「強壮剤として有名なオットセイの肝を贅沢に配合したドクドクスペシャル300Mgが今ならたったこの価格で……はぁ」
ふとめくった中綴じの雑誌の裏面の広告に、はは、と小さく笑いが漏れた。
オットセイの肝か。懐かしい。
昔粉にしたやつを飲んだことがある。
性欲増大効果なんて当然ながらなかった。腹を下して終わった。
「いつの時代もみんなのロマンだよなあ媚薬っつうのは」
こんな胡散臭い広告でも利益が出てるんだろう。
倍安倉なんかでも思うが、血液がどうとか脳の信号がどうとかいう効果以前に、
「これさえあれば」という思いこみが大半だ。
人間なんてそんなモンだ。
緊張する相手を前にして、懐に一錠忍ばせておけば飲まずともだいぶ気が楽になる。まじないレベル。
「思い込みでなんとかなるも……ん」
ふと、ひらめいた。
「あったかな、アレ」
冷蔵庫の中を確認すると、あった。
ちょうど湯呑み半分くらいの量が残っている。
「……へへ」
これはヤバい。ヤバいぞ。
犯罪級に楽しいことを思いついてしまった。
「ふふん〜!ふふふふ〜」
が皿を洗いながらハミングしている。
ご機嫌なことだ。
四人で分けて食べたケーキのクリームがついたトレイ、
誕生日らしく唐揚げと芋のフライを盛り上げていた油汚れの大皿も、一人でちゃきちゃきと。
「ぎんさんおたんじょうびおめでとう!」と、朝起きたらが台所で鶏肉をタレに漬けていた。
「えっ、今日銀さんの誕生日だったんですか」
とやってきた新八と、山盛りになった食材に目を輝かせた
神楽を交えて「おたんじょうび会」になった。
歳取らない設定で誕生日ネタはどうなのとか、
年代的にもう正直祝ってもらいたくないんだけどという話は置いておいて、お手製のイチゴレアチーズは美味かった。
「えへへ、銀さん!」
皿洗いを終えて、ニッコニッコしたが俺にしがみついてくる。
「お誕生日おめでとう!なんかパーティーみたくなってたけど楽しかった」
「あんなん楽しいかぁ?パーティーっつったらアレだろ、ビンゴやって最後にはお菓子セットもらって帰るんだ」
「そうなの?私ねー寺子屋にいた頃ね、お誕生日会には一回も呼んでもらえなかったし、自分の誕生日は家族にも祝っ」
「あーああああいきなり重苦しい設定出すんじゃねーよ!」
「むぐっ……ふふ」
胸板にの頭を押しつけると、ふふふ、なんて浮かれたまま笑っている。
抱きしめたままぐりんっと寝室の方に方向転換すると、は物わかりよく、それでも視線を逸らしながらうなずいた。
人払いも済んでいる。
だって二人きりになったあたりでここいらまでは予想できていたんだろう。
「お誕生日の銀さんとふたりっきりで、きゃああ★」程度には。
「ん……銀さん?」
裸にひっぺがしたを布団に寝かせると、そのままのしかかりはせずに戸棚に手を伸ばす。
悪魔的な発想の際に見つけておいた「アレ」を違う容器に移し変えただけなのだが、
ガラス瓶の中で蜜色に揺れる様子はいい感じに胡散臭い。
その瓶と、ついでに新しく買った絵筆も。
羊毛のやわっこいヤツだ。一本300円もしやがった。
筆先のノリをおろして、クルッと布団に向き直る。
「えっ…ぎ、銀さん?」
「へへっ、よォ」
「え、え……?そ、それなに?」
思わず口許がつりあがる。
そうそう。おめーはそれだから面白れえんだ。
「だいたい予想つくだろ」
「え、えええ、あの、あのあの」
襦袢をササッと胸元にたぐりよせて逃げ腰になったに、今度はしっかり覆い被さる。
「せっかく買ったんだし試させてくれって、なあなあ」
