牡丹の蜜漬け
今夜は必ずお嬢を抱くのだという菊池の想いは、彼女の部屋に向かう中でどんどん強まっていくのだった。お嬢というのはすなわち、彼を今現在のこの世に顕現せしめた特務司書のことであった。
司書なんて役職で呼ぶのは堅苦しいし、名前で呼ぶというのもなんだか、なんというか、はっきり口にできない違和感がつきまとう。ならばと思いついた呼び名が『お嬢』である。
司書は最初のうちはくすぐったそうな顔をしたが、やがてそう呼ばれるのを嬉しく思っているかのようなそぶりも見せるようになった。
お嬢、という呼び名を思いついたのは正直なところ、彼女の見た目に惹かれてのことだった。
髪を優美な形に結っているすらりとしたたたずまい。前髪の隙間から覗くはっきりした眉が、聡明そうな面もちを作っていた。ちょっとした動きがたおやかで、時代錯誤な物言いをすればいかにも深窓の令嬢といったふうだった。
そのわりに口を開くと人なつっこく、おしゃべりが好きで、そのギャップがまた菊池の心をやわやわとくすぐった。
彼女のほうでも菊池にどの程度かはさておいて好意的なものを感じとったのか、頻繁に作業の助手として彼を指名した。言われるまま書類を確認し、配架を行い、重いものを運んだりする中で菊池は彼女とゆっくり、しかし着実に距離を縮めていった。
休館日に外出に誘えば、司書は嬉しそうにはにかんで受け入れる。もはやふたりで街を歩くのは休日の恒例だった。菊池はその中で無意識に、もうこの女は自分のものであるという独占欲というか、そんなものをくゆらせていた。
司書も司書でそんな雰囲気を醸していた。ひと目見たときの深窓の令嬢という印象は、彼女の出自を知ってあながち間違いでもなかったと思ったが、それにしてはどうにも、彼女は異性に対して妙に距離が近かった。
一緒に食事をして、その流れで図書館に隣接している文豪たちの寮にある菊池の部屋に誘えば、難なく頷いてくれそうだった。
なんならそこで口説き文句を省略して「そろそろ夜のほうもお願いしたいんだが」と、なにがそろそろなのかさっぱりわからないことを所望しても、そのまま承諾されそうな気配があった。
だからこそ菊池はこの女は俺のものだという意識を持たねばと張り切っているところがあった。
他の文豪に横取りされてはたまったものではない。菊池の知る限りこんなに司書と親しいのは自分だけだが、それでも安心できなかった。
司書は代々続くアルケミストの家系に生まれたのだという。その血は遙か昔から続く伝統的なもので、近代においては重宝される存在。
誇り高き血を受け継いだ母とその研究を支える資産家の父の元に生まれ、蝶よ花よと育てられたのがこの特務司書。お嬢という呼び方もそれほど的外れではなかったことになる。
だが、そうやって彼女の出自を知れば知るほど普段の細やかな行いが妙に気になってくる。
菊池がポケットから煙草を取りだすしぐさをすると、次の瞬間には自分の懐からライターを取り出して、どうぞと火をよこす。見たところ彼女に喫煙の習慣はなかった。つまり他人に差し出すためだけに火を持ち歩いているのだ。
はっきり言うなら菊池の目にそれは酌婦の所作として映った。その仕草がおっとりと、あくまで自然なものだというのがまた違和感を増幅させる。
話しているときもそうだった。司書は口癖かと思うほどに「すごいです」「さすがです」「すてきです」とよく言うが、それは彼女のたおやかな口調で緩和されてはいるものの、やはり酌婦のそれだった。
菊池はそれらをひっくるめて彼女に惹かれているが、気がかりと言えば気がかりなのだ。誰に対してもそうなのだから、彼女に対して勘違い……いや、そうくくっては傲慢だが、菊池の自負からすればやはり勘違いと呼ぶしかない好感情を抱く者が現れやしないかと不安なのだった。
