……朝起きるとグレゴール・ザムザは、自分が一匹の巨大な毒虫になっているのを発見した。
…いや、いや違う。
……朝起きるとは、自分が一匹の巨大な芋虫になっているのを発見した。
って、状況説明的にはぜんぜん変わってない。
現状把握。
まず視界の左右上下を白い壁…というか分厚い布が阻んでいて、だいたい正面しか見えない。
次に両腕は自分の背中でしっかりと組まれた状態で縛られているらしく、動かそうとしても動かない。
その次に、そもそも全身をまるっと大きな布、たぶん布団……にくるまれていて、身動きがとれない。
最後に、どうやら私は裸らしい。
布団(たぶん)からはみ出たお尻半分と脚は、空気に触れてすうすうする。
「…って、なんでこんなことに?!」
良いとはいえない視界に飛び込んでくるのは見覚えのある襖の柄だ。ここは銀さんち。の和室。間違いない。
が、なんで自分がそこで一人っきり、まさしく芋虫のような状態で布団に拘束されているかまるっきり理解できなかった。
「ちょ、ちょっと銀さーん?!いるの?!」
頭がパニックに到達する前に、とりあえず家主を大声で呼ぶ。
…すると、どたん、と多分椅子から立つ音と、どしどしとこちらに向かって歩いてくる音がして…まもなく襖が開いた。
「おォ、起きたか」
「お、起きたじゃなくって。銀さん?」
大きな足と、草色の甚平の裾しか見えない私は、何とか上を、銀さんの顔を見ようとがんばる。
「私、なんでこんなことされなくちゃならないの?」
そう口にしたとたん、勢いよく視界が回った。
ごろん、ごろんと、布団に包まれているお陰で痛みは全然ないが、銀さんが私を足で転がしたのだ。
「わ、ちょ、え、ええっ?!え、ちょっとなに?!」
「…もう酒は抜けてんな」
「酒……?」
言われたとたん、はっとした。
そして忘れていることにも気づかなかった昨晩の記憶が、だんだんと脳裏に蘇ってきた……。
昨日の夜、お妙さんに呼び出された。
と言っても以前のように仕事のトラブルではなくて、時間があるならご飯しましょうみたいな軽い用事で、私とお妙さんはかぶき町の料理屋さんに入ったのだ。
定食メニューや一品料理もあるけれど、メニューの大体はお酒と一緒にいただくことを前提としてあるような小料理屋で、
飲酒をしない私は入ったことがなかった。
が、お店はカウンターと座敷がすっきりと分けられた綺麗な内装で、始めにとりあえず注文した小鉢の料理も自分の好みだったし、笑顔で話をするお妙さんの存在もあって緊張はすぐさま解けた。
少ししてお妙さんは私にちょい、とコップを差し出してくれて、あ、ありがとうございますぅと何の疑いもなく受け取って飲んだのだけれど、ジュースだと思ったそれはお酒だった。
お酒と言ってもお妙さん曰く、ほとんど果実ジュースで割ってあるごくごく薄いものだったらしい。
あわあ飲んじゃった、とあわてる私に、やや頬を紅くしたお妙さんが無礼講よ、と笑いかけて、まあそれもそうかいいや別に、という気分になった私はもう一杯、その林檎のジュースみたいなお酒をいただいた。
「私お酒って飲まないんですよ、銀さんそういうのにはうるさくって…前に興味本位で焼酎?だっけ?をカルピスで割って飲んでたらすっごく怒られて」
「ああ、そうなのよね。新ちゃんも言ってたわ、銀さんはそういうところはすごくしっかりしてるって」
「んーそーでもないですよぉ、そのときだって、私もなんか飲み過ぎてよくわかんなくなっちゃってたんですけど」
「あら」
「あの人は何かにかこつけて私にエッチなことしたいだけなんですよー。あのときだってさんざんいじめられたんです、あははっ」
……そこで、お妙さんの表情が目敏く動いた気がした。
