大慾得清浄

 ひどい天気だった。日が暮れると同時に空は突然、爆発したかのように大粒の雨を降らし始めた。みるみるうちに暗くなり、その闇の奥では雷鳴すら響いている。
 そんなありさまだというのに、図書館の前に停めさせた車に乗りこもうとしている男を、館長はなんとも言えない表情で見つめるほかなかった。
「日を改めるわけにはいかないのか。せめて明朝、いや雨が止んでから」
「事態は一刻を争うんだ。悪いがこのまま行く」
 男、菊池の顔はきわめて深刻だった。
 今日は休館日だが、館長は図書館の整備のために出向いていた。すると突然急いた様子で菊池がやってきて、早口でことのあらましを告げた。
「司書の母上から今すぐに娘を家によこしてくれと連絡があった。心配なので俺もついていく。急を要する。今すぐここを出てしばらく戻ってくることができない」
 どうやら緊急事態のようだった。きっと司書は身支度をしているのだろう。
 もしかして家族の身になにかあったのだろうか。館長は瞬時にあれこれ思考を巡らせ、菊池の外出届けにサインをした。
 菊池はすでにタクシーを呼んだらしく図書館の窓から外を見ては到着を待っていたが、しかしいっこうに司書の姿が見えない。そのまま急に豪雨が降りだした。
 車が到着すると、菊池はすぐに司書の私室に飛んでいった。
 そして司書は菊池に横抱きにされた状態で姿を現した。眠っているか、気を失っているかしているらしい。館長は泡を食った。どういうことなのだろう。
「ちょっと体調が悪いんだ。薬が効いて眠っているがこのまま運んでいく」
「いや待ちなさい、そんな状態で車に乗せるというのか」
「今すぐ行かなきゃならないんだ。もうお母上は一秒も待てないと言っているんだ。アンタ、この図書館は司書あってのものだろう」
「いやそうだが、だからこそ体調が悪いなら放ってはおけない」
「大丈夫だ。俺が車内で介抱する。なんの心配もいらない。お嬢の留守中の図書館を頼んだぜ」
 そう言って菊池はさっさと司書をタクシーに乗せ、自分も乗り込んだ。
 その間にも雨は激しくなっていく。館長が声をかけてもまったく動じない様子でドアが閉じられ、そして二人は雨がけぶらせる闇の中へ消えてしまった。

 菊池は眠ったままの司書を豪奢なベッドに横たえた。なにも知らない可憐な彼女は、すやすやと寝息をたてている。
 外は豪雨だった。見晴らしのよさを売りにしているホテルの上層階、スイートルームを取ったわけだが、晴れていれば夜景が楽しめるであろう大窓から見えるのはただひたすら雨。
 窓にへばりついた雨粒が高層ビルの光を乱反射させて、夜景どころかやかましい都会の喧噪を主張するばかりに思える。菊池は大きな音を立てないようにカーテンを閉めようとする。
(失敗したかもしれんなぁ……)
 そんなことを思う。世間はちょうど連休で、菊池が思い立ってホテルの部屋を取ろうとしたところ満室を伝えられた。スイートなら空きがございますと言われて、悩むこともなくそうした結果がやたらと豪勢なこの客室だった。
 贅を尽くした部屋自体はかまわない。司書と過ごす時間がラグジュアリーに彩られるというならば他のなんだって惜しくはない。
 しかしいかんせん、広すぎる。カーテンを閉めるのにすらこんなに何歩も歩くのである。これでは逆に司書が寂しさを感じてしまうかもしれない。
 おそらくもう、司書にとっては何人、何十人もの文豪に囲まれて暮らす生活が当たり前になってしまっている。それをほんの数日とはいえ自分と二人きり、こんな部屋に閉じこめてしまうとなるとわずかに胸が痛まなくもない。
