甘いものが大好きだ。
仕事帰りで疲れているときは、ケーキのように大がかりなものじゃなくても……というか。
ぶっちゃけなんでもいいから甘いものが食べたい。
もちろんケーキでもいい。ううん、ケーキがいい。
なのにケーキ以外で妥協するのは、仕事帰りに遠回りしてケーキ屋さんに行くことを考えるとげんなりしてしまうから。
だから帰宅途中にある大江戸コンビニエンスの100円デザートでガマンする。

ああ、でも、ケーキ……。

卵黄とバターを贅沢に使ったスポンジに、新鮮なクリームをたっぷり絞ったいちごショートケーキ。
ココアと、溶かしたチョコをくどさと紙一重の濃さで焼き込んだチョコレートケーキ。
薄く甘いクレープ生地に、カスタードと輪切りフルーツ、生クリームを絶妙なバランスで重ねたミルクレープ……あたりの定番から始まって。

「最近、ピスタチオクリームにもはまってるんだよなぁ……」

抹茶よりちょっと薄い、蓬のような色。
食べると甘さと同時に、わずかなしょっぱさとナッツの香ばしさが口の中に広がる。

「はぁ……ケーキ、食べたい……」

ケーキが真っ先に浮かんだけれど、和菓子もいい。
上品なこしあんを絡めたあんころ餅、醤油とザラメの絶妙なコンビネーションを香ばしく頂くみたらし団子……。
最近流行っているらしいカフェオーレ大福、チョコ団子なんてものも気になる。
なんとこれ、単に「それっぽい風味」なんじゃなく、大福の餡がカフェオレ味。
チョコ団子は上新粉にココアを練り込んだ意欲作。

「お団子もいいな……」

うう。つまり甘いもの。甘いもの食べたいー!

最近銀さんを笑えない。
もう、一日の終わりには酒とツマミ…みたいな感じで、仕事帰りに甘いものがほしい。

「……寄って、行こうかな」

今日はわりと早上がりで、寄り道するくらいの気力は残っていた。
駅前のケーキ屋さんで、ひとつ…いや、せっかく行くんだからふたつ!
自分へのご褒美…なんて言葉は寒々しいかもだけど、買って行っちゃおう。





「ってああぁああぁーー!!銀さん!!」

……幸せ気分でケーキを買って帰り、冷蔵庫に入れて。
ドアに下がっていた回覧板に署名して、次のおうちに回そうと突っかけで出かけたら。
「数日留守なので回覧板は飛ばしてください」の張り紙。
仕方なくそのまま、一つ飛ばしで次のお宅の前まで歩いて帰ってきたら。

「おー、遅かったじゃねえか。暇すぎて銀さんケーキ食っちまったよ」
「食っちまったって…くっ、あ、二つとも?!」

あぐらをかく銀さんの前のちゃぶ台にはケーキの箱と…その中身の残骸。

「こ……これを…私がどれだけ……」

言いながらヘたり込むと、そのまま完全に気が抜けてしまった。

はぁ、というため息と共になんだかすべてがどうでもよくなり、無言で床板に突っ伏した。

「もう…いーよ…ケーキ二個も食べて、ご飯入らなくなっても知らない……」
「何言ってんだオメーは。これが俺のご飯だ」
「……そっか」

無言で冷蔵庫の冷凍室から、きのうのご飯の残りを取り出す。
一緒に煮物のタッパーも取り出して、中身を鍋に空ける。
残り物ご飯の日。

「っていうか銀さん、なんでうちに?」
「突っ込むのがおせーよ」
「ううん、なんか今日はもう、どうでもよくって……」
「…………」

そこで立ち上がった銀さんに背を向けて、鍋を火にかける。
凍った煮物ものちのち溶けるから、タイミングを見てご飯もレンジで温めればいい。

「いやいやいや、ちょっとドライすぎんだろ?銀サンが遊びに来てんだよ?その上お前のケーキ食べちゃったんだよ」
「うん」
「そこはもっとさ……キャアッ銀さんイラッシャイマセー!とか、銀サンひどい〜ぷんぷん丸なのぉ〜とか、あんじゃねーの」
「うん……あったんだけど、なんかどうでもよくなっちゃって……」

