「起きて、」
呼びかけて体を揺すったが、それでも弛緩しきったまま覚醒しない。
性的なものから暴力的な欲求に移動しつつある高揚に任せて、小指をぐりっとの尿道に突き入れた。
「はがぁっ?!」
「おっ、やっと起きた」
突然の刺激で自分を取り戻したは、とりあえず垂らした舌を口の中に仕舞った。
次にグルンと目玉が回転し、黒目が正しい位置に戻ってくる。
そしてそれとほぼ同時にきゅうと膣がわななき、開きっぱなしの脚が飛び魚のように跳ねる。
「あ…へあ?」
「おはよう」
「わた、し……あ、ああっ?!」
力を入れようとして、股間に俺をくわえたままなのに気がついたらしい。
どんどん冷えていく小水の湿りに上乗せするように、ジワリと愛液が滲んできた。
「や、やだ…私、寝てた…あれ…その、どうなっ…あ、ぎぁああぁあ?!」
景気付けにぐりぐりっと。
ゆるみっぱなしのの尿道の中で、ねじ込んだままだった小指を曲げる。
「おぁぁあっ?!」
「うわ…ぎゅるって締まった」
「あがっ?!で、出たぁっ…!」
締まりというよりも軋みと呼んだ方が正しいような動きにつられて、何度目かもわからない射精を迎える。
「よっと」
「んひっ…!」
引き抜いた指はもう過敏に震えはしなかった。
自分もこの奴隷と同様に、薬はさほど持続しないらしい。
の肢体を括る縄を裂きちぎり、そのまま身軽になったを抱いて立ち上がる。
「おっ、おく…ささるっ、神威、なに……?!」
「ちょっと面倒くさいことになっちゃってさ」
が自分にしがみついたのを確認して立ち上がったのと、さっきまで自分の頭があった場所に暗器が叩きつけられるのはほぼ同時だった。
「えあっ…な、なにっ…?!」
「……!!」
……殺意をきちんと感じていたのに。
目の前に立ちはだかった女は、全裸で荷物のように抱えられたを見るなり、露骨に狼狽した。
「……その娘は置いてゆけ」
それでもすぐさま引き締めた眦で、俺をじりじりねめつける。
額と頬に通った傷に、ふと記憶を撫でられたような気がした。
「ああ、あれだ、あんた日輪のお守りの」
「えっ…神威、知り合いですか?」
……ヒャッカのカシラは、またも複雑な面持ちになった。
「……その娘は置いてゆけ、去れ!統治者とてこれは見逃せぬ」
そこで少し、目の前の女を見直した。
こちらが名ばかりとは言え自分の街を握っていると知っているらしい。
前の見えない正義感で掴みかかってくるのではなく、退けと「お願い」しているわけだ。
この女だらけの自警団の長として、遠回しに頭を下げている。
「……あの、神威…」
不安げにが服の胸元をつかんでくる。
血気盛んな他の連中は、既にこの女が引き連れている部下に手を上げていた。
となると自警団も応戦するしかない様子で、一瞬一瞬でみるみると小屋に血の気が拡散してゆく。
「神威、あの、私……」
狼狽するに目配せして、女は瞳を複雑な色に濁らせる。
ヒャッカのカシラは、の一挙一動にいちいち心を乱されているようだ。
「……」
どのみち今は本気の殺し合いなんて出来っこない。
を抱えたままでも潰れた果実をいくらでも作れるのだが…ここで皆殺しにしておしまい、というほど単純ではない。
「ねえ、あのさあ」
視線は女に向けたまま、子供をあやす動作での尻を抱えて揺する。
「んっ、は、あぁ、ああっ!」
「恥ずかしいかって、ねえ、恥ずかしい?」
「えっ…は、はず、かしっ…ん、恥ずかしいけど、おぉ…!はァ、ま、まだお薬、残ってるからぁ…!」
とするともう目の前の存在はからかって遊ぶくらいしか思いつかない。
「薬…貴様その娘にも……」
「はーッ、す、すっごくジンジンするよぉ…わ、わかるううぅ?チューって、ちゅうう、って、おまんこぉ、神威のちんぽに吸いついて離れないのぉ……!」
「うんうん、わかるわかる、これなんて言うんだっけ、このさ、立ったままのこれ」
「あ、うっ…く、んッ…あぁ、え、えき、えきべん、だ、った、かな…?!」
