すべて恐怖に変化した。
そんな驚愕を隠せない私を、山崎さんはじっ、と、見つめる。

「冷えるよ、ほらちゃんと入って」
「や、ちょ、ちょっ、は、離して!」

膝立ちになりかけた私の腰をグッとつかんで、またお湯のなかに浸す。
そしてひきつる私の顔に、彼は薄い唇を寄せた。

ちゃんのお母さん、ちゃんを探してる」
「ちょ、そ、そんなの…え、ええ……?!」
「もう仕送りもしなくて平気だよ。届かない」
「な、なんで?!」

なぜ会ったばかりのこの男は、誰にも話したことのない私のことを知っているのか。

ちゃんさ、君のお母さんの病気はね、お金で薬だけ買ってもだめだよ」
「……ど、ど」
「医学も進歩してるんだから。ちゃんと治療すれば治るよ」
「な、なんで、し、知ってるの」

震えた。温かい湯の中のはずなのに、氷に浸かっているようだった。

「お母さんが死んでから悔やんでも遅いんだからさ」
「……な、ちょ、ど、どうして……」
「あのねぇ、俺もね、伊達にあんパンだけの生活してないからね」

何でもお見通しですよ、とおどけた様子で。
それとあんパンがどう関係しているのかぜんぜんまったくわからなかったのだが。

片田舎で私娼みたいなことをやっていた母親が変な病気を貰い寝込んだのはもうだいぶ前だ。
近所の評判もだいぶ悪い一家だったけれども、とりあえず町医者、のようなそうでもないような爺さんは薬を出してくれた。
が、一向によくならない。
ついでに病気を貰ったという話も瞬く間に広がって、母は娼婦を廃業せざるを得なくなった。

そんな母の元にいるのに耐えられなくなったのがいつだったかもう思い出せないし、
なぜ江戸を選んでこんな生活になっていたのかもあやふやだ。ポッカリ抜け落ちている。

「け…警察?」
「いやね、うん、こんなでも」

そう言って、山崎さんは笑った。
狼狽してもはやまともな表情も作れない私を、抱きしめる。

「はうっ…?!」
「ずいぶん痩せちゃって。骨がわかるよ、もうほら…」
「や、め、ちょ、んっ……!」

再び回り込んできた彼の指先は、私の皮膚越しの肋骨と乳房を撫でる。

「でもほら、ここはちゃんと女の子だ」
「ひいっ?!い、あ、ああ……だめっ!」

思わず恥ずかしい声が漏れた。
思いの外…いや、他を知らないんだけども…強引な指先が、ぎりぎり痛くない強さで私の乳首をつまんだ。
そのまま指が、凝り固まった乳首の先っぽをすりすりと撫で回し、私の耳元に吐息がひっかかる。

ちゃん、俺ね、裏でどうこうって考えてないから」
「う、らで…ンッ…!」
ちゃんをどうとか、考えてないから」
「え……と……」
「いや、張ってたんだけどね、あそこで。ちゃんあそこ通るかなって、隠れてたんだけど」
「そ、そんっ……はあ、ああちょ、やめっ……!」

くにくにと、ひとさし指と親指が乳首の弾力を確かめるように、力を込めては抜く。

「でもねぇ…」
「は、ちょ、ちょっとザキさっ、ああ…う……?!」

はむ、と、音を立てるみたいに。
私の下唇は、山崎さんの唇に挟まれた。

「ん……う、うう…うっ?」
「は……あはは、ちゃん、息は鼻でするんだよ」
「鼻で…んっ、んうう……!」
一度離れて、細めた瞳で私を見つめる彼は至ってまったり、愉しげだ。

「んー……!」
「ふくっ、ん、んうう、ううく……!」

言われたとおり、呼吸ができなくなる唇を補うために鼻で呼吸をする。

「はっ、あ、ああ……」
「……ん、あのね、俺さ」
「な、なんですか……はぐっ?!」

ぎゅーっと乳首を引っ張りあげられて、仰け反ってしまった。

「や、め、や、ああ、んあ、の、のばさないで……!」
「へへ、なんか改めて言うと照れちゃうけどさ、俺ただ、個人的にちゃんとやりたいだけだから」
「はへ…えっ、あ、あく、うんぁあぁっ!」