その上で手を繋いでも腰を抱いても拒否されないとなると、これはもう早々に手籠めにしてしまったほうが彼女と自分のためだという気にもなってきて、今夜こそはお嬢を抱くのだという決意に繋がっていく。
「お嬢、俺だ」
「あ、菊池先生。どうぞ……汚い部屋ですけれども」
寮とは別に、図書館の中に用意された司書の生活スペース。実は菊池がここに来るのは初めてではなかった。なので彼女のほうもあまり緊張した気配はなく、訪ねた菊池を受け入れる。
しかし扉を開けた司書が寝間着姿で、髪もほのかに湿っているのを見て菊池は息をのんだ。
「ああ、すまない……時分どきか。風呂あがりだったかな」
「ええ……でももう着替えて、なにをするでもなくぼうっとしていましたから。よければあがっていってください」
「おう……」
ワンピース型のパジャマを身につけた司書にどぎまぎしながらも棒立ちになっているわけにもいかず、彼女が勧めるままベッドに腰かけた。
やがてその手前にある背の低いテーブルに茶が運ばれ、司書が菊池の隣に落ち着く。
「ああその……お嬢。煙草を吸ってもいいかな」
己の目的がお膳立てされすぎているような気配に菊池はしっくりこない気持ちで、わざとらしいことを口にした。
「ええ、どうぞ。灰皿お持ちしますね」
実際はこの、甘い香りの漂う部屋で喫煙する気などなかった。なぜ彼女は吸いもしないのに部屋に灰皿が用意してあるのか。
「お嬢。ちょっと訊かせてほしい」
彼女に募っていたさまざまな感情が呼び起こされる。もう黙っていることもできず、菊池は取り出した煙草をしまってから、本当に灰皿を用意してきた司書をまっすぐ見つめた。
「アンタはよくしてくれるが、ときどきやりすぎだと思うこともあるぜ」
「やりすぎ……?」
「ああんと……ああ、質問を変えよう。アンタ煙草吸わないだろ。だっていうのにいつも火を持ち歩いているな」
「え? ええ、そうですね」
「それはなんでだ」
「えっと……周りに煙草を吸われる方が多いので、あったほうが便利ですから」
「そりゃまあそうなんだが」
司書のほうも、菊池がなにを言いたいのか察したらしかった。きまりの悪い表情でティーカップに口をつける。
「先生のおっしゃりたいこと、わかります。うっすらとですけど……ごめんなさい、私、なれなれしいんですよね」
「なれ……いや、違うんだ。親切すぎるというか」
「いえ、今までさんざん言われてきたことなんです。おまえは人にへこへこしすぎだって。ご機嫌取りが見え透いていて気味が悪いって」
「そりゃあ誰が言ったことなんだ」
「……今まで交際した男の人から」
思わず核心を突いてしまった感覚に菊池は再び息をのんだ。こんなにあっさりと、自分の一番の気がかりに切りこむことになるなんて思わなかった。
「その、つまらない話なんですけど……って、こうやって予防線を張るのも、卑怯ですよね。ごめんなさい。でも、本当に私の身の上話なんてつまらないと思うから」
「いや、聞かせてほしい」
菊池が力強く断言すると、司書は紅茶を飲み干してから静かに口を開いた。
「一番最初に付き合った男の人っていうのが……ええっと、ジャーナリストだったんですね。私、自分で言うのもなんですけれど温室育ちで……自覚はあるんです……だから、野性的な雰囲気のある彼に惹かれたんです。親に秘密で異性と付き合うことに興奮していたのもあって……」
聞きながらちょっと失敗したな、と思った。この女を抱いた者があると認識すると、菊池の中で嫉妬心がむらむらと煽られた。
