……万事屋に小便……下品か。まだ粉ミルクの匂いが抜けきってなさそうな女児がわらわらやってきて、台所を占拠し始めて一時間ほど。
神楽の友達だというやつらは、甘い香りを漂わせながらきゃいきゃいと楽しそうだ。
これは「依頼」なのだそうだ。「万事屋の神楽ちゃん」に。
「きゃー!きゃーすごい!お姉さん上手なんだね!」
「あははっ、上手じゃないよ。熱いから気を付けて!」
「きゃあっ!こぼれちゃうっ!」
「今年のバレンタインは手作りチョコでカレのハートをゲット!」という見出しがマセガキ共の読む雑誌に載ったのが発端で、
お菓子作りしてみたいね、誰か上手な人いないかなぁ、と話題になったところで神楽が声を上げたらしい。
「万屋屋神楽ちゃんにお任せアルヨ!私の知り合いにスーパーパティシエールがいるネ!」
……別に銀サンはそこまでケチケチしてないし、子供だってうるさくしなきゃ嫌いじゃない。
だから神楽に「そんなんでウチのキッチン、かわいい娘っ子たちに貸し出すことになったヨ」と言われ、
「依頼料」として受け取ったらしい五百円玉をちゃらりと差し出されて、
「あの子たちにとってこれがどれだけの大金か言うまでもないよネ?」
銀ちゃんにとってははした金かもしれないけど……というニュアンスで畳みかけられれば、まぁ火の元と怪我に気をつけりゃあな、と了承するに吝かでなかった。
が、問題はそこじゃない。
「お前、パティシエなんて知り合いにいるわけ?どっから連れてくるつもりだ?」
「……?銀ちゃん、何すっとぼけてるアルか」
「銀さん、そろそろそっちのテーブル使わせてー。上片づけておいて!」
「……うーい」
子供たちと同時にうちの門をくぐったのは、だった。
は和洋問わず、こまこました料理や菓子作りが「好き」らしい。
「レシピがあればとりあえずどんなのも作れるよ」なので、板についた「料理上手」ではないが、時たま作るケーキは美味い。
「ほら、この型と型くっつけて……っと!ほっ!よっ……!」
「きゃー!すごい!すごいすごい!まんまるハートになったぁ!」
はしゃぐ少女たちの雰囲気に、俺は家主にも関わらず居間から逃げた。
別にアッチ行けよ、と言われたわけじゃないけど。
「……ねー銀さん、すごいねーこれ、このアトベケーゴってひと」
「あん?」
小娘共が帰り、その後始末を終えて。
ソファの上に放っておいた雑誌をめくりながらが話しかけてきた。
「俺様の美技にぶぎうぎ!の一言でファンからバレンタインチョコ9500個も来たんだってー」
「もうスゴすぎてスケールがわかんねぇよ」
「しかもね、それを月面着陸して衛星生放送で発表したんだってー」
「それスゴい通り越して頭おかしいだろうが」
「……疲れたぁ」
「……おー」
柄にもなくお姉さんぶっていた反動は今になって来ているらしい。
いつもは余程眠いとき以外ハキハキと喋るのに、今のときたらだるんだるんに語尾を伸ばしどうでもいいことを喋り続けていたわけで。
元々多数の人間と一気に関わるのが苦手な女なのだ。
聞き役に徹して「凄いですね!」しか言わないならまだしも、今日はいきなり先生扱いだ。
「あの子たち、今日は練習なんだって。13日にまた作りに来るって」
「ほー。にしちゃあ随分本格的にやってたじゃねーか」
「……どうせあの子たちは出来たものがまずくてもなんでもいいんだよ。苦労したいだけ。いちばん手間かかるの教えたの」
「おい」
「あ、まずく作ったんじゃないよ。めんどくさいだけ。どぉーせ寺子屋の男の子なんてテンパリングしてないチョコだってもらえばうれしいでしょ」
「おい……」
「エアインって言ってね、生チョコトリュフなんだけど、普通よりすっごく面倒なの。何度も何度も混ぜるの。でもこれ、たぶん普通の子はただ生クリーム混ぜただけの生チョコとの違いなんてぜっったいわかんないよ」