「そうねぇ…ちゃんって見かけによらず、結構そっちは……ね?つきあってる人の問題かしら」
「あっはー!そーですそーです、私じゃなくって銀さんが悪いんですっ、私のいやらしさの十分の九は銀さん仕込みですからね!」
……普段なら、他人に口外するのは恥ずかしいようなことなのに。
アルコールの効果なのか、舌がなめらかだった。
お妙さんも楽しそうに相づちを打ってくれるし、私は気分良く下世話な話を続けた。
「でも、仲良くやってるじゃない?実はちゃんが手綱を握ってたり…とか?」
「手綱なんてぇ!えへ…うん、でも、あんまり銀さんも百戦錬磨って感じじゃないしー、えっ、もーおわりー?なんてこともしばしば」
「あらあら、うっふふ」
「うふふふふ!」
「でも絶対銀さんは「あいつは俺にメロメロ」とかおもっ…」
ふとそこで、お妙さんがお店の入り口を凝視していることに気が付いて私も視線をそちらにやる。
と。
「あ……銀さん」
つい今し方話題にしていた自分の恋人が、無言で店に入り掛けの体勢で突っ立っていた。
そのときの私はそれを見ても危機感を抱くことなく、また林檎ジュース割のお酒をぐーっと飲み干してからから笑った。
「ぎーんさーん!ねえ、だぁよねえぇ、なんかもー、あれでしょ、俺の波動砲ではいいなりになってるぜ!とか、絶対どっかで思ってるでしょっ」
お妙さんだけじゃなくて、隣の席に座っていた男の人もブフッと笑った。
私はどんどん、どんどん楽しくなっていって、それからも笑いながらなんだか色々叫んだ。気がする。
……記憶は、そこで途切れていた。
「…………」
思い出すなり、どっと汗が出てきた。
見えないのに、今銀さんが浮かべている表情がありありとわかった。
「あの…銀さん……?」
私の控えめな声での問いかけを無視して、銀さんは私の背後…脚の方にぐるっと回った。
「ほ、ほどいてくれないかな…なんて……」
「えーっ」
ものすごくわざとらしい「えーっ」。
その一言だけで、もうこの男が私をやすやすと自由にするつもりがないのが知れた。
「あ、あの私、あの…ホントは、そういうこと、ぜんぜん思ってないし……」
「そういうことって?」
「…えと、いや、だから……」
「こういう場合どうしたら許してもらえると思うの、おめーは」
「それは……」
おしおき。という名目の憂さ晴らしセックス。
とは正直に答えられず、言葉に詰まってしまう。
が、銀さんは私の沈黙を「理解している」証拠だと取ったらしく、そのまま無言で私のむきだしのお尻に触れた。
「や、んっ…?!」
ぐにぐにと、両手を添えられた尻肉が無遠慮に揉まれる。
大きくて暖かい手は私を安心させて、ともすればいやらしい気分すら呼び起こすものなのに、今の銀さんの手は怖い。
「ぎ、銀さん、私…は、反省、してるから…その、ふつうに、しよう……よ…っあ?!い、いたっ、いたっ!」
お尻の肉が、ぎりーっと思いっきりつねりあげられた。
「」
「……」
「銀サン前々から言ってるよな?男は見栄張ってナンボな生き物なんだよ」
「……う、うん…?」
「…だーからぁ、お前に笑われちゃうよーなあ、粗末な足軽兵はァ、見せたくないんですぅ」
「え?え、あしがる?それってど…あ、うッ?!」
ぺたん、と、私のお尻に手の代わりにあてがわれたものは、確認されるまでもなく、銀さんのそれだった。
…まだふにゃふにゃで、熱もそんなに籠もっていないけれど。
足軽なんて罵るのはとんでもない、と、とりあえず素人判断だけど言える。
言えるが、今それを口にしても火に油にしかならない気がする。
「銀サンお前のケツで勝手によくなって勝手に終わるからいーですう」
「え?!なんで?!な、なんで……?!」
「だって「えっもう?」なんだろ?が俺に入れ込んでるなんて俺の笑える思いこみなんだろ?なあぁあー」
