花弁に見えるはすべて咢
「そらお嬢、頼むぜ。この唐変木に、アンタの最高の身体を見せてやってくれ」
菊池が珍しく卑屈な口上でねだると、司書はもじもじとバスタオルを巻いた身をよじらせた。
なにも彼女の羞恥心を煽るために偏屈な物言いをしているわけではない。菊池の胸は自省の心で溢れていて、この美しいがときどき突飛なことをする天使の機微を感じとれなかった己を恥じている。
ことは数日前にさかのぼる。
帝國図書館の面々で海水浴が企てられ、メンバーには菊池と司書も含まれていた。
泳いだり、浜辺でバーベキューをしたりして楽しもうという実に健康的なアウトドアの催しだった。菊池はシャツとズボンタイプの水着を用意してキャンピングカーに乗りこんだ。司書も水着を買ったと言っており、可愛らしい彼女の装いに期待を寄せながら海へ向かった。
しかし更衣室から出て海水浴場に姿を見せた司書を見て菊池は仰天した。呆気にとられた。一瞬なにもかも忘れて、今自分がいるこの場所が現実なのかもわからないという荒唐無稽な想像までした。
「あ、あの、似合っていますか」
司書は裸も同然の格好だった。色白で女性らしい丸みに満ちた肢体に、もはや水着とも呼べない小さな布地がみっちりと食い込んでいる。
深緑の三角がかろうじて彼女の乳首の尖りを隠していたが、乳輪はその小さすぎる布から若干はみ出しているように菊池には見えた。
下半身も同じような状態で、毛こそ出ていないがほとんど丸出しだ。
なんならもはや、全裸のほうがまだみっともなくないと言えるような破廉恥極まりない格好を、自分の恋人が公衆の面前で晒していた。
「待て、待て待て待て待て待て」
「私、変ですか?」
「変とかそういう問題じゃないんだよ」
菊池は慌てて司書を抱き寄せ、自分の身体で隠すようにしてあたりを見回した。幸いまだ人気はまばらで、他の文豪たちはパラソルやバーベキューコンロの用意に駆り出されていて近くにはいないようだった。
「どうしてそんな格好を」
「先生が、どういうふうに思ってくれるか知りたくて……」
司書は己の恥ずかしすぎる水着が歓迎されていないということを理解して、露骨に悲しそうな顔をした。
しかしそれを慰めるような余裕は菊池にはなかった。愛しい女の裸を、今にも誰かに見られるかもしれない状況なのだ。落ち着いてはいられない。
「う、上になにか……そうだ、俺の上着を」
「……すみません。着替えてきます」
菊池がシャツを脱ごうと身を離した隙に、司書はくるりと背を向けた。
その瞬間、彼女の柔らかい桃みたいな尻がほぼ丸見えであることに菊池は言葉を失い、更衣室に駆けていく彼女を引き留めるのを忘れてしまった。
しかしまあ着替えてくるというならそれしかない。水には入れないかもしれないが、あんな水着よりは普段着で過ごしてもらうほうがずっと安心だった。
「なんでお嬢は、あんな水着を……」
あの格好を見て菊池が焦ることを想像できないほど、彼女は鈍感ではないはずだ。
ということはなにか意図があるはずで、菊池の仕事はそれを読み解いてフォローすることだ。
そう思いながらそわそわと彼女が更衣室から出てくるのを待ったが、しかしいつまで経っても姿を現さない。
菊池も手伝ってくれ――そんな声が浜辺の向こうから聞こえてくるのに曖昧に頷いていると、夏の装いの館長がやってきた。
そして彼が菊池を見つけるなり、司書は体調が悪いと言っていたのでタクシーを呼んで帰らせたと告げたのを聞いて菊池の顔は古墳から出土したハニワのようになった。
(逃げたな、お嬢……!)
