小ぶりの土鍋の中で煮立てた米と卵のお粥をひとさじ、すくって味見する。
辛すぎず、薄すぎずの淡い口当たりに安堵して、ひとりうんうん頷いた。

「銀さん、大丈夫?」

襖を開けながら問いかけると、盛り上がった布団がわずかにモゾモゾ動いて、沈黙。
中途半端に「く」の字を描いた銀さんの身体は、掛け布団をしっかりと抱き込んでいる。

「ご飯食べられる?」
「……いらね」

傍に寄って土鍋を載せたお盆を差しだそうとしても、布団越しのくぐもった声が聞こえてくるだけ。
その声もいつもの気怠いのに力強いものではなく、へろへろっとしたものだ。
……ただの夏風邪で、これくらいで銀さんは死んだりしないとわかっていても、なんだか胸が痛んで仕方ない。

「暑くない?ちょっといい……?」

頭からすっぽりと銀さんを覆う布団を持ち上げる。
とたんに中に籠もっていた熱気と、悪い汗の匂いがむん、と漂った。

「銀さん汗べっとり……あ、また熱様々シートはがした!」
「うるせーよ、もうそれうぜーんだって、汗ですぐずれちまうし……」
「暑くないの?」
「あちーよ、でももうアレだ……あの、なんだっけ……」

そう言って、銀さんは頭を自分の腕で抱え込む。
寒暖よりも、とにかく目や耳に入ってくる情報を減らしたいのかもしれない。

「銀さん、薬飲もう。お粥作ったから食べて」
「あー…いらねーって…薬だけくれ」
「だめ。身体によくないよ」
「どーせホラ、アレだろそんなん…空っぽの胃袋に薬ブチ込むと悪いとかそんなんだろ」
「わかってるじゃん。一口でいいからごはん…」
「ダイジョブだって、俺ァ薬どころか鉛玉ブチ込まれたことだってあらあ……」
「あのね、それだけじゃないんだよ」

ぼそぼそ言いながら、銀さんは上半身を起こして水のコップと薬の包みに手を伸ばした。
……気が引けたが、それをかわして薬を取り上げる。

「ご飯食べた後は胃が吸収しやすくなってるから、薬もすぐちゃんと効くの!これ銀さんが教えてくれたんでしょ」
「あー……そうだっけ……」
「そうだよ。はいほらアーン!」

……なんだか私、母親みたいだ。
そんなふうに考えかけて、さらに思い直す。
いや……母親じゃなくて、そんな子供の頃じゃなくて、もっと最近こんな人間を近くで見た気がする。

「おお…味わかんねえ…」

ずずず、とお粥をすすった銀さんが、口を軽くもそもそさせながらそんなことを言う。

「それ食べたら薬飲んで、ポカリ飲んで、トイレ行って寝る!ね?」
「あんだよお前……どこの母ちゃんだっつの……」

あ、そっか、と銀さんの一言でふと理解した。
私のこの世話焼き口調は、いつもの銀さんに似てるんだ。

「お前アレだよ……あの、あー」

また一口、ずるっとお粥を啜って銀さんが顔をしかめる。

「そういうの男に嫌われるからな…口うるせー女子とか一番イヤなんだよ男子高校生の日常的には」
「だまれおっさん」
「いやこれ嘘ついてねーから……そんなんに寄ってくるのマザコンだけだから」
「お母さん好きなら幸せな家庭じゃん」
「世間知らずなぁお前…それお妙に言ってみ?バカにされっから」

だるぅく、もう一口。
本当に食事がつらいらしく、銀さんは熱を振り払うような動作で茶碗とレンゲを置いた。

……その後薬をお水で飲ませ、スポーツドリンクも飲んでもらう。
これは身体が塩分を欲していたのか、ボトルに直接口を付けてぐぎゅぐぎゅ流し込んでいた。

「だいぶ楽だわ……」
「お医者さんからもらった薬はすぐ効くね…あ、お布団から出ちゃだめ。薬が切れたらまたつらいんだから」
「おめーホンット母ちゃんキャラ……あー」

そう言って銀さんは、枕元に正座する私をじっと見つめる。

「……ちょい、手貸せ」
「ん……手?」

言われて右手を出すと、銀さんの腕がぬっと手首をつかんできた。
導かれるままになると、その手はぴたりと銀さんの頬へ。

「あーきもちいわ…お前の手ェ冷たくて気持ちいい……」
「きもちいって…もう…」
「へへ…手の冷たい女は情が濃いって言うじゃん…?」
「温かい女は薄情なの?」
「あーそんな揚げ足とんの。へー。お前も言うようになったじゃん」

