金繕いの銘

「お……お嬢、こいつは一体どういうことなんだ」
「そ……それは私が知りたいんです……うぅうぅ」
 連続した休館日の二日目。菊池が司書の部屋に赴くと、彼女は沈痛な面持ちで椅子に腰かけていた。
 昼前くらいの時間帯だというのにまだワンピースタイプのパジャマのままで、その股間らへんをぎゅっと押さえ込んでいるので、どうしたんだと菊池が近づけば、恋人が歩み寄ったとは思えない仕草でビクリと震えた。
 だが、彼女は数秒の逡巡ののちに観念したかのような顔になり、こんなことになっていたんですと言って寝間着の裾をまくり上げた。
 ショーツはつけておらず、股間がむき出しだった。普段ならなんだお誘いかとにやけるところだが、そういうわけにもいかなかった。
「なんで男根が生えてる……あ、アンタ、男になっちまったのか?」
「違うんです……!」
 司書の股間には、幼い少年のもののような色白のペニスが生えていた。あどけない竿の下には柔らかそうな玉袋があり、そこだけ見れば彼女の性別が変化したのかと思ってしまうのも無理からぬことだった。
「し、下に……あるんです、お……おまんこが……」
「なんだと」
「きゃあっ」
 菊池はかがみ込み、司書の脚の間に顔と手を近づけた。慌てる彼女がさえぎるより先に、柔らかく眠る肉竿と陰嚢を持ち上げる。
 すると司書の言葉どおり、もはや菊池にとっては見慣れた陰唇があった。柔らかそうなクレヴァス。
「どういうわけだ……こんなことが起こりうるのか」
「う……こ、心当たりがないわけではないんです」
「なに」
「昨日、休日返上で霊薬の研究をしていたんです。もっと先生たちの役に立つものを開発できないかと」
 嫌な予感がした。
「一時的に、身体能力を向上させるお薬ができたかも……というフェーズになって、き、基本、この図書館で受肉した先生方の肉体は、だいたい生身の人間と同じ機能を持っています。それに害をなすものではないか、私が実験体になるのは不思議なことではないので」
「つまりどういうことなんだ」
「せ……精力剤のようなものを開発したんです! それの効果をいち早く確かめたくて自分で飲んだんです! そうしたら……そうしたら、ああ!」
 司書が脚を閉じたので菊池は手を離した。太ももの上で幼いペニスが可愛らしく揺れた。
「これは……薬の作用なのか?」
 菊池はどぎまぎしながら変態した司書を眺めた。股間以外はまるきりいつも通りの彼女だ。
「たぶん……」
「もしかして永遠にこのままなのか……?」
「わかりません……く、薬の作用時間は、今まで開発して実用に持ち込んだものと同じ方向性なので、数日程度だと思うんですが」
 ふたりは黙り込んだ。気まずい沈黙だった。
「…………あの、先生」
 それを破ったのは司書だった。
「もし私がずっとこのままだったら……私、振られるのでしょうか?」
 言われて菊池は凍った。振られる?
