ふたり遊び
久々の休館日。特に予定もない菊池は、朝方に自室に来ないかと司書を誘った。司書は当然のように頷いて、頬を赤らめながら、そして廊下に他の文豪の気配がないかと緊張しながらも部屋を訪れてくれた。
「他の連中なんか、気にしなくっていいだろう。もう俺とお嬢の仲を知ってる奴だっているんだから」
「だって……部屋に出入りするのを見られるのは……!」
文豪たちの住居は、図書館と同じ敷地内に建つ寮だ。司書の居住スペースは図書館の中にあるので、普通ならばここを訪れる理由はない。
そもそも男性寮に女性が頻繁に足を運ぶというのは……まあ、確かに問題かもしれない。
しかし、それをさしおいても今日の司書は照れているというか、焦っているというか、妙に落ち着きがなく見える。
とりあえず部屋の中に招き入れて扉を閉めると、ふと彼女が提げている紙袋に目が留まる。
「お嬢、なにを持ってきたんだ」
「あ……! え、ええ、と……」
どうやら司書の狼狽の理由はその紙袋にあるらしかった。ぎゅっと持ち手を抱え、菊池から目を反らしながらもじもじしている。
「ちょっと……先生に、贈り物を」
「ん? 俺に。お嬢が?」
「はい……その、たいしたものじゃないのですけど……!」
司書は意を決したように、菊池に袋をずいっと差し出した。
とりあえず受け取って中をのぞき込むと、なにやら白い箱が入っていた。
「開けてもいいか?」
「う…うぅ……はい、お願いします……」
そう言ってから司書も自分も立ち尽くしていたことを思い出し、ひとまず彼女に座るように言ってから、菊池もソファに腰を下ろす。
「……あん? なんだこりゃ……」
箱を開けた菊池の第一声を聞いたとたん、司書はビクンと身をすくませた。しかし「なんだこりゃ」としか言いようのないものが入っていた。
ピンクとオレンジの中間のような色をした、なにか筒のようなもの。触れてみるとムニュリとした感触で指を跳ね返してくる。
司書が自分に贈るのだから、意味のある、同時に愛情のこもったもののはずである。その想いから、菊池は『それ』を子細に検分していく。
手に取って箱から出してくるりと回すが、やはりそれは筒だった。そしてそれなりに重たい。ゴム、シリコン……そんな素材でできていて、むにむにと柔らかい本体の真ん中、片方には小さな穴が開いていた。
「あっ、待ってください!」
その『穴』に指を差し込もうとした瞬間、司書が大きな声をあげた。なにやら焦っていた。
「待って……まだ、そこは触らないで……」
「お、おう……」
とりあえず頷きながら、その得体の知れない器物を持て余す。
「それは……こういうものです……」
司書が自分のスマートフォンの画面を差し出してきたので、菊池はひとまず筒を箱の中に戻し、スマートフォンを受け取って画面をスライドさせていく。
文字と写真が交互に載っているページだった。『オナホールを使ってみよう 実践編』と書かれていて、写真にはちょうど、さっき受け取ったものと同じような筒が写っている。
「ん……?」
下へ下へと見ていくと、その筒の「穴」に、これは菊池にも見覚えのある、男性器をかたどった玩具を挿入していく画像が現れた。
「お嬢……どういうことなんだ……」
使用後はきちんと洗いましょう、と書かれている文章を最後にページは終わっていた。読み終えて菊池は、半ば信じられない気持ちで司書を振り返った。
ようするにこれは女性器を模した玩具というか、自涜のための道具なのだ。それを司書に贈られるという行為がすなわちなにを意味しているのか、菊池はどうにも整理することができない。