美醜の中間点をすくったような、ごく凡庸なこの男の顔は、この状態で頬が紅くなっていると…ちょっと、どころではないくらいに色っぽかった。

「やめ、や、あ、ん、ちょ、胸それ、やめ、てってば!」
「だから、怖がらなくていいってば」
「こ、こわがって、あ、ふくっ…ん、あぁあぁ、ちょ、しゃ、しゃ、べれないって…!」
「チヅちゃん痩せてるだけじゃなくって筋肉もないなぁ…ほら、結構胸あるのにさ、ほらほら」
「やんっ、だ、だから、だから、やめてよぉっ!」
「やめないってば、ほらこんなに下の方に来ちゃってさ、ここ、こーこ」
「うっく…?!」

そう言って、山崎さんは乳首を引っ張ったまま乳房をぐいっと持ち上げる。
痛くはないが、彼の指が少し動くたびに変なモノがジンジンと頭の中に響く。

「筋肉ついてないから胸垂れて来ちゃうんだって」
「ま、まって、ひ、引っ張らないで、伸びちゃうよ……」
「えーへへ、ちゃーん」

じゃば、とお湯を掻いて動いた彼に、思わず心臓が止まりそうになった。
広い浴槽にぐっと沈み込んだ山崎さんの膝が、私のお尻のあたりをグリッと押し上げた。

「んい?!ちょ、あっ、はく、それっ……!」
「へへ」

……この笑いは、もしかして彼の照れ隠しなのだろうか…?

「あ、ああうあ、だ、だから私、その…」
「膝ぬるぬるになっちゃった」
「ちょ、もおおぉ!人の話を聞けっつの!」
ちゃんこそ無視しないでよ、俺恥ずかしいの我慢して告白したのに」
「こ、こくはく…っん?!」

ずりずりと、そのまま膝が太股の間をゆっくり滑る。
自分の大陰唇に包まれた上での刺激だったから、痛くはない。
むしろお湯の中でもわかるほどに湿った陰部をそうやって圧迫されるのは、なんだか気持ちよくもあった。
でも、その感覚にとろけるままになってこの男にすがりつくのは。

「だからね、ちゃんが家出少女だろうとなんだろうと関係ないって話」
「んくうっ……?!」

腰を浮かせて自然と逃げる私の下半身を、山崎さんが押さえ込む。

「病気のお母さんも関係なくて。ちゃんそのものが可愛いなって、したいなーって」
「し、したいって……?」
「だからこういうこと」
「ひわあぁっ、ちょ、やん、あ、ああ、お、おさえな、い……で、あ、あはぁ、あ、うぅう……!!」
「いいじゃんね、会ったばっかりでさ、お互い性格とか対人関係とか知らなくてさ、でも気持ちいいことはしたい」

へらへら笑いながら言うくせに、その言葉には妙な説得力があった。

「そういうのいいじゃんね…って、俺うるさいね、喋りすぎかな」
「……そうですよ」

膝を足の間で滑って身体を寄せれば、お尻の谷間に山崎さんがぺったりと当たった。
肉と言うよりも、骨のように硬い部分が。

「しゃ、喋りすぎですよザキさん……」
「だね、ちゃん塞いで?」
「んっ……!」

その誘いに、乗った。

「は、んっ、んう、ん……!」

ぽかんと開いた彼の唇に、舌を送り込む。
よくわからない味がした。

「ん……」

…よくわからないが故にもっと味わいたくなり、キュッ、と、私の舌の上に乗った舌を吸ってみた。

「んぅっ…」
「ふ、く…ちょ、ちょ、ちゃん」
「っは、あ……?」
「吸ってもいいけどさ…つつ、これ、それ以上飲み込めないから」
「あ、す、すいません…」
「気に入った?」

問いかけに頷いて、もう一度吸う。
ざらざらでぬるい感触は、どうにも理解しがたい。
気持ち悪いのではなく、それが今、目の前の男と私がやっている行為だというのがよくわからない。

「わ…私」
「ん…?」

これはズルイ奴の遣り口だなァ、とわかりつつも。
彼がせっかく出してくれた助け船なのだから、乗らずにいらいでか。

「私…だけど、今はじゃないですからね」
「うん、わかった」
「…ちょ、ちょっとはなんか、ないんすかもっとなんか」
「うん?じゃあちょっと、なんか言う?」
「……」