「おいいィィィ!お前さっきから漏れちゃいけない部分ダダ漏れだよ?!」
思わず身を起こして、向かいのソファで雑誌を投げ出してだらけるの顔を見る。
「……でも銀さんならわかるよね。糖分王だもんね」
視線が合うと、やる気のなさを隠そうともせずにそう言われた。
「まだバレンタインじゃないけど、私銀さんの分も作ったよ。ほしい?」
俺の返事を待たず、寝返りを打ちながらもう一言。
「大丈夫だよ。お返しは三倍で、とか言わないよ」
「……疲れすぎじゃねえの?」
どこかイラだちまで感じさせる口調で続けるのことが、だんだん心配になってきた。
ああと。まだ月のモノは全然先のはず。というかこの間終わったばっかりのはず。
「かわりに、ねえ、銀さん」
「話聞けっての」
「今日のチョコもあげるし、バレンタインのチョコもすごいの作るよ。買ってこいって言われれば有名店のでも並んじゃう」
「……で?お返しには愛が欲しいって?」
「うん」
神妙な顔でコックリうなずいたは、突然むくりと起き上がった。
「お返しはね、キスしてくれるだけでいいよ」
「はん?!」
「みんなの前で。神楽ちゃんと新八君だけじゃないよ。チョコ作りに来た子たちの前で、私にぶちゅーってキスしてくれたら、なんでもあげるよ」
「バカ言うんじゃねーよ」
早いとこ寝かしつけてやろう。
変に突っ張った雰囲気のままぐずられてもかなわない。
抱きかかえて布団まで運んでやればちょっとした疲労は忘れて眠るだろう。
そう思って立ち上がって、の膝の裏に腕を差し込んだ。
「……キスはいやなんだ?」
「バカ言ってねーで寝ろ」
「抱っこならいいの?」
「人前ですることじゃねぇだろ、どっちも」
「…………そっか」
そう言ったきり無言になると、は俺の胸元にしがみついた。
きちんと成熟した、身の詰まった女の重たさを持つ体を抱え、足でふすまを開ける。
すでに敷いていた布団の上にゆっくり落とし込んでやると、はぼうっと俺を見た。
「……どうしてもダメ?みんなの前でキス……」
「ダーメでぇす。だいたいガキには刺激が強すぎんだろ」
「ふーん……そっかぁ……」
機嫌の悪さはやっぱり疲れからだったらしい。
布団を掛けて灯りを消すと、すぐに寝息が聞こえた。
横から聞こえる他人の寝息は、ごくたまに変な夢を呼びつける。
オバケは信じない、断じて信じないが……夢ってのはもっと簡単なモンだ。
自分の頭の中にないもんは出てこない。
覚えがなくてもずっと昔、もしくは気付かないくらい一瞬のうちに脳みそにブチ込まれてたもんしか出てこない。
しかもこれは「ああ俺夢の中にいんだなぁ」とわかるタイプの夢だ。明晰夢だっけ?
だから、隻眼の戦友が血まみれの着物で俺の前に突っ立っていてもさして驚かなかった。
その横にへらへら笑っているがいるのも。
「怖くて仕方がねェんだよなぁ、手前は」
が、驚きはしなくても言葉の意味を理解しようと必死になっている自分はいる。
「特別な存在を作るのは怖いよなァ、それを周りに知られんのはもっと怖いよな?」
「特別だって周りにばれちゃったら、捨てる時面倒だもんね」
アレだ。オヴァンゲリオンとかでもよく使ってたアレ。過去の恥ずかしい経験、思い出したくない傷を他人が代弁してくる。
「だって、特別なのに捨てちゃったんだーって、周りの人に白い目で見られちゃうもんね」
「また負け犬に戻っちまうもんなァ。たかが小娘一匹のせいで人生台無しにしたかねェよな、手前ェは正しいよ、糞食らえな正しさだ」
「もう捨てちゃえばぁ?」
「捨てちまえよ、胴と頭、皮一枚でプラプラさせとくのも酷だろ」
「大丈夫だよ、私強い子だし。若いうちの失恋なんてかすり傷だよ。むしろ経験しなきゃ、後がない状態で銀さんに捨てられたら立ち直れないもん」