……薬がきちんと効いているのだろう、さっきよりははきはきとしゃべる銀さんに、こっちも気持ちがふやけてくる。

「お前足もつめてーんだよな…ひやっひや」
「わうっ?!」

ぼんやりしているあたりに突然膝を撫でられて、思わず飛び上がってしまう。

「へへ……びびってやんの、うりうりうり」
「ちょ、く、くすぐったいってば……!」

着物の上からとはいえ、膝の皿を撫で回されるのはなんとも…こう、くすぐったいというか、「こそばゆい」。

「冷えてるよなー、何で夏の夜でも足つめてーんだろ」
「……気にしてるのに……ていうかわかんないでしょ、服の上からじゃ」

そう言いつつ、いたずらを繰り返す大きな手から逃れようと正座を崩しかけると、銀さんが布団に包まったままにじりよってくる。

「……へへ」

ほんのり紅潮する頬と、ぽってり重たい瞼が私を見て、微笑む。

「銀さん、寝ないと……」
「おー寝るよ?寝るよ俺。たださー寝っぱなしな上に風邪のせいか肩いてーんだよ」
「え…揉もうか?」
「いやいやそれには及ばねえ」

……そうして、銀さんはぬっと身体を起こすと、私の膝の上に頬っぺたを乗っける。

「こーしてくれりゃあいいから」

普段よりずっと弱気な銀さんからの、お願い。
「母ちゃん」で通すなら、「アンタふざけてないで寝な!」で一蹴しなくちゃいけないんだろうが。
……いや、でも私べつに母親じゃないし、そんなことしなくていいんだし……。
身体と布団の位置を揃えてきちんと膝枕の姿勢になると、
最初のうちこそへへへ、なんて言って笑っていた銀さんは…やがて小さな寝息を立て始めた。
ふご、とやや鼾の混じった呼吸と一緒に、銀さんの頭が小さく揺れる。

……なんだか本当に、安堵した。
「勉強はからっきし!だけど風邪も引いたことがない健康優良児!」
……なんていう少年漫画のお約束にも当てはまらないんだよなぁ、この人。
勉強はできないにしろ金が絡む計算はビタ一間違わず、口が達者で広く浅くのヨタ知識。
喧嘩も強い…と思うが、「なぐるける」は最終手段だ。
口先だけで相手を丸め込んで得をできるなら、それに越したことはない。
そして甘いモノもお酒も大好きな不摂生が祟って、
たまーに病気なんかすると変に引きずる。

……いやこれ、ただの「マネーの亡者で駄弁ってばかりのおっさん」略してまだおじゃん。

「でも……好きなんだもん」

誰にでもなくつぶやきながら、銀さんのおでこを撫でる。

「熱は…下がってきてるかなぁ」

体温計は、この間定春が踏みつぶしてしまった。
指から伝わる温度に頼るならば、最初の時よりは平熱に近いような。

「…………」

銀さんはやすらかな寝息を立て続けている。
ちょっと買いに出るのもいいかもしれない。

「……あ?どこ行くんだよ」
「あれ」

そう思って膝を崩そうとすると、銀さんの瞳がぱちっと開いた。

「どっか行くの?」
「うん、ちょっと足りないもの買ってくるよ。晩ご飯もさ」
「えーーーー」

……銀さんは、私の膝の上で頭をぐるんと回転させて、股ぐらに顔をうずめてきた。

「お前こんな状態の銀サン置いてスーパーいくの?タイムセールでオバちゃんと押し合いへし合い?」
「……すぐ帰ってくるよ」
「やだ」
「ちょっと」
「やーだやだ」
「ちょっ……ちょっと……!」

まるで犬のようにふんすふんす、と鼻を鳴らして、銀さんが私の太股と股間をぐりぐり顔で押す。

「わ、ちょわ、わわわ、あっ、は、いやちょ、くすぐったいっ!」
ちゃァん、銀サンお熱が上がっちゃったみたいですぅ」
「やめっ…や、わ、わかったから……!」
「わかってねえよ、お前ぜってーわかってねえよいっつも」

荒い鼻息を振りまくのをやめたかと思うと、今度は気だるげな唇がぱくんと手の指を食べにきた。
……人差し指で感じた粘膜は、いつもよりずっと熱い。

「ゆ、指汚いからだめっ……ちょ……」
「たまにさ、こーやって……」

腫れぼったい瞼が瞑られて、それなのにちゅぱちゅぱと指をしゃぶる舌も唇も離れてくれない。
……きっと子供がおしゃぶりを吸うときはこんな顔をしているのだろう。

「あー爪がスリ減ってんなぁとか、ささくれ出来てんじゃんとか、指一つとってもてめーのこと心配で心配で……」
「ちょ…う、うぅ……」
「でも大人ぶってないとダメじゃん?口うるさく付きまとって気持ち悪がられんのもヤじゃん」
「き…もち、わるくないから……」
「あん?気持ちいいか?」
「そうじゃなくて…ど、どうしてこんなことに……?」