山崎さんは私を抱き上げて、ぐるんと身体の向きを変えさせた。
今度は彼の胸板と鎖骨が目の前にある。

ちゃんは怖いんだ、女になるのはイヤだね」
「……」
「なりたくないね、女は弱くてズルイから」
「…うん」
「でも、愉しいことは好き」
「う…うん」
「知らないまま死んでくのはイヤだね」
「そ、そう……う、ん」

またがちがちに固まりそうになった私の秘処を、彼の指先がまさぐった。

「なら…ねえ?今のちゃんは愉しいことが好きなちゃん」
「ふ、くうぁ…!」
「これが終わったら、俺と離れたら、スレッカラシのちゃんに戻ってる。いい?これで」
「う、うん、いいで、すぅっああぁあ?!」

さっき乳房にやったように、山崎さんの手は探った陰部の一番出っ張ったところをゆるく押しつぶした。

「はぁ、ああ、ああ、だめ、つ、よい、強いっ、は、あああ……!」
「小さいなぁ…皮の上からでこれだもん、すっごく小さいよ」
「ち、ちいさいって…その、く、くり…が……?」

肯定の代わりに、ぐりりっと押しつける指先が強くなった。

「ひっき、あ、ああぁあ、だ、め、ちょ、だめ、強いってば、強いの、ぐりぐりしない、でえぇえ……!!」
「…へへ」
「ちょっ、そ、その笑いやめえぇ!やめてっ、恥ずかしいからっ!」
「恥ずかしがってるのが可愛いのに」
「うっ、く…うあ、も…ざ、ザキさぁん!」
「いいよ、ちゃんすっごいさぁ、俺さ、そういうの好き」
「そういうの……って?」

またへらへらっと笑うものだから、半ばあきれ気味に聞いたのに。

ちゃんみたいにね、全然知らないくせに頭でっかちの子にさ」
「………?」
「こんな風にお仕置きするの大好き、はは」
「おし、おっ……あ、あぁあ、ちょ、ちょっ……!!」

まさか、と思ったのだ。
こう、ちょっとよくわからないのだけども…本来ならもっと。

「あくっ、う、いぎっ……いい……?!」
「ちょ、逃げない、にーげーなーい、ほらちゃん」
「えあっ、あ、ちょ、だ、ああ、よ、こ、これ、よ、予想以上にいたっ、い、いだ、いだぁあああ」
「く…は、違うって、違うでしょ……」
「えだ、だって、ほ、ほんとこれっ…ふ、ふつうもっと、指、指とかで…もっと……!」

……ゆるく充血して開きかけていたとはいえ、今の今までまったく手つかずだった膣穴に。
いきなり指よりもずっと太いものがめり込んできた。

「そうなんだけど…ごめ、我慢できなくなった…」
「そんな…あ、あいたっ、ちょ、うぐっ、き……いぎっ……!」
「違う、だめだめ」
「だめってなにが……?!」

思わず涙さえこぼしながらすがった私を、意外と筋肉のついた腕ががっしりと押さえ込む。
その仕草はとても優しげなのに、山崎さんは決して私に食い込んでくる杭を退けてはくれなかった。

「今のちゃんは、愉しいこと大好きなんでしょ」
「だ、うぐっ…だ、だって、うぐ、うう…これ、い」
「痛くないの」
「う、うう……」
「逆、逆でしょ。これ、ほら俺の。ほらっ」
「あっい、いぐ、ううぐううっ……!い、いた…」
「くないの」
「うっ……?」

私の頬をぺしんと叩いて、山崎さんはそのまま指を私の口元に持ってくる。
きゅっと私の唇をつまんでまた、違うでしょ、と。

「気持ちいいの」
「うやあぅっ?!で、でもいった、いたっ、あ、ああっ……?!」

男の肉、というのは目で見たよりもずっと深く入ってくるようだ。
私のジンジンと鈍痛に疼く穴を拡げて、さらにはゆっくりと抽送を始めてくるものだから、泣き言を漏らさずにはいられない。

「む、無理、痛い、これ痛いよ、ザキさん、痛い……!」
「痛くないってば…つ、はは、こんなに気持ちいいもん」
「そ、りゃ、ザキさんは、い、いいかも、しんないけど……ぉ!」
「なんでさ」
「んぅっ?!」
「なんで俺はいいって?」