「今なら間に合うぜ、ほら、捨てに行けよ、月曜日は生ゴミの日だし丁度いいだろ」
「ちゃんとバラバラにするんだよ?切り刻んであげるんだよ?銀さんがちゃんとやるんだよ?責任とってよ、責任とってちゃんと捨てるんだよ」
自分は二人より随分低い所に座り込んでいるらしい。見下ろしてくる目は愉快げなのに冷ややかだ。
「捨てられないなら飼わないといけないよ?犬や猫の子じゃないんだよ?優しくされちゃったらもう後戻りできないんだよ」
「今しかねェよ。解ってんだろ、愛情乞食する女はみじめだぜ、銀さんあたしを愛して……特別な存在にして……って、四六時中泣かれて手前はもつのか?」
「もたないよね。私なんてどうでもいいよね」
「よそで大っぴらに可愛がってやんねーのはだからだろ?」
「……だからキスもしてくれないんだよね?」
自分の声で目が覚めた。
変な夢を見てしまったと頭を掻いて、冬なのに背中に寝汗をかいていることに気がつく。
「……わりかし昨日のアレ、罪悪感とかあんの俺?」
「ふーん、そっかぁ」の返事が、思っていたよりもこたえたのかもしれない。
「いやいやいや」
だからって、夢で責められたような理由だけで片づけられる問題でもない。
いやでも、そういう気持ちがまったくないのなら、あんな夢は見ないはずで……。
「だァもー……ん?」
そこで、隣の布団がまだ盛り上がっていることに気づいた。
まだ起きていないらしい。
「オイ、起きろ」
「……」
「起きてメシ、メシだメシ」
……そう言っての布団をめくりあげると、眩しそうに瞼がムズムズ動いて……。
「……ん、ゆぅう……んぅー、ん……」
むにゅむにゅと幼児のように、唇が意味のない言葉をこぼす。
「起きろよ、どーせ卵かけご飯だけど食ってけ」
そう言って先に起き上がり、襖を開けようとして。
「んやぁあ、やーあ……ん、やあ、のぉ……」
がぐっと腕を伸ばし、まだ寝ぼけているのか舌っ足らずにうめく。
「やぁ、やぁの、やぁ、やあっ、やっ、や、やー!!」
「?!」
……はち切れたように、は泣き出した。
「……一晩にして一体何が……」
「頭でもぶつけたんじゃねーの?コイツもともと結構足りなかったしよー、寝ぼけてタンスに頭打ってパーに」
「そういう場合記憶喪失だろ?なぁんで幼児に戻っちまうのさ」
…………俺の膝に、みっともなく着物の裾を割りまたがるは胸板にしがみついて寝こけ、よだれまで垂らしている。
「あれアルか?なんか変なウィルスが……」
「お前さー都合のいいときだけ天人のウィルスとか薬とかにだけ頼るのって安直すぎると思わねーの?」
「そんなこと言ったらこのジャンルの二次創作が死滅しちゃいますよ」
「身も蓋もねーこと言うな」
びええーん、びえええーんと泣き、言葉も幼児程度にしか喋れなくなってしまったを黙らせるには、
ひとまず俺が抱き上げるしかなかった。
重いとは言わないが、五十キロそこそこをずっと抱いていると腕が痺れてくる。
が、休憩しようとして椅子なり布団なりに置くと、また途端に「びええん」だ。
こりゃ世のお母さんが赤ん坊の抱きすぎで腕を痛めるというのもわかる。
代わりに他の誰かが抱くのも駄目だ。俺が離れると泣き出す。
「でも、ちょいと奇妙だね」
煙草を灰皿でもみ消しながら、ババアが俺とをみて目を細める。
「幼児に戻ったってんなら……アンタこの子が一桁のとき、知り合いだったわけないだろ?」
「……あ」
「それは……えっと、ちゃん、お父さんっ子だった……とか?」
「それじゃどーして新八に抱っこされても泣くアルか?自分で自分に父性がカケラもねーって言ってて悲しくないアルか」
「いや違うから!僕くらいの歳の男に父性があったら逆に怖いよ!だ、だから、ある程度お父さんっぽい男の人がいいのか……そうでなければ……」
