そもそも……朝から憂鬱な気分だった。
箪笥の上をごそごそやって、ふうとため息を付く。
蛇口をひねって出して、喉に押し込んだ水のぬるさにもなんだか無性に腹が立つ。


そんな日だったものだから仕事に行っても不調で、
普段は適当に流せる、ほかの職員の噂話も、笑い声も、思わず怒鳴りつけなかった自分を褒めてやりたいほどだった。

仕事が終わって、そうだ銀さんに会いに行こう、と思いついたとき、気分はずいぶんと晴れやかになった。
銀さんに抱きつこう。あのしっかりと太い身体に腕を回して、わざとらしい歓喜の声を上げよう。
怒られるか照れられるかは気分次第だろうけど、きっと頭を撫でてくれる。
そうしたら鼻の先で羽織をまさぐって、心地のいい銀さんの匂いで肺をいっぱいにしよう。

そんな風に考えると自然と浮き足だって、口元がゆるんだ。

……だから、だから。
万事屋銀ちゃんにたどりついて、おじゃましまーすと玄関に入って。
帰り支度をしていた新八くんに、

「あれ、ちゃん。銀さんついさっき出てっちゃいましたよ」

と言われたときは、なんというか。
地面が突然ぱっくり割れて、谷底に落ちていくような感覚で気分が沈んだ。



無言で茶碗を洗う。
神楽ちゃんと私はもう夕餉を済ませてしまった。
それでも銀さんは帰ってこない。
仕事ではなく誰かの付き合いだと言って出ていった、と。
付き合いって何。だれと付き合ってるの。もしくは突き合ってるんですか?

「へへへ最近よォ、ガキくせえツラに出っ張った腹っつうのにも飽きてきてよぉ〜〜」
「やんっ、ぎん、ときぃ…やめ…灯り、消して……」
「おーおー死神太夫がかわいいなァ、ベタな台詞だぜ、んーなカワイイこと言われて素直に部屋真っ暗にする男がいると思ってんの?甘ちゃんだなこりゃ、でもその初々しさがたまんねぇ、こいつぁ銀サンのマクロスキャノンで徹底的に教育だな〜」
「いやんっ、だめぇ!」
「へっへ、乙女らしい声出してんじゃねえよ!せっかくのツルツルお肌に触れねぇだろ、おら手ぇどけな、おーすっげー乳、形もよくて乳首も絶品じゃん、でかいだけのアイツとは大違いだな、あ〜こりゃクセになるわー、あーもうアイツいらねーなー」

あああああいやあぁぁぁあぁ!!

「……っ」

お風呂からあがった神楽ちゃんが私のほうを、きょろっとのぞき込んだのがわかる。
普段なら可愛らしくも思える挙動なのに、今はそれすらぴりっと神経に障る。
…いやいや。何を考えてるんだろう私。

水切りに茶碗を立てかけて、そんな考えを振り払う。

「神楽ちゃん、そのまま寝ちゃだめだよ。歯磨きした?」
「したアルー」
「うそでしょ」
「ぬぉっ!なんでバレたアルか?!」
「宿題ないよー、プリントないよー、歯磨きしたー、はだいたい嘘だよ」
「チェッ…」