「なんですけど……ああ、私にも原因はあるんですが……とにかく、結構、簡単に怒りに火がつく人で。しょっちゅう怒鳴るし、ときには叩くんです」
「叩くって……まさかアンタを」
菊池は瞬時にムカムカとした気持ちになった。また煙草に手が伸びそうになるのをどうにか抑える。
かわりに思わず、妙に小さくなりながら過去を語る司書の頭に手をやった。艶やかな髪をゆっくり撫でると、司書はそれに身を任せるように目を伏せた。こんなことをされても拒絶しない彼女はいったいどうやって作られたのか。
「いっとき、頭を足蹴にされたことがあるんです。さすがに痕が残ってしまって。原因を父に詰問されて、彼との交際が知れたんです。それもあって私も、理由があってもみだりに暴力を振るう人と一緒にいるのはよくないなって思えて、別れたのですけど」
「…………」
菊池はすでに脳内でその男とやらを、普段は侵蝕者に向ける鞭でびしばし懲らしめていた。隣の愛しい存在を傷つける者をどうにか折檻してやりたかった。
「でもなんだかそれ以降、私、妙に恐れるようになってしまったんです。男の人に限ったことじゃなく、関わる人すべての機嫌を損ねたらどうしようって。そう思うといてもたってもいられなくて、尽くしてしまうんです。変に思うかもしれませんけれど、それが妙にまた、居心地よくて……毅然としているより、人の機嫌を伺っているほうが気持ちが楽なんです」
そういう人間はいる。司書もそうであるというだけのこと。菊池はそうやって自分を納得させるのが難しい。過去の男に対してさらに怒りが募っていく。
「そういう姿勢でいると、以前よりずっと男の人が寄りついてくるようになりました。私も私で、それを拒むことをしなかったんです。中には下心が丸出しの人もいました。その、私の力ではまったくないんですが、両親にそれなりの資産があるので、私を手懐ければ、そこからなにかを引き出すことができると思っている人が……」
「お嬢」
殺意をどうにかかき消して、司書の髪を撫でることに集中する。司書は全く拒まない。この態度までもが、彼女が他人からの負の感情を恐れるあまりの諦観であったらどうしようか。
「そういう人って、露骨に媚びてくるでしょう。媚びてる私に対してさらに媚びてくる。なんだか……哀れになっちゃうんですよね。私ごときに媚びるなんて、この人本当は絶対そんなことしたくないんだろうなとか思っちゃって……その、先生、わかってもらえるか、わからないんですけれど……哀れに思うと、こう、無性に……愛しくなってしまうんです」
理解できる。憐憫と愛惜は紙一重というよりも、同じ色をしている。菊池にだって覚えのあることだった。
「馬鹿みたいな交際ばかり繰り返して……そんな自分が嫌なのに抜けだせなくて。特務司書としてこうして勤めるようになったのは、私にとって幸福でした。文豪のみなさんは、とても紳士的で……」
「……お嬢。そんなアンタにとって、俺は一体なんだ?」
菊池は胸を衝く感情を抑えるのをやめた。ここに至るまでに考えていた作戦のようなものが妙にガキッぽく思えてしまっていけなかった。
おそらく肝心なことをあやふやにしたまま彼女の肉体を征服したならば、司書はきっと菊池をこれまでの男と同一にみなしただろう。それではいけない。菊池は彼女をいいなりにしたいのではない。
「き、菊池先生は……その……」
全身がむずむずした。司書がうつむいて顔を見せないようにしながら言い淀んでいるのがどうにももどかしい。
「私にとって、先生は……す、好きな人です……」
しかし司書がそう答えた瞬間に、むず痒さはじんわりと喜びに変化していく。
「でも、よしたほうがいいです……私、男の人と付き合うのが下手だから」