「……悪いモノが憑いてる、って?」
ババアの言葉に思わず慌てて立ち上がり、危うくを落っことしそうになった。
「悪いモノって何だよ?!」
「だから……おばけ」
「あああああ違う違う違う、ついてねーよ、そんなもん拾ってくるわけねーじゃん、だって昨日は普通だったよ?!寝る直前までぜんぜんフツーだったよ?!」
寝ている間に……というなら、つまり……俺の部屋に悪いモノがいたことになる。
「パピーに甘えられないまま死んじゃった子供の霊とか?」
「ちげええよ!ちげーよ!何だそれパピーのとこ行けよ!なんでウチに来ちゃうの?!お門違いもいいところだろ!!」
突然声を上げた俺に驚いたのか、腕の中のがびくっと飛び起きて、目を丸く剥いて左右をきょろきょろした。
あ、やばい泣く……と察して慌てて……慌ててだ、別に怖いわけじゃない、が泣くといけないから……ギュウ、と腕に力を籠めて頭を撫でつける。
「ほらほら泣かない、おーよしよし」
「うっ……う、う」
いつもはキュッと後ろにまとめている髪は、今は寝起きのままぐちゃぐちゃだ。
自分の指をくわえてぐずる様子も幼児そのもので、こんなんどうしろっつーんだと途方に暮れそうになる。
「……あ」
ふと、そんなどん詰まり寸前の脳裏にひらめく存在があった。
「新八、神楽」
この間のなんやかやも結局ウヤムヤで終わらせちまったあの陰陽師。
結野衆の奴らならば、この状況を打開する策を持っているかもしれない。
いや違う、違うよ、お祓いじゃなくて、コイツに悪いモノなんて憑いてないけど。
『50万ウンタラのときもしものことがあったら』と、式神を呼び出せる護符を預かっていた。
「知らない奴が来るとまた泣くかもしんねーから……ホラ、これで外道丸呼び出して、その、アレだ」
「晴明さんにお願いしてお祓いしてもらうんですか?」
「お祓いじゃねーよ!!ちょっと診てもらうんだよ!その……お、俺はこいつの世話してるから。上にいるから」
「…………」
「違げえよ!!こっち見るんじゃねーよ!!別に怖くねーよ!なんで怖がるの?どうして銀さんがビビらなくちゃなんないの?!」
「ふあっ、あ、あうぅ……!」
「おわ、あ、ああホラ……」
タイミングよくがぐずり出したので、新八に護符を差し出してスナックから飛び出した。
「どーしちまったの、お前」
「……うぅぐ」
居間のソファに腰掛けて抱いたままのに問いかけてみるが、やっぱり指をしゃぶって意味のない言葉を漏らすだけ。
……どうすればいいんだこんなの、と改めて途方に暮れながら、の身体を少しずらす。
腕どころか脚まで重さで痺れてきた。
頭と背中を俺の膝に乗せ、しわくちゃの着物からはみ出る脚をソファに伸ばしたを見ていると……なんとなく下世話な気分を煽られなくもないが。
事態が事態だ。
さすがに悪霊背負った状態のこいつとはやれない。そんな度胸ない。
「いや、いねーけど悪霊とか……信じてないけど」
「みたいでござんすね」
「アアアアアァアァ?!」
「どれだけ肝っ玉小さいんでございやすか銀時様は。あっしです、外道丸でござんす」
「び、ビックリ……してねーけど別に、いつの間に入ってきたんだよ?!」
慌てた俺を無視して、紅玉のような瞳で外道丸はふむ、とぐずりかけたを一瞥すると。
「こいつぁちょっとした荒療治が必要みたいでごぜぇますが」
「えちょ、何?!ちょっちょ、え、えええ?!嘘?!まさかおめーホントにコイツに……?!」
「ふあっ……!」
「ああ、ちょ、ちょお……」
思わず立ち上がりかけるとの顔がぐしゃっとゆがんで、大泣きの前兆を見せる。
その場で撫でて諫めたいが、外道丸の言葉を信じるなら……こいつには今、その。