「だ、だから違うってば、思ってないよ!」
「あーどうだろうな?どうせこんな祖チンこんにゃくにでも突っ込んどけとか思ってんじゃね?」
「思ってないー!!」
私がそう言って脚をばたばた暴れさせると、ふん、という大きな鼻息が聞こえた。
「…じゃ、お前にはコレやる」
「これ…え、あ?!」
かちゃっと軽い音がしたと思うと、自分の割れ目につるんとした何かが当たる感触。
そして一拍置いて、ぶぶぶぶ、というちみっちょいモーター音。
「えっ…ちょ、やだ、おもちゃはいやっ……!」
以前小型のバイブレーターで弄られたことを思い出して、かぶりを振りながら悲鳴を上げる。
……と、実にあっさりその振動するおもちゃは私から離れた。
「そーか、おもちゃはイヤか」
……そのすぱーんと歯切れのよい様子に、なんだか不吉なものを感じながら、うん、とつぶやく。
「わかったわかった。銀さんお前のいやがることしねーから。中には入れねーから、コレ」
そう言われて、布団に囲われっぱなしの眼前にぷらんと、楕円形のプラスチックが垂らされる。
ローターとか言われるやつ。いつのまにそんなのも仕入れたんだ。
とりあえずそれを自分の中に埋め込まれることは回避できた、と一息つく間もなく、私はまたびくっと大きくふるえた。
「や、やだっ、ぶるぶるするっ……やめ、や、使わないんじゃなかったの…?!」
「使ってねーじゃん、置いてるだけ置いてるだけ。気にすんなや」
「ちょ、だ、だって……!」
……私の腰からお尻にかけて、ちょうどお尻の割れ目が始まる部分。
そのくぼみに沿わせるように置かれたそのおもちゃは、私の肌の上でまた振動を始める。
どうやって固定しているのか定かではないが、銀さんが私のお尻をまた両手でむにむにいじり始めたあとも、ずっと無機質に臀部の頂点でふるえ続けている。
「や、いやだ、これ…!なんかブルブルって…お尻に響く……」
小刻みな振動が脂肪の乗った尻肉全体に伝わって、快楽とはまた別、くすぐったさや不快感ともまた違う不思議な感覚をずっと私に与え続ける。
「いんじゃね?おめーケツの肉が…とか気にしてたじゃん。アブトロニック的なアレの代わりにつけときゃ痩せるんじゃね?」
「痩せるわけないでしょっ!」
「つうか、さっきからあれもこれもってうるせえよ」
「あ痛ッ!」
ばしっと臀部が一度、強く叩かれる。
その力の強さに、あ、結構本気で怒ってる部分もあるのか…なんてのんきに考えている自分もいて、しかしそんな思考もお尻からその下に向かってひたすら与えられ続ける振動にかき消されていく。
「あ、うっ…く、んっ……!」
悩ましい声が、自然とあがってしまう。
愛しい人の手指は、今度は力をまったく込めず、爪の表面で私の臀部をソロソロと滑っている。
するすると何度も、思わず口が半開きになってしまうくらいずっと。
「んー…飽きねえなあ、こういうのは」
「は、あっ……!」
「一日中ケツ撫でてるだけでもいーわ、俺」
「っえ…?!」
「いや、なんで?なんでそこで「え」なの?いつも嫌々、しかたなーく別に気持ちよくもねーおまんこしてたんだろ?苦痛だよそりゃ。俺がお前の立場だったら舌噛んでるね。同情するわ」
「え…あ、う、ち、ちが……」
「それをおめー、ケツさわるだけで済ませてくれるってんだからさあ、もっと感謝みてえなのしたらどーなの」
「感謝って……!」
銀さんの方を振り返ろうとしても、やっぱりそれは叶わない。
私はただ、無機質な振動といやらしい気持ちにあふれた指先の愛撫に悶えるだけだ。
「言えほら、ケツさわるだけにしてくれてありがとうございますって」
「え、あ、ああ、だって……だって、そんな…」
だって。
だって……えええ?
