……なんだか、いつも以上に。
私と布団に入った銀さんが、普段よりもずっとそわそわしていることが、なんだか気がかりではあった。
比較的薄っぺらい敷き布団の上に私が寝転がって肌をさらし、恥ずかしさから顔を覆って。
私の肌や髪に、触れているというのに。
私の身体に覆い被さった銀さんはどこか集中しきっていなくて、そわそわと。
まるでほかのことが気になって仕方がないというようにしているのが、簡単にわかった。
……それがわかるくらいには、私と銀さんの付き合いも長くなった。
「銀さん……?」
「ん…どした」
「どしたって……銀さんが、どうしたの」
私がそう問いかけると、銀さんは露骨にぴくっと反応した。
そしてまるでごまかすように、勢いよく私の唇に噛みついてきた。
「んふ、ん、ぅう……は、あ…銀さん…」
「なんも怖いことねえって…銀さんに任せな」
「べ、べつに怖いんじゃなくて……」
そう言いかけた私の下腹部に、銀さんが手をやる。
私は思わず目を瞑った。
……そしてちょっとした逡巡のあと、秘処にあてがわれた異質な感触に飛び上がった。
「えっ、ちょっと……え、な、なに……?!」
指では、ない。
ましてや銀さんの熱でもない。
肌とは異なる冷たさと硬質さ、つるりとした感触を持ったものが、じわりと愛液を滴らせる私のひだをかき分けて、入り込もうとしていた。
「や、ややちょっと!銀さん……なに?!」
「んー……こないだ買った」
「買った……?!え、それっ…なんなの…?!」
「ホラアレだよ……なんてえの…アレ、なんだっけ……おるがすたー?」
「お、おるっ……そ、それって…え、ば、バイブ…!?」
「よく知ってんじゃん」
「あっ、え、えっと……じゃ、なくって!!やだっ、ちょっと…いや……!」
ぱっと閉じようとした私の脚を、銀さんがぐいっと押さえつける。
「かてえこと言うなって。何事も経験だって」
「や、やだやだ…!わ、私のなかに入っていいのは銀さっ……ん、あぁあ?!」
押さえつける太い腕の力が強くて、結局拒みきれなかった私のなかに。
まるでぐっと、圧迫感は段違いだったけれど……月の障りの経水をとどめる道具を入れるかのようにすんなりと。
無機質でやっぱり冷たい、薄ピンク色のおもちゃが挿入された。
「あ、あく……ぅ、ちょっと…ほ、ほんとにやめて…ぬ、抜いてっ……」
「あっさり入ったじゃん…ホラ、よっと……」
「う、あ、うあああっ?!」
銀さんが私の股ぐらでなにやら手を動かした瞬間、びびびび、とおもちゃが振動を始める。
膣の中に入った、小さめの男性器をかたどっているのであろう部分も震えたが、
その部分にくっついて身体の外に露出し、私の肉芽を包み込むように覆い被さっていた部分もぶるぶると振動する。
「や、あ、ああっ、ちょ、ちょっと……なに、なにっ、あ、ああ、やだ、やだこれ…あ、やだぁああ!!」
「やなことねえって…ん……」
「あ、あきぃっ…ぎ、銀さんっ、や、あ、ああ、あっ、あぁあッ……!」
下腹部の愛撫は無機質なおもちゃにまかせっきりにするつもりなのか、銀さんは私の胸のさきっぽに吸いつく。
そして無遠慮に、充血した乳首に犬歯を立ててこりこりといじめるように刺激を与えてくる。
私はもう、なにがなんだかわからなかった。
震えて膣と、肉芽を襲う感覚は、間違いなく快楽だ。
私の望む望むまいに限らず、一定の強さで振動を続けて私を包み続ける。