どうやらいじけてしまったらしい。菊池の反応がお気に召さなかったようである。
もはやサマーバケーションなどというムードではなくなってしまった。菊池もすぐに車を呼びつけて司書を追いかけ、図書館の中に用意された彼女の部屋に向かった。
当然のように鍵がかかっていたが、これまた当然のように菊池は合鍵を預かっていた。アンティークなキーを差し込んで扉を開くと、すぐに目に入るベッドの上の布団がもこもこと盛りあがっていた。
「こら、お嬢」
掛け布団をはぎとろうとすると抵抗されたが、めげずに菊池は白いシーツをはぐった。
「うぅ、ううぅ……」
司書はまるでアルマジロのように丸まって、顔を敷き布団に押しつけてわなわなと震えていた。
その姿を見ていると申し訳なさを抱かなくもないが、しかしどうしろと言うのだ。恋人のあんな姿を、公衆の面前で見せられてあれ以外の反応をしろというのはあまりにハイレベルな要求ではないのか。
「なんであんな水着を……」
「せ、先生が喜んでくれるかと思ったんです」
「いや、まあ、二人きりの場所で着てもらえたら、喜んだかもな」
「でも……でも、ああ、私が悪いんです」
司書が身じろぎして頭を動かし、シーツに水玉模様のシミがついていることに驚いた。どうやら泣いているらしい。
「は、恥ずかしくて、恥知らずで、淫らな私が悪いので、もう、こんな女は捨て置いてください。私は先生と交際するなんて恐れ多い邪淫な人間だったのです」
「なんでそうなるんだ。わけがわからないぞ」
若干焦りながら司書の背中に手をやって、小さく震える肩をそっと撫でる。しかし震えはどんどん大きくなって、やがて嗚咽もこぼれ始めた。
「ああ待ってくれよお嬢、なんで泣くんだ」
「わ、私がわかっているから。私が悪いから」
そう言って司書はしばらく泣き続けた。こんなことは彼女と交際していて初めてのことだったが、菊池は驚きはしなかった。
彼女は心優しく人を思いやる性格だが、奥底には自己肯定感の薄さがある。なにかの拍子にこうして泣き出すのが、むしろ当然と言える人格をしていると菊池は分析する。
いつもさまざまな自負や思いで突っ張っている外面がはがれ落ちている。それはある意味感情の破瓜とも呼べ、好ましいことかもしれなかった。
だから菊池は辛抱強く彼女を撫ぜて、その心を聞き出そうと熱心になった。
「先生を試すようなことをしたんです。喜んでくれるかもなんて、嘘です。そんなこと思っていませんでした」
「試す?」
「きっと先生は、あんな格好をした私を見たら困るんだろうなって……困ってから、どうするのかなって。先生の反応が見たくて」
「どうしてほしかったんだ」
「……喜んでほしかった」
司書は泣きながらもようやく身を起こして、菊池と顔を合わせようとする。
「あんな格好を人前でしてしまう恥ずかしくて、淫らな私を、抱きしめてほしかった」
「…………」
「先生と……露出プレイがしたかっ……」
「待て待て」
菊池が言葉を遮ると司書は再びしゃくりあげた。
「つまりなんだ、お嬢は恥ずかしい格好を人前でするのが大好きで、俺とそういうあれをしたかったのか?」
「ち、違う、かもしれませんし、そうなのかも」
「どっちなんだ」
「恥ずかしいことはいやです。でも先生となら……」
「いや、でもなぁ。あそこには他の先生方や図書館の連中がいたんだぞ。顔見知りにまで尻やおっぱいを見られて、それでよかったのか。痴女だと思われて居心地が悪くなるぞ」
「そ……それ、なんです」
司書は泣きながらも妙に力強く呟いた。