 司書を睡眠薬で眠らせ、館長に嘘をついてここまで連れてくるという非道を行った菊池であったが、根はやはり善人なのだ。
 しかしもだもだしていてはせっかくの計画が台無しである。
 菊池は持ってきた司書の鞄からスマートフォンを取り出し、電源ボタンを長押しした。自分のそれも同じようにスイッチを切ってしまう。
 そして二つを部屋の隅に用意された金庫にしまいこんだ。邪魔はいらない。
 菊池をこんな、彼にまったくそぐわないバイオレンスな行為に駆り立てた原因は、一週間前のできごとだった。
 休みの日、かねてから司書が希望していたことを実現させるべく菊池は司書の部屋にいた。部屋には鍵をかけ、リラックスを誘うアロマオイルを焚いて、準備は万端だった。
「あぶあぶぅ、ひろしパパぁ……♡」
 司書が恥じらいながらも自分を父と呼び、服の裾を掴んでくるのに胸が熱くなる思いがする。
 司書はいわゆる赤ちゃんプレイというものを所望だった。
 日常の煩わしいことをなにもかも忘れて、寛先生に甘えたい。そう言われたときの喜びと高鳴りを、菊池は明確な言葉にするのが難しかった。
 あの恥じらい深い司書がそれを自分に告げるのに要した勇気を想像するとそれだけで心を打たれるし、なにもかもさらけ出してくれるつもりなのだと思うと感激で官能すら覚えた。
 司書のことを何度も抱きしめ、愛しさを伝えて、朝から十分な時間をかけて、二人の精神のスイッチを切り替えていった。
 今自分たちは仕事も己の使命も忘れ、ただとろけあう父と娘で、その上特別に、淫らな関係を持った親子なのだ。
 そう思いこんで自分たちに暗示をかけ、ゆっくりゆっくりと、身体よりも心を慣らしていった。
 司書は菊池をパパと呼び、自分の指をしゃぶってあどけない顔をする。菊池はそれを庇護する父親になりきる必要さえなかった。もうその、なんとしてでも守ってやりたい娘を見たとき、菊池の精神は演じるまでもなく一人のパパになっていた。
 だというのに現実は残酷だった。突然足音と、直後に司書の部屋の扉を乱暴に叩く音がした。外では錬金術師の少年が、緊急の有碍書が見つかったと叫んでいた。
 菊池は司書を見た。その顔が一瞬で仕事や宿命を呼び起こされて戸惑い、そしてすべてを諦めた様子でキリッと『特務司書』の面貌を作るのを、はっきりと見た。
 菊池は生まれて初めて侵蝕者に殺意というものを覚えた。司書にこんな思いをさせる者は死んでしまえと心から願った。
 今までだって、文学書が穢されるということには危機感を持っていた。仲間の文豪が手傷を負わされれば怒りだって抱いた。
 だが今菊池の心を燃やすのは義憤ではなく、愛しい者の心が凌轢されたことに対する憎しみだった。
 その憎悪はひょっとすると侵蝕者を通り過ぎて、この図書館の従業員や、そして自分たち文豪にすら向きかねなかった。司書を取り囲むすべてが憎い。
 だがそれはほんの少し時間をあければ鎮火していった。あとには司書の気持ちが台無しになったという寂寥だけが残った。
 きっとお嬢は、本当にすべてをなげうった気持ちで俺に甘えてくれていたのだ。すべてを放り投げ、いろいろなものへ対する警戒心だって捨てて、俺だけをただひとつの頼れるものとして、ふわふわと身を寄せてくれたのだ。
 だというのにそれに応える前にとんだ邪魔が入った。
 それ以降司書は、まるであの中断された赤ちゃんプレイのことは忘れたかのように振る舞った。それがさらに菊池の心を痛めたが、本当に傷ついているのは司書のほうだ。
 どうにかしてまた彼女の精神をとろかして、癒しの時間が妨害された記憶を上書きしてやりたかった。