だんだんと、銀さんが要求していることと自分が思っていることと、本心、お妙さんの前での見栄っ張り、そういうものがごちゃごちゃしてきてわけがわからなくなる。
「も一発叩くか。おーい?」
「え、あ、ぎ、銀さん!感謝してますっ!」
「何に?」
「い、いっつも私、のこと、気持ちよくしてくれて、あ、ありがとう……!」
「……あー…」
パン、と銀さんが自分の額を叩いたのであろう音が響く。
その動作が何を表すのか理解できず、私はハラハラするばかりだった。
「可哀想に…いつも乱暴な彼氏に躾られて、そんなオベッカ口にするのが日常になってんのな…」
「はぁ?!何言ってるの?!」
「もういいんだよ、銀サン反省しました。もうお前には触んないし、お前の魂の解放を第一に考えるよ」
「え、ええええ、ちょ…ちょっと……」
その演技丸だしの声に戸惑っていると、ずしっと布団が重たくなった。
布団に巻かれた私の顔を、銀さんが上からのぞき込む。
「お前は何もしなくていいから」
「……?え、どう、いう……?」
ずるずると、上に乗った銀さんが下りる。
そしてまた、私のお尻に手が添えられた。
「が正直になってくれたから俺も正直になるけど」
「………」
「俺お前のけつすげー好き。ぷにぷにしてて、触ると吸いつくみてーだし」
「んあっ…!」
言って、尻肉をむにっとつまみ上げて。
それからまさか…と思ったそのまさかで、露わになった私のお尻の谷間と、その奥に隠れた恥ずかしい窄まりに、銀さんは思いっきり顔を近づけた。
「んやっ…や、ぁ……!」
「んー……ん、いいわ、やっぱ……おめーのココの匂いもかなり好き」
「に、においなんて…お、お尻の匂いなんて嗅がないで……!」
私のその願いは聞き入れてもらえないらしかった。
銀さんはすんすん鼻を鳴らして、私の恥ずかしい部分に熱い息を漏らし続ける。
……その感触に、今の異常な状況を一瞬忘れて、じわりと自分の肉の合わせ目から情欲が滴りかける。
「結構ひびいてんのな、これ…ぶるぶるイイか?」
「っ、よ、よく、ない……!」
まだ自分の腰の少し下で震え続けるローターのことを言われて、私は自由にならない身体でかぶりを振る。
「っは、勃起してきた…あー、やっぱ俺、に惚れてんだよなァ」
「っ……、う、あ…」
「お前が俺に夢中とか思い上がりだよ、いやマジで〜〜、俺がお前に夢中なんだもん、惚れまくってんだもん」
……その心情吐露は、本心なのか、私のあのお酒が入ったときの冗談を裏側から後悔させようとしているものなのか。
そのどちらかわからなかったけれど、いや、考える脳味噌もいまいち機能していないっぽいけれど、
私の体温を上昇させて、もうごめんなさいってば、大好きなんだってば抱きしめてよ!なんていう自分勝手な欲求を膨らませていく。
「…ぎ、んさ……」
「あーたまんね……」
私の懇願混じりの声など無視して、再びお尻にぐうっと顔を押しつけて。
ようやっと離れた、と思ったら、今度は…銀さんの言葉通り、かちかちに熱くなった肉茎が代わりにお尻をつついた。
「はんっ……?!」
…そして、その先端からにじみ出るぬめりで、私のお尻をなめくじみたいにずるずる滑っていく。
「や、ちょ…ちょっ、と……」
「気にすんなって、お前はほんと、何もしなくていーから」
「何もって…き、気にする…!お、お尻にそんなの……」
「あとで拭いてやるから」