しぶしぶ洗面所に向かう神楽ちゃんの背中をため息をついて眺める。

そこで。

「おーおぉ、けーったぞー!」

がらっと引き戸の開く音がして、大好きな人の声が響いた。

「んぉー、ぎんひゃんおはえりー」
「銀さんっ!」

思わずたっと駆け出して玄関に向かう。
今日ずっと見たかった、大好きな人の顔。

「おーわりわり、付き合いでさ」

……なのに、なのになのに。

「つきあい…?」
「あんだお前来てたの?酒は飲んでねーよ」
「そうじゃなくって…」

なんでこんなに悪びれないんだろう。
銀さんは、私が今日一日好きでもない感情に苛まれて過ごして、ここに銀さんがいないと知ったときの落胆を知らないのだ。

「アレだよホラ、お前会ったことあるっけ?柳生のな、カーテンのシャーの奴が」

「んー何アルカー?銀ちゃんアイツとマットの上でローションまみれの女と「くんずほぐれつ」してきたアルか?」

今日ずっと、見たかった顔なのに。

「してねーよバ…」
「馬鹿はお前だぁっ!」

一瞬でしん、と部屋が静まり返って、私の怒鳴り声だけが反響した。

「ばかばかばーか!何なの?!なに今更帰ってきて、なに、何がローションずるずる?!」
「……あ、あの?」
「もうほんと、ほんっとふざけないでよっ!ひどい…私…あぁもう、ああもう、ああもぉぉおおーー!!」

そこまで言って頭をぐしゃぐしゃ掻いた。
ふと視線をさまよわせると、神楽ちゃんが歯磨きコップを落としそうになりながらぽかんと私を見ていた。
…こんな風に爆発するのを見られたのは初めてだ。
みっともない、恥ずかしいという感情がなくはないが、それを上回る勢いで怒りと悲しみが立ちこめて、頭が火照るのを止められない。

「……」

靴を脱いだ銀さんが、無言で居間に上がる。
その動作に、ああ私を無視するのか、なんて思って、今度はじわりと涙があふれた。

「やだ…もう、やだ、やだやだやだ……!」
「おい」
「もーやだ、もういや、もうやだ、浮気者!」
「だからしてねーよ何も」

もう自分でもなにを言っているのかわからない。
立っているのが面倒くさくなって床板に座り込んでさめざめ泣く私を、銀さんは無言で見つめた。

「神楽、もう寝てろ。俺こいつ送ってくわ」
「わ…わかった……アル」

いらいら。
目の前の大好きな人の声も姿も苛立たしい。

「私帰らないっ、今日泊まる、今日ここにいる!」
「ダメだっつうの…ほら、おぶされ」

……駄々っ子のようにわめいた私だったけれども、次に銀さんがとった行動にはぐっと口をつぐんでしまった。
さっさと靴を履いて、玄関で私に背中を差し出したのだ。

「う…あ……う」
「早くしろって」

……ここで従うのもしゃくだ、と訴える心もあったが。
怒りも消えぬというのに急激な愛しさがこみ上げて、私はその背中に勢いよくしがみついた。



「…私今日すごく銀さんに会いたかったんだよ…」
「あー…そう」
「それなのにいないし…なんで?どうしていなかったの?どうして私が会いたいときにいないの?」
「悪かったって…」
「あやまればすむと思ってんでしょ!私がどれくらい淋しかったかわかってる?!」
「わーってるって、わーってますよちゃーんと」

……なんか、今日の銀さんはやたら優しい。
自分でも理不尽なワガママだとわかる言葉をぶつけているのに、全部受け止めてくれる。

は俺がいねーとダメだもんな」
「……そ、そう…そうなの、そうなのに!」
「あーもー騒ぐな、ホラついた」

私の部屋の前の階段で銀さんが立ち止まる。
また屈もうとして、それはつまり降りて階段を上れ、と言っているのだとわかったが。

「やだ」
「あん?」
「おんぶして、部屋まで運んで」
「危ねえだろうが、落ちたらどーすんの?」
「へー、銀さんは私のこと落とすんだ。ケガさせるんだ。物理的にキズモノにするんだぁ、へえ〜」
「……あー、わかったっつの」

