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ノクターン すさんだ自分にあきれはて、うなだれて、悲しいつもりではないのに涙がとまらない。僕は自分を冷笑しているはずなのに、涙が、罪の泉からこんこんと沸き出してくる。 足下に横たわるあなたを、僕は涙の眼で見つめ、かすれた声を絞り出してののしり続ける。あなたのいない世界では存在できないのだから、そうさせたのはあなたなのだから、僕にはあなたにこだわる権利がある。あなたを失ったら、僕はもてあました二人分の罪を背負わなくてはならない。僕がまだ白い天使だったころに、あなたが食べさせた甘い罪。快楽のほとばしりに流されて、気づかないうちに楽しかった夜の闇そのものになっていった、僕たちの罪。 闇を清浄にするために、僕はノクターンを弾く。孤独なピアノの夢で夜をやりすごし、感傷で罪をなぐさめる。でも、その腕を、あなたは切断した。僕はまた汚れた闇に欲情するようになり、あなたは、闇からの出口を僕に教えずに、自分だけ去ろうとした。 僕は心であなたを殺すことができる。いま、望んだとおりあなたの死体のうえに君臨している。でも、僕の涙がふりかかるたびに、あなたの生気が蘇り、僕は失った両腕で懐かしいあなたにすがりつこうともがき、あなたに体を重ねて口づけする。僕のペニスの下で、あなたのペニスが立ち上がり、甘美なあの夜のベッドがふたりを包み込む。 あなたといる僕は、堕落への道しか選べない。僕には光の家に帰る力が残っていない。励ましや叱咤ではなく、もうあきらめろと、あなたの口から言ってほしい。そうすれば、開き直った僕の翼はふたたび輝き、白く滑らかな皮膚と、あなたを魅惑する鎖骨と、あなたを愛撫する両腕と、セックスの歓喜に踊る腰と、痙攣する体を支えるまっすぐな足と、あなたにおもちゃにされあなたを犯すにふさわしい青春のペニスを手に入れることができる。美しく堂々とした僕はあなたに賞賛され、悲しみも後悔も苦悩も帳消しにして、永遠に闇に生きることができる。誰にも邪魔されず、あなたと、ふたりきりで。 |
2002.3.11■■
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