「大丈夫、銀時様一人で御しきれる程度でござんすよ。思った通りで。ほら、ここに手順をまとめときやした」
そう言って外道丸は一枚、何かが書かれた紙を差し出した。
「資料作成費は見料と別に請求書出しやすんで」
「金取んのかよ?!ちょ、待って一人にしないで!!ちょ、待って待ってエェ!!」
そう言っての頭を抱えたまま手を伸ばした俺に、外道丸はシッ、とジェスチャーした。
白い指先がぐずるを指差し、それから渡された紙を差し……「だめだこりゃ」とでも言いたげに首を振る。
「……?」
そいじゃあっしはこれで、と去っていく外道丸のことは。
……その紙に書かれた文字を見るなり、頭の中から消え去っていた。
「おー、悪いな。知らねえ奴来てビビッちまったよな」
「う……ぐ」
「よしよし。こうなったら銀サンも腹くくるぜ。お前があーぱーの赤ん坊になってもボケ老人になっちまっても付き合ってやっから」
「う……うぅ?」
『仮病でござんす』
「お前、朝からぐずりっぱで飯もろくに食ってねーじゃん。顔も洗ってねーし」
「う、えぁう……?」
『かまわれたくてふざけてるだけでござんす。ご機嫌取ってやるか、でなけりゃとびっきり恥ずかしいことでもさせればすぐ治ると思いやす』
「よォし風呂入るか、風呂風呂。今沸かすから……いやめんどくせーな。シャワーでいいか」
大人二人が入れるサイズじゃないし、うちの湯船。
「う……ううぅ……?」
突然上機嫌になった俺のことを、挙動不審に見る。
……なんてことはない、種が割れてしまえばその様子のあちこちに演技が見え隠れする。
「よっこら……せっと」
「あうっ、ああぅ……!」
「ほォら脱がしてやっからほら、バンザイしな」
「うぅ、ううぅ?!」
手早く帯をほどき、どういう態度をとるべきか戸惑っている様子が見えるを全裸に。
自分も手早く裸になってから、シャワーコックをひねって湯を出し風呂椅子に座らせる。
「そういやおめーとウチの風呂に入るのは初めてだなー。ラブホのは何べんかあっけど」
「うああうっ、あやあぁ!」
「お、熱いか?わりわり……俺、お前といろいろやってるよーに見えて、案外身近なこたぁ見逃してんなぁ……」
「うゆぐ……うぐ?」
が、不安げな目で俺を見た。
どうしたのいきなり、と、訴える瞳で。
そのままシンミリホノボノとした雰囲気に持っていってやってもよかったが。
仮病で銀さんを困らせた罪は裁かれてしかるべき。ビビらせた、じゃなくて。困らせた。
「……なー、メシもそうだけどお前朝からいっぺんも便所いってねーじゃん。我慢してんじゃねーの?」
「あうっ?!あうううっ?!」
ゆるゆると肩に当ててやっていた湯の位置を変え、膝らへんに移動させながら頬をつつく。
「アレか?おむつあててやんねーとできねえ?トイレトレーニング前?」
「ああうっ、あうっ、あうっ……!!」
……は、露骨に狼狽し始めた。
「朝一番の小便ガマンしてんのは体に悪すぎると思うわー。悪かったよ気の利かない父ちゃんで、風呂上がったらパンパース買ってきてやっから」
「うゆうっ!うゆゆぅうっ!!」
「ちげーな、パンパースはガキ用だから小さすぎるよな、アレだ、ライフリーか。それとも尿漏れパッド的なもんの方がいいの?」
「あ……あぅう……」
……言いながらの全身をまんべんなく湯で温めながら濡らし、すぐさま逃げられないように追いつめていく。
「風呂出るまで我慢できっか?出来ねーんならいっそここでホラ、ホラ」
「はぐっ……うっ、あううっ?!」
あくまで思いやりの表情を装いつつ、さりげなくの股間に手を伸ばした。
「脚開けって、椅子濡らしてもいーから。すぐ洗えるしよ、ホラここで出しちまえ」
「えっ、あ、え、ええっ……あぁ、あの!あっ、あ、あうっ……!」
……みるみるの頬は紅潮し、狼狽から困惑に変化していく。