 だが新しい有碍書のことで図書館全体がばたついていて、ようやく司書や文豪が自由になれたのは昨日のことだった。
 もう絶対邪魔を入れてはならない。司書に余計なストレスを与えてはならない。だからこうしてホテルに拉致も同然の形で連れてきたのだ。
「んん……」
 司書が身じろぎしたので菊池は振り返る。彼女の寝ているベッドに腰かけて、その柔らかな頬を静かに撫でた。
 気がつけば時刻は20時を回っていた。目を覚ましたら司書は空腹を訴えるかもしれない。
 それなりのホテルだけあってルームサービスも充実していた。なにか運ばせようと菊池が考えていると、再び司書がもぞりと動いた。
「あ……ん?」
菊池が見守る中、ぱちりと目を見開いた。
「せんせい……」
「おう。おはよう」
 司書はゆっくり身を起こし、そして不思議そうな顔であたりを見回した。
「ここは……?」
「最近疲れてるみたいだったからな。休暇をと思ってホテルを取ったんだ」
「ホテル? え、ここ、ホテルなんですか」
「ああ、館長にはキチンと休暇と、俺の外出の許可も得てある。ゆっくりしようぜ。そうだ、腹は減ってないか」
 司書は菊池の想像以上に慌てていた。まあ、突然眠らされて連れてこられたとなっては驚くのも無理はない。そこは反省している。しかしそれでもこうする必要があったのだと菊池は考える。
 多少強引でも、図書館から司書を引きはがさねばならなかった。この間の中断経験で、図書室の中では『また緊急の事態があるかもしれない』という意識が働いてしまう。そんな状態では、心からのリラックスなんて得られるわけもない。
「おお、お嬢。見てみろ」
 部屋に備え付けの端末に表示された、ルームサービスのメニューを見せる。
「アンタの好物があるぜ。さっそく運んでもらおうか」
「あ、あの……先生?」
 司書がなにか言いたげな顔をしているが、あえて気づかないふりをして受話器を取って注文をする。
 まもなく香しい匂いと共にワゴンで夕飯が届き、スイートルームのテーブルに並べられていく。
 菊池は司書の向かいではなく隣に腰かけて、呆然としている司書に代わって、大ぶりな海老のフライにナイフを入れた。
 海老、それもフライは司書の好物だった。二人で食事に出かけた場所で見かけると必ずそれを頼んだ。
「ほら、あーん」
「あ、あーん?」
「あーんだ。口を開けないと食べられないぞ」
「…………」
 司書は戸惑いっぱなしだったが、それでも口元に押しつけられたものを粗末にはできないと思ったらしい。口を開いて、菊池に差し出されたフライをひとかけほおばる。
「あ……美味しい」
 そこでようやく心がほころんだのか、司書はほんのりと頬を紅潮させた。
「だろう? さ、遠慮せず食え」
「は、はい。でも、自分で食べられます」
「いやいや、今日は俺がなんでもしてやりたいのさ」
 有無をいわさずもう一切れを運ばれ、司書は仕方なしに口を開く。
 やがて食事を終えてしまうと、再び連絡して皿を下げさせた。

「ひぇ、ひぇんひぇ……」
 二人で入っても余るほど広い浴槽で司書の身体をすみからすみまで洗ったあと、ソファで膝枕をして口を開かせる。彼女の白い歯一本ずつに歯ブラシをあて、小刻みに動かしていく。
「ひ、ひぶんれ、れきまひゅ……」
「言ったろう? 今日はなにからなにまで俺がしてやりたいんだ」
「ひぇも、ひゃみがき……なんひぇ……」
 きっとこんな風に他人に歯を磨かれるなんて、子供のとき以来なのだろう。
 菊池に向けて大口を開くのが恥ずかしいのか、司書は目を逸らしながら歯ブラシを受け入れる。