あ、溶けてきた。
おたまを入れてゆっくりかき回す。

「いやいやいやいやいや」
「銀さんも食べる?」
「いやさ、お前、ちょっと鍋から離れな?」
「あっ」

後ろから歩み寄ってきた銀さんが横から手を伸ばし、ガスコンロのツマミをひねって火を消してしまった。

「銀さん…私、お腹減ってるし、疲れてるから……用があるなら、ご飯聞きながら食べ…あ、食べながら聞くから」

もう一度コンロに点火しようと手を伸ばす。

「ていッ」
「あっ!!」

今度は私の手がはたかれた。

「ちょっと銀さ…むっ!」

銀さんは私を後ろから抱きしめたかと思うと、身を半回転させて畳の間に向かう。

「ねえ銀さん……もう、困るんだってば……」
「お前にそういう態度取られるとスッゲー傷つくって今初めて知った」
「だって、今日は……ほんと、疲れてるんだってば……」

帰ってきて、回覧板を回したあたりまではいつも通りだったっんだけど。
ケーキ食べられちゃった、と知った瞬間になんだか、全身の力が抜けてしまった……。

「ケーキか?ケーキ食ったのそんなマズかった?」
「ううん……ケーキは事の発端というか、最後に背を押した存在というだけで、それまでの疲労の蓄積が原因かな……」

「ったく……悪かったよ」

そう言いながら、銀さんは私から手を離すとちゃぶ台を畳み始めた。
そのまま勝手に押入を開けて、私の布団を広げる。

「待って……お腹減ってるの……」
「じゃあ冷蔵庫開けてみな」
「ん……?」

数歩行って、冷蔵庫の…今度は冷蔵室の扉を開ける。

「あれ?」

中には、白いケーキボックスがあった。

「えっ?!あれ?!」

慌てて取り出して開けてみると、中には四つのケーキ。

「なんかフッと気が向いてさぁ、の分も買ってくかーって思って来てみたらばビックリだよ」

……すでに私の買ったケーキの箱があったものだから。

「銀さん……」
「思いつきでいいことするモンじゃねーな。間が悪いったらありゃしねえの」
「あ、ありがとう…その…」
「それ食って銀サンのお膝元に来なさい」
「……うん」

カップに盛られたいちごムースを選んで、食器棚からスプーンを取り出す。
立ちながら食べるなんて行儀が悪いと思いつつ、その場で口に運んだ。

……甘みと酸味がなめらかに溶けていって、疲れた脳に回転の余裕を与えてくれる。

「……ふわぁ……はぁ……」

一服。
ふぅっ、と、さっきとはまた違う満足のため息をつき、持ったまま銀さんの膝の上に乗る。

「えへ……いらっしゃい、銀さん」
「やーっといつものお前になったな」
「だって……その、本当に疲れてて……」
「最近働き詰めだったもんなぁ」

仕事にプラスして、急に役所に何度も足を運ぶ用が出来たりで、なんとなくせわしなかった。

「ったく、俺の計画が色々とパーだよ」
「計画?」

私の身体を抱き込んで、お腹に手を回して帯留めをまさぐる銀さんの大きなため息が耳にかかる。

「今日は何の日?」
「え?フッフー?」
「モノマネじゃねー。何の日かな今日、三月十四日は」
「……あっ」

ホワイトデーだ。
完全に忘れていたわけじゃなくて、仕事場でも、歩いた町でもそんなやりとりがあった気がするんだけど……。
でも、それらは右から左へ、ただの喧噪の一部として流れていくだけだった。
……バレンタインデーは、銀さんに手作りチョコをあげた。
香ばしいナッツと、溶かしたチョコをたっぷり混ぜて焼き上げたもの。
半分くらいは自己満足のつもりで、見返りを求めてのものじゃなかった。
「まあまあだな」なんて言いながらその場で開けてモグモグやってくれる銀さんを見るだけで幸せだった。
だから……お返しなんか期待してなかった。