「ち、ちがぁ…!そーいうのじゃなくて……!」
そしてお尻の割れ目に、十分にヌルヌルとした先走りが塗りたくられたと思ったら…ある程度予想はしていたのだけれど、銀さんの肉茎がそこに埋め込まれるようにあてがわれる。
息を飲む私を後目に、私を包む布団の下に、たくましい腕が片方回し込まれる。
そしてまた、ずしっと上が重たくなる。
同時に、お尻にぴったりくっつけられた銀さんの熱が、じゅくじゅくと上下を始めて…。
「……は、あー、たまんねー…尻ズリ最高」
「し、しりずりってなに…?!や、ちょ、ちょっと、ちょっとぉおっ?!」
……私の意見は黙殺されるらしい。
お前は何もしなくていいというのはつまり、勝手にさせろというのと同義なようだ。
銀さんはそのまま、身体を私の上で…普段なら、私を下に組み敷いて貫いて、がたがた身体を揺らしながらする動きを。
私のお尻の贅肉に自分の欲望を押しつけて、にゅるにゅると擦るために行う。
「…っ……は、やっぱ……あー」
「〜〜っ、…………ッッ!!」
ぞくぞくする。
頭上から、布団越しに聞こえてくる…いつもよりずっとはかなげで、切実そうだ。
……銀さんの欲情しきった、私を求める声。
「あ、う…う、ぎ、銀さん……」
その声に応えたくて。
今もう、刺激もないのに…あると言えばおもちゃの勝手な振動と、押し当てられる熱だけなのに、愚直に反応するこの身体をどうにかしてほしくて。
そう思って声を上げるのに。
「おま…呼ぶなって、元々お前に言われるくらい…ッ、早漏なのにさァ、もたなくなるじゃん」
…銀さんは、それでもなお私の欲望を黙殺する。
……ああ、これが今日のおしおき。
きっと私をじらしてじらして、泣きながらごめんなさいと言うまで許してもらえない。
そう思うと、銀さんのそんな意地悪さにまた不思議と興奮している自分がいて、身体が奇妙なふうに震える。
同時にずっと同じ感覚で与え続けられる機械の震えと、
お尻の上をにちゃにちゃ音を立てて滑っていく大好きな人の肉茎。
「……は、ぁ…ああ……」
漏れてしまう。
どれだけこらえても、卑しいため息が漏れ続けてしまう。
もうとろけきってる。
頭の中身も、自分の割れ目も。
どろどろの液体で満たされて、今か今かとあのたぎりを待ちかまえているのに。
「……ぎ、んさん、ご…ごめんなさいっ……」
「…あ、なにが」
「きのうのこと、ごめんなさいっ……!」
「……っ、……」
「ちょっと…ちょっと見栄張っただけなの!本当は私、銀さんのこと…す、すごく好きで、いっつも、ほんとに……!」
好きと口にすれば。
ああ本当に…私はこの人のこと、大好きなんだった。
そう思い出して、目が勝手に潤んだ。
「…好きか、俺のこと」
「好き…!大好き、大好きっ!」
「……俺の、欲しい?」
こくんこくんとうなずく。
そんなの、聞かれるまでもない。
「じゃ、ほら…くれてやるから」
「う…ん、はやくっ……!」
そう答えて、お尻を疼かせた瞬間に、ずっと半端な場所に当てられ続けていたローターがすっと外されたのを感じて、さらに期待に胸が震えた。
「銀さんっ……!」
「くれてやるって、ほォら…ッ」
「……んっ……?!」
びちゃっ、と。
その瞬間、自分のお尻と秘処に…熱い感触。
「は…まだ出るわ、たっぷりかけてやるから」
「え、え、ええ、だ、だって…くれるって……」
「っ、だからやるって…お前が大好きな、銀さんのザー汁」