「私が、どんな存在でも、たとえ図書館の人たちがみんな私を軽蔑しても、寛先生だけは味方でいてくれるか……それが知りたくて……」
「…………」
「でもそんなのだめですよね。こ、恋人を試すようなことをしたんですもんね。試し行動なんて、最低ですよね……」
菊池は司書の孤独に触れた思いで胸が張り裂けそうだった。
起きた事象だけをなぞれば馬鹿馬鹿しいかもしれないが、その裏にある彼女の繊細な想いを拾っていくと切なさで心が痛かった。
己に自身の持てない彼女が、その身や地位を犠牲にして、一歩間違えばすべてを失う覚悟までして菊池に挑み、そして訊ねたのだ。私を愛してくれるかと。
それを考えると菊池はずいぶんな態度をとってしまったように思う。彼女の決死の問いかけは、あまりにあっさり砕けてしまった。
「すまない、魯鈍な俺を許してほしい」
菊池は涙をこらえながら司書を抱きしめた。彼女の身体はいまだに震えていた。
それから数日後、菊池は再び例の水着を披露してもらうことにした。
場所は都内にあるホテルで、施設内部にジムや25メートルプールがあることを売りにしていた。
菊池はその日プールのあるエリアを貸し切ってしまうと、そこに司書を呼ぶことに決めた。
「まあ人のいる場所はおいおい、な。許してくれ、俺に心の準備をさせてくれ」
菊池がそう言うと、彼女はようやくバスタオルを剥いだ。
「う……ふぅん♡」
司書の唇から切なそうな吐息がこぼれた。
「お……おぉ」
海水浴場で見たときは気が動転していたが、こうして落ち着いて眺めてみると非常に扇情的でたまらないものがあった。
女というものを凝縮したような、曲線でつくられたなめらかな肢体。それを引き締めるようにマイクロビキニの紐が食い込んでいる。
「色は、俺の上着とお揃いだな」
「は、はい……そう思って選んだんです」
司書は小さく頷く。そのいじらしい仕草にまた心を打ち抜かれたようになりながら、菊池は司書の身体を抱き寄せた。温かい。
「おっぱいがこぼれちまいそうじゃないか。乳輪がはみ出てるし、乳首も尖ったら浮き出るんじゃないか」
「あ、あうぅ、言わないで」
「でも妙だな。下の布がこんなに小さけりゃ、いつものお嬢のマン毛の感じなら、ぼうぼうしたのが溢れてきそうなものだが」
さわさわ。
水着越しに司書のクレヴァスを撫でながら菊池は囁いた。
「お、お手入れしたんです……はみ出ないように……」
「ほお、剃ったのか?」
「わ、私、濃くて……剃るときれいにならないから……抜いて」
「へえ! そりゃすごいな。一本一本……お嬢は頑張り屋だな。俺にこの水着を見せるためにいろんな努力をしてくれたんだなぁ」
「うぅぅ……馬鹿なだけです」
「つまらない反応をしてすまなかったな。アンタは最高の女だよ。あちこち丸くて柔らかくて、その上努力を惜しまない。俺に抱かれるために、愛されるためにいつだって最高の身体をしていてくれるんだ」
「せんせい……そんな、私は……あぁっ♡」
菊池自身も場になじむために水着姿をしていたが、そんなものはもう脱いだ。プールサイドで全裸になるというのも奇妙な感覚だったが、愛しい女を前にしてこみあげる情動には逆らえない。
「あっ、あっ……先生のおちんちん、熱いです……♡」
司書を背後から抱きしめ、極小の水着の、クロッチとも呼べない部分に包まれたクレヴァスにペニスを差し込んだ。
しゃりしゃりした化繊や、尻や太もものむっちりと湿った感触に菊池の勃起はいっそう激しくなった。
司書が抵抗しないとわかるとそのまま腰を揺すって、じくじくと疼いて熱を訴えるペニスを彼女の内股に出し入れする。