 そうして彼女のすべてを洗い清めてからベッドに運び、菊池は彼女の身につけたバスローブに手をかけた。
「まずは着替えだな」
 司書と共に運びこんでいたトランクを開き、そこからピンク色のワンピースを取り出す。これは菊池が通販で見つけ即日配達させたものだ。
「アンタのために用意したんだ。着てくれるか?」
 司書は恥ずかしそうにしながらも頷く。菊池の好意を受け取らないなんていう選択肢は、彼女にはないのだ。
 おそるおそるといった様子でワンピースを手に取り、そしてすぐに違和感を覚えたようだった。
「先生、これは?」
「大人用のベビードレスだ。それを着て赤ん坊になりきってくれ」
 そこでようやく司書は、菊池がこの間邪魔の入った赤ちゃんプレイの再現を望んでいると悟ったようだった。
「……パパ?」
「ああ」
「……ひろしパパ?」
「おう。アンタのパパだ」
 司書は無言で肩の力を抜いた。それを見て菊池は司書のバスローブを脱がし、かわりに頭からかぶるだけで着られるベビードレスをあてがった。
 大人を赤子に見せるために作られたそれは奇妙なバランスで、成人女性のはずの司書が、まるで本当に幼児のように見えてくる。
「いいんですか? 赤ちゃんになっても……」
「いいもなにも、アンタはすでに俺の子だろう。かわいいかわいい娘だ」
「……ばぶっ♡」
「そうだ。その調子だ」
 司書はごろんと横になり、菊池の膝に頭を預けた。髪をふわふわ撫でてくれる手を自分の両手で掴んで、口元に持っていく。
 そしてちゅうちゅうと、菊池の長い人差し指を唇と舌で吸い始める。その感触に菊池は震えた。なんていとおしいのだろうか。司書の頭をもう片方の手で悠くり悠くりと撫でながら、少し体勢を整える。
「よしよし、俺の愛しい子。ミルクの出る場所も吸ってみないか」
「あぶぅ……みゆく?」
「そうだ。ほら」
 バスローブの合わせ目をずらし、すでに愛しさと淫欲で膨れあがった肉茎を露出させる。それを見て司書は目をきらきらと輝かせた。
「アンタが上手におしゃぶりできればミルクが出てくるぞ」
「はぶぅ……うゆ、がんばゆ……♡」
 そう言って司書は菊池の亀頭にしゃぶりついた。いつものような、軽い愛撫から入ってゆったりと楽しむフェラチオとはまるで違う。それも赤子ならではの本能というものだろう。
 先端を唇で固定して、舌でべろべろと舐め回す。最初から全力をこめて、菊池のペニスを舐めしゃぶっている。
「おふ……いいぞ♡ これならパパもミルクが出せそうだ」
「はぶっ……んふ、ひろしパパのみゆく……のみたい……♡」
 鈴口を咥えて決して離さない唇はそのままに、手の動きで肉幹を刺激してくる。
 菊池自身の想像よりもずっと早く、陰嚢が疼きだしていた。このまま司書の、我が子の可愛らしい口に白濁を注ぎたいという気持ちが強くなっていく。
「くうぅ、いい子だ。出すぞ……」
「んむぶぅ、んむっ、んむぅぅっ♡」
 肉茎が脈打つ。尿道を重い液体が通って先っぽから迸り、司書の、愛しい娘の口腔にすべてをぶちまけていく。
 司書は放たれた精液を、まるで本当に赤ん坊が母乳を飲むかのようなしぐさでゴクゴクと飲み干した。目は潤み、首まで赤くして、すっかり発情しきった顔で菊池のミルクを嚥下していく。
「よしよし、全部飲めたな」
「あうぶ……」
「ミルクを飲んだらげっぷだ。ちゃんと出さないとな」
「あ、はぅ、あぶ……」
 菊池にとんとんと背を叩かれ、司書の喉からけふぅ、と、なんともかわいらしく空気の抜ける音がする。それを聞いて菊池はひたすらに司書を撫でた。
「あぅ……うぅ、パパ………♡」
「ん、どうした」
