「辛いときほど笑いなさい。苦しみに身をやつして落ちぶれることなどないよう、
いかほどの辛苦にあっても笑いなさい。笑うことができる自分を誇りなさい」

……これは確か、寺子屋の先生の言葉だった。
なぜ今になってそんな幼い頃の記憶が走馬灯のように甦るのか……いよいよ寿命が近いのか。
なんて……と、笑った。
ひっそりと、声もなく。

ある程度大人になってずるいことも覚えた今は、あの先生の言葉がきれい事や矜持として、だけでなく、
科学的?いや物理的?に、根拠を持っていたというのを、知っている。
人間は頭と体のふたつではなく、頭と体と心、のみっつで構成されている。
無理にでも「頭」が笑いなさい、と命じ、
「体」がにこにこっ、と笑顔の形に筋肉を動かすと、
「頭」の方に刷り込まれた、笑うということは今は楽しいんだ……という常識が引っ張り出され、
「体」が、今は楽しまなくちゃ!と張り切り出して、
このふたつが結託して楽しいムードになる。脳内麻薬が出るらしい。
……その手綱を握っているのが、心。
自分一人の問題であれば心の持ちようでどうにかなる。
実際にいるのが地獄でも、心の中に天国を作ってそこで暮らせばいいのだ。
人間なんてそれくらいにでたらめで、いい加減でどうしようもないものだ。
「怖い」という感情と「チャンチャラ可笑しい」という感情が近いところに位置しているのもこのせい。
あまりに度を越した恐怖を目の当たりにして顔がひきつったのを、
頭が「あっ、体が笑ってる」と勘違いして処理してしまうのだ。
そうするとなんだか楽しい気分がこみ上げてきて笑えてしまう、という仕組み。
まったく脳髄はモノを思うに非ずで、人間の本質はびっくりするくらい野蛮で単純だ。
難しいことを考える学者はその事実から目をそらしたいだけ。
その混迷の先にも同じ結末が待っているのに。

自分の心や体を、頭という理性的な指令塔で支配できないということを絶対に認めたくないのだ。
……私は認めてる。だから。だからだから……。



「……寒い」

もごもごとしか動かない舌でようやく紡ぐことが出来た独り言は、きわめて原始的だった。
もう感冒なのか、ただの衰弱なのか、寿命なのかさっぱりわからないくらいに身体も頭もやられている。
ただ心だけが愚かにもしっかり動いていて、今でも哀れな恋慕を主張している。

「寒い……寒い」

板の間。光の射さない暗闇。
唯一与えられていた夜着丹前はいつだったか失禁して汚してしまいしこたま殴られた。
そして以降捨てられてしまったので、私はすっ裸で暗闇に横たわっていないといけない。

「寒い……晋助様、晋助様、晋助様」

もうだめだ、いやだめじゃないでしょ、ううんだめです、いやそもそもなにがだめだったの?
なにがよかったの?
何のために頑張ってたの?

「晋助様のためだよ……」

迷宮に落ちかけた自分の思考を、自分自身の言葉で救い出す。
そうなの、私は彼のために頑張っている。
彼のこと愛してる。どうしても報われない想いだと知っているからこそ焦がれる。
愛しています、と告げてまっぷたつに裂かれるのならそれは本望といえるし、
言葉では伝えられずともずっと彼の傍に寄り添っていられるならきっと幸せだ。
そのどちらもかないそうにない。困る。
彼の瞳に気圧されるとそんな浮ついたことは死んでも口に出来なくなるし、
私の傍にあるものは暗闇だ。
虐げられるとき以外はこの部屋に押し込まれて灯りも暖も焚いてもらえない。
今は何月だったか。最後に外の景色を見たのはどれくらい前だったか……。

私は彼のことを、タカスギシンスケという名前で、憂いをたっぷりはらんだ瞳であることくらいしか知らなかった。
……いや、正確にはこの部屋を訪れる人々の会話の端々からもっといろいろ知っているのだけど、それらは別に気にしないでいいことなのだ。
知ったとて役立たないから。

