あなたの中庭で


錆びた鉄の門の向こうに、あなたの中庭がある。
夜は霧に包まれ、夜明けは暁の手前で緊縛され、
あなたの秘密の中庭は、心地良い時に保たれる。

あなたの切り刻んだ死体が花のように咲き乱れる庭。
その庭に僕は横たわり、じきに下されるあなたの制裁を待っている。

あなたに連れ去られた旅路で僕は疲れ果て、いまは嘆く気力もなく
死んでいく眼から涙を流しあなたを見上げている。

その涙は悲しみでも苦しみでもなく、ただそこにしか居場所のない涙。
僕はもうつらくはない。最後の手をかけてくれるあなたがいるから。

立っていられない僕を、あなたは無理矢理ひざまずかせ、これから命令するところだ。
それは何度も何度もくりかえされてきた命令。
あなたは意外とあたりまえの命令をする。僕はもう、どうすればいいかわかっている。

僕の口は言葉を吐くためには存在しなくなった。
僕の胸は呼吸をするためには存在しなくなった。
僕の手は詩を書くためには存在しなくなった。
僕の胎内は、生きるためには存在しなくなった。

すべてあなたのためだけに用意された、あなたの分身となった。

涙と精液にまみれた僕の屍をあなたは埋葬する。
あなたはそれを掘り起こしては、あの夜の僕を蘇らせる。

僕を存在させるのはあなただけになった。
あなたの、秘密の中庭に、永遠に、僕はいる。

 



2002.3.12■■

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