しゃがみかけた身体をぐっと起こして、よっ、と荷物のように私を背負い直す。

…ふと。

ふと。

「おうっ…?!」

その背中が反り返るんじゃないかというくらい、思い切り自分の身体を押しつけた。

?」
「落ちたらいやだから」
「いや、そんな子泣きジジイみたいにしがみつかれた方があぶねーよ」
「……」
「…………」

私の身体よりずっと幅の広い肩胛骨の間に、胸をぐっと押しつける。
かつっ、とひとつ階段を上った銀さんが首をこちらに向けようとしたので、その耳に噛みついた。

「…ふふ」
「さっきまで泣いてたのによう」
「泣いていいならまた泣く」
「あーわかった、泣くなっつの」

実際はうっかり落ちてしまう、なんて考えられないくらいのしっかりした足取りで、階段を上っていく。
ふぅ、と、わざとらしいため息をつく背中に、さっきまで溢れていた怒りがなりを潜め、代わりに銀さんへの愛しさとウズウズする気持ちが満ちた。

部屋のドアを開けて暖かい背から降りると、途端に銀さんが私に被さってきた。

「お前な」
「…うん」
「お疲れの銀サンをタクシーとして使った挙げ句に挑発してな」
「うん」
「タダで済むと思ったかァァ!」
「あはは、思ってないっ!」

憤りも涙も、今はもうない。
私の頬にすっと口づけをしてくる銀さんが愛しくて、胸がぎゅうっと熱くなった。

「銀さん、背中痛いから…」
「布団?」
「……うん」

銀さんは私の鼻にちゅっと口づけを落としてから、今度は私の体を抱きかかえる。

今朝、もう干すのも仕舞うのも面倒で敷きっぱなしにした布団の上まで、めんどくさそうな顔をしながら私を運んでくれた。

「…銀さん、なんか優しいね?」
「あ?いつも優しいだろ」
「違くて…なんか……ん、なんだろ……」

私が寝転ぶと、銀さんは左手も羽織から抜く。
その仕草になんだか、妙にどきりとして…それがなんだか悔しくて。

「…やっぱり、マットでローションしてきたの?」
「はぁ?!してねーよ!」
「後ろめたいから私に優しいんじゃないの…?」

「バカ」

私の言葉が、もう真剣に妬いているのでも憤っているのでもないとわかっている銀さんは、私の髪をぐしゃぐしゃしながら布団に潜り込んでくる。

「大体神楽も早熟すぎ、メディアから悪い情報を得すぎだ」
「銀さんのせいじゃないの?」
「ちげーよ俺案外そういうのしっかりしてるから、アレだよジャンプスクエアのせいだな、ToLOVEるのせい」
「とらぶるぅ?」
「アレ露骨すぎ、昔はなぁエロっつってもせいぜい貝に締め付けられてオットセイがゲロを吐くくれーのホンワリした表現だったのによ」
「……オットセイが…ゲロ……?」

その言葉を自分で言って反芻すると、なんだか思っている以上におかしくなってしまって、けらけら笑った。
泣いたり笑ったりムラムラしたり。
我ながら忙しいやつだ。

「…あー、あれだろ」
「あれ?」
「お前アレだ、今アレだろ」
「え、なに」
「あー、なんつうの、ホラあれだアレ、ピーエムエス」
「ぴーえむえす…?」
「……生理前じゃねーの?」
「えっ?!」

思わずじゃれついていた身を離して、銀さんの顔をまじまじ見てしまった。

「え、な、なんでわかったん」
「え、あいや…だって今日17日で…お前いっつも大体19日あたりから…」
「ちょ、え、ええええ?!いちいち覚えてたの?!」
「えいやだって…あー」

教えた覚えもないし、そういう物の片づけだって万事屋ではやらないようにしていたのだ。
ただなんとなく誘われたら、「ごめんきょうろりえ装備だから…」とか断っていただけで。

それをちゃーんと把握していたというのは、どうなのだろう…。
と、ちょっと目の前の男の行動に対して悩んだ私を察したのか、銀さんが私の鼻に噛みついてきた。

「あた、あたたっ」

噛むと言っても甘噛みだ。
かしかしとわざとらしく歯を鳴らしたあとに、今度は鼻の頭をぺろりと舐められた。

「や、やちょ、へんなところ舐めないで…」
「ん…?」

鼻筋を通って、今度はおでこに。

「ちょ、やだやだ…ん、あ、や……!」
「ちゃんと手入れしてんのなー」
「て、手入れって?!ちょ、やだっ!」
「デコの産毛とかほら」
「や、やあっ!そんなこと言わないでよ!暗黙のりょうかいってやつ!」
「褒めてんだから喜んどけって…」

