しこたま暴力を揮ったのは嗜好ではなく憤りだった。
女を殺す趣味も、弱者を甚振る趣味もない。
ただ一度、その女は俺の前に三つ指をついて「身も心もあなた様のために」と誓ったのだ。
たとえ一晩の契りであったとしてもそれは守られてしかるべきだと当然のように思った。
その女が心をどこかに飛ばしたままなのが気にくわず頬を両手で万力こめて叩いてやったのが皮切りだった。
と覚えている。気がする。
そして泣くでもなく、申し訳ございませんと不貞腐れるだけなのがさらに苛立ちとなった。
肌に爪を立てて血を滲ませてやったのは、その奥にある心を傷つけたかったからだ。

もっと心の血を流せ。もっと魂から泣け、鳴け、哭けと。
自分には自由はありはしないと言いながら、心はたとい一時でも俺のものになるつもりはなく、
まぶたの裏で夢を見て、その景色に恋焦がれている。その矛盾さに腹が立ったのだ。
気付けば血飛沫舞う座敷と虫の息の女があって、そして悲鳴を聞きつけて襖の向こうに寄って来た違う女の気配に、
証拠隠滅でもするように浅い呼吸を続ける喉を踏んで絶ってやった。
同時に開け放たれた襖から長刀を持って現れた女も、八つ当たりで殺してやろうと微笑みかけた。

自分を奮い立たせるように、私を女と思うな、女など顔の傷と共に棄てていると叫んだその言葉には拍子抜けしてしまった。
ついつい、言った。
理不尽だなあ。だってこっちのヒトは女どころか人間やめてるじゃないか。
死体をつま先でしゃくってやると、微笑みかけたときよりも女は凍った。





「一回、やりながら殺した女がいるんだ」

そう言って頬を撫でてやると、膝の間の女は反射するように顔を上げて、
口に含んでいた俺を名残惜しそうに吐き出し、それでも離れ難く頬ずりしながら、怯えた顔と声で俺に問いかける。

「…どんな、人だったんですか」

自分もそうなると怯えているのではない。
彼女にあるのはひとつ、嫉妬だ。自分以上に情熱を注がれた存在がいることが許せない。
口惜しい。俺の前で、涙が滲んで顔がぶすくれるのを隠せない。その愚かさが愛しくてたまらないのだ。

彼女はいつも魂で生きている。
貫かれるのも歓喜の声を上げるのも、すべてそれは生命をかけてだ。それしかないから。
綺麗な服を着て歩きたいとか、美味い酒が飲みたいとか、守りたい人がいるとか、そういうのは、この女には少しもないのだ。

「女郎だね。地球の地下都市吉原は知ってるだろ」

コクン、と、唇を使うことをやめて、舌先で先っぽをくるくる舐めるような動きをするが、不安そうな顔で俺を見上げる。

続けるように促して、頭の後ろを押さえ込んで喉奥まで猛りを突っ込んで固定してやると、の喉はうえ、おえ、と、何度も嘔吐の体勢に蠢く。
まなじりからは涙が垂れ流しになり、唾液も吸えずに口の端からたびたびこぼれ、さらには逆流してきた胃液まで口腔にあふれている。
咥内が酸のプールみたいになっているようで、突き入れたままの肉茎の表面にジリジリと焼けつくような感触を味わう。

それでもこの哀れでかわいい女は、制止を求めて手や首を振ったり、奉仕をやめたりしないのだ。

喉奥に進入してくる異物を、口ではなく内臓でくわえこもうとして、鼻から奇妙な吐息が漏れている。
私はこうしてもらえるのが幸せ、身体全体を性器として使ってもらえるのがなにより嬉しいのだと意志表示する。
ふびっと鳴った鼻からも胃液が漏れて、窒息の苦しさにの目玉が裏返りそうになった瞬間に、膿のように溜まった精液を、喉ではなく食道に直接注ぎ込んだ。