「エキベン?」
「こ、こうやって、え、えああぁあっ!あ、ああぁ…立って、おなかにぃ、おなかに荷物かかえて、はッ、ああぁあぁあああぁ!!」
に当てないための気遣いなのか、足下めがけてクナイが飛んできた。
たんたん、と弾んでそれを避けていくのだが、そうすると俺の衝撃を同時に受け取るは喋るどころでないらしい。
「はぁあっ、あ、ああぁあああぁ!すごぉ、すごいっ、神威すっごいよぉおっ、こんな、こんなぁあ…!」
「ぬしもしゃっきりせい!わっちの声が聞こえるか?!」
この女は自分の怒声や周りの騒ぎをかき乱す、気の触れたの矯声がなにより耐えがたいのだ。
「アッハハ、いいねお姉さん、強い女は嫌いじゃないよ」
「なにを……!」
わかりやすい挑発の効果はすぐに顕れた。
は俺の身体に回した四肢に力を籠めて、首筋のあたりにかりかりと噛みついてきた。
本人からしたら必死の懇願なのかもしれないが、俺からすればかわいい甘噛みだ。
「やぁだよぉお!どうしてぇっ!どうして私とずこずこしてるのにっ、ほ、ほかの人の話とかするんですかぁあぁ!」
「お……っと」
ぐり、ぐりぐり、と、痙攣する膣がさらに絞られて、ちょうど中に収まった俺の先端を擦り立てる。
添えた手の感触に頼るなら、は器用に臀部に力を籠めて胎内を蠢かせているらしい。
「…締めすぎ、、ちょ…」
「ふぅぐっ、あ、ああぁああ、できないでしょ、こんなのその人には出来ないでしょっ…!」
口の愛撫で射精したての先端を、間を空けずにくすぐられる感覚にそっくりだ。
奇妙に痺れる粘膜を舌でコチョコチョと刺激されるのは、もどかしくも心地よい。
穴が開きっぱなしなせいかうっかり小用も足したくなるし。
気付けば余韻など吹っ飛んでまた射精欲に駆られているのだが、今もそんな具合だ。
もう息を吸ったら吐くように、何度も何度も吐精した自身はジンジンと震えていて、そろそろ種が間に合わないのかもしれない。
ドロドロと先走りだけ垂れ流し続けている。
「んくぅ、ふっ、う、あぁ…ぁ、あぁあ、どーですかぁ、きもちいっ、きもちい?!神威きもちい…?!」
一瞬、ようやくまたせり上がってくる白濁と同時に、腕の中の女も目の前の女も殺そうかと思った。
そのほうが快感が強い気がしたのだ。
一人の女の肉を貫き通し、目の前ではまたもう一人の女を叩き潰して悲鳴を浴びながら迎える絶頂はどんな気分だろうか……。
が、腕中のはともかく、殺気立つ女のほうはそう簡単に行きそうにもない。
今の口上を聞いてもなお、あの女の中で俺は残虐な色気違いで、は哀れな囚われの身なのだ。
「呆れられてるよアハハ、お前バカだって思われてるよ」
「はひぐっ、い、いいよ、それでいいの、わ、あぁああっ、だ、大事なこと、なんてぇ……!」
懐から次々、手品みたいにクナイを出しては放ってくる。
無軌道にばら撒いているように見えてなかなか器用なものだ。方向が読まれている。
「わ、私がわかってればいいのぉ、わたしと、神威が、わかってれば、いい、のっ、他の人なんていらな、いぃ、いいぁいっ、いぎゅっ、いぎゅううううっ……!!」
「……今解放してやる。堪えなんし!」
悲鳴混じりのの声についぞ耐えきれなくなったのか、牽制ではなくはっきりと殺意を持ってクナイが飛んでくる。の頭めがけて。
「お…よっと」
身を捻る。屈むよりも反るほうが早い。
背中が曲線を描いてくねり、も一緒に凶器を逃れた……のだが。
「あり」
「あ……」
着地の時に弾いた木片が、俺の頬をぴっと引き裂いた。
瞳に飛んでくるかと思わず目を瞑ったのだが、それはなかった。ただの事故だ。
皮膚がすぐに癒着を始める。
夜兎の肉体の、目に見えてわかる利点の一つだ。
が。
「あ、あああお、お、おまえっ、お前ええぇええっ!」
……いつだったかもこんな光景を見た気がするんだが。
はすでに治癒した俺の頬を見つめ、そして反射のように女を振り返り、そしてダパッと、快楽とは異なる涙を流し始めた。