風邪引いてるんでしょうが、銀さん。
いくら自分が節操のない人間だとしても、さすがに病気で苦しんでいる銀さんを悪化させたいとは思わない。

「そりゃお前俺が風邪引いてるから」
「だ、だからなんでぇ……!」
「お前銀サンが辛いのヤだろ?なら共有して一緒に苦しもうぜぇ」
「ど、どうやって……?」
「ほらあれだ粘膜感染ってヤツ、ほらほらこーやってベロ絡ませてさ」

言うなり、銀さんの舌先が私の手の甲を這う。
にゅるりと舌に回り込まれたと思うと、柔らかい下唇が吸い痕を付けようとする。

「うっ…う、うう……」

……いや、そのまままるで魔のローラーに巻き込まれるように、着物の帯に手をかけながら布団に入ってしまう自分がすごく嫌だったのだけれども。

「なーんかさ、鼻つまってっと頭ボーッとしてあんましエロいこと考えられなくなんだけどさ……へへ」

掛け布団の代わりに私を抱きしめながら、銀さんは満悦そうに笑う。
身体が熱い。汗も引いてない。

「熱だけだとなーんでかなァ、フッと苦しみが急にエロい重さに変わるんだよな……」
「え、えろい重さって……」
「さわってみ」

言われて、布団の中で手を掴まれる。
そのまま押し当てられた甚平の布地は、びっくりするくらい張りつめていた。

「お……おおきい、ね?」
「おう」
「……なんでこんなになってるの……?」
「なんだよ、言わせてーの?」

へらへらいやらしく笑う銀さんに、自分の首から上がぼうっと熱くなる。

「そのまま触ってな」
「う、うん……?」
「動かさなくていいから」
「そ……そう……?」

……やっぱり風邪だからだろうか。
さっきから、銀さんが私にするのはあくまで「お願い」だ。
たぶん逆らったとしても怒ったりしない気がする。
それが…その、自分に選択権がきちんとあるというのが、
いつものいじめられながら、それでも愛されながらする「やらしいこと」とは違うので、変に硬直してしまう。

「ふあっ……?!」
「ちょっと…やっぱ本番はできそうにねーかも」
「ほ、ホンバンとか言わないで!」
「お前許してくれる?俺だけイッても、途中でへばっても怒らねえ?」
「そんなの……」
「お前もよくなりたい?」
「それは…その」