そう言って、間を空けずに銀さんの唇が耳に移動して、私の耳朶に少し荒くなった吐息をくれる。
それはこうやってじゃれている中で、銀さんが興奮していることを私に伝えて、ぞくりと震えてしまった。

「ん……おぉ」
「やぁっ…ん、んぅ…や、あ…!」

そのまま舌が伸びてきて、耳の軟骨を湿った感触が撫でる。

「は、うっ…!」
「耳の裏もキレーにしてんのな」
「え?!ちょ、ちょっ!や、やめ、舐めちゃ…あ…!」
「あーイイ匂い…」
「やだ、いい匂いなんてしないから、しないからっ!」

いくら毎日、汚れを落としきるつもりで丁寧にくまなく洗っていると言っても。
今日はもう一日の終わりも目の前で、その上まだお風呂に入っていないのだ。
そんな細かいところ、汗や汚れが少なくてもあるはず。

「するって、お前のならなんでもいい匂い」
「う…うれしく、ないっ……」

…うそだ。うれしい。
そんなふうに言ってさらに身を寄せてきた銀さんの腰が私のお尻にぶつかったときに、ちょっとびっくりするくらいにズボンの中の熱が硬くなっていた。
…好きな人の、髪の匂いとか香水の香りとか、
そういうものでドキドキしたりするのはなんとなくわかるし、恥ずかしがることでもないと思う。
…でも、汗の匂いや一日の汚れのしょっぱさで興奮されてしまうのは、なんだかうまく言えないが、偏執的というか、変態的というか。
ちょっとふつうじゃないと思う。

……そして、そんなもので興奮されるのを嫌がるどころか喜んでしまう私も、だいぶふつうじゃないんだと思う。

「う…ぅ……んっ!」
「んー…すんっ…んー」
「や、ひああ…!」

銀さんが、私の髪の毛に鼻の先をうずめる。
つむじのあたりをぐりぐりとくすぐって、わざとらしくふんふんと匂いを嗅ぐ。

「や、あ…ああ…!」

…その。
銀さんの指摘通り、月の障りの前だ。
普段よりもいろいろなことに神経過敏になる。
……性的な興奮も、同じ。
髪の毛一本一本が感じるところになってしまって、それをもぞもぞいじられているから。
背筋に何度も、ぴーんぴーんと心地よい電流が走る。

「銀さん、や、あ…!」
「汗の匂いする」
「やだ、い、言わないでよ……!」
「働きモンだからな」
「……働き者?」
「そーそ。がんばってんのな、お前は。いつもなんでも」
「………」

そう言って、あごで髪の毛を撫でられる。

「…そ、そう!私がんばってるの!」
「おう」
「いっつもいろいろ押し殺して頑張ってるの!」
「そーだな」
「で、でもでも誰も、ほめ…べ、別に褒めてもらえなくてもいいけど…で、でも、なんで誰も褒めてくんな……う、うわぁああぁん!!」
「泣くなァァ!」

言っていると、なんとなくまた涙が溢れてきてしまった。

「ホラ泣かねーの、おらおら」
「うっ…あ、あ、やぁ……」

私が本格的に泣き出す前に、銀さんが私の上になって身体を押しつけてくる。
…今日ずっと恋しかった、厚くてたくましい胸板。
古い傷が白い痕になっているのも、ほとんど色が乗っていない乳首がつんとあるのも、きっと誰もが知っていることじゃない。
そしてそのがっしりした身体に押しつぶされる気持ちよさも、きっと私以外はあんまり知らない。
私の内腿に当たる熱のすごさだって。