「買ったってなによ、なにそれ?!」
「体に悪いモンじゃねーよ、銀サンがお前の身体に悪いことすると思うか?」
「そ、それ、だって…それ…あの」
瓶に視線を釘付けにして、が俺の下でモジモジ動き回る。
「……じゃあこうしようや。これはこうな、ここに置いとく」
下がる口許に比例して目元は垂れ下がってしまう。
まだまだこんなもんじゃないし、と逸る自分を諫めながらも瓶は枕元に。
「こっちだけならどーよ」
筆をくいくい、指揮棒みたいに振りかざす。
「それは……あの……っひ?!」
が一瞬目を逸らしたときを狙って、あくまで繊細で柔らかい筆先でへそのあたりをスッと撫でる。
驚きと一緒にびくっと跳ねた身体が、擽りを繰り返すとぷるぷる震え出す。
前に羽根でくすぐってやったときもこんなだったような。
くすぐったいのが気持ちいいとは限らないだろうが、
同じ部分を何度も筆先で往復されるとたまらないものがあるんだろう。
「ほらほら手ェどけな、下、下こちょこちょしてやっから」
「や、めっ、や…は、く、くしゅぐった、あぁあ……おっさんくさいってばあぁっ!」
「オッさんてこれが?筆が?」
「そう、そうそう、今の人そんなん絶対しなっ……んんっ!」
問答無用で押さえ込んで、膝の裏から太ももまですーっと。
そうするとわりと簡単に脚は開いて、浅い陰りまでたどり着く。
喜んでるよこいつ。最近エロスイッチ入るの早いな。
「はっ、あ、あぁ……やぁ……!」
「意外とイイもんだろ?こりゃあアレだよ、古きよき責め方つうか」
「んっ…ふ、古い……?」
「そそ、こーやって筆で全身至る所撫で回してやったりよお、若い盛りのはンなまどろっこしいことしねーよ」
「そっ、そうな…の……っ?ん、んんっ……!」
「ほォらよしよし、銀サンと付き合えてよかったな?こんな気持ちイイの、ガキんちょ共はしてくれねーんだよ?」
「きもちっ……いい……の……?」
なでなで。
浅い茂みに覆われてはいるが、執拗に上下でさすりあげるとふっくらした土手が震えるのがわかる。
「はあぁっ?!開かないで、そこ、開かないでぇっ……」
「あん?パックリしねーと中いじれないじゃん」
「ふ、筆、は、いいから、それはいい、からぁ……!」
「んーだよもォ銀サンの筆さばきでのクリ豆をピカピカに磨きあげてやろうっつう心遣いが」
「ちょっちょっなに言ってるの?!」
下世話な言葉遣いをすると、耳まで真っ赤にしたががばっと起きあがる。
その鼻先に……ただのメープルシロップが入った瓶をつきだしてやる。
「次はこれな。銀さんのとっておき」
「そ……それ……あの」
「イイ匂いすんだぜ?甘ーいの。溶けそうなくらい甘ァい匂い」
そりゃメープルだもん。
「これなぁ、たっぷり垂らしてしみこませっとすげーの」
ホットケーキにバターと一緒にかけるとたまんねーよな。
「そ…それ…その、あぶないあれ、なの?」
「いや、危なくはねェよ?あっ…ただなー、病みつきになるヤツはいるかもな」
俺も病みつきだ。蜂蜜よりクセがないから直接吸ってもイケる。
「あの……えっと……」
「なァ今日誕生日じゃん?銀さんの誕生日じゃん?ちょっとはさぁ、な?」
「でも…く、クスリなんて…」
「クスリじゃねーよ」
メープルシロップだって。
「だって……へ、変にならない……?」
「変じゃねーよ。俺好みの甘ったるぅい女になる」
「……も、もし……へ、変に、なったら、やめてね?すぐやめてね?」
また勝ってしまった。敗北の味を知りたいってもんだぜ。
「ほ……ほんとだ、甘い匂い……」
「だろ?クラクラしちゃうだろ?」