「あっ、これ?このケーキ……」
手の中にあるのはいちごムースだけど、さっきの箱の中には、チョコ系のケーキが多かったような……。

「まァ聞け」

勘ぐりを遮るように、銀さんの手が私からカップとスプーンを取り上げる。
そのまま銀さんが、大きく取ったムースをモクッと口に入れてしまった。

「ちょ、ちょっと……」
「こーやってな」

モクッ、モクッ……と、二口、三口。
見る間に桃色の甘味は減って、半分以上が銀さんの胃の中に収まってしまった。

「ほら銀サンお返し食べちゃったー。お返しは銀さんの身体の中でーす」
「銀さん……?」
「お返し欲しかったら銀サンの身体ごと食べてくーださーい……ってなのを、な」

空になったカップとスプーンを置いてしまうと、銀さんは私の肩に顔を寄せる。

「そういうカンジの計画があったのに、出鼻から挫かれてもうベキョベキョだよ」
「…………」

思わず口元がだらしなくにやけてしまう。

「……ホワイトデーを口実に、なんかいやらしいことしたかった?」
「いーやいや俺がしたいんじゃねぇ。お前がどーしてもお返しをふんだくりてーってんなら、俺ァ身体で返すぜって話」
「ふぅん……」
「え、何なのお前。何なのそのやらしー顔」

私が生意気に思い上がっているのを察した銀さんが、頬をぐいっとつまみあげてくる。
それでも私は変な顔のまま、こみ上げてくる嬉しさを抑えきれない。

「へへ……私、お返しほしい……銀さんごとほしい」
「ったくホンット現金な……」

……そう言うと銀さんは、突然布団の上にバタン、と大の字になってしまった。

「……えっ?」
「お返し。ほら、好きなようにしろ」
「………………えっ?」
「なんでもお前のしたいようにしていいから」

ヘラッと銀さんが笑う。
私は困惑を隠せないまま、横になった銀さんの胸板に手をやる。

「銀さん……?」
「あんましじろじろ見んなよ、これでも照れてんだから」

それっきり視線も逸らされてしまったが、横顔も笑っている。
……私の反応を見て楽しんでいる。
そう思うと焦りと恥ずかしさもこみ上げてくるのに、そんな銀さんを参らせる方法を、すぐにはひらめかない。

「ええ……っと……」

ひとまず、太い腰をぐっと跨ぐ。
そのまま銀さんのおへそあたりに乗り上げ、意を決して腰を据える。

「おっ、騎乗位か」
「ち、違う!違う……えっと……」

銀さんのからかいの言葉で、何度かこうやって私が上になって繋がったときのことを思い出す。
どうにも…しゃがみ込むような脚になって腰を上下させるというのができなくて、いつもすぐに音を上げてしまう。

「わ、私が上に乗るの…銀さんは好き?」
「んー…どっちかっつうと俺が上の方がいいな」

自分なりにドキドキしながら尋ねたのに、銀さんはヘラヘラ笑って、頬を赤らめもせずに答える。
……ぜんぜん「なって」ない。
まだ、私のこと大好きな銀さんになってくれてない。
いやらしいことを口にしてはいるけれど、まだまだ友達と話してる感覚レベル。
どうしてこう…一応の恋人がこうして身体をくっつけて猥談を投げているのに、余裕を持っていられるんだろう。
私は銀さんにそういうことをされたら、すぐに頭がパンクしてなすがままになるのに。

「そういうの……大人の余裕?」

思ったままが口に出た私に、銀さんが眉間に皺を作る。

「いや、趣味嗜好を言ってるだけ。上に乗られてのおっぱいが揺れんの見るより、上になって俺がこうな、乳をワシーッと」
「うわっ?!銀さん……!」

言うなり銀さんの手が、まだあまり崩れていない着物の合わせ目を強引に引っ張ってくる。
……そのまま許せば、簡単に弄ばれて余裕がなくなってしまう未来が簡単に見えている。

「だ、だめっ」
「あん?」
「きょ、今日は…銀さんがプレゼントでしょ?私が、銀さんをもらうんでしょ?」

銀さんの手がハタッと引っ込み、私の顔をジト目で少し眺めたと思うと……その口許から、へへ、と笑いがこぼれた。

「それもそうか」
「そ、そうだよ…だから、ちょっとは、好きにさせてよ……」
「ちょっとと言わずたっぷりどーぞぉ?銀サン贈り物だから、お前の好きにして構わねーよ?」
「う、うぅ……!」