ていうか一瞬もう素が出た。「あの」って。
「さすがにおむつから漏れたりしたらガキでも恥ずかしいだろーし、正気に戻ったとき死にたくなるじゃん?」
「はぁうっ?!あっ、んあぁッ?!」
湯で無理矢理に開けさせた割れ目を、指先で往復する。
「俺だってさすがにさァ、お前の漏れた小便とおむつ片づけるとこ想像すると涙出てくるわー、いっそここでした方がいーって、気にすんな家主がいいっつってんだから」
「あっ、ああぅっ、や、あぁ、や、めぇ……!」
探り当てた肉芽の下の尿道をつついてやると、の太股がプルプル震え出す。
「おら、ほら震えてんじゃん、やっぱ我慢してたんだろ?出しちまえって、恥ずかしいことじゃねーって、後で漏らすほうがずーっと恥ずかしいって」
「うっ、う、うぐぐっ……うっ、い、いやぁ、や、やめっ……ひ、ひ……ひいぐっ……!!」
「手伝ってやっからほら、気持ちよーく出せって……」
言いつつ、同時に親指を膣の入り口あたりにぐぽっと突っ込んでやった。
「はぐうぅっ?!」
まだそんなに充血は感じないが、ぐぷ、と爪の先くらいまではめり込んだ。
ぎりっと歯を食いしばり、流水ではないとはっきりわかる……汗を額から垂らして、それでもは堪えている。
「オイオイ、なんでそんなガマンしてんの?つれーだろ」
「あぐうっ……うっ、ううぅっ……!!」
しぶといなコイツ。
太股どころか膝もガクガク震えてるし、まんこの方も緊張してる。
医者じゃないので詳しくないが、朝から我慢してるのは間違いないと思うんだが。
「あ、俺の手にかけちゃうとか思ってる?心配すんなって、何のための風呂場だよ」
「うぃぎっ、いっ、う、うぐぐっ……!!」
軽く親指を回して刺激してもダメだ。
ちぇ、なんてこっそり唇を尖らせつつ、尿道に添えていた指を離す。
「はっ、はぁ、あぁ……うぐっ?!」
……で、が一瞬気を抜いた瞬間を狙い、今度は肉芽を指で弾く。
「出せって、出せホラ、出んだろ、銀サンの前でお漏らししろっての」
「だ……あぁ、めっ、だ、めぇえ……!」
がたがたがた、との下半身が風呂椅子の上で笑い始める。アホなタップダンスみたいだ。
その痙攣に合わせて何度も指を強く押し当て、ぐりぐりぐり……と皮ごとクリトリスを揉んでやる。
そうしていると汗なんだか愛液なんだか、硬かった膣穴もどんどんほぐれてくる。
軽く力を籠めただけでほぼ勝手に飲み込まれ、にゅぼ、なんて音まで立てた親指に感心した瞬間に。
「ほっ、ほんとにだめっ、も、もれ、ちゃう、漏れちゃうよぉ……!!」
……崩れた。
「なんだいきなり言葉発達したなオイ?いいって漏らしな、漏らせって、漏らせホラ」
「とっ、トイレいける、こ、こでしなくて平気っ、だ、だからあぁあっ!!」
「やめませんー、銀サンはのお漏らしが見たいんですぅー、おらおら」
「あ゛ッ、だ、だめっ……あっ、あ、ああああああぁっ!!」
浅く入っていた親指の腹を、グッと持ち上げたのがとどめだった。
ぴゅう、と、柑橘をつぶしたみたいにの秘処から飛沫が滴り、そして後から弧を描くように失禁が続く。
「ふあっ、ほ、あ、あぁ……あ、あぁあ……や、あぁ……」
後悔と恍惚が半々に混ざり合ったような顔で、は自分の粗相を見ている。
「で……ちゃ、った、とまん、ない……よぉ……!」
「おーお……すげ、やっぱガマンしてたんだなぁお前……」
「い、や、いやっ……み、見ないでえぇ……!いや、あぁ……!」
いやいやをする顔もどこか呆然としている。
……見るどころか、尻のあたりに添えたままの俺の手にもだだかぶりなんだけど。
俺にとってそれは嫌悪の対象ではなく、むしろ興奮を煽られる淫猥な光景と匂いだ。
「はぁっ……はあ、ああぁ……!!」