筆先に付けたメープルを鼻先に突きつけてやると、おっかなびっくりに鼻腔をすんすん動かす。
「ベットベトに塗ったくってやっから」
「う、うん……んっ……!」
手始めに絵の具の代わりに蜜が滴る絵筆でまだ引っ込んだままの乳首の周りをくるくる転がして、
蜜でまとまった筆先で先端のくぼみをつっつき回す。
「や、やだ…べとべと…」
「べとべとがいいんじゃん」
「な、なんか…その、こういうのって、ふつうもっとぬるぬるしてるんじゃないの?」
「こういうのってなに」
「だから…ろーしょっ……ん、うっ、はぁ、あはぁあ……!!」
「お、出てきた出てきた」
繊毛と蜜で弄られて、だんだんと胸が充血してくる。
乳首がぷくりと膨れて、メープルのてかりと一緒になると飴細工みたいだ。
「……うまそ」
「んひぃっ?!」
たまらず舌を寄せて、たっぷり塗った蜜ごと乳首をしゃぶる。
すかさずもう片方の乳首は、短めに握った筆でメープル漬けだ。
「はぁっ…あ、あ、それ……舐めても平気なの……?」
「あ?平気じゃなさそうに見えるか?」
「はあわっ、あ、しゃ、しゃべらないでっ!息、息……!」
べろべろと、いつもやるよりずっとみっともなく、犬みたいに音と鼻息を振りまきながら舌を出す。
それはもちろん乳房への愛撫もあるが、ベロ先に甘い味が触れるとついつい勿体ねーな、なんていう気持ちも働く。
「ぎ、銀さん、いつもより、なんか、息っ、荒い……!」
「そりゃ…ん……これのせいかもな……」
「…………っ」
俺、嘘は一度も言ってねえぞ。
「……ぎ、銀さぁん……」
もう片方もしっかりちゅっぱちゅっぱ。やっぱり勿体ないし。
しばらく言葉もろくに紡がずに舐め回すと、がカクカクと下半身を押しつけてきた。
「お……お薬……し、下、下には塗らないの?」
「あん……?!」
「な、なんか……その、わ、わかんないけど、それ、効いてる、のかも……」
うっかり吹き出しそうになったがこらえて、代わりに「だろぉ?」なんてしたり顔で言ってやる。
「し、下は……それ、塗ってくれないの……?」
「ほー?欲しくなってんの?」
「う、うぅ……う、うん……」
かわいいなおい。アホ丸出しだし。
「でもそのカクカクってのいいな、もっぺんやってくれ、ほら、俺めがけて腰振ってみ」
「う……ぅくうっ……!」
やだ、が返ってくると思ったら。
「ふぅ、ゥ、うぅ……ん、んぅ……う、ふっ……」
熱っぽく尻を掲げて、汗ばむ太ももと陰部がゆさゆさ。
にやけながらそれを黙って見つめると、上の口もポカッと開いて涎を垂らし始めた。
「おォ……」
「なんか、は…ぁ、せ、切ないっ、の、ジンジンするぅ……!」
騙されやすすぎるぞ。
さすがにちょっと自分が悪いことをしてる気分になってきた。
「ハイハイ、下のクチにもたっぷり塗ってやるから」
「下のくちって、さいあく……」
真っ赤な頬と腫れぼったい瞼で震えるが毒づくが、脚は反対にパカンと開いた。
さっきはまだ乾いていた陰部が、筆をやるまえからしっかり湿っている。
「エロ子ちゃんだなーホント、これ下に塗っちゃったらヤバイんじゃねーの?垂れ流しで喜んじゃうんじゃねーの?」
こっちが釣り針を垂らしてやると。
「んっ……う、い、いい、それで、いい……」
見境なく食いついてくるもんだから。
「ほらじゃあココな、たっぷり飲ませてやっから」
「っ、う、うぁあぁ……!!」
片手で割れ目を開く。
包皮に隠れたままのクリトリスが恥ずかしげにぴくぴくしているところに、メープルを染み込ませた筆。