「あっ、が、かっ、かっ……かかっ……!!」

口から肉茎を引き抜いた瞬間、水っぽい咳が聞こえてきたのにはさすがに驚いた。

「大丈夫?気管つまった?」

言いながらの身を起こして、背中を叩いて口許に手をやる。

「あがっ…こほっ……はっ、はあっ…あ、ああ、ご、ごめんなしゃい……」
「あはは、平気だよ」

言いながら、ひときわ大きなせき込みと同時にの口から漏れて、俺の手のひらにべたりと付いた白濁を目の前にかざしてやる。
はほんの一瞬、恥ずかしげに目を逸らして……それからぺろりと、その汚濁を舌で掬って口の中に転がす。

「は、張り切りすぎちゃいましたぁ…昨日はなかったから……」

ペロッ、と、自分の口の周りまで余すことなく舐め尽くしたが、俺に目配せする。

「んー…昨日はちょっとね」

言いながら立ち上がると、それより早くは床に膝をつこうとする。

「いや。それよりこっちにおいで、
「あ、わ、わかりました」

それはもちろん、腰と尻を突き出して俺に交接をせがむいつもの前振りだったのだが。
なんとなく、変化を求めてもいいかもしれない、なんて気分だった。
なぜだか結構昔のことを思い出したりもした。
きっと今日は気分がいいのだ。
強者と拳を交えるわけでも、戦士の血を浴びられるわけでもないのに。
俺はやたらとご機嫌なのだ。

「んー……」

の背中から腰に手を回して、広くもない部屋の中をぶらつく。

「…………っ」
そうされるはと言うと、戸惑っているのか喜んでいるのか、浮き足だった仕草で俺の腕の中でぴょこぴょこしている。
霰もない裸の乳房がたぷたぷと揺れて、端から端まですべすべの肌が部屋のライトを反射する。
王への供物としての身だしなみだ。肌荒れも傷も見あたらない。

それはこの女が俺の目の前にやってきたときから、ずっと変わらない。

「これでいっか」
「……?」

とりあえず名ばかりだが、師団団長としての威光を放つにはまあまあ役に立たなくもないような気がする豪奢なジャケットを手に取ると、それをの肩に着せる。

「神威……?」
「ふふ、似合う似合う」
「そ、そうですか……?」
荘厳に作られ、そもそも男物の上着を羽織れば、なにも身につけていないの裸身は裸よりも裸になった。

天鵞絨みたいな起毛の布の光沢が裸体の頼りなさを強調し、ああもう本当にこの女は哀れでみじめで可愛くって手が放せないなあ、なんて誰にでもなくノロケてみたくもなる。

「おいで」
「え……このまま…?」
「そう。イヤ?」
「え、えっと…あの、みられちゃう、から……」

扉のところで手招きすると、そんなふうに俯かれる。
愛情混じりの嗜虐心が沸き上がってくるのを自覚しながら、俺はそんなの手を取る。

「見せたいんだよ」
「ほ…ほかの人に……?」
「そう。恥ずかしい?」
「……す、すこし……」

ようは上から下まで団員がせわしなく行き来する通路をデートしようと誘っているのだが、いまいち乗ってこない。

「……なにを恥ずかしがってるの?」
「だ、だって、こんなのが神威の奴隷だって、み、みんな知っちゃう…神威、すごく恥ずかしい思いをしますよ」

ああ……これだからたまらないのだ。

「卑屈だなぁ。大丈夫、奴隷とか買い付けた女郎みたいなのを連れてた奴は沢山いるけど、ほど板に付いたのはいなかったよ」

そう言ってやるとようやく、の瞳が一瞬きらりと輝く。


そうだ。積み荷や土地と一緒に奪ってきたもの、あるいは交渉の道具として捧げられた女など腐るほどいる。
そのほぼすべてが、それらを連れながらふんぞり返って出歩く男とは正反対に、怯えているか拗ねているか。
いちいち気にしてやる必要もないが、ほんの少し嗜虐的な気持ちになって舐めるように眺めてやれば、女は厭世観がたっぷりとまぶされた視線を返してくる。