「えっ、な、ああぁあ…?!」
ぴっ、ぴ、と、残りの飛沫がさらに臀部に振りかかる。
「っは、あー……出た、出たわ、ひー、へへ、良かったぜ〜」
「え、ええええええ?!」
わけもわからず、私は脚をじたばたさせた。
「く、くれるって…言ったぁ!言ったのに!」
「ふー…だからやったじゃん、銀サンの」
「ち、ちがうちがうっ…約束ちがうのぉ!」
…ばたばたと。
脚を虚空にばたつかせながら、私は本当にちょっと涙が出てきた。
そんな私の布団に丸められた中の顔に。
にゅっ、と、銀さんの手の平が伸びてきた。
「…てめー、俺がマジで怒ってないと思ってる?」
「…………う、ううっ……!」
「…お、いいなそのツラ。えっろい涙でぐっしょぐしょ」
「っ、うう、う、うー……!」
「こォおんなツラ見せといて、なに?「えっもう終わり?」とかマジで思ってるの?」
「……お、思って……な…」
「オメーが俺に惚れてるとか、銀サンの思い込みだって?」
「…………く、うう…ううう…!」
むにっと両頬を大きな手で捕まれながら、私は情けない声を上げる。
「銀サンとハメたい?」
「…〜〜っ……!」
……うなずいた。
…………だというのに。
「でもなー。見ろこれホラ」
「あっ?!」
ずい、と、私の前に屈んで。
「さっき出ちゃったし。今日二回できっかな」
「そ、そんなぁ……!」
……心底あんまりだ、という声を出した瞬間に、私は銀さんの策略にはまったのだと…ニタッと笑う顔を見て思った。
「お、くっついたくっついた」
「……、う……!」
医療用のサージカルテープ。
普段は包帯とかをとめるために戸棚に入れてあるそれで、さっきはすぐに取り上げられたローターをしっかり陰部に張り付けられて。
それから銀さんは私の目の前に戻ってきて、長いコードとその先のリモコンをかちかちやっている。
と。
「あッ、あ、あぁあぁあぅ?!」
突然秘処にくくりつけられたおもちゃが振動を始めて、思わず飛び上がる。
「ぎ、銀さんこれっ、ちょ、強いっ、強い強いっ…ちょ、直接あたるぅうっ!」
「直接?」
「ちょ、ちょくせつっ、く、くり、ん、はあ゛ッ、と、とめてっ、ちょっ、く、クリトリスに当たるぅうっ!!」
びびびび、と、変動しない代わりに手心もない振動が、ひたすら私の一番神経の集中する肉芽を襲う。
「は、ひッ、こ、こんなのずっと、あ、あああ、当てられたらぁあっ!」
「どーなっちゃう?」
「ふ、ああ、お、おかしくっ…お、おかしくなっちゃう、よ……!」
はっ、と舌を出して刺激に喘いだ私の目の前で、銀さんが…自分の肉茎をくいっと手で持ち上げる。
そして、すこすこと。
ちょっとした滑稽さと、どうしようもない淫猥さを持った動きでそれを摩擦する。
「見して見して。がおかしくなっちゃうとこ見して」
「あっひ、あ、ああ、だ、だめっ、ぶるぶるやめてっ、や、あ、ああ、あぁああぁッ…!」
「頑張れって、銀サンのこともっぺん興奮させんだろ?オカズ提供してくれんだろ?オナペットはそんな文句言わない」
「おなぺっとぉ?!っあ、ひ、いやっ、あ、ああ、だめっ、ほ、ほんとにこれ強いのっ、ひあッ、よ、弱くしてっ、弱くっ、お願い……っ!」
ずっと継続する陰部への刺激に、足の指の先をぴぃんと吊らせながら哀願する。
それは聞き入れてもらえるのか、銀さんはまたリモコンをくるっといじった。
「ふ、ぅ、あ…は、よ、よわくなっ…ひぃぁ?!」