だいぶ弾んだ息で、山崎さんは私にまたヘラッと笑う。

「え、だ、だって…い、いいって、言ったじゃん…」
「はは、うん、すっごくいい…なんでだろうね?」

この男の意図を掴めないし、必死で考えても結局はああ痛い、というところに行き着いてしまう。

「そ、それは…わ、私のアソコ、が…あの、気持ちいいから……ん、んぐううっ?!」
「そそ、気持ちいい、ちゃんの中すっごくいい」

そう言って、私を抱きかかえる形だった彼がぐっと身を寄せる。
そのままぐんっと身体を前に屈めて、私をお湯の中に押し倒す形になる。

「あぐっ…うう、う、ううっ……!」
「今から…は、気持ちいいのと、もっとしてほしいのと……はあ、好き、とか、イイとか、そういうことしか言っちゃだめね」
「な、なんでぇ……?!」
「あっは、やっぱり頭でっかちなんだから…そういうこと言っておけば、自分で自分を騙せるの、知ってるでしょ」

……そりゃ、そうだ。
ずっと自分の中で唱え続ければ、身体の方は本来の意見を覆す。
そうやって生きてきたんだから。

「で、でもぉ、でも、痛い、痛いよ、ザキさん痛い、痛いの、騙すのやぁ、嘘言うのやだっ」
「だめだってば」
「ふ、普段のは、も、もっと我慢強いですっ、なんでも見ないふりできるし不感症ごっこもできるっ、ん、けど今はやぁ、やぁああっ!我慢できない女になってるの……!」
「それじゃ…ん、違うでしょーが。設定破綻してるじゃん」
「は、ハタンでもなんでもいいの、もういいの、もういい、もーいい、もーどーでもいいっ!」

「……しょうがないなぁ」

もっと言いくるめられて、強引に割り入られるのかと思ったのに。

「ああう…?!」

ずるっと、一気に膣穴から熱が抜け落ちる。
その、皮膚と言うより粘膜そのもののツルンとした先端は、今度は私の割れ目にぴったりと胴を寄せる。

「ざ、ザキさん…ん、んっ、ふ、うぅ……!」
「これなら平気?」
「は、う、うぁ、へ、平気っ……ん、んくっ、あ、ああ……!」

私の脚を押さえて、割れ目を肉茎が上下する。
お湯の中なのに、そこだけ水よりももっと濃く粘りのあるものがまとわりついているのがわかる。
その滑りを使って、ずるずると彼は遊ぶ。

「これ……んあっ、あやぁっ、あああッ…!」
「いいよね…?」
「うっ、い、いい、って、いうか、あッ?!」

迫り出した先端の、ごく一部だけ窪んだ穴。
山崎さんからも滴っているらしいぬめった蜜はそこから出ているようなのだが、ちょうどそこで肉芽をぐりっとほじられる。

「はひっ、や、あ、ああ……だ、めえ……!」
「ぺろんって、ほら」
「へあっ?!な、なにっ?!」

一瞬びりっと強い刺激が走って、それからは何度もチクチクと。
彼の鈴口が私のクリトリスをつつくたびに、鋭い感覚が襲いかかってくる。

「ここ、皮剥けちゃった…すごい、ちゃんすっごくいい顔」
「うあ、ああう、い、いいかお…してない……」

そうされていくうちに、まだじくじくと痛む膣口はなんとか気にならなくなってきて、逆に気持ちよさに集中していいものかと落ち着かない。

「あ、ううぁ…あ、んッ…!」
ちゃん、こっち見て」
「う…ぐ、うう……」

その顔は言っている。今はいやらしいことが好きなんでしょ、と。

ああ、もう。

「や、山崎さぁん……!」
「……っ、はは」

グッと、彼の腰をまるで別の生き物の「アゴ」みたいに使って、しっかり挟み込む。
そのまま絡めて、しっかり目の前の男を見つめた。

「き、気持ちいい、これ、これ……!」
「これ……?」
「それ、それだってば、その、ち、ちん…えっと、その、そのそれで、そのあれでアレ、わ、私のあ…そこ、ずるってするのっ…!」
「……へへ」
「また笑った、笑ったこいつ!」
「バカっぽい背伸びがかわいいなって」
「く…の、この、なめ、るな、この、うっ……うぐいっ?!」