ああどうせ私は薄汚い奴隷でございます。
どうぞ軽蔑なさってくださいな、アンタだって女なんてモノだと思っているのでしょう。

そんな思惑がありありと見て取れて…苛立つことすら馬鹿馬鹿しくなるばかりだった。

「ほんとに…?神威恥ずかしくない?」
「うん。他の連中と目があったら手を振ってやりなよ」

そう言いながら肩を抱いて扉を開くときには、もう不安など微塵も感じさせない表情で俺の胸板に頭をこつこつとぶつけてきた。


この女は言うまでもなく奴隷だ。
巡り巡って俺の元に流れてきたが、曰く付きのどうしようもない代物だ。

硬い廊下に出て、自分の靴の踵がこつんと音を立てるのとつりあわず、の足はぺたんと間抜けな音を立てたのに気が付く。

「あ、裸足だったか」
「ううん、いいんです」

ぺたぺたと足の裏が床とくっついては離れる音が、俺の足音と並んで響く。

「私、裸足好きだから」

そう、といなして歩くと、向こうからに着せたジャケットと同じものを羽織った人影が歩いてくる。

「お、かむ……あ?」
「や、どうも」

名前も顔も覚えちゃいないが、向こうはそうではないらしい。
とりあえず挨拶を返すと、向こうの視線はに釘付けになる。

「ど、どうもぉ、です」

視線を受けて、馬鹿正直には会釈する。

目の前の獣人、と呼ぶに相応しい風貌の男は、舐めるようにその裸体を下から上に眺めた後、納得したようにウンウンと頷く。
そして方向転換すると、俺の横……つまり俺はとこの男に挟まれて歩いていることになる……に距離を保ちながらついて、同じ方向へ歩き出す。

「地球の女か?」
「ううん、ちょっと違うかな」
「へえそりゃ…俺ァまた地球の吉原あたりから引っ張ってきたのかと思ったよ」
「どうもね。趣味じゃないんだよね」
「俺は好きだがね…奴隷と言やぁアレよ、どっかの民族の纏足してる女は具合が驚くくらいイイっての、ありゃデマだな」
「へえ。試したの?」
「高い金出して買ったつうのによ。ロクに足腰たたねーのよ。お飾りだな。アレはオモチャみてーな靴履いて踊ってるのを見るのが楽しいんだ」
「その子は?」
「着物の帯で首吊って死んでた」
「ありゃりゃ」

……そんな会話をしている最中、の歩みがもつれ気味だということには気が付いていた。
世話しなく内股をすり寄せては、かたかたと小さく震えている。
……口の端がにやりとつり上がってくるのを押さえられず、俺は男に適当に相槌を打ちながら、じったりとを視姦する。

「お前も偉くなったモンだなぁ、神威よぉ」

好色に、鋭く発達し口からはみ出した犬歯をぺろりと舐めながら、男がの肌と俺の顔を交互に見る。

「女は上からあてがわれるモンだったろうが。入団したばっかの頃も自信付けだなんだって」
「なんだっけ、それ」
「ヒデェなァ」

微塵もそう思っていない声色で笑う。
逆に……俺の腕の中に収まったは、ぴくんと肩を跳ねさせてからおとなしくなった。

「…………」

表情をのぞき込んでやれば、不安そうな瞳が返ってくる。

「んー……なんか、もよおした」
「えっ…ど、どうしよう…?」

どれだけ下品でも、朋輩と呼ぶべき者と歩いている最中に性的な興奮を催すと想像もしないらしい獣人は、俺との会話に首を傾げた。

「もちょっと先に行こう。ロビーがある」
「お、お部屋に戻るんじゃないんですか……」

よっせ、と、自分からすれば重さのうちにも入らないの身体を、親が子にするように抱きしめる。
「きゃわー」なんて、小さくが歓喜するのを聞きながらたっと加速する。

「お、おい神威!」

でくそのものの獣人など、気にかけるにも値しない。







「あく……うっ、ああ……!!」

仮にロビーと呼んでいる場所は、ガラス張りになった一室だ。
巡洋艦が行き来する星雲を間近で見ることができる。価値観によってはそれだけで大きな財産だろう。
しかし宇宙海賊などやっている連中で、この景色の美しさにだけ満足し、涙を流して終わる者などいるのだろうか。
俺も同じだ。ガラスを通して見える美しい星の海など、まったくどうでもいい。
まったく似つかわしくない場所で、これ以上ないくらいに卑猥に身体を開ききったのことばかり見ている。