衰弱しているのか、寒くて筋肉が縮こまって動かないだけなのか。
それも判断できないが、ああお風呂に入りたい、とぼうっと思った。
皮脂はむしろ歓迎したい。がさがさになるよりもずっといい。
お風呂というよりも……湯船に浸かりたい。
気持ちいい温度のお湯に浸かって手足を伸ばして汗をたくさんかいて、そのあとに冷えたお水をたっぷり、喉を鳴らして飲みたい……。

そんな想像をすると、どうせかないっこないという現実に打ち据えられてやっぱりもう駄目になりそうになって、あわてて考えを打ち切った。

「おい」

その直後に低い声が響いて、同時に部屋に一筋の明かりが射した。





「……どうだ、加減は」
「あ……あ、え、えっと……とっても、気持ち、いいです……」
「……そうか」

晋助様を前にして、もはや痩せた身体を隠すこともできない私を……彼はなんと、風呂場まで運んでくれた。
昔、お金持ちが和洋折衷で建てているという豪邸の紹介で見たことがあるような浴場で、土蔵のように離れになっている。
拷問部屋なのではと怯えたのは一瞬だ。
開けると蔵は半地下室、というつくりになっていて、西欧の家具みたいな板張りの脱衣所があって、そこから階段を下りると温かな湯気。
……私が求めていた、心地よさそうな温度で焚かれた広い湯船があった。

「あの……え、っと……あ、あり、がとう、ござい……ます」
「ふん……」

裸にされ荷物のように抱えられて階段を降りて、晋助様は不慣れな様子で私をお姫様抱っこ……の形に抱えてから、ゆっくりとお湯に浸けてくれた。
ツンッと、冷えきっていた足の先は適温の湯でも痛みを感じるくらいだったが、その違和感もすぐにうせた。
ただただぬくもりと、水中浮力によってだるさから解放された安寧が私を包んでいる。
晋助様は、そんな私に背を向けて湯船に寄りかかっていた。
彼の着物はあちこち濡れてしまっている。

「あ、の…ど、どうして…その」
「寒かったろう」
「え、ええ、は、はい!」

うわずった声が出てしまう。舌がうまく回転しない。


……私がさらわれ、高杉晋助という男のなぐさみものにされたのがいつだったかもう思い出せない。
この人が直接に私を性欲のはけ口にするわけではない。
それが目的であればいくらでも、もっと位の高い女性を使い捨てのおもちゃとして連れてこられるはず。
彼にはそれほどの財力もコネクションもある。おそらく。

……私は巻き藁のようにただ殴られ、蹴飛ばされ、火鉢の灰を浴びて、熱した炭を押しつけられて踊り、縛られて逆さにされる。
そして……彼以外のどうでもいい人たちに身体をなぶられる。
私は、それでも晋助様のことが大好きだった。
癇癪を起こして蹴り上げられることも、頭髪を抜けるくらい掴んで部屋中引きずり回されることもあったが、
そういう暴力の後に彼が、どこか違う世界を見ていることに気づいてから、ずっと恋している。

あのうつろなくせに煌々と輝く瞳は冥界に通じている。
彼は死者のささやきを聴いては泣いているのだ。
死んでいったものたちのために涙を流してくれと、彼の瞳孔の奥に住み着いた亡者が涙を無心している。
……そううっすら悟ってから、私は彼の望むことをなんでもしてあげたいと思うようになった。
だから死にたいとか、もう殺してとか、投げやりは絶対にしない。
私の命がたとえ笑われ者としてでも彼の生命に彩りを与え、刹那の瞬間であっても亡者の囁きから救うことができるならば、それでいいと。