「おまんこの上におチンポをつけた女を、先生は今までどおりに愛してくれるのでしょうか……?」
「…………」
 菊池の愛に対する盛大なる問いかけな気がした。今までどおりに。果たしてそれは可能だろうか。
 同時に、この肉体の異常事態で、まっさきにそのことが浮かぶこの女への愛しさというものも溢れてきた。彼女は自分の身体が変質してしまったことより、それによって菊池からの愛情を取り上げられるのではないかというのが気がかりなのだ。なんて愚直で可愛い女だろう。なれば答えはひとつだった。
「お嬢、例えばなんだが、割れた花瓶を金継ぎで直したとして、それが今までと同じ美しさを保っていると答えるのは偽善だと俺は思うぜ」
「え……」
「だからといって手放す気はない。それは新しい美を手に入れた、新しい形のいとおしいものになるんだ。わかるな?」
「おチンポは金継ぎ……?」
「そうだ。アンタは物わかりがよくていいな」
「あっ、あっ……♡」
 言って菊池は司書の、まだ眠るペニスをそっと握った。サイズ的には、本当に子供だ。菊池の長い人差し指と親指のリングで、簡単に包み込めてしまう。
「お……」
「ひ、ひい……ああ、勃っちゃう、勃つぅ、あぁ、ああぁあぁ……♡」
 菊池に触れられ、司書の肉竿はあっという間に勃起した。それでもやはり形はあどけない。おそらく菊池のものの半分もない。
「へ、へん……です、お、おチンポ……く、クリが……ふ、膨れた感じで……あぁ……♡」
 紅色に膨れた亀頭が、菊池の手の中でピクピクと脈打っている。
「アンタのチンポは可愛いな」
「ひっ……! ち、ちん……先生っ……ちん……!」
 菊池の物言いに、司書は赤かった顔をさらに充血させた。その様子に菊池のズボンの中の肉竿も熱を持つ。
 男根を握っているという抵抗は、まったくなかった。むしろ今の菊池の心は、かわいい司書に性感帯がひとつ増えたことで得をしたという気持ちだった。
「ほら、ベッドに行くぞ。座ってたんじゃ窮屈だからな」
「あっ、あっ」
 菊池は司書を横抱きにすると、部屋のベッドに優しく落とし込んだ。そして布地が流れ、勃起を隠すようになったワンピースを、目尻を下げながら見た。
「せ、先生……♡」
「いいな。世辞じゃなく、一生このままでもかまわないぜ。水気の多くて感じやすいアンタのこと、就業中も些細なことで勃起するんだろうな」
「いや、言わないでっ……♡」
「股間を押さえ込んでよちよち歩きになるのを俺が見つけて、他の先生方の目の届かないところでこうして」
「ひあっ、あっ、ああぁああんっ♡」
 ドレープの上からペニスを握る。布越しとはいえ肉茎に触れられて、司書はその身をくねらせた。
「しょうがないなあ、溜まっちまったか……なんて言いながら白いのをしごき出してやるんだ。存外に楽しそうじゃないか?」
「くふぅっ、いや、いやです……そんなの絶対いやぁ♡ おちんちんいりませんっ……♡」
「いらなくてもあるんだから仕方がないだろ」
「う、うぅっ……ああぁんっ♡ あぁんッ……♡」
 菊池は司書をいたぶった。持ち上がったパジャマの先っぽ、亀頭らへんを包んでいる部分が湿ってきたのを見て、肉竿を握る手をほどいて両手で布地を引っ張った。柔らかな素材の寝間着のざらざらで、彼女の先端を擦っていじめる。
「いや、あぁ、それいやですっ……んぅっ♡」
「今みたいなタイトスカートの制服はもう着られなくなっちまうな。ショーツも女用だと厳しいか」
「あふぅっ、あぅっ、あぅうぅ……♡」
「こんなふうに布が擦れるだけでたまらないだろ? これからどうしたものかしっかり考えないとな」
「か、考えられませ……あっ、あっふぁ……あんぁあぁっ♡」
 パジャマはどんどん湿っていく。秘唇と同じように汁気の多いペニスだった。頃合いかと菊池は布地をめくる。氏腺液でぬるぬるになった小さな肉竿があらわになった。