「ふぁ……あぁ、あっ……あっ♡」
すぐさま水着が湿ってくるのがわかった。水には一切入っていないのに、司書のボトムは泳いだあとのようにしっとりしている。
このままこの疑似性交を楽しみ続けてもよかったが、今日は別に趣向を用意してある。菊池は名残惜しくも彼女から離れると、プールサイドに立てかけてあった銀色のマットレスを倒した。
「先生、それは……?」
「アンタのために用意させたんだよ」
事実である。こんな明らかに、高級ホテルのフィットネスを別の用途に使おうとするものの持ち込みが許されるはずがなかった。
しかし菊池は意地でそれを可能にした。
ここを貸しきった際、見積もりで言い渡された価格にさらに上乗せをして、それはアンタのポケットに入れても構わないとホテルマンに言いつけた。
かわりに俺の言うとおりのものを運び込んでおいてくれと告げると、ごく当たり前の、宿泊客を受け入れる顔で、かしこまりましたと返されたのだ。
「さ、ここに寝転がってくれ」
「水着のまま……ですか?」
「おう。そのセクシーな格好で頼むぜ」
司書は照れながらも菊池に従った。マットの上にうつ伏せになって、まったく隠れていない尻を晒す。
「せ、せんせ……ひゃっ! はひぃっ!」
背後から忍び寄ってきた菊池の手の感触に、司書は悲鳴をあげた。
「いや、あっ、ぬるぬるして……なんですかっ」
「これも用意させたんだ。お嬢と楽しもうと思ってな……♡」
そう言って透明なボトルから溢れる粘液を手に取り、司書の肌に塗りたくった。
高粘度を売りにしているローションは、司書の身体の上でぷるぷると弾みながら伸びていく。
もう指で触れているだけで心地がよく、顔がにんまりと締まりなくなっていくのを止められなかった。
「あふっ……く、くすぐったいですっ!」
「すぐに馴染むから我慢してくれよ」
言いながら彼女の尻にローションを広げていき、滑る手で双臀を割り開いた。
「あっ、いや! 見ないでくださいっ♡」
司書の薄く色づく尻の穴が丸見えになる。ここは菊池の目的の場所でもあった。
「それは道理が通らないなあ。お嬢は俺の尻穴はやたらと見たがるじゃないか。挙げ句に舐めたりしゃぶったりもするよな。なのに俺がお嬢のここを見るのはいけないのか」
「うぅぅっ……!」
そう言われるともう司書はなにも返せない。彼女が菊池のアヌスに執着しているのは事実なのだ。
「お嬢にかわいがられてるうちに、俺もアンタのここを愛でてやりたい気持ちが出てきたんだ。今日はたっぷりねぶらせてくれ」
「ああ、そんなことされたら……私……」
司書の身体から一気に力が抜けた。菊池に尻の穴を愛されるところを想像したらしい。
「ようし、いい子だな。ほら、もっと足を開いてくれ」
司書は言われるがまま、マットレスに横たえた両足をぱかりと開いた。
菊池はほとんど紐でしかない尻のあたりの布地をずらすと、ローションまみれになった彼女の肛門をまじまじと視線で姦淫した。
「あぁ……見られてる……先生に、お尻の穴……♡」
「それにしてもずいぶん綺麗な穴だな。本当に毎日使っているのか?」
「ひっ! は、恥ずかしいこと聞かないでくださ……あぁっ♡」
菊池が尻の谷間に顔を寄せると、司書の身体がぞくぞくと震えた。
その反応に満足しながら、菊池はついにその可憐な尻の穴に吸いついた。ローションのせいもあって、舌先がぬるりと滑った。
「はあぅうぅっ……お、お尻、舐められちゃってるぅ♡」
菊池はそこからもう、夢中になった。耽溺したと言っていい。