口許だけじゃなくて、目尻までゆがめて笑う銀さんの顔は、できるもんならやってみな……という挑発に満ちている。
どうせ私が、いつも通り途中で銀さんにしなだれかかってしまうと信じきっている。

「じゃ、じゃあ……!」
「おっ……」

その余裕が悔しくて、銀さんの服に手をかける。
そのまま羽織の隙間に指を差し込んで、まるで包装紙を開けるみたいに、銀さんを裸に剥いていく。

「今日はいつもと逆なー。は服着てて、俺だけ裸なのな」
「う……!」

一気に顔が熱くなる。そういえばそうだ、と今更思い出す。
……でも、ここで脱いでしまったら……やっぱりいつも通り銀さんのペースに引き込まれてしまう。
そう思って、自分を必死にセーブする。

「いいから……ほら、お尻あげてよ、ズボン脱がすから!」
「うーい」

羽織、黒い肌着、垂れ下げているベルトにゆるゆるの帯。
これらは仰向けのまま脱がせられるけど、ズボンはそうもいかない。
私の声に唇を尖らせ、銀さんが横柄な態度で腰を浮かせる。
布団と銀さんの背中に出来た隙間に手を差し込んで、チャックを下げたズボンを脱がせよう……として。

「…………」

……ここで、下着まで一緒に脱がせてしまったら。
たぶん銀さんの肉茎の反応に一喜一憂して、目を奪われて……気が気でなくなるんだろうな。
そう思って、ちょっと手を止める。
慎重に、下着だけ残して……ズボンの布地を、銀さんの脚から抜き取っていく。

「パンツは?」
「そ、そのまま。まだ脱がさないの」
「ほー。チャンはパンツの上からイジるのが好きか」
「うぅっ、もう……!」

私が闘志を燃やしたと見るなり、銀さんの声は調子を上げていく。
私に向ける言葉も、どんどん意地悪になっていく。
一番問題なのは…その言葉に、いちいち脳を揺すられる私だ。
銀さんに言葉でいじめられると、こめかみのあたりがムズムズしてきて……だんだんそれが背筋を伝って、みぞおちに降りていく。
そうなるともうダメで、頭で色々考えていたのがどうでもよくなって、とにかく銀さんにしがみつきたくなる。
……それじゃあ、ダメだろう。
いや、何がダメなのか自分でもわからないけど……とにかく、今はダメだ。考えない!

「んっ……!」
「お……っ、う」

自分の着物をみっともない形にたくし上げて、もう一回銀さんの腰にまたがる。
さっきとは違って、脚は出来るだけ大きく開いた。
銀さんと私の、下着越しの性器が触れ合う。

「あ……ん、ちょっと……熱い……」

私の下着は、自分の粘膜からこぼれた愛液で中途半端に湿っている。
それを感じてか、銀さんの肉茎も熱を持ち始めていた。

「だ、ダメ……!」
「あ?」

その感覚にヘたり込みそうになった自分に喝を入れる。
腰をもう少し前に移動させて、銀さんのおへその上にズレ込む。
これ以上銀さんを秘処に押し当てていたら、すぐに我慢出来なくなっちゃいそうだ……。