「わ、わたし……おまたがうずうずして……♡」
「それはいけないな♡ どうなってるかちゃんと見てやらないと」
 司書を横たわらせ、ベビードレスの裾をまくって股間を露わにする。感じやすい司書のそこはいつも通り、菊池に奉仕するだけですっかり濡れてしまっていた。滴った愛液が太股にまで垂れている。
「まずいな。これは病気かもしれない」
「ええっ! びょうき……こわい……」
「パパが奥まで入って確かめてやる。我慢できるか」
「う、うん……がまん、する……」
 司書の顔は期待にとろけていた。菊池も思わず舌なめずりしそうになるのを押さえながら、すでに熱を取り戻した肉茎を司書の秘唇にあてがう。
 しかしすぐに挿入することはせず、湿ったクレヴァスを何度も何度も上下する。
「はぁう……あう、パパぁ……♡」
「いきなり入れると腹の中がビックリするだろう?」
「うぅっ……♡」
 まるでペニスのように勃起したクリトリスを、ぬらついた亀頭で責められるのがこたえるらしい。司書はもう我慢できないという顔で必死に菊池を見つめ、言外に挿入を求めてくる。
 菊池はそんな司書をたっぷり焦らしてから、ようやく膣口に先端をあてがって腰を進めた。
「あああぁあっ、パパぁ、パパ、ああぁ~っ♡」
 司書のそこはいつものように菊池を歓迎する。いつもと違うのは菊池を呼ぶ司書の声で、それがただの獣になりかけた心に父性を思い出させてくれる。
「はあっ、やっぱり……これは恐い病気だ♡ アンタは大変なことになっちまったみたいだ」
「あうっ、あっ、びょうき、いや……パパぁ、なおしてぇ♡」
「ああ、もちろん治してやる。そのためにはパパのミルクを腹の中に塗りこめなきゃいけないんだ♡ 我慢できるか?」
「す、すゆ、がまんすゆっ♡ パパのおちんぽみるく、わたしのおなかにっ♡」
 膣穴をねっとり犯していく。いくら赤子になりきっていると言っても、司書のそこは完全に成熟した女のそれだ。完全に菊池を歓迎し、奥まで誘い込んでくる。
 往復して気持ちのいいところにペニスを押しつけていると、余裕など吹き飛んでしまう。
「くおぉ、出すぞ♡ 子宮でパパを受け止めろ♡」
「うっくぅっ、アッ、アッ、パパ、パパああぁっ♡ ひぃッあぁあぁっ♡ き、きましゅ、きもちいいのくりゅうぅうぅうぅっ♡♡♡」
 司書と菊池は同時に果てた。膣穴がぎゅうっと絞まりあがるのと同時に、菊池の先端から先ほど口に出したばかりとは思えない量の白濁が迸った。
 その脈動を受けとって司書の粘膜はさらに震え、それを感じて菊池もさらに痙攣する。一瞬死すら錯覚する深いところまで到達して、そしてゆっくりと現実に戻ってくる。
「はぁ……はあぁ、よし……でも油断できないぞ。これからしばらくは、こうしてミルクを注がないといけない」
「うふぅ……う、うぅ……パパ……♡」
「安心しろ、あと三日はこの部屋にいられる。誰の邪魔も入らない。ずーっとパパと一緒だ。な?」
「パパ……パパ……ううぅ、うぅっ……」
 司書の瞳に涙が浮かぶ。それは絶頂を経て感情の井戸が空っぽになった彼女が、初めて吐露するよろこびだった。
 なにもかも投げ捨てて菊池に甘えたい。菊池のものになりたい。その願いが満たされたことに歓喜している。
 それを受け入れる菊池もまた、大いなる喜びに包まれる。
 トランクの中には菊池が買い集めた道具が大量に入っていた。哺乳瓶におしゃぶり、おむつにガラガラ、司書を退屈させないためのものを思いつく限り詰め込んできた。
 誰にも邪魔はさせない。この三日間は司書を完全に自分の娘にして、どこまでも童心に帰らせて甘やかすつもりでいた。