「先生は……ひとりでするのが得意じゃないって、言っていたので」
確かにそれは事実で、司書に言った記憶もあった。行為の後のけだるくも甘いひとときをベッドで過ごしているときだった。菊池が冗談混じりに自分で自分を慰めるかと司書に訊ねたところ、思わぬ反撃に遭って菊池の自涜についても白状する羽目になった。
「だから、これを使ってもらえればと……」
だからとはなんなのだ。接続詞が役割を放棄している。
「これを……俺に渡すために買ってきたのか?」
「あ、いいえ……作りました」
「作ったあ?!」
司書は真っ赤になってうつむいている。これが恥ずかしいもの、ことだという自覚はあるらしい。その上これは彼女の手製なのだという。
「あ……手で工作したという意味ではないんです。原材料を揃えて、錬金術で」
「錬金術」
「き、気持ちをこめて……錬成したので……」
「錬成」
「う、うぅっ……! だから、先生に……使ってほしくって」
ひとまず完成した器物への感想はさておき、菊池の脳内は愛しさでいっぱいになった。
「ふうん。これを俺が使うと思ってわざわざ作ってくれたんだな」
「は、はい……」
隣に座る司書との距離を詰め、彼女の肩に手を回す。よく見れば司書は首まで真っ赤だった。
「どんな気持ちだったんだ。俺が使うところを想像したりしながら、その、なんだ。錬成陣を書いたりしたのか」
「う……うぅ、それは……!」
「こんなスケベなことに秘伝を使われるなんて、きっとお嬢のお母上も想像しなかったに違いないな」
「い、言わないでください~……あぁ……!」
言葉で軽くなじりながら司書の下腹を撫ぜる。司書はいつものようにスカートの上にコルセットを締めているから、その下の肌の感触は隔たれているが、そこに押し入りたいという意志を伝えられれば十分だ。
「まあ、ありがとな。気が向いたら使ってみるよ」
「はい……使って……ください」
菊池が実際にその『筒』に触れる気を起こしたのは、数日後のことだった。
部屋に帰るなり入浴を飛ばしてベッドに倒れ込んでしまう。有碍書への潜書が重なった日だった。全身が重怠く、気を抜けばそのまま目蓋を閉じて眠りに落ちてしまいそうなほど疲労していた。
しかしそんなときに限って妙な自己主張を始めるのが下半身というもので、うつ伏せに寝転がった菊池とベッドシーツの間で、むくむくと落ち着かずに蠢くものがあった。
「…………」
お嬢に会いたいな……とふと思い、けれどもあまりに疲れているのと、そんな吐精の欲だけで司書を求めるのも申し訳ないという気持ちが立ちこめる。
ひとり遊びが得意でないと司書に語ったのは、嘘でも格好つけでもなかった。嫌いなのではない。ただ苦手なのだ。気持ちよくなりたいという欲求はあり、それが自分で果たせるならよいことだと思う。
が、いざ想像を頼りに股間を握りしめてみるとやたらと意識が散って、最後まで手を動かし続けることができない。そうなると妙な自己嫌悪と恥ずかしさに包まれて、性欲はどこかへ散逸してしまう。
それでも結局出すべきものは残り続けていて、気がつくと股間らへんが――心理的なものだとはわかっているのだが、妙にタプついているような錯覚を抱くのだった。それを司書との逢瀬で発散している節があるのは否定できない。
「……あ」
そこまで考えて、数日前に司書から贈られたもののことを思い出した。
あの筒の中に潤滑剤を垂らして使うのだという。司書はそれも用意していて、小さなボトルに入ったものを鞄から取り出して置いていってくれた。
そうだ。あれを使ってみよう。