司書の尻穴を舐めしゃぶるのは最高の背徳と恍惚を与えてくる。喘ぎ続ける彼女の下半身を押さえつけ、それはもうとにかく舐め、尖らせた舌を肛門に突きこんで、敏感な神経を刺激しようと必死だった。
そうするたびに司書の秘唇が、ローションではないもので湿って開いていくのも見物だった。
「お嬢、アンタの尻は最高だ。男を狂わす魔性の穴だ。ここに俺の肉竿を突き込みたくてしょうがないよ」
「くふぅっ……あっ、で、でも、それは」
「もちろん今すぐじゃない。きちんと準備を整えるつもりだ。だが俺は今、無理矢理にでもアンタの肛門を犯してやりたい気持ちでいるということを伝えておきたい」
「は……はい。嬉しいです……♡」
そうして皺がふやけるほどのアニリングスを終えて彼女を解放すると、己のいきり立った下半身にもローションを塗りつけた。
そのまま司書の眼前に肉茎がくる体勢になると、もう菊池の指示を待たずして彼女はその熱杭を握った。ぬるりとした摩擦で菊池はのけぞりそうになる。
「おぉ……おぉ。アンタの手は気持ちがいいな」
「んふ……ありがとうございます」
司書はうっとりした顔で、指で作ったリングを上下させた。その中で菊池のペニスがピクピクと震え、彼の鈴口からも潤滑材ではないものがあふれだしてくる。
「先生のおちんぽ……おもらししてます」
司書はそれを敏感に感じ取って、淫蕩に微笑みながらそう言った。
それから手を加速させ、さらにはせり出たカリ首や裏筋を締めあげるように力を強めたりする。
「うく……あぁ、お嬢、お嬢」
すっかり充血しきった性感帯は、それほど乱暴にされても気持ちがいい。譫言のように彼女を呼びながら、しかし断腸の思いで手を止めさせる。
「このままじゃ手の中にぶちまけちまうよ」
「それでも、いいのに。私の手でミルクを出す先生……見たいです」
「光栄なことだが、それはまた今度だ……♡」
子供をあやすように言って、菊池は体勢を変えた。司書もそれにならう。また最初のようにうつ伏せになった彼女の身体に跨がって、柔らかな尻の下に隠れた性器に先端を当てがった。
「あぁふあぁっ♡ は、入る、い、イク、あっ、ああぁあぁっ♡」
いつものように、司書は挿入の感覚だけでたやすく絶頂してしまう。
しかし今日の菊池にそれをいたわったり揶揄したりする余裕はなく、彼女の痙攣を無視する形でさらに奥に侵入した。絶頂でこわばる粘膜を、じかに感じ取りながらもえぐるように。
「おっ、おおおおぉんッ♡ せんせ、あっ、あっひ、奥うぅっ♡」
「ああ、お嬢の奥まで……アンタが一番素直に気持ちいいのを感じるところまで入らないと」
「くふぅ、うぅぅっ、ううぅうぅ~~~っ♡」
膣穴の天井にある弱いところを経由して子宮口を小突くのが、もっとも司書を素直にさせる。
このときばかりはややこしい彼女も我を忘れて、菊池だけを感じて、そしてその愛に正直に打ちひしがれてくれる。
「愛してるよ。難しいことは考えなくていい。ただ俺のことを感じて、今このときだけでも満たされてくれ」
「ひいっ、ひ……うぅ、あぁ、だって、私は……」
食いしばった歯の隙間から絞り出すように、司書が言葉を放とうとする。
「いつも不安だから……先生と私が釣り合う存在なのかとか……あぁ、そんなことばかり考えてしまうから」
「こうされてもか?」
「うひぎぃっ♡ ひっ、あっああぁあッ♡ あ゛ッ゛くふぅ、くぅ、くうぅうぅうぅんッ♡ おひっひぃいぃッッッ♡」
司書の膣穴を圧し潰すように腰を押しつけて、菊池は彼女の不安を散逸させてしまう。