思わず歯を噛んで、そのままギリギリ鳴らしながら睨む私の視線も、たやすくかわされた。
それどころか彼は器用に、左手でしっかり私を抱えてしまうと右手をひっくり返して自分と私の間に差し込む。
敏感な突起を肉茎で弄うのはやめないままに、人差し指を縮こまった膣穴にぐっと押し当てた。

「うぐっ?!」
「がんばってみる?」
「ちょ、そ、こ、やだっ……ん、う…!」

一瞬にして肉芽の快楽を忘れ、さっき味わった圧迫感と痛みを思い出して震える。
……と、山崎さんの指はするっと離れた。

「冗談だよ。そんなにびびるなんて思わなかった」
「そ…の、ザキさんって……!」
「そんなに痛かった?」
「このっ……!」

からかわれた憤りと、ぶつけるしかない恥で開きかけた唇は、彼にぱっくんと食べられた。

「んうふ、ふううっ、うー!」
「ん…ほら、開いて」
「んんっ!」

私を笑っていることが丸見えの口づけなんていらない、という抵抗意志で、舌でつつかれても唇は閉じていたのに。

「あはは、ほらじゃあほら、きゅー」
「ふぐぅ?!」

山崎さんの指先が私の小鼻をつまんで塞いだので、鼻呼吸に頼りきりになっていた酸素はすぐに詰まって鼻の中でぷっくり膨れた。

「変な顔、へへ」
「っぶは、はっ、ああ、ああもうっ、もうっ、なんなの?!」

たまらずばしゃばしゃと水を掻きながら抵抗した私も、文字通り鼻で笑われるだけだ。
また怒鳴りそうになった私に、ふと真顔になった彼が。

「突き通せないキャラなんて作るだけ損って話」
「え……?」

一瞬身体が浮いて、背中をぎゅうっと締め付けてくる腕。

「あぁうあッ、は、うんっ、あ、や、それ、強…っ!」
「はっ…はは、また入れられちゃうと思った?」
「っ、う……んッ?!はっ、あ゛ッ、はぁあ、ああ…!」

…さっきは割れ目の表面を私の身体に平行に滑っていた熱が、今度はついつい閉じる内腿をずるずる擦っていた。

「ん…いい、けどさ、やっぱもちょっとお肉つけなって…もっとさ、ほら」
「やあ、あ、うっ、く、なに、なにやってんのザキさんってばぁ……!」

内腿をぬるぬるにされて、時たまその熱が陰部もかすっていくのはさほどでもないが、
彼がより私と密着して、私の耳元や首筋にいちいち熱ッぽい吐息をまきちらすのは大問題だった。

「や、め、や、く、くすぐった、あ、ああ、や、だ、んぅ、や、やだ、やだ…これ、あ、あああああ……!」
「ん…っ?あ…は、ちゃんは俺が興奮するのがうれしいタイプ?」
「た、タイプて!違う、そ、そういうの、じゃなくて……この、なんか、やだ……ああ…!」
「自分の身体でさ…ん?!」

この男はまたあの何とも小憎たらしい顔でよたばなしをするものだから、塞いでやった。

「んっ、んっふ、ふっ、く、ンン……!」
「……っ、は……」

それなのにまたこの男は笑った。鼻息の勢いでわかった。
悔しくなって、内股にギュッを力を籠める。

「んぐっ…?!ん、っぷは、ちょ、これ…!」
「は、ああ、これ、締めるといいって、そ、れくらい知ってる……!」
「……」
「は…っ、な、ちょ、そ、そこで黙んないでくださっ、あ、あぁああぁああっ?!」

急に、今度は山崎さんが歯を食いしばった。
回される腕がさらにきつくなって、あわわ、と動揺すら追いつかない。

「はっ、だ、からさ、こーやってさ、今の、俺みたくっ」
「へっ…?えあっ、あっ、あッ、あ、な、なに……?!」
「……っつ、ふ、さ、最後の最後でキャラ崩すハメんなったら、恥ずかしいでしょ?!」
「ちょ、あ、ッあ、こ、こするの、強ッ、つよい、つよ、いいってば、あ……!」
「カッコつけるだけ損なの、わかった?!」
「はひっ、ひぃあっ、わ、わかんない、っ、んぁっ?!」