そう思うと疲労していた身体にも少し力が入って、菊池はベッドから身を起こした。
いくら司書の手作り、心のこもったプレゼントだとは言っても、あんな筒ごときで得られる快感などたかが知れているだろう。
しかしそれはそれで話のタネというか、もっと端的に言ってしまえば閨で司書をいじめるための材料にはなり得るのだ。
やっぱりアンタの中じゃないとだめだ……なんて囁きながら迫ったら、司書はどんな反応をするのだろう。それを思うと、ちゃちな玩具でも使ってみるのは悪くない。
「ああんと……これの中に……」
筒を手に取って、穴に指をかける。シリコン製だというそれは、実に柔らかく伸びた。しかし穴自体はかなり狭く作られている。確かに潤滑剤がないと痛いかもしれない。
指を少し突き入れてみると、中にはつぶさな凹凸があるようだった。これが収縮して、まるで女性器のような感触を楽しむことができる……ということなのだろう。
司書の用意した潤滑剤のキャップを外して中に垂らす。粘度の高いローションが穴の中に流れていくのが、とぷん、という音でわかる。
「おっ……?」
十分潤ったかを確かめるために再び穴に指を突き入れた菊池は、驚きの声を上げてしまった。
さっきとは比べものにならないような、生々しい感触。指に絡みついてくる柔らかなヒダは、まるで粘膜のそれだった。
「これは……」
ただの好奇心が淫欲を帯びる。この中に挿入したい……そんな気持ちが大きくなる。この筒は自分に、たまらない快感をもたらしてくれるのではないかという期待が膨れていく。
「……っ」
意を決してベッドに横たわる。注いだローションがこぼれないように穴を天井に向けていた筒を、いつの間にかそれなりの硬さになっていた自分の肉欲に押しつける。
「あ……お……くっ……!」
その筒の穴に肉茎を通した瞬間、菊池は腰を浮かせてしまった。
想像していたチープな感触などみじんもなかった。ひたすらに熱く、柔らかく、とろけたゼリーのような壁が粘膜を包み込んでいる。柔らかい……どこまでも柔らかいのに、それは絞りあがって菊池を締め付けるのだ。確たる『きつさ』がある柔和さ。
「こりゃ……ああ……くぅ……!」
その考えに至るまでには抵抗があった。たとえ彼女自身からの贈り物であっても、たかが器物、ただの筒と、彼女本人を比べるなんてあんまりだと思った。けれども否定できない。この筒は司書の膣穴そのものの感触を持っていた。
「はぁ…ああ、お嬢……おぉっ……♡」
とりあえず簡単に着脱できるようにと仰向けになっていたが、身体の向きを変える。ころんと横寝になり、まるで胎児のように背を丸め、股間をかばうような格好になった。もっと強くこの感覚に包まれたいという気持ちが、本能的にとらせた体勢だった。
「く……はぁ、はぁ……あ……」
両手で筒ごと、肉茎を包み込む。そのまま筒を上下させると、にちゃっと粘着質な音が響いた。中に潤滑剤を垂らしているのだから当たり前だ。
当たり前なのだが、その感触を持ってすれば、まるで司書の膣穴からあふれる愛液が、菊池の肉茎にまとわりついているような錯覚を得てしまう。
「お嬢……っ、うぁ……あ、気持ちいい……♡」
気持ちいい。その言葉が口からこぼれた瞬間、しまったと思った。
自分はこんな玩具に敗北したのだと思った。ただの筒に愛しい司書を幻覚して、その感覚に夢中になっている。こんなことは今すぐやめるべきだ。いけないことではない。悪いことではない。でもなんというか……そう、滑稽だ。あまりにダサい。この菊池寛ともあろう男が、こんなシリコン筒ごときに翻弄されるなどあっていいわけがない。
「く……♡ あ、おおおっ♡」