その気持ちを共依存だとかストックホルム症候群だとかと呼ぶ、という知識は持っていたけれど。
そして自分がその定義の檻に閉じこめられているとも薄々察してはいたが、それでも私は彼を愛している。愛している。精神防衛だろうが本能だろうがこの想いは本物だ。
それでいいじゃない。

でも……どうして虐げてばかりいた彼が、こんなふうに私をいたわってくれるのか。

「……おい」
「はっ、はいっ?!」

ドキッとした。
思わず抱えた膝の皿を湯の中でなぞったら、軽い指の一撫でで驚くくらいに古い皮膚が塵となってそげ落ちたからだ。
そんな汚らしい様子に羞恥心と同時に、まだ自分は生きていて、肉体もけなげに代謝を行っている事実を突きつけられて……。
消えたいような、泣き出したいような……よくわからない気持ちになっていたものだから。

「話せ」
「えっ?」
「なんでもいい。手前の話を聞かせろ」

手短に言って、晋助様はまただんまりになってしまった。
ちゃぱちゃぱちゃぱ、と循環し続けるお湯の音だけの空間になってしまい……とたんに気まずさが満ちていく。

「あ……の、えっと……」

口を開けないのはなにも緊張のせいだけでなくて、嬉しさもあった。
だって……私に巻き藁以上の感情を抱いていなかった晋助様が、私に発言を求めている。
人間としての行為を要求しているのだ……。

「あ、の、私、その、えっと、晋助様は、自動販売機ってご存じですよね」
「……」
「え、ええと、ですね、アレは、あの、私の故郷は、さして拓けてもいないけど、田舎でもなくて、電気がバーッて来て、その、えっと……」

嬉しさは情けなさになってみるみる萎れていく。
なにか身のある、彼の心を揺さぶる話をしなくてはと必死になればなるほど口から迸るのはくだらない話ばかりで。
そもそも私の人生に、常に死者と会話しているような業の深い人を感動させる経験なんてあるわけなかった。

「……それで?」
「え?!」

恥ずかしさで涙さえこぼれかけた私に、やっぱり背を向けたままに晋助様がつぶやく。

「かまわねえ、続けろ」

…………。

「あの、自動販売機、冷たいジュースも、温かいお茶もいつでも買えるからくりが、一気にできたんです」
「ほォ」
「そ、それでですね、私も、あの、お小遣いをもらうと、それでみかん味のジュースなり、お茶なり、買いに走ったんですよ」

ジュースだのコーヒーだのはさておき、緑茶なんて家で煎れた方が絶対おいしいとわかってるのに。

「だけど……ある日間違えて、ブラックコーヒーのボタンを押しちゃったんです。私、コーヒーは牛乳で割らないと飲めないんです……」
「……へェ」

……自分の言葉の稚拙さへの羞恥は、彼が返してくれる短い相槌で拭われていく。

「そ、それで途方に暮れて。そしたら、あの、ちょうど近くを顔見知りだけど、あんまり話はしないお兄さんが通ったから……」
「……くれてやったのか」
「そ、そう!です、私、その人に、間違えたから、って言ったら、その人、すごく喜んでて……私は、お金がないからそのまま帰ったけど……」

ふと、晋助様の肩が笑いで揺れたように見えたのは、私の幻覚だったのだろうか。

「そういうの、いいなって思ったんです……あげる、と決めているんじゃないけど、相手も、絶対にもらえる、と思っているんじゃなくて……」

自分の顔が真っ赤でやたら汗が落ちるのは、お湯の熱さのせいではない。

「ふとした偶然が、いい方向にはたらいて……すぐ忘れちゃうことかもしれないけど、でも、そういうことが……」
「忘れてねェだろうが」
「え?えっ?」
「手前は覚えてて、今俺に話してるだろうが」
「あっ……そ、そうですね……」
「叱ったわけじゃねェよ」