なりたいけども。

「……」

口ごもる私を見て、銀さんがにやっと笑った。
……体調など関係ない、いつものいやらしい顔。

「なあ…ちょっとホラ、いっぺん離しな?」
「え……ちょわ、あわわっ!」

甚平越しの肉茎に触れていた手をひっぺがして、銀さんの手がおおざっぱに、私の下着をごにょごにょやりだした。

「じ、自分で脱げる…から」

布団の中でもぞもぞと動いて、自分で下着に手をかける。

「へへ、スッポンポンなー。俺はちゃーんと全部着てんのに、お前だけ」
「は、恥ずかしいこといわないでっ!」

この。
これで健康だったら、銀さんも脱いでよ、なんて恥じらい任せに怒りたいのに。

「んでさ、ホラそこ、そこ」
「う…うう?」

銀さんがさっと、枕元を指さす。
モジモジしながら私が布団から出ると、銀さんはぐるんとうつ伏せに。
枕にあごをついて、私を楽しげに眺めている。

「なあ、銀サンオナニーするからオカズ提供して」
「え」

言うなり、銀さんの右手が蠢いた。布団越しでもわかる。

「風邪っぴき銀サンのために、そこでエロいことして」
「えええええ?!」

ふんっ……と、安堵したような鼻息を漏らしながら、銀さんがこっちをじっと見る。

「お願い」
「で、でも…えろいことって……?」
「銀サンが喜びそうなこと」
「わ、わかんないよ……」
「お前ならわかんだろ」

……我ながらバカというか。
乗せられているとわかっているのに、その言葉でなんだか…変に嬉しくなってしまった。

「え、えっと…その、こ、え、えっと……」

前にぴったりと当てっぱなしだった両手を、ほんの少しゆるめる。

「ぎ、銀さんは…私の、は、恥ずかしいとこが…好きだよね?」
「おー、さっすが。わかってんな」

へらぁ、とさらに天パの顔がだらしなくゆるんで、目尻が下がる。

「見して見して、ほらほら頼むわ」

まだ?と言わんばかりに、銀さんの腕がもぞもぞ動いた。
つまりその…いつでも肉茎をしごけるように。

「う、うん…あの、ぎ、銀さんは…これ、おかず、に、してくれるんだよね……?」

おう、と、間を空けずに返事。

「ま、前も言ったけど…私、ひ、ひとり…で、その、ええと……え、えーっと!」
「……」

……銀さんの視線が、ジッ、と私の乳房のあたりに留まる。
私の声を聞き漏らすまいと、肌の蠢きひとつ見逃すまいと注視される。

「ひ、ひとりエッチ…する、ときは…ああ、あと…えっと…ぎ、銀さんと…する、とこを……」
「……で……?」
「あ、あの……ドキドキしてきたら、あの…これ……」

瞼は閉じて、逆に陰部を覆っていた手は静かに開いて。

「こ、ここ、熱くなってくるから……」
「ここ……?ん……どこ?どこよ?」
「だ、だからここぉ……!」

目はきつく瞑ったまま、指先の感覚を頼りに割れ目をぐっと開く。
なんだかんだと言いながらも興奮して火照る肉が剥き出しになるのがわかる。

「見えなーい」
「み…見えてるでしょ…!」
「だからどこが?」

この人はもう。
私に恥をかかせたらたぶん天才じゃないかなぁ、なんて頭の悪いことも考えながら…ごくっと唾液を飲んだ。

「こ、ここ…くり、くりと、りす……ここを…」
「へー……そこを?」
「こ、こうやって…あの……ん……!」

人差し指でツンと、肉芽のあたりを撫でる。
悪寒にも似た震えが走って、頭にちくりと突き刺さる。

「ふ、うぅっ……!」

……なんとなく目を開いたら、銀さんの舌なめずりが視界に入った。

「……お前、どーいうときに一人ですんの?」

私から恥ずかしい経験と、いやらしい過去をとことん引きずり出す気でいる。

「そ、そんなの……え、エッチしたくなったとき…じゃないの……?」
「ん……?!ないのって何、お前のことじゃん、わかんねえの」
「だ、だって…!わ、わかんない、気付くと…なんか……!」
「え、気付くといじってんの?それやばくね?」
「違う!そういう意味じゃないの!ああもう、わ、私…ん…!」

そのまま指をぐり、と移動させると、自然と口から吐息が漏れた。

「ぎ、銀さんのこと考えてると…したくなる…けど、でもぉ…ま、毎日銀さんのこと考えてるし、毎日って言うか毎時間っていうか……そしたら……ぁ」
「…………」
「頭がね、白くなる、うぅ…ん、は、はじめは、えろいことされたり、後ろからギューってされたり…」
「おい……」
「い、ろいろぉ、考えてるのに、だんだんバカになってくの、銀さんの指がね、私のここ、今ここぉ、私がいじってるここ、乱暴にギューってぇ!」
「お前…あのさ……」
「軽蔑した?あ、あきれた?こんな淫乱バカはやだっ?銀さんは、やだ……?!」

……目尻に勝手に浮かんだ涙を断ち切って開いた瞳に入ってきたのは、
布団から抜け出し、まるで野生動物のように一直線に私に突っ込んでくる銀さんだった。

「コノヤロー!人の策略っつーか!節電計画を妨害すんじゃねーよっ!」
「えっ?ぎ、銀さん……?!っう、うぐっ、あ、ああぁぁあぁああっ?!」

目で確認するより、おなかの下で感じる方が早かった。
すっかりかちかちになった銀さんが、私の湿った肉穴にいきなり入ってきた。

「ふぁああっ…し、しないんじゃなかったの……?!」
「あ゛?ヤなの?」
「んいっ、いやじゃないっ、いやじゃないけどおぉっ!お、はぁあっ、ぎ、銀さん風邪は…っ?」
「んーなもん、このムラムラに比べたらカワイイ妖精のイタズラだっての、はっ、おおっ……!」

布団から完全にはみ出した畳の上で、背中の痛さがそれを訴えるのに…そんな苦痛も心地よかった。
銀さんはやっぱり、熱をはらんだ吐息や声だ。
それでもものすごく必死に、組み敷いた私にのしかかってくる。

「ぎ、銀さぁ、ん、へーき、つらくないの……っ?」
「つれーよ!全ッ部のせいだかんな!」
「ふっく、うっ、ん、あ、あぁ、ご、ごめんねっ、わ、私が……?」
「テメーがやらしいこと言い過ぎなんだって、は、俺、これ、コイたらおとなしく寝よーと思ってたのに……!」