思い詰めてしまうのは仕方ない。自信を持てないのもだ。それは長い目で見て解決していく問題だということを菊池は知っていた。
なら今できることは忘れさせることだ。ほんの一瞬だけ、彼女を尊重しながらも壊してしまうことだ。
子宮口と亀頭を吸いあうように密接させて、さんざん釣りあげる。そうして甘ったれたマゾ子宮が媚びるような動きを見せたところで突き込んで、ちょっとした尊厳の蹂躙をする。
「おふぅ、おっ、お゛お゛お゛ぉんッ♡ ひへ、ひぇんひぇ、あひぃいぐ、いぐ、ああぁ、わらひまたイッでしまいまひゅううぅっ♡♡♡」
菊池にそうされると司書はだいたいのことの区別がつかなくなってしまう。普段は聡明そうな眉や瞳がどろどろになり、全身から汗を、膣穴から雌蜜を垂らしながらよがり狂うだけのけだものになる。
それこそが今の彼女にとって救いで、そして安息なのだと菊池は信じ切ることにしていた。
そうでもしないとこの愛しくいじらしく、同時にまた哀れであえかな存在を抱きしめることなどできない。思い切り膣穴を突き上げることも、乳房や尻肉をもげそうなほど掴むことも。
彼女の望む淫らな罰を、彼女が必要としているよりもやや多く与える。それが俺の、この女を愛する男の使命なのだと菊池は思う。
しかしそれを過信したのでは、今まで彼女をいたぶってきた野獣どもとなんら変わらない。菊池がそうでないのは、明確に司書のことを愛する気持ちがある点だ。
「くはあぁ、お嬢、子宮で俺の精子を飲むんだぞ♡ 内側から俺のものになるんだ。俺にふさわしい女にっ♡」
「は、はいっ、ああおぉおぉおんッ♡ 先生の精液、中でごっきゅん♡ ってしまひゅうぅっ♡ あぁあぁーーっあぁあぁあぁーーーーっ♡」
司書がそう宣言した瞬間に菊池の中でなにかがはちきれて、彼女の膣穴に熱の塊を放った。
「お゛ぉ゛おひぃいぃっ♡ おまんご焼げるうぅッ! ひあっ、あっ、イク、精液でイクッ……あ、ああぁあああぁあぁ~~~っ♡♡♡」
ほぼ同時に司書の身体がこわばって、再度の絶頂を知らせるように痙攣する。それでも菊池は腰を使うのをやめなかった。
彼女の膣穴に擦りこむように、粘膜の突起ひとつひとつに絡ませるように、精液まみれのペニスを出し入れするのを繰り返す。
「ひおっ、おっ、おっおおぉんッ♡ おおおおぉっ♡」
そのたび司書は全身を性感に震わせる。それでいい。きっと今この瞬間は彼女の持つ劣等感など空の彼方だ。
「愛してるぞ、お嬢。アンタは最高の女性だ。俺に抱かれるために生まれてきた世界で一つだけの存在だ。だからアンタの膣穴は今こうして痙攣して、俺を受け入れてるんだ。わかるな♡」
「ひ、ひぃい……ひ、お、おおおぉっ……♡」
「アンタが俺のものじゃないとしたら、こんなにオマンコがヒクヒクするわけがないだろ? こいつは俺のを離したくないって言ってるんだぞ♡ そんな名残惜しい痙攣が、結ばれない男女の仲で起こると思うか♡」
「ひゃ、ひっ……け、けいれん……ああぁうッッッ♡」
「つまり俺とお嬢が添い遂げることは、もう身体が知ってるんだ。身体と心はくっついてるんだぞ♡ なら心だって知ってる、俺とアンタが最高の二人だってことをな♡」
「ふ、あ、ああぁ……あぁ……わ、わらひ……♡」
「あとは頭を納得させるだけだな……まぁ、それはおいおいだ。今はアンタのマン穴に俺の白濁が染み込んでいく感覚を味わってくれ♡」
「ひ……ひぃっ」
言葉を繰って、司書の意識に擦り込んでいく。
同時に俺はこの女を心の底から愛しているのだと、自分の胸にも刻んでいく。