「…お前さぁ」
「んっ…?」

とっくにぐしゃぐしゃになった着物と下着を、上も下も取り払われてそわそわする。
私の鎖骨のくぼみのところに唇を当てて、つっぱった皮膚を甘噛みで引っ張る銀さんが、にやっと笑った。

「指と舌、どっちが好き?」
「え…あ、わっ……!」

たぷんっと、両方の乳房を銀さんの大きな手が下からつかむ。
そのままふざけているように、たぷたぷ揺する。

「ひあっ、や、そ、それ、ん…んん……!」
「たぷたぷいいか?」
「たぷっ…て、そういうとこおっさんくさいよ…あ、や、やぁっ!」

変だった。
軽く手を添えられて揺らされているだけなのに、その感覚が小刻みな波になって胸の先っぽや奥に響くのだ。

「乳首噛まれんのと、指でぎりーってされんのどっちがいい?」
「ど、どーして痛いこと限定…?!やっ、あ、あやっ?!」
「え、痛いの?これ痛いの?」
「やいっ、い、た…ぁ、く、ないっ…けど、い、いたいっ」
「嘘つけ」
「ぅやんっ、い、や、引っ張らないで、え、ああ…!」

ギュッと、銀さんの指が乳首をつまむ。
みるみる真っ赤に充血した私の乳首は、そんなふうにおもちゃ扱いされても気持ちよくなっている。

「ぎゅ、ぎゅってされるの…す、好き……」
「だよなァ?ベロは?」
「う…し、舌…も」
「も?」
「ぎ、銀さんがね、口でしてくれてると…な、なんか、頭ね、な、撫でたくなる…ンッ…!」

言った瞬間に、銀さんの顔が胸に移動する。
けれどすぐに乳首を噛んではくれずに、その周りを舌先でくるくる撫でるだけ。

ゾワゾワと、腰の奥あたりから心地よさがこみ上げてくる。

「はぁうっ…う、あ、やぁ、あ、ちくびっ……!」
ようやっと乳頭に触れてくれたと思った銀さんのべろが、乳首をぎゅうぎゅう内側に押し込もうとする。
またぞくっと震えた私にだめ押しするように、もう片方の乳首も指で押されてしまう。
ぐーっと、そのまま親指でこねるみたいに。

「ふ、うっ……ん、や、あ、うちがわ、だ、め…!」
「…頭撫でねーの?」
「な、でられなっ、あ、ほ、ほんと、内側ぎゅーだめ、押さないでえ……!」
「ん?痛い?」
「ち、がうけどっ……!」

ぷは、と、銀さんが一度唇も指も離す。

「よ、よくわかんないけど、生理のとき、なんか…!」

自分で自分の乳房をぐっとつかんで、目の前のいやらしいジト目をする男になんとか。
なんとか私のもどかしさを伝えたくてわたわたする。

「生理の前、な…なんか、ここ、ここね、胸の…奥?ち、乳首の根っこ…?」
「あん?ここか?」
「っう、そ、そこっ…そ、そこ、そう、そうやって押されると……!」

ちょうど乳首の周りを、ギュッと捕まれる。

「ウズウズするの、生理前おっぱい重いの、おっぱいの奥重たくて、凝ってる感じするの……!」
「……っ」

羞恥心で目を閉じる直前に、銀さんがぺろりと舌なめずりしたのが見えた。

「あんま生理前生理前言うなっての…」
「あ、うぁ、だ、だってせいりまえほんとつらいの、なんかすぐいらいらするし、すぐえろいこと考えちゃうしっ…!」
「あー……!」
「ひぎゅっ?!」

銀さんが、思い切り乳首に噛みついてきた。
力強い上下の糸きり歯の間で、しこりきった先っぽがいじめ倒される。

「お前それな、暗に危険な日も俺に教えてんだよ?俺やっちゃうよ、月モノ七日目以降狙って襲うぞ!」
「なのかめいこ…う、って、なんでそんな詳しいの銀さん?!ちょっとや、やあぁあ!」