もう……死んだっていいや。
「つらいから殺してください」じゃなくて……。
これだけ幸せなら、もう、この瞬間の記憶だけ抱いて死にたいくらい。





「逆上せたか」
「い、いえ、大丈夫です。温かくて、眠くなりそうなくらいです……」

余計なことすら平気で口をつく。
比喩ではなく、長いこと湯に浸かった私はふやけた。
晋助様が大きな手拭いを持ってきて私をしっかり包んでくれる頃には、人間とは脱皮する生き物だったのか?と思うくらいに古い皮膚は落ちきり、
私の身体はつるつるの肌の裏から、桃色の肉と青い血管さえ透けていた。
そんな私に、涼しい模様の浴衣まで着せてくれたのだ。
倦怠感は入浴ですっかり吹き飛んだし、しばらくぶりの浴衣に心が躍った。

「なら、なによりだ」
「あ…あの…」

……でも、どうしてこんなことをしてくれるのかがわからない。
生まれついての小市民な私は……突然舞い込んだ幸せには必ず裏がある、と勘ぐってしまうのだ。

「手前は」

色恋を匂わす雰囲気ではない晋助様の眼光が貫いた。
とたんに浮つきはなりを潜め、私は氷柱を抱かされる。

「手前は見ちまったんだろう?」
「う……?」
「俺の腹ン中で喚いてる連中の声を、聴いちまったんだろう」
「あ……」

知ってるんだろ、俺の暗がりを。
耳朶に住み着いて悔恨を聴かせる鬼、血と混じりあって全身を巡っていく毒、はらわたを食い破ってはもっと血を流せとのた打ち回る獣を。
俺たちを想って泣いてくれと縋ってくる亡者たちと通ずる、空洞の隻眼を。

……この人は、私が抱いている愛も哀憐も、全部見抜いていた。

「……手前はどうだ?俺を思って泣いてくれるか」
「え……その、わたし、は……」

問いかけの意味はわからなかったが、うなずいた。
彼が私を試しているのだ。
……ならば応えたい。

「私は……いつでも、あなたを想います」

「そうか」

言うなり晋助様はふっと目を伏せて、そして乱暴に引き戸を開けて部屋を出てしまった。 私はポツネンと取り残され、頭の中で謎をこじらせるしかない。

……と、思ったら。

「お待たせしやした、ちょいと手間取っちまって」

……晋助様とほぼ入れ替わりに、人と獣を半々で割ったような容姿の奴らが部屋に押し寄せた。

「……っ、え、え?!」

……こういう奴らが入ってきたらされることは一つだ。
今までだって何度もあった。別に驚くことじゃない。
でも……どうして?
どうしてさっきまであれだけ優しく労られていたのに、いきなり打って変わって深淵に突き落とされるようなことを……。

一人、いや一匹?が私につかみかかってきて、着せてもらったばかりの浴衣を乱暴にむしりとる。
思わず助けを求めて引き戸に目をやれば、心底醒めた目で晋助様がこちらを見ていた。

「しっ、あ、し、しんすけ、さまっ!」

私の叫びは届かないのか。
彼はまた亡霊の泣き言に鼓膜を奪われているのか。

「こいつを使やぁ一発ですわ。辺境の星から取り寄せたちょいと貴重なモンでして」

どうやらまとめ役を担っているらしい獣人が、褐色の小瓶を手にして高々と振りかざす。

「旦那も知っとりやしょう、転生卿つう薬は」

こりゃあその草を家庭栽培みたいにせっせと作ってるとこから取り寄せたんですわ。
いやなんせ地球人がやりゃ一発で昇天か廃人の薬でも、あっこじゃタバコと同じ扱いですからねェ、なんて。
獣人の言葉は一応耳に入ってはくるが、すぐに抜けていく。
どうして。どうしてどうして。晋助様どうして。