「すっきりしたか?漏らしちまったなー、ついでに赤ん坊の霊もどっか行ったなぁ」
ようやっと漏らし切って身震いしたに、へらへら笑ってやれば。
「っひ、ひどい……き、気づいてたんだ……!!」
「ったりめーだバーカ!あんなん気づかねーほうがおかしいわ!悪霊とかトランスとか馬鹿馬鹿しいからね!!」
「ううっ……う、あ、あの女の子のせいだっ、あのちっちゃい子がなんか言ったんでしょ……!」
「あ?外道丸のことか?いやあ?アイツぁ俺に除霊の仕方教えて帰ったよ?」
あとであの手紙捨てとかねーと。
「最初っからわかってたけどよー、乗ってやらねーのもかわいそうじゃん?オメーが必死こいて捨て身の芸してんだもんよー」
「芸じゃないっ!銀さんの……銀さんのっ……バカッ!!」
涙ぐみながら怒鳴り散らすの泣き言につきあってやるのは、もう少し後だ。
「それ人んちの風呂で小便して言う台詞じゃねーよ、ほら流してやっから脚開け」
「銀さんがさせたんでしょっ!わ、わああっ!」
ぐいっと柔らかい太股をつかみ、強引に割り開く。
シャワーの流水で脚も尻も全部濯いでやると、はうつむいてだんまりだ。
「ほらケツ上げろ、このまま入れっから」
「えっ!?ちょ、このまま……?!」
「ったりめーだろ、お前コレここで終わりと思ってんの?シモの世話してやった銀サンへの感謝はナシですかオイ」
「世話って、感謝ってぇ……だ、だって……んっ、や、おしりっ、やだ、やだっ……!!」
やだやだ言いつつ、尻たぶを掴んで手のひらでぐにぐに揉むと腰が浮いていく。
水に濡れた尻と、水よりずっと粘着質な液体にまみれた粘膜。
単純な視覚からの興奮も十分だし、コイツがここでさっきみっともなく失禁していたのだと思うと背徳感も擽られる。
股間の熱は一度も触っていないのにしっかり硬くなっていて、今すぐにでも押し入ってやりたい。
が。
「オイ、おねだりは?ごめんなさい、ちゃんとハメてくださいって言わねーの?」
「えっ?!それは……あの、だって……え、えええ?!」
「言えよ、おら、おら」
「んやあぁうっ……!」
腰を後ろからに押しつけ、尻の谷間に肉茎を添える。
そのまま軽くかたかた動いてやると、途端にもぞもぞ震え出す。
「うっ……う、銀さん、ごめんなさい……!」
「なにが?なにを謝ってんのお前は」
「い、意地悪……!ご、ごめん、なさいっ、手間のかかるあかちゃんになっちゃってごめんなさぁい……!」
「んー……」
亀頭の先っちょで、ケツのあたりをぐりぐり。
「はぁうっ!え、えっとあの、あと……!あの、ぎ、銀さんに、お……おしっこ、おしっこさせて、もらって、ああぁ、ご、ごめんなさいっ!」
「させてもらってごめんなさい?ちがくね?」
「ぅえう?!ち、違うって……あ、あの……」
「させてもらったっつうことは、お前アレイヤじゃなかっったんだろ?どーだったの?」
「え……えと……あの、で、でも、でもぉ……!」
膣口にあてがいかけた肉茎の先っぽを、一度すっと離そうとすると。
「……き、気持ち、よかったぁ……!銀さんにおしっこさせてもらって、気持ちよかったの……!よかった、ですぅ……!!」
打てば響くってな具合だ。これだからこいつは。
「じゃあごめんなさいじゃねーだろ」
「っあ、ありがとう、ありがとうございますっ!お、おしっこ、ありがとっ……ん、んんんうぅうーっっ!!」
期待通りの感謝を、懇願の瞳で訴えたに特上のご褒美をくれてやる。
……いや、俺が我慢できなくなったのもなくはないけど。
「はあぁ……ッ!入った、銀さんのっ……!」
「お……っふ、てめ結構ためこんでたろっ……ぎちぎちしてんぞ中……ッ!」
「ぎ、銀さんのせい、全部っ、わ、私がやらしーの、全部ぅっ!!」
「あーあーそーな、銀サンのせいな、俺どうせ極悪人で死んだら地獄に堕ちまぁす……ッつんで、満足か、ほら、ほら」