ただ、それは……ふだん、銀さんが私の秘処をいじってくれたときに与えられる「気持ちよさ」とは全く異なる感覚で、なんだかそれを考えると泣きそうになる。
そして泣きそうになるのに、銀さんが私の胸をいじくる感触がぎりぎり、私を気持ちいいという揺らぎのなかに押しとどめる。
「い、いやっ……いやだ、いや、ぁ、あぁあっ!あぅ、い、やぁあ……ッ!」
「んー……なにがそんなに嫌なんだよ、ホラ、けつまで垂れてきてんじゃん、のねばねばしたの」
「い、や……だから、そ、それが…いやなのっ……!」
「あん……?」
そう口にして、ようやくわかった。
そうだ、私は恐ろしいというより嫌なのだ。
私の膣の中に入って勝手に動いていいのも、私を気持ちよくしていいのも銀さんだけだと思っているから。
だから突然それを、こんな無機質なおもちゃに破られてしまうのが、とても嫌なのだ。
「や、やだ…い、ああ、わ、わたし、こ、この、まま、じゃ、ああ、う、ぁああ……!!」
「うら、脚プルプルしてきてんぞ?我慢すんなって…イクとこ見してみ」
「やだっ、やだ、やだやだ……!!」
感じない感じない、気持ちよくない気持ちよくないと念仏のように、必死に頭の中で唱え続ける。
……それなのに、感情のこもらない無機質な振動は私をひたすら襲い続けて、特に肉芽の部分への震えはどんどんと、私を一点の高みに連れていこうとする。
「か、感じないのっ、気持ちよくない、よ、よくないっ……ん、ぁ、ああ、やだ、やだぁあ、い、いくっ…ち、違う、いかない、いかないけど、い、ぁ、あ、あっ……!」
「お前わけわかんなくなってんだろ…ほら…ッ」
「ん、か、はぁっ?!あッ、か、噛まないで……あ、い、いや、いやぁ、あ、あはぁあああぁああーーッッ!!」
ひくっ、と、自分の身体が一瞬、ふわりと浮くような感覚に襲われて…そして今度は一気に、重石を乗せられたように重たくなって弛緩する。
「あっ、ああ……あ、う…あ」
「おー、跳ねた跳ねた。かわいいねェお前……」
「う、くっ…」
銀さんが私の額を撫でて、前髪をかきあげてくれるその動作も。
なんともいえない屈辱に満ちた私の心には、憎たらしいものとして入り込む。
だいたい得た絶頂も、銀さんと共にするものとはぜんぜん違う。
普段の深く、解け合うような感触に比べれば、いまのなんて厠に行ってスッキリ☆くらいのものだった。
「く…こ、この……サドあくま……!!」
その後に、銀さんがいやらしい笑みを浮かべながら私を普段のように抱こうとするのもなんだか気に食わなくて。
私は本当に、なんともいえない………なんとも表現できない気持ちに包まれたまま、その夜を過ごした。
……預かっている鍵を持って、静かに階段を登る。
「万事屋銀ちゃん」の玄関の前に立って……静かに鍵を差し込む。
からからから……と、静かに引き戸をあけて……泥棒よろしく抜き足差し足で……私は深夜、草木も眠る丑三つ時に。
真っ暗な銀さんの家に足を踏み入れた。
手にした風呂敷包みをより強く抱きしめて、和室へ歩く。
……チェック済みだ。今日は神楽ちゃんは志村家にお泊まりしている。
銀さんは出歩きもせず部屋で静かに眠りについてる。
「………っ」
ぎり、と歯を噛む。
この間の雪辱を。
このオッサンくさい天パは、言葉にしたって理解してくれないだろうあの屈辱を、その身にたたき込んでやるのだ。
そのために高いお金を払って、ねっと茶屋で「密林どっとこむ」にアクセスしていろいろ購入したのだ。
あとは私が首尾よくやれば、復讐は完遂できる……!