しかし添えた両手で、筒を引き抜くつもりで思い切り引っ張り上げた瞬間、菊池の意識は再び敗北した。強烈な吸いつきだった。このまま肉茎をもがれてしまうと思うほどきつい締めつけと吸いあげが同時に起こった。
本能が告げている。このピストン運動を繰り返すとたまらなく気持ちいい。自分を吸い尽くそうと蠢くこの穴に腰を突き入れたら、きっと穴と腰で衝撃がぶつかり合って、えもいわれぬ快楽を与えてくれる。
「ううぅっ……くっ、あっ、ああっ……♡」
結局菊池はその誘惑にまで負けた。引き抜く手を止めて固定すると、穴めがけて思いきり腰を振りたくった。
「ああ……ああっ、お嬢……お嬢……」
司書を求める声が口から漏れる。そうだ。本当ならこんなものに頼らず司書と交接したい。彼女の身体を抱きたいのだ。
きっと彼女なら、今すぐ連絡をしたって喜んでくれる。会ってすぐに性急に身体を求めても、困った顔をしつつも受け入れてくれる。司書はいつだって、聖母のような優しさと娼婦のような淫らさを持って菊池を包んでくれる。
ああ……だというなら、こんな玩具に振り回される男だって、許してくれるに違いない。
「おぉ、んお゛っ……! お嬢……♡」
筒に根本まで肉茎を挿入した状態で、亀頭に面した部分を外側から強く握りしめた。そこだけ強く壁が擦れる。シリコンに遮られて見えないが、赤黒く充血した先端から滲液が垂れているのがわかる。筒越しに握力をこめてしごきあげると、ぼぢゅっ、ぼぢゅっ、ぼぢゅっ……と、手の動きに合わせて尿道が開き、先走り汁をこぼすのが心地よかった。
「はぁ……はあぁ……! うぅっ……♡」
司書の膣穴とまったく同じ感覚の粘膜の当たり心地を、自分の手で好きにすることができるのだ。強い快感に追われるぶん、絶頂の予感もいつもより早かった。尿道口が刺激を想像して震える。睾丸も臀部もぎゅうっと締まりあがって、足の指が攣りそうになる。
「く……あぁ、お嬢……イクッ、はぁ、うくぅっ♡ イク……あ、イクッッ……♡」
腰の奥からこみ上げた快感が一気に弾ける。全身が震える。脈打った肉茎の先から、粘っこい白濁が何度も噴きあがった。
「はあっ……あっ……あっ……♡」
射精そのものがたまらない激感を与えてくる。それを深追いしたくなり、精を吐き出しているさなかだというのに筒を上下させて刺激を与える。絶頂で敏感になった亀頭を随分と乱暴に虐めていると自分でも思うが、それでも手を止められない。
「ああ……くおおっ……う……はぁ……!」
先端がジンジン痺れる感覚をしばらく味わってから、ようやっと手を離す。相当な量を射精した気がする。この筒の中に己の白濁が溜まっていると思うと、菊池はなんとも言えない気持ちになった。
「……っ、おぉ……!」
いつまでもそうしているわけにもいかず、だんだんと硬さを失ってきた肉茎から筒を引き抜く。しかしその感覚もやみつきとなるのだから始末に負えない。
「…………」
早くこれを洗って、中の白濁と潤滑剤の残りを追い出さなければ。そう思うに身体はビクともしなかった。いや、股間だけ不思議に震え続けている。菊池はもう意識しないうちにそこに手をやった。
「……っ、…………っ」
柔らかくなりかけた肉茎を指で揉む。甘弄りを続けていると、やがて菊池の股間は再び上を向きはじめた。
「ああ……お嬢……」
もう一度。もう一度だけ、彼女の心尽くしの贈り物を、しっかり味わうのは自分なりの礼儀だ……。
そんな言い訳をしながら、菊池は再びシリコン穴に亀頭を押しつけた。
「……あっ♡」