「あいぁあっ?!い、きなりうごいちゃだめっ、おくっ、奥押さないでぇえっ!!」
の腹を抱え込み、体ごと押しつぶすように覆って出し入れしてやると堪らないようだ。
それはこっちも同じなんだが。
空気も入る余裕がない程に密着して、何度も何度も腰をぶつける。
「満足かって、は、聞いてんの!」
「はうっ、はあうっ、はあぁあっ!!あぁ、う、まん、ぞく、ですぅ……わたしっ、銀さんとエッチできて、ぎゅーできて、まんぞ、くっ、うぅうぅっ……!!」
「っ……ならなんであんなサル芝居したんだっつうの、元々おめーは世話かかる赤ん坊みてーな女だろ……っ、うお?!」
ぎゅいいっと、まるで俺を絞り上げようとするかのようにの肉壁が蠢いた。
「あぁあっ、は、ごめっ、なさっ、で、でもぉ、私っ、んっ……う、でもぉ、もっと、もっともっと、ほしかった、のぉ……!!」
「あん……?!」
熱い穴に負けないように、勢いを付けて中をかき分ける。
「やらしーことのときじゃ、なくってぇ、ふたりっきりの、ときでも、なくてぇえっ!はっ、あ、ああぁあっ、た、立ってらんないっ、銀さあんっ!」
「……っ、おら平気だって、ほら、俺支えてっから」
「んぐっ……はぁ、ああぁあ……!!」
の足下がふらついてつんのめっても平気なように、もうその腰を浮かせてしまう。
腰元に回していた両腕を片方胸元にやって、の体をまるごと抱き上げる。
「あぁあ、だっこ、うれしっ、うれしい……んっ、私ばかだぁ……こんな、これ、こんなときだけでうれしーのに、うれしーのがずっと続いたら……頭ヘンになるうぅうっ!」
「さっきからなに言ってんのこの子は……ったく、もうヘンだろーが、お前十分ヘンだよ、イカレてんだろ……!」
「いっ、あ、いかれ、てないよぉおっ……!ひどいこといわないれぇえ……!!」
「イカレてるっつの、こんな中ぐちょぐちょさしてっ……!いんらーん、へんたーい、やーい……っう」
「いやあぁ、いわ、ないでっ!うれしーの、そういうのぜんぶうれしいのぉおっ!いや、だめ、いくっ、いくううぅううぅうっっ……!!」
「おあっ?!て、め……!」
ただでさえ不規則に痙攣していた膣穴が、一気に締まり上がる。
ああイキやがったこの、と思う間もなく俺も道連れで絶頂に持ち込まされた。
「はぁ……ふっ、う……うぅっ……ん……!」
震え続ける体をゆっくりと床に下ろしてやり、その尻に手を添えると、また大きな痙攣。
「……落ち着いたか?」
「はぁうっ!い、今、だめ……かきまわしちゃやだ……!やだっ……!」
「ここで洗ってやっから、ほら中出しザーメン全部落とせ、ふんっていきめ」
「い、今は、だめ、びりびりしてるからぁ……!はぁ、はぁ……あぁあ……ん……!」
充血して開いたままの股ぐらから白濁がこぼれるのを手伝ってやろうとしたが、けだるく尻を振られて嫌がられる。
「ばかなの、こういうときじゃなくて、ふつーのときも、銀さんと、わたし……みんなよりずーっと……」
「…………」
「はぁ……あ、私は、銀さんの女ですって、自慢したくて……そんなの、あぁ、は、あぁ……意味、ないって、今、また、わかった……馬鹿だぁ、私……」
「……自慢したくてあんなアホやったって?」
「……うん……でも……いらないね、そんなの……」
えへへ、と満足げに笑うに、何とも言えない気持ちがこみ上げてくる。
「こーいうときにいっぱい幸せなだけで満足なのに……普段も幸せだったら、私、ヘンになっちゃうね……」
「元々ヘンだろてめーは」
「ヘンにしたの銀さんだもん……はぁ、んっ……!」
何度も何度も、いちいちの言葉がコキーンコキーンと俺の中に響いていく。
それ以上何か言わせるのも癪で、いきなりシャワーを浴びせてやった。