「…………」
なんだか少し、自分が奇妙な興奮に襲われていることを自覚して……かぶりを振る。
ふすまを開けると、銀さんは掛け布団を吹き飛ばし、甚平をぐずぐずに着崩して鼾をかいていた。
「……くっ」
これから行うことを想像して、ちょっと嗜虐的な笑いが漏れる。
風呂敷を畳に置いて、その包みを開く。
……ぱっと見、黒いガムテープと言った感じの塊を取り出して、ぺり、とそれを剥がしていく。
「いたりあ直輸入の強力ぼんてーじテープ」というものだ。
なんだか革靴にも似た匂いが鼻をつく。
ごくんと、自分の口腔に溜まった唾液を飲み込んで、それを銀さんの腕に……巻き付ける。
片方の腕にしっかり巻き付いた、と確認したら、端っこをもう片腕にぎゅっと巻き付ける。
「ん……んが…?」
「っ……?!」
銀さんの鼾が突然止まったので、びくりと跳ね上がる……が、杞憂だったようだ。
銀さんは拘束された腕になど気づかぬようで、また規則正しい寝息を立て始める。
……次は脚だ。
私は静かに、布団の足側のほうに移動して……またテープをびっと伸ばす。
足は腕より簡単だ。銀さんはさほど足を開かずに寝ていたので、両足をひとくくりにできる。
「とても強力な、ボンテージとして使用できるテープです!拘束用として使えば、パートナーの自由を完全に奪うことができます!テープ同士の接着は非常に強力なので、解放するときははさみで切ってあげましょう」
……って、説明にあった。
いくら胆力の強い銀さんでも、寝込みを襲われれば弱いだろう。
「……ふぅ…」
銀さんの手足を縛り終えて、緊張でかいた汗を拭う。
……そう、ここからが本番だ……。
「……ん……んっ?!」
甚平の下を脱がして、銀さんの肉茎をふにふにと触ったところで、ようやく銀さんは飛び上がった。
「お…おい……あ?!なんだこれ?!」
「こんばんはー、おじゃましてますぅ銀さん〜」
「?!お、おい…ちょ、腕とコレ……何コレ?!」
「ん〜、銀さんにぃ、ちょっとサービスしてあげたくってぇ……ほら、こうやって……」
「う、うおっ……?!」
できるだけ小憎たらしくそう言って、私は銀さんの肉茎を口に含む。
「んむっ、る…ろ、るろっ……ん……」
「お、おいちょっとマジで…チャン、なにやってんの?!」
「んふっ……ふぇらちお」
「年頃の子がそんなこと言うんじゃありません!ってか、腕をほどけ、腕を!」
銀さんがそう言って、頭の上でくくられた腕を揺する。
私はにっこり笑って「やだ」と即答して、また銀さんのそれへの愛撫を再開させる。
はじめは本当にふにゃふにゃで、舌でねぶるのもむずかしかったけれど。
だんだん意識が覚醒してきてしゃっきりしたのか、少しずつ血液が集まってくるのがわかる。
ぴくっ、ぴくっと微動して、硬くなってきたかり首のところを舌の先でちろちろなでる。
それに銀さんが身を震わせることを確認したら、唇でその首もとをはさみこんでちゅうちゅうと吸う。
「っ、ちょ、やべえって……」
「んっ……はあ、ふー……大きくなったぁ」
「そらなるって…おい、なんだよホントもォオ!逆レイプ?反抗期なの?!」
「んー、ちょっと、ちがう」
手で根本をこしこしとしごいて、肉茎がもう手を離してもしっかり隆起していると確信してから。
わたしは風呂敷包みから、プラスチックの箱に入ったものを取り出す。
「ちょ……何?なにしてんの?」
「これね、すごく高かったんだから。ゆーざーれびゅーで一番評判がいいの買ったんだー。アルバイト代一月ぶん飛んじゃった」
「は?なに?なにが?おい、いい加減に……」
銀さんに背を向けて。
その、とっても柔らかい「筒」の中に、箱に同封されていた液体をとっぷりそそぎ込む。
それをしっかり持って、勢いをつけて。
「うらぁあぁあ!!乙女の純情を傷つけた復讐じゃあっ!!」
「おっ、あ、おぉおおッ?!」