ふいに股間を襲った感覚に、司書はぴくんと身を固くした。けれども嫌ではない。むしろ待ちかまえていた。いつ来るかとずっと期待していたものがようやく巡ってきたのだと、司書は熱い吐息をこぼしながら身をよじった。
「んっ……先生、本当に……使ってくれてるっ……♡」
司書はベッドの中にいた。今日は来るだろうか。来るとしたらいつ頃だろうか。また来ないまま、自分は眠りについてしまうのだろうか……そんなことを考えながら、もじもじと布団をかぶっていた。
「はあっ……あっ、せんせ……んっ、指……あ、塗り込んでる……んんんっ♡」
間違いようもない、大好きな菊池の指。離れた場所にいるはずの彼が、今自分の粘膜をいじくっている感覚がある。ぬるりとした液体を、司書の膣穴の中にまんべんなく塗りたくっている。
――司書が使ったのは、錬成したものと、自分の身体の一部の感覚をリンクさせる技術だった。
ある程度のテクニックが要求されるものだが、そこは由緒ある錬金術師の家系に生まれ、血を引き継ぎ、勤勉に励んできた司書だ。それくらいなんてことはない。
問題となるのは技術を悪用することをとがめる良心、恋人の菊池を騙すことへの罪悪感だったが、そのふたつは、胸に詰まった司書の淫欲と好奇心を遮断してはくれなかった。
つまりなにかというと、司書が菊池に贈った性具は、司書の膣穴と感覚が繋がっていた。
「あ……せんせぇっ♡ そんな丁寧に……んっ、塗っちゃ……はぁ、あぁ……んんん~~っ♡」
今も、菊池がおそらく挿入の準備のためにローションを筒に塗りこめる感覚がまざまざ伝わってくる。
「先生……道具にもそんなに優しいんだ……♡ ふぅ……うぅ、もっと乱暴にしてもいいのに……」
膣穴が充血して開いていく。普段どおりに目の前に菊池がいて、その手で粘膜を弄っていたならば、司書は簡単に絶頂してしまうだろう。それが彼女の体質だった。愛しい男に触れられると、頭の中がいっぱいになって他のことが考えられなくなる。
たとえば自慰をして得られるのと同じだけの刺激でも、菊池によって与えられると快感が何倍にも増幅されて伝わってくる。司書は何度でも絶頂してしまう。
「あっはぁぁっ♡ んっ、あっ、当たってる♡ 先生の先っぽ……うんんっ♡」
しかしこうして視覚情報をシャットアウトして淫感だけに絞ることで、司書はようやく『普通』になれる。ある意味で菊池の愛撫だけに集中することができる。彼の与えてくれる刺激をしっかり受けて、酔いしれることができるのだ。
「んっ、くああぁぁぁ♡ きた……あぁっ、入ってくるうぅぅっ……お、おぉぉおんッッ♡」
全身が弾ける。菊池の肉茎が一気に奥まで挿入された。司書の子宮の入り口を、亀頭が容赦なく突き上げてくる。
「ごっ♡ ゴリゴリしてりゅうぅっ♡ あっはっ、かん……せ、んせ、おもちゃだと、思ってるからあぁっ♡ あ゛ッ゛♡ ん゛お゛ッ♡」
まさかそのシリコン筒の感触が司書と繋がっているなんて夢にも思わない菊池は、普段司書相手なら絶対にしないであろう乱暴なピストンを繰り返している。
「おっ、オマンゴけじゅれるうぅぅっ♡ せんせっ、あっあっあっあっっ……あーーーーーッッ♡♡♡」
筒の先端を押さえつけ、亀頭をぐりぐりと撫でるような動き。膣穴への挿入では絶対にしようのない自慰特有の刺激を、今司書は子宮で受け止めていた。膣穴の奥の奥が甘く揺らされる。
「ういぃっ、いひぎぃいいぃっ♡ ぎもぢぃい~~っ……せんせっ、あっ、おぉおぉっ、おま、おまんこおぉっ…もっと、もっと擦ってへえぇぇっ♡」