「んっ、う…!」

疼きながら火照る自分の秘処をどうにか無視して、銀さんの上半身に指を滑らせる。
私の手を感じてか、肌が少し粟立っていた。

「っっ…あ、う…銀さん…」
「ん…どした?」

まだまだ顔は余裕綽々だけど、身体は私によって少しずつ昂ぶってきてくれている。
そう思うと嬉しくて、また震えが襲う。

「な、なんでもない…あ、あのさ…キスしよ…」

もう、私のごまかしもただの恥ずかしいものでしかない気がする。
現に銀さんは、「キス」と聞いてニヤッと笑ったし。

「んっ……!」
「おっ、んー……」

見ないふりをして、勢いよく口付ける。
銀さんの唇は色が薄いだけで、私の唇に弾力が伝わるくらいぷにぷにしている。
それを自分から味わって、積極的に舌を絡めていく。

「んっ、ふ…あ、う、んうぅっ…!ぎ、銀ひゃ…!」
「んー…む、んーーっ!!」
「ふゃあら、やらぁ、んやぁあ……!」

少しして、失敗だった……と焦る。
銀さんに舌をぢゅるぢゅる吸われて、軽い痛みと一緒に鼻息を振り撒かれると…余裕なんか笑えるくらいの早さでなくなっていく。

「やらっ、んやぁ……んっ、くぅ……!」
「おっ…ぶぁっ、はあ、おぉっ…?」

離してもらえない舌に狼狽しながら、苦し紛れに銀さんの股間に手を伸ばす。
後ろ手でもちゃんと掴めるくらいには、もう銀さんは勃ちあがっていた。

「もうおっきい…んっ、んっ…ん……!」
「お、わ…おい、てめ……」

手探りで下着を下ろし、肉茎を引っ張り出す。
直に触れる銀さんの熱は、いつも通り私をクラクラさせる。
その陶酔に任せて、後ろ手のまま指で作った輪っかを上下させる。
……その手が微妙に滑るくらいには、銀さんの肉茎は汗ばんでいた。

「あっ、あ…えへへっ…たってる…銀さん、ちゃんとたってるね…」
「っつあ…そりゃ勃つわ、の手でコかれてんだから…」
「ん……?」

銀さんはまた笑ったけれど、呼吸が変に荒い。

ある程度気持ちいいとは思うけれど、いつもより全然ゆるい愛撫なのに。

「銀さん…どうしたの…?なんか、変…?」

言いながら肉茎を弄る手を止め、感覚に頼って根元を優しく掴むだけにする。

「いや、変じゃねーよ全然…お前こそナニ?ヘソんとこに湿ったの当たんだけど」
「それは…っん、あ、あぁ…っ!!」

またピクッと眉根に皺を作った銀さんが、仕返しと言わんばかりに私の太ももを平手で弾いた。

「ぐちょぐちょだろ?やらしーチャンは、銀さん弄くりながら濡らしてんだろ」
「ちょ…やっ、あ、だめえっ!今しちゃだめっ、あ…んッ!」

粗野な指が、私の下着を剥ぎ取ろうと入り込んで来る。

「あり、ちょ、おま…くっそ」
「っっ…う、ンッ……!」

……が、当然私は銀さんの腰にべたんとお尻をつけて座り込んでいるし、下着は湿っていて肌に張り付く。
銀さんの思惑通りに丸剥けにはならず、銀さんの顔に不満が浮かぶ。

……銀さんの意識が私の下着に集中力したあたりで、また私は肉茎に指を絡ませた。

「おわあっ?!」
「んっ、ん…なんか、銀さん…今日、感じやすいの…?」

私のおしりにぶつかるくらい屹立した肉茎を握り、その硬さを利用しておしりの谷間に押し付ける。
多分もう真っ赤になっている先端を、ずりずりと。

「おっ…ふ、やっば、お前ソレ」
「ね…教えてよ、なんか大きくなるの早いよ……」

銀さんの口から、ほふっ…と感嘆するような息が漏れる。
汗で湿る下着と、その下のおしりの肉に擦られて、肉茎はもっと硬くなる。

「今日ってか、ソレが…って、あっ、テメ…!」
「こう?こうかな…はっ、こうやって撫でるのがいい…?」

おしりにくっつけたまま、手のひらで裏筋を撫でくりまわす。
微かに先端からも粘液が溢れていて、私の手と肉茎の摩擦を柔らかく淫猥なものにしてくれる。

「はぁ…ふふっ、よくわかんないけど…銀さん、感じてくれてるっ…!」

にぢゅ、にぢゅ、と尾を引く蜜みたいな音を、自分の手が立てている。
銀さんの耳にも、この音が届いてるんだろう。
銀さんの眉間のぴくぴくが多くなり、裸の肩も震え始める。

「なんか、やっと贈り物っぽくなってきた…ぁ、銀さん、私、楽しいよぉ…!」
「てんっめ、このっ…見えねーんだよっ、ナニに何されてっか見えねーの!」
「ふあぁ…?あ、そっか…銀さん、おちんちん見えないんだ……あははっ!」

……優位に立って私をやり込めたいのに、私にどう愛撫されるかわからないから敏感になってしまうのか。
そうわかると、なんだか銀さんが凄く可愛く思えてきて笑いが溢れてしまう。