ぶちゅっ、と下品な音を立てて。
その、俗に言う……「おなほーる」を、銀さんの肉茎に突き立てた。
「あっちょっコレェエ?!コレ何?!ちょっとオォ!!」
「「柳腰の若妻」だってぇ…ほら、ほらっ……!」
そう言って、シリコンか何か、とにかくとても柔らかい素材で出来たその筒を、むぎゅうと強くつかんで上下にしごく。
「うあっ……あ、お、おい……これ、お前、これオナホ?!なんッ…う、ちょ、どーしてこんなん持ってんの?!」
「だから買ったんだってばー。どう?若妻のアソコ気持ちいい?」
「や、これ若妻のアレじゃなくてただのシリコンだろーがァ!……っ、つ、ぅ…おっ、おおっ……?!」
「あ……いいんだ、こうやって底を先っぽに押しつけてぬりゅぬりゅ〜ってするのがいいんだ」
「や、よくねーよ!よくねーって!ヤメロお前っ……つ
、ぅ…!」
そう言いながら、銀さんは瞳をぎゅっと閉じて歯を食いしばる。
……この顔、知ってる。
銀さんが気持ちよくって、もう出したくって、それでもまだ楽しんでいたいからこらえてるときの顔。
「うそうそー。いやなんて思ってないんでしょ?びっくんびっくんしてるもーん、銀さんオナホできもちいいんでしょ?」
……この間、おもちゃで私が責められたときに銀さんがしたような口振りで。
私は銀さんをいたぶる。
「いやもうわけわかんねーよ!……っ、お、あ…ちょ、ちょっホントッタンマタンマ!」
「待たないもんバカバカ」
痛いかなあ、と思うくらい強く握った方が効果的みたいだ。
想像するに、筒の内側でまるで柔らかな突起が密生しているようになった部分が、銀さんの跳ねっかえる裏筋をぞろぞろとなで回している。
「…………っ……」
その、下品でいやらしいところが頭の中にしっかり浮かんで、熱いため息が漏れた。
そして銀さんが必死にこらえて、抵抗する様子にちょっとドキドキして……その昇ぶりが、感情的な言葉を吐かせる。
「どう?!おもちゃでいかされちゃう気持ちわかる?!気持ちよくなりたくないのに、銀さんの指とおちんぽでいっぱいいっぱいいじめてほしいのに、へんなおもちゃでいかされちゃう屈辱、理解できた……?!」
「……って、おい、お前それ…」
「あんなのぜんぜんよくないのっ、気持ちよくても気持ちよくないのっ!銀さんの身体とはぜんぜん違うの……っ!」
「…………」
「わかった?!理解できた?!こんなただの筒で気持ちよくなっちゃうの、嫌でしょっ!」
「あーーー」
「銀さんはっ……って、わあぁ?!」
銀さんが、腰とお尻をバネにしてふんっと起きあがる。
…手足を縛ったくらいじゃ、銀さんの自由を完全に奪い取ることはできなかった。
上半身を起こして布団に座り込んだ銀さんは、股間にピンク色の筒をぶっ刺したままというなんだかなんだかな状態で、私の身体を縛られた腕でなんとかたぐりよせる。
「こないだのそんなに嫌だった?」
「う…」
状況は非常にシュールなのに、銀さんにしっかりと見つめられれば、私は姿勢を正してドキリとしてしまう。
そうよ嫌だった、と、なんだか恥ずかしくて口に出来なかった。
「でも、きもちよさそーにしてたじゃん」
「そ、そういう問題じゃないの…っ!」
銀さんがぐぐぅとだだっ子のような表情を作ったので、私はようやく「ドキッ」から解放されて、感情を吐き出す。
「き、気持ちよかったよ…なんかああいうのも…でも、なんで?なんですぐそばに銀さんがいるのに、あんな棒きれ入れられなきゃなんないの?」
「棒きれって……そりゃお前…プレイってかさぁ」
「プレイもなにも、嫌だもん!裸エプロンもおしりのあなもいいけど、あれはなんか嫌だったの!」
私が言い切ると、銀さんはふーっと深呼吸して、私の肩にあごを乗せてくる。
…こんなふうに向き合うと本当にいつも通りなのに。
……と、考えたところで。
ああ、私ほだされそうになってるじゃないか!