弱まった振動に少し安堵した瞬間、それを見透かすように一度、ぶるっと大きな刺激が襲う。
「うあひっ、ひ、これ、なにっ……ふぅぁあッ?!ま、またきたっ…や、あぁあっ!」
「おー案外効くな……ランダムで強くなるみたい」
「そ、そんなのっ……だ、だめ……ああ……!」
刺激が不規則であるなら、さっきよりもおびえなければならない。
いつ襲うか解らない衝撃に常に気を巡らせていなければならないのだ。
…ついでに、ローターでの刺激がまったくなんでもないかと言われればそうでもなかった。
延々と続く同じペースの振動は、尿意にも似たむず痒い快感を私に与える。
そして不規則で大きな波が来るともなれば。
「は、あ…ああ、ぶるぶるこわい……お、おっきいのきちゃった、ら……あ、あんっ……は、はっ……!」
「だんだん顔とけてきたじゃん、ああ、いけるわ、これなら銀サン二回目いけそーだわ」
そう言われて、私を責める愛しい人の手元に目をやれば。
確かにその肉茎は、また熱を取り戻しつつあるようだった。
「ぎ、銀さ…はんぅぅうっ?!あひッ、あ、あ゛あ゛つよいのきたぁあぁっ!やめてっ、や、やっ、やぁあぁっ!」
悲鳴を上げているうちに、強い振動は波のように引いていった。
ゆるやかな刺激に戻って、私をほんの少し安心させる。
「今のお前、完全おもちゃに遊ばれてんなー。どっちがおもちゃ?」
「ひ、あ、そんなのっ…わ、わかんないっ、わかんな、あぁ…わかんな、ぁ、あ、い……おも、ちゃはおもちゃでっ……私は銀さんの、おもちゃ……!」
「……へー……」
おもちゃに身体をなぶられ、
銀さんの言葉に心をなぶられ。
ふたつの責め苦に口から出た言葉は無意識なのに、自分の今を顕著に表しているような気がする。
「…んー♪」
いいこと思いついた、なんて顔で、銀さんは私を見つめる。
「んじゃ、次強いの来たときイクことな?イケなかったら俺またひとりでマスかいて出すわ」
「え?!え、そ、そんなの、むりっ……あ、あぁあ?!きたっ、きたぁあっ!つ、つよいの、きたっ……あ、い、いくの…?!あ、で、でもっ、は、あぁぁあーッ?!」
「おらどーしたおもちゃ、銀サンの言うこときけねーの?早くイカないと終わっちゃうけど」
「や、やだ、やだやだぁあぁあ!が、ん、ばるぅうっ、んひっ、ひ、あ、でも、そんっ…むり、無理ぃい……っ!だめっ、あ、終わっちゃだめっ!も、もう少しっ、も、もっと…もっとぶるぶるしてぇえっ!」
突然の言いつけと、同時にやってきた刺激に悲鳴を上げる私の頑張りも空しく、ローターの波状刺激はまた無難なものに戻っていく。
「あーあー。ダメだったな」
「あ、や、待って、待ってぇっ!がんばるから、次、次でいく、から、がんばるからおねがいっ、おねがいっ……!」
「「今度」と「おばけ」は出たことねーってお前、聞いたことねえ?」
そんなことを口走りながら、銀さんが自分を擦り立てる手にさらに力をこめたのを見て、私はついぼろっと涙を流した。
「ないないっ、そんなのきいたことないのっ!お願い、お願い銀さん……っ、わたし、ほんとっ…!」
「……んー…」
ああだって。
だってもう。
「ぎ、銀さんもほんとはわかってるでしょっ、わた、しがっ、銀さんなしじゃもう生きていけないのっ…!銀さん中毒で、銀さんしかもういないって、わかってるでしょ……?!」
もどかしさと頭の中のぐちゃぐちゃが一緒になって涙としてこぼれた時に、ふいに。