「いや、いや。俺を今までお嬢につきまとってきたろくでなし共と一緒にするのはよしてくれ」
「一緒にしては……うぅ、そうなんでしょうか……」
「俺はお嬢につらい思いはさせないって誓うぜ」
菊池がそう言い切ると司書はようやく顔を上げた。物欲しげな表情だった。いつもは静かに閉じている唇が薄く開いている。瞳は期待に濡れて、菊池の目を惹いた眉は切なげに下りていた。
「せ……先生」
「俺はお嬢を俺のものにしたい。ああ……この言い方はよくないか。どうにも……あー」
「いえ……わかります、伝わります……」
そう言って司書が肩にもたれかかってきたのが、ひとつの合図となった。菊池は司書を抱き寄せて、その口を吸った。司書はとろんとした顔でそれを受け入れて、菊池にすべてを委ねるように弛緩した。
「ひっ、ひぐうぅっ♡ いいいっ、あっ、あぁ、イクうぅっ♡」
「お、おい……!」
司書の身につけた寝間着をゆっくり脱がせて、柔らかな乳房を手のひらと唇で楽しんだあとに足の間の粘膜にたどり着いた菊池は、彼女が突然あげた大声に驚いた。
まだほんの少し触れただけだ。粘膜の頂点で包皮から顔を出した、小粒の真珠のように可愛らしい肉芽をつんとつついただけだった。
「ひ……ふぁ、あ……ごめんな…しゃ……♡」
「大丈夫か、お嬢……まさか今のでイッちまったのか」
「ご、ごめんなひゃ……わたし……」
「いや、別に責めちゃいないが」
「はぁ……あ、感じやすくって……昔から、こうでぇ……」
「いやいや、それは結構なことだが……いやしかし大丈夫か。そんなに気をやってちゃ身が持たないだろう」
「うぅっ……こ、これも、私が……男の人と、うまく……」
「わかった。お嬢のあれこれがようくわかった」
この敏感すぎる肉体を好きずきに翻弄し、下に敷き、意のままに操ろうとした男共と、それにあらがえなかった司書のあれこれが、ここにきてすべて理解できたような気持ちだった。
「よーし、よし……できるだけ優しく触るから。アンタも……まあ、こらえてくれ」
「ひゃ、ひゃい……んんっ♡」
クリトリスというより、その表面に張られた愛液の膜を撫でるような力加減で指を当てる。
それだけやわやわと触れていても司書の身体は強く痙攣した。ひと撫でごとに膣穴から愛液が潮吹きのようにびちゅる、びちゅると吹き出して、菊池の手を濡らしていく。
腕時計を外しておいてよかったなんてことを考える頃には、もう肘までびっしょりだった。
「驚いたぜ。お嬢のオマンコは濡れやすいんだな」
「お、おまっ……! あぁあっ、いっ、イクぅっ……♡」
「そこでか?!」
菊池があられもない四文字を口にした瞬間、司書の粘膜が激しく締まり上がる。膣の前庭にあてがっていた菊池の指を、奥に誘いこむようにひくついた。
「あはぁ、はぁ……あっ、ごめんなさい……♡ わ、私……一人でイッてばかりで……うぅ……♡」
「いや、アンタが謝ることじゃない。したくてしてるわけじゃないんだもんな」
ここにきて菊池は恐怖を抱いた。こんな状態で、挿入まで果たしたらいったいどうなってしまうのか。うっかり心臓麻痺でも起こされやしないか。
――けれどもやめるなどという選択肢はなかった。なにより菊池自身がもう、彼女の中に押し入りたくて仕方なかった。
「入れるぜ、お嬢。こらえてくれよ」
「うぅんっ……! ふぁ、はぁっ、アッ、あああぁぁぁぁ……っ!!」
硬くなった熱を粘膜の中に押しこめると、司書の身体はなにかに引っ張られているように反り返った。同時に強い締めつけがあり、菊池は腰の奥にある熱をすぐにでも放ってしまいそうだった。
歯を噛みながらそれをこらえ、司書の腰に手を添えてゆっくりと肉茎を引き抜く。