……という声を、復讐心が発した。
「…く、え、えい……!!」
「あがっ!?お、おまっ…ちょ、待てっ……」
しっかり顔が見える状態で対面した今は、少し恥ずかしさもあったけれど。
それに負けないうちにと、私はまた銀さんの股間に手を伸ばした。
「今日はっ…ぎ、銀さんの思い通りになんてなってあげない…!銀さんがこの中に出しちゃうまでいじってやる…!」
「や、お、お前さあ、あの、なんっ…ちょ、ちょちょ、い、いいわけ?銀サンの貴重な子種が柳腰の若妻に横取りされるわけ…っお、く……!」
「懐柔しようたって無駄っ…そんなこと言ったらこの間は、わ、私のアソコ…変なおもちゃに寝取られてたんだよ?!」
「寝取られてねーよ!ぁぐっ……あんなちみっちょい道具に寝取られてたまるかァ!」
「ううん寝取られた、寝ー取ーらーれーたー!!銀さんの見てる前でイヤって言ったのにむりやりイカされたぁ」
「お、おまっ…ちょ、やめっ……て、いや、あの…ホント?」
一瞬銀さんが抵抗ではなく、ためらいの表情を見せたので、上下にしごく手を止める。
「あの、もしかしてお前、銀サンよりあっちの方がよかった?」
「…………!!」
わ、わかってない!
ここまでしたのにぜんぜんわかってない!
「そんなわけないでしょうがっ!あんなただ入ってきてびびびび〜ってなるのと、だ、大好きな銀さんを比べられるわけないでしょ!!」
「俺のほうがいい?」
「当たり前のことを言わせないでっ…もう、なんでわかってくれないのぉ……ちっともよくない、あんなのっ…」
言いながら、自分の言動が二転三転と変化して矛盾を繰り返しているのに気づくのだけれど、止められない。
私はもうムキになって、だんだんと注いだローションが水分を失ってきて、にちゃにちゃと粘着質に変化してきているのもかまわずに銀さんの股間をしごく。
「おま、、そんな言うんだったら、これだってよくねーっての…」
銀さんが、一瞬びくっと跳ねながら私の顔を見る。
はだけた甚平から、しっかりと締まって強さを象徴する胸板が見える。
そこに汗の玉がいくつか浮かんでいるのがわかって、それは銀さんが吐く、落ち着かない呼吸といっしょになって私の心を奇妙に興奮させた。
ああ、この胸に抱き寄せられて、屈強な腕で撫でられるのが。
すっぽり身体を包まれて、銀さんのモノにされてしまうのが。
すごく気持ちよくて、大好きなのだ。
「は…ど、どう……いきそう?出しちゃいそう?」
「……」
ちょっとうわずる声で、銀さんが私の名前を呼ぶ。
その不意打ちにまた、どくんと心臓が揺らぐ。
「お前と一緒だって、こんなん全然よくねーって…」
「だ、だから…なに…」
「入れたい」
「っ!」
その、入れたい、が、どこになにを、かをしっかりと理解した心が、期待と歓喜に震えた。
ほだされてはならない、思い通りになんてならないと歯を食いしばったのに。
「…う、なに…もう根を上げるの…っ」
悔し紛れにそんな言葉を絞り出してみたけれど、その声も変に震えて締まらない。
そしてそれを自覚してさらに、私は目の前の男がどうしても好きなのだという考えに行き着いて……落ち着かない。
「うんうん、銀さんもーダメ、もー出る、もーいっちゃう」
私のそんな心の機微を掬いとって…銀さんは、追い打ちをかけてくる。
「のあったけー本物まんこに突っ込みたーい、お前の中で…たっぷりイキたい」
「…………ぅ、うう……!」
ぶんぶんとかぶりを振る。
流されてしまう、このままでは……。
銀さんの思い通りになんて、してあげないのだ。
でも。
でも……なんで、そんな意地、張ってたんだっけ……?