「私はっ……ッア?!あ、あ゛ーーーっっ!!」
張り付けられたおもちゃの振動が、いままでの比でないくらいに強くなった。
まったく予想しなかった振動に、まるで機械仕掛けのようにびくっと、私はあっけなく軽い絶頂を迎える。
そうして仰け反った瞬間に。
「んはっ……は、あ、あいっ……ぎ、んさぁ、あぁああああぁあっ!!」
ぶぢゅりと音を立てて、背後に回った銀さんが私を貫いた。
「はがっ…あ、ああ、これ…え、これっ、これこれぇええっ!!待ってた、あぁああ……!!」
歓喜に震えてかぶりを振れば、とたんに身体を覆っていた布団がぱらんとほどけた。
ビニール紐か何かでくくっていたらしく、手にした鋏で銀さんがそれを切ったのだ。
もうためらわず、私はぐるっと寝返りを打って銀さんにしがみつく。
「銀さんっ、はっ、あ、だい、すき、好きっ、好き好き愛してるっ……!」
「ちょーしイイんだよ、てめーはっ…!」
「んっ、う、も、もうなんでもっ…なんでもいいっ……ぎ、銀さん、好きだもんっ、はぁ、あ、ああぁあっ!」
銀さんにしてもずいぶん落ち着きのない様子で、私のくちびるをぐいっと奪った。
「ん…う、ふぁっ、ん、ふ、ふぅ……!」
「は…てめ、な、俺、まだ許してねー、ぞっ……!」
「ゆ、許さないでぇ…!ゆるすまでっ、ゆるしてくれるまでなんかいもっ、何回もエッチなことしてぇえ……!」
「…てめっ、言ったな…!おしっ…これから毎日俺の写真でオナニーして報告しろよっ……!」
「は、ああ、そ、そんなのでいいのっ…いいよっ、するぅうっ……ん、ンッ…銀さんオカズにまいにちしてっ、報告するぅっ……!」
「……あー!!もーオメーはぁああ!」
そう言って、銀さんの手の平が私の髪の毛をわっしゃわっしゃみだす。
それも不愉快ではなくて、むしろ嬉しくて…きゅうっと膣穴が勝手に収縮する。
「っお、あ…じゃー、は、アレな…!俺んちで家事するときは裸に割烹着な!ケツを隠すことは許さん!」
「わ、わかったぁあ、や、やるっ、はだかかっぽーぎやるっ……!銀さんのいうことなら全部やる……!」
今度は銀さんは、自分の頭をぐしゃぐしゃ掻いた。
「っ…は、あ、ああテメーはもう…銀サンのモンなんだから、冗談でも偉そうなこと言うなよっ……!」
「い、いわない、いわないからぁ!」
近い、ああもうすぐ。
もうすぐ大好きな人と一緒の絶頂が昇ってきてしまう。
「……もしかすっと、俺がおめーの言いなりなんじゃって、怖くなるんだ、よッ……あ、あー出る、出るっ……!」
「あ、わ、私もぉおっ!い、あ、いっあ、いっ、ひ、あぁあああぁああああっっ!!」
銀さんががしっと私の腰をつかんだ衝撃で、一気に頭の中が弾けた。
「……銀さんは、外で言う?」
「あ?何を」
「…だ、だから、俺の女…ていうか、彼女…は、エロいんだぜー、とか……」
「相手がいねえわ」
「そ、そっか……」
「……」
「…………」
「………………」
「…なんなのお前、はすげー淫乱だって、周りに言い触らしてほしいの」
「ち、違うけど!違うけど…えっと……」
「……」
「な、なんだろ…ね、あ、あははは!」
******
なにこれもう…。
女友達(お妙さんとか)の手前見栄張って言ったことが銀さんの耳に入ったら、
なんかもうとんでもないおしおきされそうだよねって話を。ツイッターとかでしたりして。うひひ。
読んでくださってありがとうございました!!