しまいに乳房そのものを歯形がつきそうなくらい強く噛んでから、銀さんが口を離す。
それからもどかしい動作でズボンも下着も一気に下ろして、びよん、と待ちきれないとでもいうように露出した熱を、私にあてがった。

「こォの中になァァ…」
「や、やぅ、あぁ、や、ま、まだ……!」

ぐっと、肉茎が割れ目に当てられる。
まだ下半身は一度もいじられていないのに、おかしいくらい濡れていたけれど…そうじゃなくて。

「中で卵できたばっかのすんげーアブねー日狙ってズッポシ突っ込んでな」
「や…あ、やああ、ん……!」

刺激もないのに愛液でぬめる私の秘処を、銀さんの先端が滑った。

「奥の奥でどばーっと出して…」
「んうぅっ、や、んっ…ぬ、ぬるぬるだめっ……!」

私の愛液なのか、それとも銀さんの先端からこぼれ出ているのか。
粘つくぬめりをまとわせて、にゅるにゅると何度も割れ目を肉茎が摩擦する。

挿入されていないのに、そのときのように銀さんが私の腰をぐっと持って自分の腰をすり寄せてくる。

「終わっても抜かねーでなじませて、のまんこの奥にザーメン飲ませてやりてえとか考えてんの!」
「はひっ、ひゃ、や、やぁっ、やだそれっ、い、いやらしい、から、いやらしいことい、言わないでぇ…!」
「あん…?なんかこんなん好きだろおめーはっ…は、銀サンのちんぽで奥ズルズルされんのたまんねーだろ?」
「い、や…あ、好き、好き…だけ、どぉ……!」
「こんな風にやらしーこと言われんのも好きだろーが…っ、は、ああ、言わされんのも好きか、うら」

銀さんの、私の腕よりずっと長い腕が、私の臀部を抱え込んでさらに胸元に伸びてくる。

「おらどうなんだよ」
「いっあ、あ、ああっ、す、好き、好き…っ!」
「っ…じゃあ言ってみ、お前の弱いとこ今どーなってんの」
「あ、ふッ!」

私の言葉をしっかりと受け取ってか、銀さんが胸をギュッと掴む。
痛さと気持ちよさが絡み合って鋭い刺激になり、脳みそと下腹部にじくじく刺さってくる。

「あ…う、わたし、の弱いとこ、くり…その、くりちんこっ、ぎ、銀さんのが、こすって…る…!」
「は…、そん調子、のクリチンポしごいてんのはどの辺だ?俺のなに」

じわん、と。
耳朶に、自分で発したいやらしい言葉と、それをさらにいやらしくして繰り返す銀さんの声が染み込む。
自然と媚びるようになる自分の声すら、もう私の頭をトロンとさせる麻薬だ。
脳髄から垂れてくる天然もの、私の中に常にあるけれど、銀さんしか刺激できない、とっておきの媚薬。

「ぎ、銀さんのほんものちんこっ…!あ、あっついの、ちんぽのうらっかわ、の、う、うらすじっていうか、いちばんびきびきってしたとこぉ…!」
「……っ」
「ぐ、ンッ…い、いたいよ、乳首つねんないでっ、や、はぁ、ああ、だめ、私だめっ…!」

つねられた瞬間にはそちらに感覚がいくが、
粘液まみれでなんどもこすられる肉芽の感覚もだんだん鋭くなっていく。
もう包皮も剥けて、乳首と同じように血が集まってきている。

「ッ、あー…もっと言え、なんか言えっ、おらっ!」
「いきっ、あ、あぁぁっ!」

銀さんが、つねっていた乳首にさらに爪を立てて、引っ張るようにしてこねまわす。
軽い絶頂が脳裏にちらちら見えていて、もう深く考えることが難しい。

「ああぁっ、ち、乳首もちんぽみたいっ、銀さんにしこしこされて喜んでる、うれしくなってる、ぼっきしてるっ……!」
「ったく……!」

「やあ゛あ゛っ!そ、そうそれっ、ごしごしっ、おっぱいとくり一緒にごしごしきもちいいっ、銀さんの手とちんこきもちいのっ…あ、あッ、あ、あや、や、ああ、あ、だ、あぁ……ッ!」