「あはぁあっ……あっ♡ ゆっくり抜くの、らめぇぇ……♡」
「はぁっ……! く、柔らかいな、お嬢の中は……めちゃくちゃにしたい気持ちになるよ」
「め、めちゃくちゃ……ひ、ひてっ♡ めちゃくちゃ、してくらさいぃっ♡」
「お、ふ……それも随分蠱惑的なお誘いなんだが…せっかくこうして一つになれたわけだからな。もう少し……♡」
「あひっ、アッ、アッ、ああぁぁっ……!」
菊池は広い湖面を思い浮かべた。そこに手を差し込んでゆるゆると波紋を立てていくイメージで、決して大きな波は作らない。
「ふぁ、あっ、あぁっ、ひぐぅっ……! あはぁ、あっ、あっ……♡」
試みはうまくいって、司書は菊池の思うとおりに小刻みに身をくねらせる。
「……っ、お嬢……く…あ、ハァ……!」
困るのはその動きを続けたくないと思う己の欲だった。繊細な抽送などやめて本気で腰を使いたかった。柔らかすぎる司書の膣穴を、よく締まる最高の粘膜を、今すぐめちゃくちゃにしたかった。
その思いを必死に抑圧して、小さな波紋をいくつも作る。
「っ、あっ! あっ、いぎひぃいいっ♡♡♡」
「くおっ……! 待った、お嬢っ♡」
吠えた頃にはもう遅かった。司書の膣は菊池を咥えこんだまま痙攣し、肉茎を押し潰すかと思うほどの勢いで啼いた。
「あ……! く、はぁ……!」
「っあ、あがっ、あはぁ、はっ、せ、せんせえ♡ い、いまので……どうひてっ♡ い、今ので、イッ、て……くれなかったんれすかぁ……!」
菊池が泣くほどの思いでこらえた射精を、司書は舌足らずな声で惜しむ。自分の肉穴の軋りが、男に十分な快楽を与えると知り尽くしていた。
それを知ると菊池の心が妙に燃えた。絶頂に打ち震える司書の身体を抱え、その粘膜の奥の奥に自分の熱を当てるつもりで腰を押しつける。
「ひゅぐぅっ、あひぎぃいっ、しょ、しょこしゃれたらしゅぐイグうぅっ♡ イッ、イッでじまいまずうぅっ♡ せんせっ、わ、わらひバカんなりゅうぅっ♡♡♡」
「いいぜ……俺の手でお嬢を狂わせちまうってのも、はぁ、燃えるかもしれないな……!」
「ひっ、あがっ、ほ、ほんとうにぃいっ♡ ばかんなるっ、おっ、おっ、おぉおおぉおおっ♡ おぐにあだってるうぅっ、ぎひっ、ぎっ、ぎもぢいいのがっ、奥にぃぃっ♡」
「なってくれお嬢、ああ畜生、俺の方が先に馬鹿になっちまいそうだ、くぅっ…お嬢、お嬢……♡」
「ひぐぅ、いぐぅっ、あっ、せんせっ、いっしょ、いっしょがいい、わたしだけイグのいやぁぁっ♡ おねがいひまひゅ、一緒にっ……一緒にイギたいのおぉおっ!♡」
「おう……! イクぞ、お嬢の胎に中出しだ……♡」
「ッッ、アッ、あひいぃいいっ♡ イグッ、あっ、いっ、あああぁぁぁーーーっ!!」
菊池が歯噛みと一緒に我慢を手放して、精を膣に叩きつけた瞬間に司書の身体も跳ねた。
その瞬間に奇妙な感覚を得た。司書の膣穴が、まるで菊池の精液を飲み干すかのようにぎゅうっと締まるのだ。うねる肉壁が吸いついて、一滴も逃さないと言いたげに、もっと奥で飲みたいと物欲しげに蠢いた。
自分はこの感触をこれから忘れることはないだろう。そんなことを思うほど強烈な締め付けだった。
「ふぁ……あ、先生の、奥に出てるぅ……♡ うふぅっ、はぁ……あ、気持ち、いいです……なか、満たされて……♡」
「はぁ……そいつは何より…………あぁお嬢、口を吸ってもいいか」
「ど、どうぞ……んんっ……♡」
唇にむしゃぶりついて、間も与えずに舌も吸いあげる。司書はうっとりとされるがままになって、その手は菊池の背中をまさぐった。
この不器用で愛しい存在を、これからどれだけ愛してやろうか……菊池はそのことばかり考えた。