「ちょっと…いっぺん、これ抜いてみ?」
「あ…う、うう……」
言われるまま、私は銀さんの股間から「柳腰の若妻」をずるりと引き抜く。
引き抜いた瞬間に銀さんがまたぶるぶるっと震えて、その様子に意識しないうちに息が漏れてしまう。
「うお…なんかつめてーわ、空気が」
「ぅ……うあ……ああ、すご……っ」
そんな現金な台詞が、口をついて出た。
内臓みたいな、桃色の偽物の肉がにゅるんと抜けた瞬間に、銀さんの肉茎は勢いよく反り返った。
座り込んだ銀さんのおなかを叩くんじゃないかという勢いで強く隆起して上を向く。
ホールの内側に塗り込んだローションなのか、銀さんの尖端から滴り出た滲液なのか。
破裂しそうなくらいいきり立ったその熱をてらてらと光らせる。
「入れたいだろ」
「………う、うん……」
「じゃあまず俺の腕と足をほどく」
「…………」
意地も、なにも。
そんなの張ったっていいことなんてないし可愛くもないのだ。
ただ素直になればいい、私の思いを心から言えばいい。
「んっ、は、あああぁああっ……!!」
「ほーら…簡単に入るじゃん、お前もぐっしょぐしょ」
私の足をまるで蛙みたいな形で固定して、銀さんがぐりぐりと押し入ってくる。
やっぱり、何よりも。
この熱くて、私のなかをいっぱいに満たしてくれる熱と。
同時に私をすべて包み込んでくれる銀さんが、私は。
「大好き、大好き大好きっ!銀さん大好きなのにばかばか…っ、あ、あぁあああ……ッ!」
「はいはい、わーったわーった…ちゃんと入ってんだろ、お前の中に大好きな銀サンの暴れん坊が」
うなずいて、ぎゅうっとお尻に力を籠める。
「は、入ってる…う、これ、これがっ、本当に……銀さんの、おち、んちんが…!」
「っ…お前のまんこもな、すげー……あー、いいぜ」
「うっはぁああっ、あ、あぁあ……!うれしっ…わ、私のおまんこ…銀さんのちんぽ離さないよっ……!」
みだらな言葉も、恥もなんにもなく平気で放ってしまう。
強く押し入って、そしてぎちゅぎちゅと私のなかを拡げるようにゆるゆる振られる腰に意識を散漫とさせられながら、私は銀さんに必死でしがみつく。
「だ、あ、い…っ、大好きっ、銀さんのこと……っんはあ、あ…大好きなの……!」
「そーな……こんなヨダレ垂らしてみっともねー顔して…お前がこんな顔見せんの、俺だけだもんな…っ」
「ぎ、銀さんもでしょぉっ…銀さんが私のすけべ穴のにゅくにゅくしたトコに、先っぽこするの好きなの知ってるのは、私だけだもん……!」
「あん…?!したらおめー、の中の上のとこがこんなエロい感触なのも、ギチギチ締まんのも俺しか知らねーよ……く、あ…!」
「だ、だったら、だったら……え、えっとお、銀さんがフェラのとき、かりの下に寄った皮のしわしわを伸ばして舐められるのが好きだって知ってっ………ぁ、あぁあああーッ?!」
「うるせっ、もーなんでもかんでも…ッ、俺とお前だけでいいじゃん…それでいいじゃねー、かよっ!」
ぐうっと、より一層銀さんがめり込んでくる。
私は子宮のいりぐちを押されて、その感触で身体の中身が全部上に昇ってくるような錯覚を覚えて、
そして昇ってくるその気持ちいいふわふわに、すべての感覚を奪われていく。
奪われていく中でも、しがみついた銀さんのことだけは強く認識できて。
「あぐっ……こんな、こんな気持ちになるのも、銀さんだけぇ…!す、好き、もうわけわかんないけどっ、どうにかなっちゃうけど…好きっ、好き好き好き好きいぃいっ!」
「こンの……おめーはっ……ほんっとに……あー、出る、出るっ………ッ!」
「はっ、あ、あ゛ぁああぁあーーーッッ!!」
大きな波が押し寄せる。
私の身体を穿つように、銀さんの先端からたぎりが迸る。
それを受けて、呼吸まで止まるような絶頂を迎えて………やがて、身体が弛緩する。
「はふ…、ふ、ぅ……銀さん……撫でてー」
「へいへいっと……うりうり」
「ふぅ……ぅン…………ん」
「………………」
心地よい疲れに酔いしれていた私の頭を撫でていた銀さんの手が、止まる。
「銀さん…?」
「………いいもんみっけ」
そうしてぐっと身体を、布団の脇に置いた私の風呂敷包みに伸ばして……あ。
「あああああ!!」
銀さんの手に、ぼんてーじテープが握られる。
「……第二ラウンドと行こうや」
「……………う、ううううう……!!」
私のことをいじめるのが大好きなのも、私だけが知ってればいい……の、だろう、か。
************
うわああ。
いつも以上に下品なのですが、エロさは控えめかなあとか…。
ようはいちゃいちゃを通り越してべとべとねちゃねちゃする二人を書きたかったんです、すみません…。