ぐりっと、銀さんが右手を胸から離して、肉茎に添えた。
ずるずる擦れていた表面から、先端の鈴口を狙ったようにクリトリスに当てて、腰を押し出してくる。

「いああ゛ッ、だめそれだめっ、あ、い、いくっ…い、っちゃ、あ、くぅぅぅっ……!」

ぴーんと、足の親指が攣るような感覚。
ぎゅいっと身体に力が入って、そして抜けていく。

「っは…あ……!」
「…は、てめ勝手に一人でイキやがったな…!」
「だ、だって銀さっ……あ、ああぁああっ?!」

力を籠め直す間もなく、弛緩しきった私の中に、張りつめた銀さんが入り込んできた。

「おっ……おく、きた、いきなり奥うっ……!」
「きた、じゃねー…あ、てめーがユルくなってんの!」
「ゆ、るくないっ…!もん、や、はぁ、あ、あ、あっ、ああ…!」
「きっちきちなクセにユルいんだよてめ、え…ああ、こらッ、けつ締めんなっ…!」
「ど、どっち、なのっ、あ、や、しめて…ない、よっ!」

「中キツいくせに奥まで入りやすいっつってんの…!ったく…!」

そう言って銀さんが、ずるん、と一度抜けかける。

「ほら見ろ、ああ見えねーか、抜くとすぐ締まろうとして…」
「だ、だって…あ、う、んぁあぁああっ?!」
「入れっとすぐ開いて奥届くし…ったく……!」
「っそ、それ、ほ、ほめて、くれてるの…?!」
「ほめてねえっ!」

……うそだ、とわかった。
私と同じくらいに頬が紅潮する銀さんは、照れている。

「こんなワガママまんこの面倒みてやれんの俺くらいだっつ、の……」
「あやっ…わ、私だって、銀さん以外にされるつもりないっ…ないもんっ…!」
「だろ?お前ぜってー他のとやんなよ?いきずりも浮気もダメな、お前一生俺一本しか知らなくていいかんな…っ」
「……ばかっ…あ、あう、あぁ、う、んぅっ!」
「は…わかったか?」
「わ、わかった、わかったよ、っん…や、奥、奥押さないで、ぎゅーってくる、ぎゅってぇえ……!」
「お前が勝手にギューしてんだろーがっ!そんなに俺に中出しされてーの?!」

そう言って、私の腰を持ち上げる銀さんの手は汗だくだ。
その汗さえ愛おしく思えるのに、それよりも強い勢いで、膣の上側をぐりぐりと押される感覚が襲う。

「あ゛ッ、あ、あ、やっ、やめ、ああ、おかしっ…く、なる、なるぅぅっ!銀さんわたし、なんかもういまもうだめ、もうだめだよなんかっ!」
「……あ゛ー…ッ」
「だぁ、め、い、いつもよりすごいっ、の、きてるっ、もう頭のほうまできてるっ、へんなとこいっちゃう…っ!」
「行かねって、押さえててやっから…!」
「うん、お、押さえててね、絶対離さないでねっ!絶対、や、あ、だめっ、あ、がっ…ぎ、銀さ、あ、い、あ、あっ……あ、あぁぁあーーーっ!!」