「あっ…や、やめて!触んないでっ!」

脚がぐっと掴まれて、反射的にかかとでその手を振り払う。

「ほほほ、聞いてたとおりのじゃじゃ馬だ」

それも笑われるだけだ。なすすべもなく両脚を開かされて、何もかも丸出しにさせられる。

「安心してくだせえよ、コイツを塗っていじくりまわしゃ、自分から欲しがって欲しがってしおらしくなりますってな具合で」
「ひっ、い、いい……?!」

小瓶の口が開いて、私の脚の間にぬるりとした液体が垂れてくる。

「そら早く塗りこんでやんな」
「やっ、ちょ、やめ、やめっ、て、やめてくださいっ!」

抵抗むなしく、ついさっき綺麗に洗いきられた肌にも性器にも獰猛な手が伸びてきて、垂らされた粘液を刷り込むようにいやらしく蠢く。

「ふっ……ひ?!ひっ、ひ、ひ、ひひっ、ひっ……ひ……?!」

その直後に、私は自分が笑い声を上げていることに気がついた。
頬がつりあがる。つられて口角もぐにいっと上がり、逆に眉根はギュッと抉じて。
…なぜか、自分が気持ちのいい顔をしていることに気がついて、そして……それを誤認識して、頭が、笑わせる。

「ひっい、い゛あ゛ーーッッ!!あっ、は、あ゛はっ、あああぁあはっ、ああはぁああっ!!」

ほらほらさっそく、なんて笑いがさざめく。狭い部屋の中で。
……股間に火を灯されるときっとこんな感じがするんだろう。
転々とではなく、ずっとずっと灼熱のたけりが脚の間で燃え、痛痒になるくらいに血を循環させる。

「どうにも堕ちないじゃじゃ馬を女郎として出荷したいなんて聞いちゃあこちらとしても黙っておれませんわ」
「へへへこいつは時代物の読みすぎですよ。女衒ってのを夢見てんだ、地球産の和服美人を躾るなんて風情があるとかフイてやがんで」
「もっと時間をかけさすべきなんですけどね、あんまりかけてもナニってんで」
「ほらほらお嬢ちゃんいい気分だろう?気持ちがいいって言ってみな」

私を嬲る言葉が次々投げつけられて、どんどん体も頭も混乱していく。
気持ちいい、今は気持ちいい。
だってこんなに強烈な快感が絶え間なく襲うし、顔だって楽しい表情を露わにしている。

ああでも、でもついさっき、ついさっき……誓ったことがあるじゃないか。

頭も身体もあてにできない。
でも……心はいつでも間違わない。

「し、しっ、し、晋助様っ!」

私は、彼の名前を呼ぶだけで正気を取り戻す。泣きそうになる。
そうよこっちに戻ってきなさい身体も頭も。
今は悲しいのよ。
涙がこぼれる。きちんと。大丈夫、私はわかっているのだ。
私は……晋助様を想って泣くと誓ったの。
心で操ればいいのだ。頭でも身体でもない。
心だけがちゃんと動いているのだから、心でぜんぶ決めればいい。

「晋助様!助けて!」

愛してる、でも、捨てないで、でもない。
私が彼に言えるとすればこれだ。

「あ、あなたを想っていつでも泣きたい!いつでも想ってる!」

ぼんやり引き戸に背を預けていたその細身が、ゆらりとこちらを向いた。

「だから、助けてくださいっ!!」

このアマ、と手を伸ばした私の頭を掴もうとする腕を…晋助様が退けた。

「そうか」
「はい!はい、そうです、私、助けっ、たっ、あ、ああ……ぐうぅ……!!」

歯を食いしばる。少しでも気が緩むと身体が持っていかれそうだ。
快感なんていう一時の享楽にさらわれそうになる。

「あなた、の、ことが……!!」


彼が腰に手をかけてこちらを見下ろした顔は、亡者のささやきに困憊したものではなかった。
私のことを……私という女のことを、しっかり見ていた。

「ああ……」

この想いは、通じた。
その瞬間にもう、悔いなんてなくなった。
だから……私の首が、彼の刃で落とされる瞬間、私は、笑っていたように思う……。