「あっぐ、あ、ああ……はぁっ、あ、や、ああ……!」
「凄いね…いつからこんなだった?」
「な、なんだかっ…あ、ああ…纏足したって、いう、人の話、聞いたらっ……ドキドキしてきて……!」
「ふぅん。も歩けない足になりたいんだ」
「ち、違う……っ」
「知ってるよ」

この女は、今の自分の肉体にこれ以上ないほど満足している。
変化など求めていない。
軽く笑って、指先で撫でるだけだった割れ目を探って。
ぱくぱくと二つ目の口のように閉じたり開いたりする膣口に指先が沈むのを確認すると、無遠慮にそこに指を二本突き立てる。

「あっは、あああああーーッッ!!ゆ、び……っ…入ったぁ…!」

元々この女は遠慮など求めてはいない。
なんだか愉しくなって、二本くわえこんでなお物足りなさそうにひくつく穴に指を追加する。

「あぐっ…あ、あがっ、あ、ああっ…い、今っ、な、何本……?」
「見えるだろ?何本入ってる?」
「あっ、うっ…く、ああ……!く、くるしっ……」
が仰向けから、腹筋運動をする要領で頭を持ち上げようとして苦しさにあえぐ。
だからといって止めて欲しいわけではないを知っているから、指を入れたり出したりするのは止めない。

「あ、はあっ……ああ、あ…よ、よんほん……?!」
「はは、当たり当たり。そ、親指以外は全部入ってる」
「そっ、んなぁ……!あ、あぐっ、ああ、あ、ぐちゃって……あ、はぁああぁああっ!!」

か細い喉からは想像もできない、獣の慟哭みたいな声を上げてがもだえる。
そのなりふり構わないさまに、どんどん下半身に血液が集まっていくのを自覚する。

「……全部入るかな?」
「あ゛っ……え……?」
「俺の片手、全部入る?」
「……っ……」

そう言って挿入した四本の指をゆるゆると動かしてやると、はぞくっと震えてから俺を見上げる。

「入る……と、思うから、い、いれてっ…!」

喉からクク、なんていう笑い声が漏れてしまう。
ああそうだ。
護るものなどなく、目の前に広がる戦地しか見えていない自分にとってなぜこの奴隷がとびきりお気に入りで、手放したくないのか。

それはこの女には限界などないからだ。

「そら…一気にいくよ」
「き、きてっ…神威の手っ……私の、私のオマンコにぶちこんで……!」

挿入しやすいようにと、一度引き抜いた手指を窄め、親指を手のひらの中に入れる形にする。
そしてぐいっと、期待と緊張に打ち震えるの膣穴に壊れるくらいの勢いをつけて圧し入る。

「あ゛っ、が、がくっ、が、ああ、あああ、あぎっ、は、はい、って、きたっ……くるしっ……押されるっ…なか、押されるぅう……!」
「大丈夫……もう一番出っ張ってるとこは入った」
「そ、そうなのっ?!あ、が、あああぁああーーッッ!!」

親指の付け根のあたりまで挿入できたところで、内側の抵抗ばかりする肉をはねのけるように指を開いてみた。
…ら、同時に船中に届きそうな大声と、失禁なのか潮なのかわからない迸りが勢いよく飛び出した。

「あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーッッ!!あいっ、いいっ、いいいいーー!!」
「……へえ」

のそれなりに端正な顔中に脂汗が浮かぶ。
つるつるの肌だって同じくらい粘りのある汗でベタベタだ。
肉体に負担がかかっていないはずなどないのに。

それなのに……は笑う。
これが気持ちいいと、心の底から、魂から発して、他人の魂をも震わせる声で叫ぶ。

「あぐっ、あ、ああ、もっ、もおおっ!もうっ、こ、子供生むための穴もっ、入り口もぉお!!か、神威に埋め尽くされちゃううぅううっ!!」
「はは、いいよ…可愛いなあは…これ、どの指?」
「はぐぅううっ?!」

中指だけ、肉壁の中でぐにゅうと思い切り曲げる。
圧迫される箇所が変化して、の身体は衝撃と苦痛に軋む。

「あ゛ッ、あ゛ッ、あ゛ーーーッッ!!」
「ほらほら、どーの指だ」
「あが、ああ、あがああああ、なっ、なか、中指っ!!中指ですぅうう!!」
「お、当たりだ。なんでわかったの?」
「い、いちばっ、んん、長いからっ……あ、あああーーッ!!」