……ああ、私も銀さんもお互い、けっこうバカだなあ。

「んぁ、あ、ああぁっ、うれしっ……こーふんしたんだ、我慢できなくなったんだぁ……!あははっ」
「うれしそーな声出すんじゃねー!ったく!」

ぐり、ぐりぐり、と、銀さんの先っぽが、肉の壁を乱暴に探ってくる。
ひたすら、もう本当にひたすら必死に……押しつけて気持ちいい所を、探している。

「んもう、えへ……銀さん、かわいっ…ん、ぐっ、うぐっ、う、奥……ぅ……!」
「なんっ……う、おぁ……っ」

銀さんの首筋から伝った汗が、私の額あたりにポタンと落ちた。
それが気になって、銀さんにしがみつきながら…鼻先で甚平の胸元をまさぐった拍子に。

「て、め…それ、やめろって……」
「んっ…ふ、あ、これ、銀さんも気持ちいいんだ……?」

私のとはぜんぜん違う薄い乳首にツンと触れると、膣の中の肉茎と銀さんの肩が同時に跳ね上がった。

「んっ、んー……!ち、乳首いいんだ、ちゅーちゅーされていいんだ……ぁ」
「てめ、あ、おあ、や、やめろ、っつってん……!」
「んーっ…!はふ、いいんだよ、銀さっ、今、風邪だから…私におっぱい、ぺろってされ、ても……」

その最中にも、銀さんは私の腰を潰しそうな勢いで何度も、何度も何度も抽送を繰り返す。
裏返る声を抑えながら、必死で舌を伸ばして乳首に絡ませる。

「だ、だって今はよわよわ銀さんでしょっ、乳首ちゅーで感じちゃっても、恥ずかしくないよぉ……!」
「てめーはァ!そんな悪知恵どこでつけてくんの?!なんでそんなえっろいこと言うわけ?!」

ぬこっ、と、人の体同士のつながるものにしては大げさな音を立てながら。

「な、内緒、はぁ、い、いこっ、銀さん、いっしょにね、一緒にギューッてしよっ!したいっ、のぉ……!」

「……っ、あーー!!」

その言葉が、最後の砦も砕いてしまったようだ。

銀さんはことさら乱暴になって、私を底から思い切りえぐる。

「あ、あぁ、お、押されて、おくっ、い、あ、いあいぁああぁああぁっ!!」
「は、はっ、あ、イク、出る、ああ……!」

お互いぴぃんと張り詰め、そして一気に弛緩して……。



「うー…死ぬ…今すぐバーゲンダッシュのバニラ食わねーと死ぬ……」
「死んじゃう…バーゲンダッシュ期間限定クリーミーミント食べないと死んじゃう……」
「何俺より面倒な要求してんの、てめーはゴリゴリ君で十分だろうが」
「ううっ…ゴリゴリ君は…溶けちゃう……」
「溶けたベトベト汁すすってろ」

「……あのね、二人とも」

畳に並べて敷かれた布団から漏れる声に、さっきからせわしなく動いていた新八くんが割り込んでくる。

「揃って寝込んだカップルの看病をさせられる僕の身にもなってくださいよ」
「かっぷる……」
「ん、ンホンッ!んー、ンンン!」

私が何か言おうとすると、銀さんがいきなりせき込んだ。わざと。

「ったくなァ、ガキはこれだからよ、男女がいたらもういやらしいことしかしてねーって考えてんのな、そんなだからお前まだチェリーなんだよ」
「べべ別にいやらしいことなんて言ってないじゃん!あんたら二人がぶっ倒れてたの介抱してやったの僕じゃん!」
「あれ違うよ俺が風邪引いたってんでコイツが来たんだけど気づいたらなんか二人で倒れてたんだよ」
「だからそこを僕……いや、いいや……うん、買ってきますアイス」

新八くんは、襖を開く直前に…何ともいえない顔で私を見た。

……新八くんにはばればれだと思うんだけど。
「まだ知られてない」なんて思ってるなら、銀さんも相当に楽観的だよなぁ………。

「あーもーアレだよ、普通お前にうつして俺は治るのがお約束だろうが」
「現実は甘くなかったねえ…えへへ」
「お前なんで嬉しそーなの」
「だってね、私ね思ったんだけどさ、銀さんのことお世話したりするのも大好きだけど……」

ばかだなあ、私。
そんな自分を、愛しいとさえも思っている。

「こうやって、二人でグダグダーってなるのが、一番好き」

とってつけたようなドラマは、なくていいのだ。