「はぁっ、あ、ん…!じゃあ見えるようにするっ……はんっ、あ、んっ!」
「うっ…わ、あ、おっ…!」

完全に銀さんに着けていた腰を、くんっと上げる。
それから銀さんの肉茎を強く引き寄せて、私の脚の間に敷いてしまう。
そのまま再び腰を落とせば、下着越しの私の割れ目に、ちょうど銀さんがぴたりとくっついてくれた。

「これなら見えるよね…?銀さんのっ……んっ…!」
「やーめろてめっ、調子飲んなっ…お、擦んなっ」

下着の隔たりがあるとはいえ、敏感になっている粘膜の合わせ目に銀さんを感じる。
私も震えが止まらなくなって、ほとんど本能的に腰を揺すった。

「んっ、んっ、んんぅっ…!」

銀さんの肉に負けず劣らず充血したクリトリスが、微妙にもどかしい刺激を受ける。
銀さん大好き、という甘い陶酔を持った気持ちよさとはまた違う、強くて単純な快感に身体が持って行かれそうになる。

「これで、どうっ…?っあ……!」
「くっ、お、ふ……!」

銀さんの先端から、ポチュッ…と、水っぽい勢いで透明な飛沫が噴き出した。

射精しちゃったのかと思ったけれど、どうにも様子が違う。
……興奮のあまりに、銀さんが射精を伴わない絶頂を迎えただけだ。

「あっ、やだ…なんか、今の…!」
「やば…おい、……」

それって、どうにもいやらしすぎる。
頭の中が嬉しさで霞む。

「はぅっ、あ、だ、だめ…ぇ、んあっ……!!」

そうだった。
今日はこれに流されてはダメなんだ。
もっと銀さんを焦らして、私で気持ちよくなるところをじっくり楽しまないと……。

「って、あっ、わぁあっ?!銀さん、だめっ、だめっ!引っ張らないでっ!」

気を入れ直した私の腰に手が回って来て、下着が強く掴まれた。
伸ばされた布が肌にきつく食い込んでくる。

「知るかァ!人がしおらしくしてりゃ調子こきやがって、このっ!」

ふんっ、と銀さんが鼻息を漏らした直後に、私の下着がびちぃっ…!と悲鳴みたいな音を立てた。

「ダメ、裂けちゃう、パンツ裂けちゃうからぁっ…!」

言い終わる前にもう。
銀さんの手が容赦なく引っ張ったせいで、下着の布地が無惨に避けていく。

「やぁっ…裂けちゃったぁ……!もう、銀さんっ!」
「へへ、いいカッコじゃん…なんかエロくていーぞ」
「そういう問題じゃないのっ…わ、あ、ああっ…?!」

……制止を訴えかけたときにはもう、遅かった。

「倍返しだァ!…って、これももう古りーよな…はは」
「はは、じゃ、ないっ……ん、ぐぅぅっ…あ、い、あっ…いきなり、いれるなんて……ぇぇ…!」

濡れてはいるけど、まだ慣らされていない私の孔から身体の奥までを、銀さんが貫いていた。

「ひ、どいっ…ん、プレゼントなのに、銀さん、私の贈り物、なのにい……!」

圧迫から逃れるための息と一緒に、うわ言みたいな声が漏れた。
苦しくはあるけど、痛くはない。
でも、やっぱりこうやって銀さんにいいようにされてしまうんだ…と思うと、なんだかやるせないだけで。

「…んじゃまた今から贈り物モードになるか?俺こっから一個も動かねーよ?いいのか?」
「それは…っ!」

嫌だけど……と言いかけて口を噤む。
そ、それこそ銀さんの思う壺じゃん!