「…………」

知らないうちに、さっきの獣人を笑えないような仕草を自分もしていることに気がつく。
自分の犬歯と上唇を舐め、目の前の存在に対しての欲求がとどまならいことを自分自身で思い知る。

「っと」
「あうぅうッ?!」

挿入した片手を、ずぽんと引き抜く。
健気なの穴は、腕が抜かれるとすぐに元の形に戻ろうときゅうきゅう収縮する。

そろそろ格好を付けるどころの話でもなくなっている。
自分で自分の履き物を破り取るように脱いで、熱が集まりすぎて痛いくらいの肉茎をに突き当てる。

「あっ……はひっ…こ、今度は…神威のぉ…」
「……欲しい?これ」

こくんこくんと、何度も頷かれる。
わかっていたことだ。
尋ねるまでもなく、目の前の女はこれを欲している。
そして……俺自身も。

目の前の破滅の象徴のような肉体を持つ女を、欲してたまらないのだ。

ふてくされた遊女をなぶり殺したときも、女だてらに、という名詞を自分で振りかざして粋がる女を頸り殺したときも、
そもそも振り返れば景気付けだとかで自分に生まれて初めてあてがわれた女という存在を貪って、気が付いたら死なせていたときだって。
その、女という存在の死になにかを揺すられることはないのだ。
自分は檻の中に閉じこめられた存在だと謡いながら、一端に自分の幸福や、自分を幽閉する者の不幸せについて考え、あるいは口にして。

自分はただの商品。
自分はとうに女など捨てた。

そんな風に言うくせに、身に危機が迫り来れば簡単にひっくり返る。

私はただの女の子。
顔の傷と引き替えに人間としての尊厳を。

いらない。そんなものはいらない。
一端の商品、そして性別を超越した存在なら、なにを高等ぶっているのか。
強さを求めて這い上がれもせず、虫けらとして地面に伏せることもできない。

「あっ……あ、神威、神威神威っ、大好きっ……あ、は……あ、壊し、てぇえ……!!」

この女は。

は……至って単純だ。

中にあるのは、俺と自分の幸福だけだ。
そしてこの女の幸福とはすなわち俺の期待に沿うことで、その為になら限界など自分の中に設けない。

わがままだ。
この女はとびきり自己中心的でわがままだ。

だが……こいつがわがままだからといって、誰にも迷惑はかからない。

なぜならこの女の中には自分と俺しかいないし、
住む世界にしたとて他にどこにも行けはしないのだ。
狂王に捧げられるためだけに半生をかけて作られ、そして一度限り狂い咲いたらばすぐさま摘み取られる運命だった。
それがなにかの間違いで咲かずに俺の元で、ぷっくりした蕾のままに枯れていく。

「……かわいいなぁ、馬鹿だけど」
「う、ぐ、ああ……あはっ、私、幸せなの…!」
「はいはい、好きなだけ幸せになってよ…いくらでも注いでやるからさ」

なに言ってるんだか、俺も。

白濁が一度、の膣の奥でどくんと弾けた瞬間に、すさまじい痙攣が肉茎を通して伝わってくる。
あれほど乱暴の限りを尽くして広げた穴なのに、俺を締め付けるときはまるで生娘のそれのような蠢き方をする。
気を抜くとあっさりと食いちぎられてしまいそうだ。
「っ…ふ、ひ……ひ……は…」
「あっはは、いい子いい子」

この女は、折れたりしないのだ。
ひたすら「俺のため」に、強く存在している。
だったら枯れて乾ききった花弁がハラリと散るまでは、傍に置いておいても構わないじゃないか。

らしくもないことを考えるとまた興奮してきて、淫蕩にとろけきったの身体にのし掛かる。

「えへ……神威」
「部屋に戻る?…それとも、さっきから覗いてる奴にもう一回見せてあげようか」

はかぶりを振った。
「……部屋に戻りながら…したい、です……」
「はいはい」

自分でもわざとくさいとわかるため息をついて、俺はの身体を抱き上げた。