遠慮がないのは司書だって同じだ。普段菊池に向かっては口に出来ない淫らな言葉と、あられもない喘ぎ声がいくらでもこぼれてくる。いくら絶頂漬けになろうとも、司書の意識にはどこかでセーブがかかっている。愛しい菊池にだからこそ、完全に理性を失ったところなど見せたくない。
「あっあっあ゛ッッッ! でっでも本当は見てほしいのおおおっ……あ、ダメ、ダメだけど……おぉおおっ♡ うふぅっ、うあぁうぅっ……あっ、見てええっ、いやらしいの、見てえぇーーっ……♡」
二律背反の想いにいたぶられながら、司書はどんどん上り詰めていく。
菊池も同じようだった。肉茎を出し入れするペースが上がって、射精へ駆り立てられているのがわかる。
「はあぁっ、ア゛ッ、イグッ♡ イグイグイグッ♡ せんせぇの鬼ピストンでいぎゅうぅ~~~っっっ♡」
司書の身体がよじれる。膣穴をこじられる気持ちよさが脳天を突き抜けていく。おなかの奥がギュウッと締まり、快感が全身に飽和していく。
「お……ふ……おぉおっ……はぁ…はぁ……あ……♡」
まだ菊池のピストンは続いていた。それも射精が近いのか乱暴な、殴りつけるような激しさだった。
「うぐうぅっ、せ、せんせえぇえっ♡ ゆるひでっ♡ あっひィッ、イ゛ッッ、いぃいぃぃーーーっ♡」
絶頂のさなかにある膣穴をさらに擦り立てられて、司書は身悶えする。
「あッイグッ先生えぇえっ♡ またイッぢゃうううぅっ♡ あみゃあぁぁ~~っ♡ あッあ゛ああぁああ゛っっ♡ ぐるうぅうっ♡ 気が狂う~~~っ♡♡♡」
この気持ちいい破滅はいつまで続くのだろうと責め苦の中で思っていると、子宮の入り口がすごい力で掴まれた。それと同時に粘ついた白濁が、司書の奥に叩きつけられる。
「れ、れでりゅううぅっ♡ しぇ、しぇいえきひゅごいぃいっ♡ あっ、ひぐぁっ、わらひもイグうぅぅっ♡ いぎゅふううぅぅーーーっっっ♡」
再び司書の身体が狂おしくしなる。膣内射精の感覚を受け止めながら、二度目の絶頂に全身を震わせた。
「ふひぃーーっ……ひぃいっ……あ……はああぁ……♡ あっ! だめっ、あっ、あああぁあぁっ……♡」
司書が一息つきかけたとき、菊池が再び動き始めた。射精の最中だというのに、名残惜しげに内壁に肉茎をなすりつけている。
「だ、だべえええっ! りゃめぇっ、へひっ………へひっ♡ 動かしちゃらめえぇぇ~~っ……♡」
震え続ける司書のことは当たり前だが構わず、その前後運動はしばらく続いた。
「はひっ……は……あ……あっ、抜けて……!」
ようやく菊池の肉茎が引き抜かれる。司書はそこでやっと深呼吸して、肩で息をしながら自分を落ち着かせた。
「……先生……気に入ってくれたかな……はあぁっ……♡」
何度も使ってくれれば、この狂おしい快感をそれだけ味わうことができる。
「……あっ! また……!」
膣穴の入り口に、熱があてがわれる感触があった。
「寛先生……二回も……あはぁっ♡」
再び肉穴を貫かれる快楽を得て、司書は歓喜で震えた。
――いつか本当のことを言える日が来るだろうか。そのとき菊池はどんな顔をするのだろう。軽蔑されるだろうか。
「せんせぇ……せんせぇ……私のこと……」
嫌いにならないで。そう思ってしまって泣きそうになる。司書の中にいつもある想いだ。こんな淫乱な女にはきっといつか罰がくだる。幸せになんかなれないんだ……。
「でも……」
菊池なら。あの人なら。淫欲ごと私を抱きしめてくれるかもしれない。
「先生……」
でも。先生なら。でも……司書の思考はどうどう巡りを繰り返す。
「あ、ああぁああっ! また、激しっ……♡」
ひとまず今はこの快楽に溺れよう。そうやってけりをつけて、司書は再び気持ちよさに耽溺していった。