「こ、こぉの、なっ、ひ、ひどい!ひどいっ!」
突然「お前」呼ばわりで怒鳴られた女の方は困惑するよりない。
「あぁ、お、お前はぁ!そんなに私たちの邪魔したいの?!」
「じゃ、邪魔?」
「邪魔ですっ、あ、あなたがなんだろうと、私にとっては邪魔、こっちは、こっちは楽しくやってるのに、どうして?!」
「あ……ぎ、疑問はこっちがぶつけたいわ!ぬしは悔しくないのか?!薬で自由を奪われて!」
「なに誤解してんのっ、薬は私が頼んだの、私が打ってくださいってお願いしたの、神威はやさしい私のご主人様だか、らっ!」
「アハハ、のろけありがとう。かわいいなぁ」
会話に割り込みながら抱えた柔らかい尻たぶをつねり上げると、それが合図になってまた震え。
いつもよりも耳朶を打つ矯声は薬によるものか。
すべての言葉が濁音で、もう喘いでいるというよりは吼えている。
「あ゛あ゛あ゛あ゛がむい、お、おぉおお願いしますっ、おっぱい、おっぱい張っていだいから、おっぱい揉んでえぇえ!」
「そうしてやりたいんだけどさ」
今は尻から手を離して乳房を触っているうちにクナイで穴だらけにされてしまう。
「かむっ…んぎぃぅうぅうっ?!」
とりあえず、の背中に回した方の腕に力を籠めて、乳房を自分の胸板で挟んでつぶす。
そうするなり、自分の服の布地がびったびたに湿るのがわかった。
まだよくわからない粘りが垂れ流しなのだ。
「ああ……後で絞ってやらなくちゃ……」
「う、ぐ、ひっ、し、しぼって、えぇえ、あ、か、枯れちゃうぐらい、搾ってへ、えぇ…!」
「アッハハ、後でね。ちょっと飲んでみたいし。それも毒?」
「えっ?!の、のむって、これ、おっぱいの汁……?!あ、あぁ、あぁああそんなの興奮しちゃうっ…!」
小屋の中を準備体操のようにグルグル廻るのもそろそろ限界だ。
「よっ……と!」
スライドさせた足先で、折りよく立て掛けていた傘を弾く。
そのままひっつかんで旗みたいに振りあげると、天井の排気ダクトはたやすく崩れた。
片手に裸の尻を抱えたまま、もう片手には傘を。
排気口を抜けると晴天だ。
「神威…私、邪魔じゃなかったですか?」
「ん?」
ようやっと興奮に一区切りついたらしいは、妙にしおらしく俺の背中をもじもじ掻いた。
「わ、私はこうしてもらえてうれしいけど…捨ててもよかったのに」
「捨てたらお前死んじゃうだろ」
「し、死んじゃうけど…その……」
「うじうじ考えるなよ。その場その場でしたいようにしてるんだ、俺は」
「……」
奇妙な指文字を書いていた手がとまり、ぎゅっと抱きついてくる。
「ていうか、お前よく知ってたね。エキベン?だっけ」
「ああ、あの、あれは……」
気まずそうにふいと俯いて、ぼそぼそと。
「え、ええっと…その、地球の三文雑誌とか、そういうの…時々資料室とか、食堂とかに置いてあって」
「ああ…」
資料の書類だけでなく、趣味であちこち漫画や娯楽雑誌を読み回している連中もいる。
「そういうの読んでると、自然と身に付くというか…覚えておくと、神威としてるときも、とっさにこう、いやらしい言葉をたくさん、その、使いこなせるというか…」
「アハハ。お前も勉強してるんだ、ちゃんと」
「そ、そうっ、してるんです!馬鹿は馬鹿なりに、気持ちのいいオマンコのためのたゆまぬ努力を!」
ぐっと拳を握って力説するさまがまた馬鹿そのもので、髪をぐしゃぐしゃ撫でてやった。
「……マイノリティは、淘汰されてこそ輝くんですよ」
「ん?」
「理解されなくていい…いえ、されたくないんです……馬鹿だと哀れだと思われれば思われるほど、私、すっごく……気持ちいいんですっ!」
「アッハハハ!」
風がゆるゆると身体を撫でてゆく。
宇宙では感じることのできない感覚。
「このまま街に出ちゃおうか。の服も買わないと」
「あ……あ、そうだ、私、裸……」
相変わらずこの女も向こう見ずなことだ。
それは俺にとっては、美徳ですらある。