「まっ…て、私、今日、れんしゅう、っん、するぅっ…!」
「……あ?練習?」

へたり込みそうになる腰に力を籠めて、足も布団に突っ張らせる。

「銀さんの上で動いてっ…気持ちよくなる練習、すりゅうっ?!」

すりゅうっ、てなんだ私。
銀さんがいきなり下腹を持ち上げたものだから、変な幼児言葉になってしまった。

「やっやっ、ちょっ、銀さぁんっ!れ、れんしゅっ…するんだってばぁっ!」
「てめーの練習なんぞに付き合ってたら、ノロマすぎて中でふやけちまうよ」

そう言って、銀さんは今度は口からいくつか荒い吐息をこぼして、私の足を憎しみすら感じる強さで押さえつける。

「うあッ、あっ…ンあぁあぁあ……っ!!」
「ほォらだんまりしてたときよかずっと喜んでんじゃん、やっぱ俺に動かれた方が嬉しいんだろーがっ」
「だ、だってぇ……で、でもぉっ……ん、ああぁっ?!いやっ、あぁ…!」

為す術もなく銀さんの胸板に手をつく私の股間を、荒々しい片手がまさぐりだす。

「あッ、あぁ…だめ、い、いじんないでぇえ…潰さないでぇえっ……!」
「やーだもう言うこと聞いてやんなーい」

ただでさえ内側を圧迫されているのに、外から銀さんの手でいじられる。
銀さんを受け入れてじんじんする入り口も、充血してはみ出し気味のクリトリスも、一緒くたにぐちゃぐちゃに。

「はあぁあぁあっ!!あっ、あぁっ……あぁあ……!」
「やっぱそれがいいな……おめーはそうやって俺に泣かされてろ」
「な、なかされ、て……って……!」

演歌かおっさんくさっ、と突っ込むより先に、自分の口から唾液がこぽっ、と漏れてしまうのに気を取られる。

下から突き上げられ、乱暴に愛撫されて言葉でなじられるうち、だらしなく口の端が開いていく。

「銀…さんの、ばかあっ…銀さんにされたら、私すぐ、こうなっちゃうのにぃっ……!」
「っ…へへ、それがいーつってんの、好きにされてな、俺の好きに……つ、あ……」

意地悪く笑った顔に胸を打たれて、身体の真ん中をギュウッとこじらせると、銀さんが眉根をしかめる。

「締めすぎだ……てめケツの力抜けっ」
「し、めて、なんか……ないぃ……!勝手に、ギュッてなるだけぇぇっ…!」
「こっ、の……!」

言いながら、自分のおへそからしたが痺れ始めて、まともに力が入らないことに気づく。

「も、もう、だめ…座ってられにゃひぃいっ……!」
「バッ!コラ……っ、あ、うあぁっ……!!」

前のめりに、銀さんの上に倒れ込んだ瞬間に。
はずみで私の中から、銀さんがニュルン、と抜け出てしまった。

「っつあ、あ……!」
「やんっ?!あ、ああっ……熱いっ……?!」

最初は、首の後ろ。
それから背中の真ん中らへん、最後におしり。
点々と、熱い飛沫が肌に降り掛かった。

「ぎ…銀さん……あっ、は……あぁぁ…出ちゃったんだ……」
「…………」
「あはっ、ん……なんか…こういうのもうれしっ……んっ?!あッ、ああぁッ?!銀さんっ?!」

そのまま私の身体を強く押さえ込んで、銀さんの手が疼きっぱなしの膣穴をぐちゃぐちゃかき混ぜる。

「やっ、あ、ああぁっ?!い、いいんだよっ、い、いか……せ、なくて、いッッ……んああぁっ!ひゃめへぇえっ!」
「うるせえ」
「むぐう……っ!」

口に突っ込まれた銀さんの指には、背中からすくいとったらしい白濁が絡んでいた。
思わずしゃぶりついて、舌ですすいでいるうちにも……下腹からこみ上げる熱が強くなっていく。





「……とれた……?」

……銀さんの機嫌が直るまでやりこまれてヘトヘトの私は、なぜかお風呂で洗ってもらっていた。
後ろ髪にもついてしまったらしい精液を、銀さんが丁寧にシャンプーの泡と一緒に流している。

「……こっちの方が、プレゼントっぽい」
「あ?なに?」
「ううん」

わざわざシャワーを止めて尋ねる銀さんに、慌ててかぶりを振る。

「銀さん大好きって言ったの!」
「バカ」








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ひさしぶりの銀さんでした。
最後の銀さんは10月の銀誕だったので……五ヶ月ぶり……えっ嘘そんなに銀さん書いてなかったっけ……。