「ひうぅ……うぅ、怖い……先生、怖い……です、お、おまんことは……ぜんぜん違うぅ……♡」
「どう違う?」
「お腹の奥が熱くなるんじゃない……奥にほしくなるんじゃない……あぁ、ああぁ、出したいぃ♡ って……なにか、なにかを……出したいってことしか……考えられなくなってるんですぅっ……♡」
「ははは! 正直でいいことだ。そうだぞ、男はな、興奮してくると精汁を吐きたいっていう欲求しかなくなるからな」
「う……ぅ、菊池先生は、そんな状態で、いつも……私を好きとか、愛してるとか言ってくれてたんですか……? こんな、こんな、出したいぃ♡ チンポ楽になりたい……♡ っていう……のを……押さえ込んで……私の気持ちいいところを突いたり……し、してくれてたんですか……あぁっ♡」
 意外なことだ。彼女は菊池の愛を、普段とは別の方向から実感しているようだった。
「そうだぞ。アンタを愛しく思う気持ちと、気をやらせたいっていう侠気が、射精欲を上回ってるんだ」
「くふぅうぅ~~~っ……♡ そ、それって……先生……♡ わ、私、ものすごく、愛されてるんじゃ……!?」
「今さら気づいたのか? 愛してるぞ♡」
「ひぉ゛ッ♡ おっ、ひあぁあぁあんッ♡」
 菊池は手袋をはめた指でしっかり輪を作ると、先走り汁のぬめりを使って司書のペニスを激しくしごいた。ぬちゅ、ぬじゅ、ぬじゅぐぢゅ……粘つく音が手と肉竿の間で奏でられる。
「ひぃいっ……あぁっ、き、気持ちいい、気持ちいい気持ちいいっ♡ 気持ちよすぎて怖いぃっ♡」
「怖くないぞ……ほら、陰嚢の中身が上がってきたんじゃないか? もうすぐだ」
「あ゛っあ゛ぁあぁあっ、く、来る、くるぅ、先生、きちゃう、きちゃう、出ちゃう、出ちゃう出ちゃう出ちゃううぅうぅっ♡」
「出せ♡ この俺の手で初めての精通をするんだ、アンタの射精処女を俺によこせ!」
「ひっくうぅっ、うぅ、イくぅっ♡ あぁ、あ゛あぁあぁっ、あ゛ぁあぁああぁああぁあぁ~~~~~~っっっ♡」
 司書の背筋がしなった。同時にペニスが激しく張りつめ、鈴口から勢いよく白濁が飛び散った。
「おお、おお……お嬢、いい子だ! すごい射精だぞ」
「うくぅうぅっ♡ うぅ、あぁまだ出る、出るぅ、うぅうぅッ♡」
「全部出せ。くみ上げてやる」
「あ゛~~~~ッ♡ だっだめ、イ、イッてるの、しごいちゃらめっ……あ゛ぁあぁっ♡ あ゛ぁっ♡ んひぉ゛おぉおおぉッッッ♡」
 吐精の最中のペニスをさらにしごき上げる。司書は濁った声を漏らしながら、精通の快感に悶えていた。
 菊池はぞくぞくした。こんなことがあるだろうか。彼女の膣穴や尻だけでなく、ペニスまで己の手で快楽の虜にできるのだとしたら、これほど嬉しいことはない。
「おっ……!?」
「あっ、あ……ああぁ……あっ……?」
 しかし、その感激は長くは続かなかった。陰嚢が空になるほど精をぶちまけた彼女の肉茎は、勢いよく収縮を始めた。
「おぉ……おぉ……!」
「ひっ、あっ、あっ、あ……!!」
 やがてそこに肉竿や玉袋があったなどとは思えないほど……まったく当たり前だという様子で、司書は「ただの女」へと戻っていった。
「う……嘘……しゃ、射精したら……消えるん……れすかぁ……」
「どうやらそうらしい……少し残念だなぁ」
「う……ふ、はぁあぁ……♡」
「ま、それはそれだ。次は俺の番だな。ほら」
「ああっ……♡」
 菊池はベッドの上でズボンを脱いだ。愛しい女の肉体を愛撫していたことによって、興奮しきった男根が露出する。
「せ、せんせぇ……あぁ……♡」
「アンタの女の部分で俺をよくしてくれ。もちろんいいな?」
「は……は、はいぃ♡」
 司書は頷く。美しい花瓶だ。同時に花でもある。己はこの女を淫らに咲かすことが、唯一許された男なのだ。菊池はそれを噛みしめながら司書に覆い被さった。