骨がきしむほど抱きしめられた勢いで、銀さんの先っぽがぐりっと奥にめりこんで。
それがとどめになって、私は何度も痙攣した。

「っ……あ゛、あー、出る、出すぞ、ほらっ……!」

「いっあ、だ、めぁぁッ?!」

中で何度も、怖いくらいにのたうつ。
その感覚に絶頂とはまた違う快感を与えられて、私はくたりとしてしまった。


「っん…!」

銀さんが引き抜かれてから、こぽ、と気泡の音を立てて中に注がれたねとつきがこぼれ落ちそうになる。

「お、おふとんっ…わ!」
「ぎゅー…っと…」

私が自分の下腹部を押さえるより早く、銀さんの手が伸びてきてきゅっと私の陰部をつまんだ。
…左右の陰唇で、まるで膣穴を閉じようとするように。

「ばっかてめ、せっかく出したのすぐ流すな」
「……」
「…………」
「………そんなに妊娠させたいの?」

なんだか、温泉旅行の時もそんなこと言ってたし。

「あ、いや、妊娠てか…いや、しねーだろ?ちゃんとしてんだろ」
「う、うん、してるけど…」
「そのことわかってて…んだけど……あー…いや、なんだ?」
「なんだって…」
「いや、あのォ、なんつーのぉ、やっぱァ」
「…」
「生で出して奥にずっぼしっての、やっぱその男のロマンっていうかぁ」
「……」

目の前の男が、まぁ、照れ隠しも半分以上あるとはいえ最低なことを言っているのがわかる。

が……それを嬉しいとか思ってしまう私はたぶん、もっと最低なのだ。

「あ、いやスンマセン、ちり紙…っておい?!」
「え?!」
「てめこれなにこれ赤っ、あれ銀さんやりすぎて最後の赤い玉出ちゃった系?!」
「いや、ちょ、えっ……あ、あ、やだ…きちゃった……」

垂れるものが白濁とした葛湯のようなものでなくて、まるでいちごアイスみたいな色だったものだから。

「ぎ、銀さんちょ、あの廊下のとこ、厠の上の棚にろりえあるから!ろりえとってきて!」

厠は私の部屋の中にはない。
一度廊下に出て隣の扉から入らなくてはいけない。

「ってちょっと待ってその格好でいくの?!」

わりとあわててくれているのか、上半身の黒いシャツに下半身すっぱだか、ブーツだけ履いて出ていこうとする。

「いいじゃん誰も見てねーって」
「ちょまっ!」

そのままドアを開けて廊下に出ていった…と思ったら、大声が響いた。

「おいろりえ空っぽだぞ!中身入ってねーぞ!」
「え?!ってか声でかい!やめてよー!!」


戻ってきた銀さんにお財布を渡し、ズボンもきちんと履いてもらう。

「ろりえのすりむがーどね、お願いします」
「すりむがーど?なんかよくわかんねーけど…とにかくあれだろ、タンポン以外ならなんでもいーんだろ」
「ううん私ろりえのすりむじゃないとかぶれるからだめ…あ、ほら、結野アナが前にCMやってたよ、「ブルーデーでも私の天気晴れやか!」って!」
「あーあれか!なんか緑の!」
「そうそれ!買ってきて!」



意識すると、ずしんと腰に重み。
ふう、とためいきをついて、たぶんこの時間ならコンビニに向かったんだろう銀さんを思って腹部をそっと触った。


「うーん…いつか、いつかね」

たぶんそうやって考えちゃうあたり、私、もうだめなのかも。








******

きりばん66666、まるさんからいただきましたリクエスト!
銀さん夢なのでした。
「夢主の嫉妬が見たい」のと「銀さんが夢主のことラブいと思ってる感じ」というのとあとシチュエーションごにょごにょ…だったんですが、
これ嫉妬っていうかただたんに情緒不安定なだけじゃ…あわわ。
いや、これ書いてる最中に金魂とかね、ジャンプ本誌があれなことらしくてね、
今私がジャンプ本誌を読んで嫉妬ネタをね!まともにね!!
いや死神太夫とのあれはあのいや。マクロスキャノンは中の人つながりで。
……いや。あの、まるさん、お楽しみいただけたでしょうか…?

きりばんリクエストありがとうございました!
もちろんほかに読んでくださった方も、
いつもサイトを訪れてくださる方々も。
ありがとうございましたー!!