「はぁ、あぁあぁっ!あぁあぁあ、薬っ、あ、熱いの、これ、ひゅ、ぐ、すぐっ……!」
「……ははっ」
何度も何度も、筆先で肉芽の包皮を下から剥きあげては上から撫でてかぶせ直し、蜜よりいやらしい愛液が垂れてきたらそれをすくい上げる。
「イキそーなんだ、もうイッちゃうかぁ、これなー、んー」
「ひうっ、う、ううう、すごいの、これ、すごいのっ、おくすりっ、べとべとっ、されるたびぃ……!」
「これ薬なんかじゃねーんだけどなー」
「え、なにっ……んぅっ?!やめ、やめやめえぇえぇええっ!!」
クリトリスの根本まで絡めた筆をぐりんっとひねると、はひときわ大きく震え上がった。
いわゆる気をやるってやつ。いや言うまでもねえが。
「はっ、あ……あ、つ、つづけ、て……ねっ?」
思わず舌なめずりしながら、瓶をまるまる自分の肉茎にあけた。
すぐさま俺の下半身は甘ったるい蜜にまみれて、自分の手すらも滑る。
「入れっぞほら、バカヤローが!」
「なぁっ、なんで怒っ……ん、んうぅぅっ?!」
シロップの気泡が一気につぶれてこすれる音がする。
いきなり奥まで突き込んだのに、は悶えるばかりだ。
「ふぁ、深っ、きた、んんうぅっ……!」
「っ、あ、あー、あの、お前あの、アレだ……!」
「あのねっ、銀さ、あのね、き、きもち……イイのぉお……!」
「っそれ、な……」
「どんどんよくなっちゃうの、奥から奥からじゅんじゅんしちゃうのっ、銀さん大好きになっちゃうぅっ!」
「あ?!今まで好きじゃなかったのかぁ……?!」
ぶるぶる震える脚の間に何度も腰を叩きつけるが、の言葉はやむことがない。
「ち、がうの、銀さんがぁ、こ、これいじょっ、好きになっちゃったら、いやらしくなっちゃったら、嫌われるぅぅっ……!」
「なんで…?なんで嫌われるって……?」
「い、いやらしいせいでぇ、銀さんよりずーっと、ずーっとおぉ、節操がなくて頭がわるくてダメな女だからぁ!」
「てっめ……!」
お互いの身体の間に指を滑り込ませて、指先も蜜にベトベトにされながら陰毛をかきわける。
「わ、わたしぃ、銀さ……っあ?!」
また無駄なことをしゃべりそうになるの肉芽を、指でつぶしてやる。
「いきなり暗い設定もってくんじゃねー!エロいことの時に無駄なこと考えんなや!」
「ら、らって、これ、こんな、くすり、くすりでえろくなってる、けど、クスリなんて使わなくても、ずっとずーっとえろいのよ?!」
「わかってるよんなこたぁ」
「なっ、なんでわか、って、るっ、の……?!」
くそ。策士策に溺れるというのはきっとこんな気分に違いない。
露わにしなくていいモノを掘り当ててしまった気分。
「も、もうだめなの、変に、変になる、だめ、あ、だめなのにっ……」
「ダメじゃねーっ、ての、変になれほら、変な顔見せろっ、お前のまんこヅラっ」
「なんなのそれぇえっ、あァ、あ、ひっ、ぃ、あっ、あ、あぁぁ……!」
「変になったらそこそこ面倒みてやるから、あー、あーもう畜生、バカヤロ……!」
ああもうなんで自分がフォローに回らなければいけないんだ。
「いっ、く、いくうぅうっ……!!」
唸るみたいな声を上げて、がひときわ大きく震え上がった。
それを聞きつつ、俺もしっかりしがみつく。
うんと中に。たっぷり奥に。
何だか美人局に自らハマッてしまった気分だ。
高くつくぞこれは。
こんなに銀サンを骨抜きにしやがった罰は時間をかけてちびりちびりっと払ってもらおう。
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銀さん誕生日おめでとうございますぐひい!