また私のうなじに吐息を漏らしながら、山崎さんの指が陰部に滑り込んでくる。

「はひぃあッ、わ、わかった、わかりましたっ、から、そ、それつまん、じゃ、あ、あぁああぁっ!」
「人なんてさっ、どーせ自分の思うように動いてくんないの、ああもう、どうしよ…ッ、かわいいな……」
「や、やらぁっ、お、怒んないで、つままないでぇえっ!」
「怒るよ!せっかくカッコよく決めようとしたのにさぁ、そんなふうに、さ、いちいちツボなんだもん……」
「つぼって、あ、ひぁあッ!や、やぁ、あ、あぁああぁあああっ!」

ぐりぐりと、意地悪な指が私の一番感覚が集中した部分を摘んでは、容赦なくはじいていく。

「やッ、あ、あぐっ、う、ううくっ、ンッ、あ、あああ……!」

そうされるたびに頭が煮えるようで、どんどんグチャグチャになっていく。

「それだめぇ、ほ、ほんとに、かん、じちゃう、いく、の、いく、から、だめ……!」
「は…いかせようとしてるんだってば……ほら、ほら」
「ちょ、や、やめっ、あ、あ、あぁあああぁああ?!」

つまみ上げた指が、クリトリスをぐりんっとひねりあげた瞬間に、自分の眉間を気持ちのいい電流が通って行った。
客観視する自分に揺り起こされるより早く、グッタリする間もなく身体は彼に乱暴にされる。

「っあ、だめ、もうだめ……」
「……山崎さん……?」
「そ、こで、名前呼ぶなってのっ」
「やま……っん!?」

背中に回った手が爪までも食い込ませてきて、その直後にぶるんっと震えた彼が。
ふは、と大きく息を吐き出すのに、ああ、となんとなく悟って。

私はのぼせ切った身体を抱えるのがいい加減につらくなってきて……そのまま、白い靄に呑まれていった。



「……うう……」
「…………」

ダブルベッドに横たわった私を、山崎さんは無言で扇いでくれた。
それでも視線がぱったり合うと、気まずくなってどちらともなく逸らしてしまう。

「その…あのさ、そこの」
「え……?」

山崎さんが指したのは、ほんの少し開けた窓だ。
倣ってそちらを見つめると、その先には「大江戸総合病院」の文字が見えた。

「……今日はもう閉まってるけど、あそこの受付に行けばいつでも会わせてもらえるから」
「……えと……」
「なーんかさ、アレだよね、俺もだけどさ、やっぱりね、キャラ通すなら通し切んないと」
「……えっと、嘘は大きいほどよい、みたいな…?」
「そそ。わかってんじゃん、俺やっぱドSキャラ向いてないわ、ダメだねー」
「いや…結構ナカナカ、堂に入ってたと思いますけど…」

そう言うと、山崎さんは病院に向けていた指で自分の頬を掻いた。

「じゃあ見習うこと。ちゃんはダメ、蓮ッ葉キャラ全然似合ってないって、俺見た瞬間嘘だってわかった」
「……その…それは……」
「金持ちが貧乏人のフリしても鼻につくだけでしょ?自分が金持ちだって知らないならそりゃそれでアリだけどさ」
「そ、の…私、えっと……そんな……」
「素直に甘えておきなってこと。悪い奴らもいるけどさ、ハナから悪って決め込むには、ちゃんはまだまだ修行が足りない」

エッヘン、と今度は逆に威張ったような態度を取る彼は、私よりもよっぽど私を見ているようだった。

「信じてみないと騙される経験もできないよ」
「…………」

「そんなだからさ、ちゃ…」
「じゃあ山崎さぁん、のことお嫁ちゃんにしてぇ」
「は?」
の初めて奪ったじゃない、のこともらってくれるんでしょっ」
「え、いや……あの?」

「これからは甘えん坊キャラでいくぅ」

「……それで一年やり通せたらね」






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山崎いいい!
久しぶりの更新は山崎でした。
彼の二次創作御用達のさでぃすてぃっく腹黒設定…は、
どーにかヘタレな優しさと同棲できないかなぁとか、
いろいろ考えた末に。こうなりました。
かいてるさいちゅうに44巻のたまさんと山崎のお見合いを見ちゃってどうしよwwとか思いましたが、
まあ設定やキャラ捏造は今サラ気にしたってどーしょーもない!と開き直った。

わーんここまで読んでくださった方どもでした。
初山崎でしたよ、感想なんかもぜひ!